徴収事務委託の取り扱いについて

当市でも、地方自治法施行令第158条及び第158条の2に基づき、徴収事務・収納事務の委託をしています。現在行っている徴収事務のうち、次の事務について、その正当性が問題となっています。

1 市立墓地公園(公の施設)において、墓地公園に関する使用料・手数料のほか、墓地公園に設置している公衆電話の通話料についても、指定管理者である事業者との間で、徴収事務委託契約を締結し、一度は同事業者の収入とした上で、他の使用料等とまとめて市の口座に入金させ、市が通信事業者に通話料相当額を送金しています。
 ① 公衆電話通話料は、地方自治法施行令第158条第1項の各号のうち、いずれかに該当しますか。
 ② いずれにも該当しない場合、徴収事務委託契約は無効となりますか。


2 市立斎場(公の施設)において、斎場に関する使用料・手数料のほかに、利用者が指定した場所と斎場との間を送迎するバス(運送バス会社から運転手付きでチャーターしたもの)の利用者負担金(条例、規則上徴収根拠はない)について、施設管理委託をしている事業者に対して徴収事務委託契約を締結しています。
 ① 斎場における送迎バス利用者負担金について、地方自治法施行令第158条第1項の各号のいずれに該当しますか。
 ② いずれにも該当しない場合、送迎バス利用者負担金に係る部分の徴収事務委託契約は、無効となりますか。


○地方自治法施行令
(歳入の徴収又は収納の委託)
第158条 次に掲げる普通地方公共団体の歳入については、その収入の確保及び住民の便益の増進に寄与すると認められる場合に限り、私人にその徴収又は収納の事務を委託することができる。
一 使用料
二 手数料
三 賃貸料
四 物品売払代金
五 寄附金
六 貸付金の元利償還金
2・4 略
第158条の2 普通地方公共団体の歳入のうち、地方税については、前条第1項に規定する場合に限り、その収納の事務を適切かつ確実に遂行するに足りる経理的及び技術的な基礎を有する者として当該普通地方公共団体の規則で定める基準を満たしている者にその収納の事務を委託することができる。
2・6 略


○電話サービス契約約款
第5条 電話サービスには、次の種類があります。
公衆電話 当社が街頭その他の場所に電話機等(電話機及びそれに付随する設備をいいます。)を設置して公衆の利用に供するサービス
(他の電話サービスは省略)
第71条 契約者又は公衆電話の利用者は、次の通話について、当社が測定した通話時間と料金表第1表第2(通話に関する料金)の規定とに基づいて算定した通話に関する料金(当社が別に定める付加機能に関する料金を含みます。以下同じとします。)の支払いを要します。この場合において、第3条(用語の定義) の表の29欄に規定するものへの通話については、電話サービスに係る部分と当社が別に定めるサービスに係る部分とを合わせて取り扱います。
公衆電話の電話機等から行った通知 その公衆電話の利用者
(他の項目及び条項は省略)

(結論)
1-①
地方自治法施行令第158条第1項の各号のいずれにも該当いたしません。
1-②
地方自治法違反ですが、徴収事務委託契約は、私法上の契約として、当然には無効ではありません。適法化する方法もあります。

2-①
地方自治法施行令第158条第1項の各号のいずれにも該当いたしません。
2-②
地方自治法違反ですが、徴収事務委託契約は、私法上の契約として、当然には無効ではありません。適法化する方法もあります。

(理由)
1-①
公衆電話は、NTT東日本又は西日本が設置する電話です。NTT
の電話サービス契約約款第5条によれば、公衆電話とは「当社が街頭その他の場所に電話機等(電話機及びそれに付随する設備をいいます。)を設置して公衆の利用に供するサービス」とされており、同第71条には、公衆電話の電話機等から行った通知は、その公衆電話の利用者が支払を要する、すなわち、支払義務を負うとされています。したがって、公衆電話の利用者は、NTTに対して料金を支払っているのです。そうしますと、指定管理者は、NTTに対して支払われたお金を預かっているに過ぎず、その預かり行為も、市に代わって預かっているものです。その預かり金を市に引き渡すのです。
したがって、市としては、歳出歳入外現金として、公衆電話料を受け取る必要があります。
これに対して、地方自治法施行令第158条第1項第1号から第3号までに記載された金銭は、いずれも公法上の債権・公金であり、地方自治法の定めに従って、公法上の契約に従って、歳入するものですから、歳出歳入外現金に当たる公衆電話料金は、右各号いずれにも当たりません。
1-②
地方自治法施行令第158条の2は、第158条第1項のいずれかに該当する公金の徴収事務を委託することができるとする規定です。しかし、前述したとおり、公衆電話料は、歳出歳入外現金ですから、徴収事務委託契約の対象ではありません。したがって、市の収入とすることは誤りですし、徴収委託事務契約で処理することはできないものです。市が締結している徴収委託事務契約はこの限りにおいて違法です。違法ではありますが、無効とまではいえません。私法上の契約を公法上の契約としていますが、重大な過失とまではいえないからです。すなわち、私法上の契約でも、歳出歳入外現金の徴収事務を委託することは可能であり、契約内容も、歳出歳入外現金を徴収することと、公金等を徴することを同一の契約条項によることが可能だからです。ただ、地方自治法で規定されている公金の徴収事務には当たらないというだけです。その意味で、徴収事務委託契約の一部を、歳出歳入外現金の徴収委託事務と読み替えれば良いだけです。
ただし、原則は、指定管理者との間で、公衆電話利用料金を施設管理者が預かり、これを市に引き渡し、市が、NTTに支払うという内容の契約を締結すべきです。

2-①
送迎バスの利用者負担金は、条例・規則に基づくものではありません。したがって、この利用者負担金を徴収する権利は公法上の債権ではなく、徴収した利用者負担金は公金にも当たりません。地方自治法施行令第158条第1項第1号から第3号までに規定された金銭は、公法上の債権・公金ですから、やはり該当いたしません。
2-②
送迎バスの利用者負担金を、分担金の性質を有する公金として徴収するためには、条例で定める必要があります(地方自治法第228条第1項)。条例で定めれば、公金となります。公金であれば、施設管理者との間で、徴収事務委託契約を締結することができます。ちなみに、条例で定める場合に、遡り規定を置けば、その期間内の利用者負担金は公金となります。
現在のように、条例・規則に定めがないままに、徴収しようとすれば、私法上の債権として徴収することになります。この場合は、契約となります。
また、徴収事務委託契約は、違法ではありますが、公衆電話料金の場合と同様に、無効というわけではなく、私法上の契約と読み替えることが可能です。しかし、私法上の契約として処理するのであれば、それに応じた契約にすべきです。