民法の改正(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)後の学校実務

 父母の離婚後の親権に関する民法の規定が改正され、令和8年4月1日から施行されていると聞きました。
(1)当市では、就学通知を住民基本台帳の世帯主宛てに送り、各学校においては、特に住民基本台帳や戸籍を確認することなく、教育委員会から保護者として通知された人を保護者として扱っています。また、学校提出書類の保護者同意欄については、どれも一名分で、父母ないし親権者双方の署名・押印は求めていません。このような運用を変更する必要があるのでしょうか。
(2)離婚後共同親権となった父母を持つ生徒がいます。学校行事の一環として行うスキー合宿への参加について、生徒本人は参加を希望していますが、同居親(親権者かつ監護権者である親)は参加同意書を提出したものの、別居親(親権者ではあるが監護権者ではない親)が反対しています。どうすればよいでしょうか。逆に、別居親は同意しているものの同居親が反対している場合は、どうすればよいでしょうか。

(結論)
(1)変更する必要はありません。ただし、親権・監護権に関する申告や父母対立を具体的に把握した場合は、その事情を踏まえた個別対応が必要です。
(2)前段について、最終的には、監護権者である親権者の同意書をもって、参加を認めて構いません。後段について、同居親の反対理由を確認した上で再度協議を促し、それでも意見が一致しない場合は、顧問弁護士等に相談して対応を検討します。

(理由)
1 令和8年4月1日施行の改正民法の規定(親権関係)について令和6年5月に民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号。以下「改正法」といいます。)が成立し、令和8年4月1日から施行されています。
   改正前の民法では、離婚後はどちらか一方を親権者としなければならない(単独親権)とされていたのが、改正法では、双方を親権者とすること(共同親権)もできるようになりました。
 そのため、現在は、協議離婚の場合は協議により、親権者を父母双方とするかその一方とするか定め、協議が整わない場合や裁判離婚の場合は、家庭裁判所が共同親権とするか単独親権とするかを定めることになっています(民法第819条第1項、第2項)。
 共同親権である場合、親権は、父母が共同して行います(民法第824条の2第1項本文)。もっとも、「他の一方が親権を行うことができないとき」及び「子の利益のため急迫の事情があるとき」には、一方が行います(同条第1項第2号、第3号)。また、「監護及び教育に関する日常の行為」については、一方が単独で親権を行使することができます(同条第2項)。
 学校教育に関して「監護及び教育に関する日常の行為」に該当するものの例としては、就学時健康診断の受診、給食費の納付、アレルギーに係る連絡、出欠連絡、宿泊活動を含む学校行事への参加同意、家庭訪問・三者面談への対応等が挙げられています。
 他方、該当しないものの例としては、入・退・転・留・休学各手続、就学校変更の申立て、特別支援学校への就学に関する意見聴取への応答等が挙げられています(「Q&A形式の解説資料(民法編)」父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議令和7年6月30日取りまとめ(令和8年1月14日改訂・以下「Q&A民法編」)23~24頁。なお、入学手続や特別支援学校への就学に関する意見聴取への応答については、「子の利益のため急迫の事情があるとき」に該当する場合があると考えられます。)。

2 ご質問について
(1)について
 親権者が誰であるかは、戸籍を確認しなければわかりませんが、これまでの実務運用では、自治体の多くは、就学に当たって、住民基本台帳上の世帯主を保護者として扱っていたものと思われます。また、学校では、住民基本台帳上の世帯主及び配偶者、又は申出のあった人を保護者として扱うほか、保護者の同意が必要な場合、一名のみの同意とし、父母ないし親権者双方の署名・押印は求めない例が多かったと考えられます。
 改正法施行後も、個々の親権や監護権の情報については、学校や教育委員会は知り得る立場になく、また、一般論として、親権行使に当たり、一方の親権者の署名・押印をもって他方の黙示的な同意を推定することは、改正法の趣旨に反しないとされていることから、これまでの運用を変更する必要はないと解されます(「Q&A形式の解説資料(行政手続・支援編)」父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議令和7年8月27日取りまとめ(令和8年1月14日改訂)12頁参照)。ただし、親権者から特に申告があった場合には、その申告に基づいて適切に対応するようにします(Q&A民法編31~32頁参照)。
(2)について
 スキー合宿などの短期間の宿泊行事への参加は、通常は「日常の行為」に該当すると考えられるため、共同親権であっても、一方の親が単独でその決定をすることができます。
 もっとも、ご質問のように親権者の意見が異なっている場合には、学校から両親権者に連絡して当事者間で協議してもらい、その結果に基づいて対応するのが、親権者相互の人格尊重・協力義務及び子の利益の観点からは望ましいでしょう。
 協議をしても親権者の意見が一致しなかった場合、生徒が参加を希望しており、同居親がこれに同意しているときは、参加させることが子の利益となることから、「日常の行為」を同居親が単独で決定したものとして、参加を認めて構いません(以上Q&A民法編25頁)。
 他方、同居親が反対し、別居親が同意している場合は、まず同居親に反対の理由を確認します。経済的な理由であれば、自治体の支援制度などを紹介し、なるべく子の希望が叶うようにします。
 反対する理由を確認した上で、再度父母間協議を促してもなお対立が解消しない場合、参加が子の意思に合致するものであり、かつ条文上は、単独で決定できる親権者は同居親に限定されてはいないものの、Q&A民法編25頁では、「子と同居する親が単独でその決定をすることができるとされていることを踏まえて対応する」とされていることから、学校側としては、慎重に対応せざるを得ないでしょう。必要に応じて、教育委員会や自治体の顧問弁護士、自治体内弁護士(スクールロイヤーを含む。)等に相談した上で決定するのがよいでしょう。
 なお、(2)については、離婚前の場合(子連れ別居中)も同様となります。

〈参考文献〉
「Q&A形式の解説資料(行政手続・支援編)」父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議令和7年8月
27日取りまとめ(令和8年1月14日改訂)
「Q&A形式の解説資料(民法編)」父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議令和7年6月30日取りまとめ(令和8年1月14日改訂)