認知症施策に関する条例
(令和6年12月9日更新)
【制定状況】
〇 認知症に関する施策を推進することを目的とする条例として、令和6年12月1日時点で確認できているものは、
愛知県大府市 | 平成29年12月26日公布 | 平成30年4月1日施行 |
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神戸市 | 平成30年3月30日公布 | 平成30年4月1日施行 平成31年4月1日改正施行 令和3年12月9日改正施行 |
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愛知県設楽町 | 平成30年9月25日公布 | 平成30年9月25日施行 令和3年4月1日改正施行 |
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愛知県 | 平成30年12月21日公布 | 平成30年12月21日施行 令和3年4月1日改正施行 |
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和歌山県御坊市 | 平成31年3月15日公布 | 平成31年4月1日施行 |
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島根県浜田市 | 令和元年9月30日公布 | 令和元年9月30日施行 |
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愛知県知多市 | 令和2年3月26日公布 | 令和2年4月1日施行 令和3年7月1日改正施行 |
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名古屋市 | 令和2年3月27日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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愛知県東浦町 | 令和2年6月26日公布 | 令和2年6月26日施行 令和3年6月25日改正施行 |
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滋賀県草津市 | 令和2年6月29日公布 | 令和2年7月1日施行 |
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東京都世田谷区 | 令和2年9月30日公布 | 令和2年10月1日施行 |
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大阪府河内長野市 | 令和3年6月22日公布 | 令和3年7月1日施行 |
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神奈川県大和市 | 令和3年9月29日公布 | 令和3年9月29日施行 |
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大分県臼杵市 | 令和3年9月30日公布 | 令和3年9月30日施行 |
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群馬県渋川市 | 令和3年10月1日公布 | 令和3年10月1日施行 |
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千葉県浦安市 | 令和4年3月23日公布 | 令和4年7月1日施行 |
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京都府京丹後市 | 令和4年3月29日公布 | 令和4年3月29日施行 |
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兵庫県明石市 | 令和4年3月30日公布 | 令和4年3月30日施行 |
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兵庫県三田市 | 令和4年9月20日公布 | 令和5年1月1日施行 |
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大阪府富田林市 | 令和4年9月30日公布 | 令和4年10月1日施行 | |
岩手県矢巾町 | 令和5年2月16日公布 | 令和5年4月1日施行 | |
静岡県藤枝市 | 令和6年3月21日公布 | 令和6年4月1日施行 | |
埼玉県戸田市 | 令和6年3月29日公布 | 令和6年4月1日施行 | |
新潟県加茂市 | 令和6年9月30日公布 | 令和6年10月1日施行 |
である。
【大府市の条例】
〇 大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例は、平成29年12月に制定されたが、認知症に関する施策を推進することを目的とした条例としては全国初のものと言える。
〇 条例制定の経緯と基本的考え方は、「平成19年12月に市内で発生した認知症の人の鉄道事故から、10年が経過しました。この事故は、認知症の人を介護する家族の監督義務の有無をめぐり最高裁判所まで争われたこともあり、多くの国民の関心を集め、様々な課題を私たちに投げかけました。高齢化の一層の進展により、認知症が原因で日常生活や社会生活上の不安を抱える人は今後も増加すると見込まれており、その対応は、今や我が国のみならず世界共通の課題となっています。・・・認知症を予防できるまち、そして認知症になっても安心して暮らすことのできるまちの実現を目指して、この条例を制定します。」(前文)としている。
〇 条例では、基本理念、市民、事業者、地域組織及び関係機関の役割、市の責務を規定する(3条~8条)とともに、正しい知識の普及に関する施策、予防に関する施策及び認知症の人及びその家族への支援に関する施策を推進する(9条~11条)こととし、こうした施策を調査、審議する機関として大府市認知症地域支援ネットワーク会議を設置する(12条)こととしている。
〇 本条例については大府市HP「大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」及び自治体法務研究2018年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」を、大府市の認知症施策等については大府市HP「認知症対策」を参照されたい。
【神戸市の条例】
〇 神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例は、理念的な規定のみならず、給付金の支給など具体的な施策に関する規定を盛り込んでいる。
〇 条例制定の経緯と基本的考え方は、「・・・平成28年9月にG7保健大臣会合が神戸市で開催された際に,認知症に関する取組が言及された神戸コミュニケが出され, 平成29年5月に世界保健機関総会にて認知症に関する行動計画であるグローバルアクションプランが採択された。神戸市は,国の認知症施策総合推進戦略(新オレンジプラン)を推進するとともに, この世界的な認知症への取組を実践する中で,市民誰一人として取り残さないとの決意の下,この条例を制定する。」(前文)としている。
〇 条例は、基本理念、市の責務、市民及び事業者の役割、予防及び早期介入、治療および介護の提供、地域の力を豊かにしていくことなどの理念的な規定を置く(3条~7条、10条、11条)とともに、市長が定める方法によって認知症と診断された者による事故に関して給付金の支給その他必要な施策を講じる(8条)とするとともに、その実施に必要な財源の充てるため個人市民税均等割の超過課税を行う(9条)としていることが、極めて特徴的である。
〇 この条例を踏まえて、神戸市は、全国初となる認知症対策の「神戸市モデル」を実施しており、そのポイントは
① 65歳以上の市民は、自己負担ゼロで医療機関における2段階方式の認知症診断を受診することができる。
② 認知症と診断された市民は、事故を起こし賠償責任を負うこととなった場合に備え、市の負担で賠償責任保険に加入し、事故時に最高2億円が支給される。
③ 神戸市民が認知症の者が起こした事故に遭った場合、市が最高3千万円の見舞金を支給する。
④ 以上の事業の財源に充てるため、個人市民税均等割を、平成31年度から令和6年度まで(令和3年12月9日改正施行)、年額400円引き上げる。
ことであるとしている(以上について、神戸市HP「認知症の人にやさしい神戸市モデル」を参照のこと)。
〇 本条例については神戸市HP「神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例」及び自治体法務研究2020年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例」を、神戸市の認知症施策等については神戸市HP「認知症の人にやさしいまち」を参照されたい。
【愛知県の条例】
〇 都道府県が制定した条例として、愛知県認知症施策推進条例がある。
〇 条例は、「全ての県民が認知症について『じぶんごと』として取り組み、もって認知症の人が尊厳を保持し、認知症の人及びその家族が安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与すること」(1条)を目的としたうえで、基本理念、県の責務、市町村、県民、関係機関及び事業者の役割、認知症施策の総合的かつ計画的な推進等、県民の理解等、医療及び介護の提供体制の充実、地域づくりの推進等、相談体制の整備等、認知症研究の促進、財政上の措置などの規定を置いている。
〇 本条例については愛知県HP「愛知県認知症施策推進条例(平成30年12月制定)」を、愛知県の認知症施等については愛知県HP「高齢福祉課地域包括ケア・認知症対策室」を参照されたい。
【御坊市の条例】
〇 御坊市認知症の人とともに築く総活躍のまち条例は、「認知症の人の視点に立ち、認知症の人とともにつくった条例」であることが、他の条例にみられない特徴であるとしている。
〇 条例制定過程で、認知症の人の意見を聞き、条文に反映させ、その結果、「施策の実施に当たっては、認知症の人の意見を聴き、計画、実施及び評価する」(4条2項)、「認知症の人は、暮らしやすいまちを築くために、自らの希望、思い及び気づいたことを、身近な人、市、関係機関等に発信する」(5条1項)、「認知症の人は、地域の一員として、自らの意思により社会参加及び社会参画する」(5条2項)などの規定を置き、条例名も「認知症の人とともに築く総活躍のまち条例」としたとしている(御坊市HP「御坊市認知症の人とともに築く総活躍のまち条例」参照)
〇 御坊市の認知症施策等については、御坊市HP「認知症・総活躍のまちづくり」を参照されたい。
【名古屋市の条例】
〇 名古屋市は、「地域の多くの人々がボランティアなど認知症の人への支援に積極的に参画してきており、認知症の人と家族にやさしいまちをつくりあげるための土壌が名古屋市にはあります。」(前文)としている。
〇 それを踏まえて、名古屋市認知症の人と家族が安心して暮らせるまちづくり条例では、認知症サポーターの養成や活躍(9条)、認知症の人同士や家族同士のピアサポート(同じ症状や悩みを持ち、同じような立場の人同士の相互支援)の取組み(12条2項)等に必要な施策を推進するとしている。また、成年後見制度の利用の促進などの権利擁護の充実に関する規定(13条)を置いている。
〇 本条例については名古屋市HP「名古屋市認知症の人と家族が安心して暮らせるまちづくり条例」を、名古屋市の認知症施策等については名古屋市HP「認知症施策」を参照されたい。
【世田谷区の条例】
〇 世田谷区認知症とともに生きる希望条例は、東日本で初めて制定された条例である。「検討委員会及びワークショップにおいて認知症のご本人に参加していただき、その思いや意見を直接聴き、またパブリックコメントを通じ区民からも様々なご意見を受け、それらを丁寧に議論し制定に至りました。」(世田谷区HP「世田谷区認知症とともに生きる希望条例(令和2年10月制定)」)としている。条例の検討経緯については、世田谷区HP「世田谷区認知症とともに生きる希望条例の検討経過」が詳しい。
〇 基本理念、区の責務、住民の参加、地域団体、関係機関及び事業者の役割、基本的施策等のほか、推進体制として、認知症計画の策定(16条)、認知症在宅生活サポートセンターを拠点とした施策の推進(17条)及び認知症施策評価委員会の設置(18条)を規定している。区民は、認知症とともに生きる人の「パートナー」であるという意識を持つよう努めるものとする(5条3項)等の規定も置いている。
〇 世田谷区の認知症施策等については、世田谷区HP「認知症支援」を参照されたい。
【その他の条例】
〇 設楽町、浜田市、知多市、東浦町、草津市、河内長野市、大和市、臼杵市、渋川市、浦安市、京丹後市、明石市、三田市、富田林市、矢巾町、藤枝市、戸田市及び加茂市の条例は、いずれも、基本理念、自治体の責務、住民、事業者及び関係機関の役割を定め、そのうえで、自治体が講ずべき施策について規定している。それに加え、知多市条例は認知症に関する事項を定めた計画(8条)を、草津市条例は行動計画(9条)を策定するものとし、河内長野市条例は認知症地域連携ネットワーク会議(12条)を設置するものとし、浦安市条例は権利擁護(16条)の規定を置くほか、認知症施策推進基本計画(19条)を策定し、認知症総合施策検討委員会(20条)を設置するものとし、藤枝市条例は認知症とともに生きる共創のまちづくり委員会(10条)を設置するものとし、加茂市条例は権利擁護(11条)の規定を置くほか、認知症施策検討委員会(12条)を設置するものとしている。なお、浜田市の条例は議員提案により制定されたものである。
〇 設楽町条例の内容等については設楽町HP「「設楽町認知症の人にやさしい地域づくり基本条例」を制定しました。」を、知多市条例の内容については知多市HP「知多市認知症施策推進条例について」を参照されたい。
〇 東浦町条例の内容については東浦町HP「東浦町認知症にやさしいまちづくり推進条例」を、東浦町の認知症施策等については東浦町HP「認知症」を参照された。
〇 草津市条例の内容については草津市HP「草津市認知症があっても安心なまちづくり条例」を、草津市の認知症施策等については草津市HP「認知症」を参照されたい。
〇 河内長野市条例の内容については河内長野市HP「河内長野市認知症と共に生きるまちづくり条例について」を、河内長野市の認知症施策等については河内長野市HP「認知症」を参照された。
〇 大和市条例の内容等については大和市HP「「大和市認知症1万人時代条例」を制定しました」を、大和市の認知症施策等については大和市HP「認知症」を参照されたい。
〇 臼杵市条例の内容については臼杵市HP「臼杵市みんなで取り組む認知症条例」を、臼杵市の認知症施策等については臼杵市HP「認知症関連」を参照されたい。
〇 渋川市の認知症施策等については、渋川市HP「認知症を正しく理解しましょう」を参照されたい。
〇 浦安市条例の内容等については浦安市HP「浦安市認知症とともに生きる基本条例」を、浦安市の認知症施策等については浦安市HP「認知症の支援」を参照されたい。
〇 京丹後市条例の内容については京丹後市HP「「京丹後市認知症とともに生きるまちづくり条例」を制定しました」を、京丹後市の認知症施策等については京丹後市HP「認知症」を参照されたい。
〇 明石市条例の内容については明石市HP「明石市認知症あんしんまちづくり条例」を、明石市の認知症施策等については明石市HP「認知症の方への支援」を参照されたい。
〇 三田市条例の内容については三田市HP「三田市認知症の人と共に生き支え合うまちづくり条例を制定しました」を、三田市の認知症施策等については三田市HP「認知症」を参照されたい。
〇 富田林市条例の内容については富田林市HP「富田林市認知症と伴にあゆむ笑顔のまち条例」を、富田林市の認知症施策等については富田林市HP「認知症支援の取り組み」を参照されたい。
〇 矢巾町条例の内容については、矢巾町HP「「矢巾町認知症とともに生きるまちづくり条例」を制定・施行について」を参照されたい。
〇 藤枝市条例の内容については藤枝市HP「藤枝市認知症とともに生きる共創のまちづくり条例」を、藤枝市の認知症施策等については藤枝市HP「認知症」を参照されたい。
〇 戸田市条例の内容については、戸田市HP「戸田市認知症とともに生きるあたたかいまちづくり条例」を参照されたい。
〇 加茂市条例の内容については、加茂市HP「「認知症とともに生きる笑顔あふれるまち加茂基本条例」が制定されました」を参照されたい。
【国の動き等】
〇 国では、令和元年6月18日、認知症施策推進関係閣僚会議において、「認知症施策推進大綱」をとりまとめた。
〇 令和5年6月、議員立法により「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」が制定された(令和5年6月16日公布・令和6年1月1日施行)。
「認知症」を「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態」(2条 介護保険法5条の2第1項と同定義)と定義したうえで、「我が国における急速な高齢化の進展に伴い認知症である者(以下「認知症の人」という。)が増加している現状等に鑑み、認知症の人が尊厳を保持しつつ希望を持って暮らすことができるよう、認知症に関する施策(以下「認知症施策」という。)に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにし、及び認知症施策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、認知症施策の基本となる事項を定めること等により、認知症施策を総合的かつ計画的に推進し、もって認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(以下「共生社会」という。)の実現を推進すること」(1条)を目的としている。
政府に「認知症施策推進基本計画」の策定を義務づけ(11条)、都道府県と市町村に「認知症施策推進計画」の策定の努力義務を課す(12条、13条)とともに、基本的施策として、認知症の人に関する国民の理解の増進、認知症の人の生活におけるバリアフリー化の推進、認知症の人の社会参加の機会の確保、認知症の人の意思決定の支援及び権利利益の保護、保健医療サービス及び福祉サービスの提供体制の整備、相談体制の整備、研究等の推進、認知症の予防等(14条~25条)を規定している。
同法の施行に先立ち、令和5年9月26日に総理官邸に「認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議」が設置され、同会議は令和5年12月25日に意見(「認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議 とりまとめ」)を取りまとめた。
同法11条に基づく「認知症施策推進基本計画」が令和6年12月3日に閣議決定された。
〇 国の認知症施策については、厚生労働省HP「認知症施策」を参照されたい。
〇 日本医療政策機構認知症政策プロジェクトチームと認知症未来共創ハブが共催して開催した認知症条例比較研究会の中間報告書・政策提言書「住民主体の認知症政策を実現する認知症条例へ向けて」(令和3年3月22日)は、大府市条例から世田谷区条例までの11条例を比較分析し、今後の認知症に関する条例に対する政策提言を取りまとめている。