猫に関する条例と動物への餌やり禁止に関する条例

(令和5年12月28日更新)

【猫に関する条例その1-人と猫の共生】

〇 「人と猫との共生」を条例名にする条例が制定されている。

神戸市 神戸市人と猫との共生に関する条例 平成28年12月20日公布

平成29年4月1日施行

仙台市 仙台市人と猫との共生に関する条例 令和元年6月24日公布

令和2年4月1日施行

である。いずれも、議員提案によるものである。

〇 神戸市条例は、「飼育放棄された飼い猫やその子孫が野良猫となって増え,ふんや尿による悪臭の問題を引き起こしているほか,野良猫への無責任な給餌が住民間のトラブルの原因」であることなどを踏まえて、「野良猫に起因する地域の生活環境の悪化を防ぎ,猫の殺処分をなくしていくため,市や飼い主の責務を定めるとともに,市,市民,獣医師が組織する団体,地域猫活動に取り組む団体等が一体となって取組を行うこと」(前文)を目指している。特に、市の責務として「地域猫活動及び野良猫の繁殖制限に関する事業への支援」や「猫の譲渡の推進に関する事業」の実施(3条2号)などを掲げ、そのうえで、猫の譲渡活動や地域猫活動などを実施する団体(共生推進活動団体等)の役割を規定する(6条)とともに、こうした団体や獣医師が組織する団体等が市の協力のもとに一体となって取組を行うための協議会(神戸市人と猫との共生推進協議会)を設置する(9条)ことを明記している

 地域猫活動などの推進とそのための協議会の設置などに重点を置いているが、条例の内容や市の取組等については、神戸市HP「神戸市人と猫との共生に関する条例」を参照されたい。

〇 仙台市条例は、「屋内で飼養されていない猫や飼養放棄された猫が繁殖するなど、不適切な猫の飼い方が飼い主のいない猫を発生させ、地域の生活環境に悪影響を及ぼしている。また、飼い主のいない猫に対する無責任な給餌は、住民間のトラブルを招く原因ともなっている」ことを踏まえ、「市民の理解と協力の下、市、飼い主、販売業者、獣医師等が一体となって取り組むこと」(前文)を目指している。そのうえで、市の責務、飼い主の責務及び販売業者の責務を具体的に示す(3条~5条)とともに、市民等の役割及び獣医師等の役割(6条、7条)を掲げ、これらの者が相互に協力するよう努める(8条)旨規定している。飼い主の責務などをかなり具体的に規定している。

 

【猫に関する条例その2-和歌山県の条例】

〇 各都道府県はそれぞれ動物愛護管理条例を制定しているが、その中では、

和歌山県

和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例

平成29年4月1日改正施行

は、猫の飼い主の責任、野良猫への対策、地域猫活動の推進及び罰則に関して、踏み込んだ規定を置いている。

 これらの猫に関する規定は、平成29年4月1日施行された改正条例により盛り込まれたが、その条例改正の背景は、「和歌山県では、猫に起因する苦情は横ばい状況にあり、飼い猫の不適正な飼養に加え、野良猫への無秩序な餌やり等により地域の生活環境に支障が生じる問題も起こっています。また、本県の猫の殺処分数は依然として多い状況にあります(平成26年度:2568匹)。こうした状況を改善するため、県民への適正飼養とマナーの向上をお願いしていますが、現行の法令では、不適正な飼養を行っている飼い主や無秩序な野良猫への餌やりに具体的ルールや実効性のある規定がなく、十分機能していません。これらを解決するため、実効性あるルールを条例に設けることが必要であると考え、地域の生活環境の保全と、猫の殺処分数の削減を図ることを目的に『和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例』を改正しました。」( 和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例一部改正に関するリーフレット)としている。 

〇 ポイントは、

① 飼い猫の所有者等の遵守事項(10条)

 ・所有明示措置の義務(所有者の氏名連絡先を記した首輪・名札又はマイクロチップを装着すること)

 ・ふんの適正処理の義務(公共の場所や他人の土地にしたふんを取り除くこと)

 ・屋内飼養の努力義務

② 自己の所有する猫以外の猫に対して、継続的又は反復して給餌等を行う者の遵守事項(14条)

 ・給餌等を行う場所の周辺住民への説明に努めること

 ・生殖することができない猫(幼齢の猫や不妊妊去勢手術をし施術済であることを示す措置をした猫)のみに給餌等を行うこと

 ・給餌等は時間を決めて行い、その場を汚したり、餌を放置したりしないこと

 ・排せつ場(トイレ)を設置し、トイレのふん尿を適正に処理すること

③ ①①又は②の遵守事項に違反した者に対して、知事は勧告し、勧告に係る措置を取らない者に対して、知事は、特に必要がある場合には命令し、その命令に違反した者は、5万円以下の過料に処する(23条1項及び4項、26条4項)。

④ 地域猫対策の実施計画の認定制度(15条)

 ・地域猫対策を行う者は、知事からその計画の認定を受けることができる。

 ・なお、地域猫対策の計画の認定を受けた者には、不妊去勢手術などの支援がなされる(非条例事項)

である。

 県は「人と猫が共生する社会を目指し、地域住民の生活環境の保全と、動物愛護の双方を両立していくためのバランスを考慮した条例」(上記リーフレット)であるとしている。条例の内容や取組みについては、和歌山県資料「~不幸な猫をなくすために~和歌山県動物の愛護及び管理に関する条例に基づく取組」及び和歌山県HP「和歌山県動物愛護・管理情報」を参照されたい。

 

【猫に関する条例その3-希少野生生物保護のための条例】

〇 離島や沖縄北部の市町村においては、飼い猫や野良猫などから当該地域に生息する希少野生生物の被害を防止することを主たる目的として、猫に関する条例が制定されている。以下のような条例である。

沖縄県竹富町 猫飼養条例 平成13年制定 令和 2年改正

西表島に生息するイリオモテヤマネコ等

沖縄県国頭村、

大宜味村、東村

ネコの愛護及び

管理に関する条例

平成16年制定

ヤンバルクイナ(沖縄北部やんばる)

3村の条例は、ほぼ同様の内容

長崎県対馬市 ネコ適正飼養条例 平成22年制定

 

ツシマヤマネコ

鹿児島県奄美市、

瀬戸内町、龍郷町、

宇検村、大和村

飼い猫の適正な飼養

及び管理に関する条例

平成23年制定 平成29年改正 アマミノクロウサギその他の野生生物(奄美大島)

1市4町の条例は、ほぼ同様の内容

北海道羽幌町 天売島ネコ飼養条例 平成24年制定

天売島の海鳥

鹿児島県徳之島町、

伊仙町、天城町

飼い猫の適正な飼養

及び管理に関する条例

平成25年制定 平成29年改正

令和4年改正

アマミノクロウサギその他の野生生物(徳之島)

3町の条例は、ほぼ同様の内容

新潟県粟島浦村 粟島浦村飼い猫適正

飼養条例

平成28年制定

オオミズナギドリ

沖縄県南大東村 南大東村飼い猫の適正な

飼養及び管理に関する条例

平成30年制定

ダイトウオオコウモリ

〇 こうした地域内に生息する希少野生生物の保護を目的とする条例は、他の地域に比べて、猫の飼い主などに対して厳しい義務を課している。

 例えば、すべての条例は、猫の登録とマイクロチップの埋込みを義務づけている。また、罰則規定は、竹富町、奄美大島1市4町、羽幌町、徳之島3町及び南大東村の条例が置いている。

〇 このうち、竹富町は、平成13年に「竹富町ネコ飼養条例」を制定し、飼い猫の登録の義務化等を定め、平成20年に全部改正をして条例名を「竹富町ねこ飼養条例」とし、イリオモテヤマネコの保全を目的として西表島の特例措置を設け、マイクロチップの義務化、特定感染症に係る検査の義務化、島外からの持込み制限等を定めた。さらに、令和2年に全部改正をして条例名を「竹富町猫飼養条例」とし、西表島以外の島についても「猫の適正飼養」を推進することとしている(令和2年12月11日公布、令和3年4月1日施行(西表島)・令和4年4月1日施行(その他の島))。

 すなわち、竹富町全域を対象にして、飼い主の遵守事項、猫の登録・マイクロチップ埋込みの義務づけ、室内飼養・繁殖制限・継続飼養・屋外逃走防止・汚物適正処理の義務づけ、屋外にいる猫への給餌の禁止(屋外にいる猫に対し、みだりにえさ、水その他の物品を与えてはならない)等を規定し、また、西表島の特例措置として、特定感染症に係る検査の義務づけ、予防接種の義務づけ、島外からの持込みの制限、観光客等による持込みの禁止、多頭飼養の禁止(5匹を超えて飼養する場合は、町長の許可が必要)等を規定している。また、違反行為に対して、町長は、指導、勧告、命令をすることができるとしたうえで、命令違反行為等に対して、5万円以下の過料又は2万円以下の過料を科すとしている。なお、令和2年全部改正の考え方については、竹富町資料「竹富町ねこ飼養条例改正に向けて」を参照されたい。

〇 また、奄美大島1市4町の条例は、飼い主の責務、登録(マイクロチップの装着・登録の義務を含む)、適正飼養・管理、餌やりの禁止(飼い猫以外に猫に、みだりにえさ又は水を与えてはならない)、多頭飼養の制限(飼い主が5匹以上飼養する場合は、市長(町長)の許可が必要)などの規定を置き、違反行為に対して、町長は、指導、勧告、命令をすることができるとし、さらに、命令違反行為等に対して、5万円以下の過料又は2万円以下の過料を科すとしている。なお、奄美市条例の内容や運用等については、奄美市HP「飼い猫の登録」を参照のこと。

 徳之島3町の条例も、奄美大島1市4町の条例とほぼ同様の内容の条例を定めていた(マイクロチップの装着・登録については努力義務)が、令和4年に改正(令和4年7月1日に改正施行)し、マイクロチップの装着・登録の義務化、屋内飼養の義務化、屋内にいる飼い猫以外への餌やりの禁止、飼い主の属する世帯における多頭飼養(5匹以上)の制限、継続飼養が困難になった飼い猫の譲渡の義務化等を規定している。なお、条例改正の考え方については、3町資料「猫の飼い方が変わります!~徳之島3町飼い猫の適正な飼養及び管理に関する条例改正に向けて~」を参照のこと。

 なお、奄美大島及び徳之島の条例(平成29年改正まで)については、諸坂佐利「いわゆる『ネコ問題』対する法解釈学的及び法政策学的挑戦―奄美大島・徳之島の『飼い猫適正飼養条例』の改正に触れながらー」(法律論叢第91巻第4・5合併号(2019.1))が詳しい。

〇 羽幌町条例は、飼い主の遵守事項、汚物の適正処理、飼い猫以外の給餌の禁止(自ら飼養していないネコに対し、みだりにえさ又は水を与えてはならない)、登録、繁殖制限、遺棄の禁止などの規定を置き、違反行為に対して、町長は、指導、勧告、命令をすることができるとし、さらに、命令違反行為等に対して、2万円以下の過料を科すとしている。

〇 粟島浦村条例は、飼い主の遵守事項、登録、繁殖制限、汚物の適正処理、遺棄の禁止、飼い猫以外への給餌等の禁止(自ら飼養又は保管していない猫に対し、みだりにえさ又は水を与えてはならない。)などの規定を置き、違反行為に対して、町長は、指導、勧告をすることができるとしている。罰則規定は置いていない。

〇 南大東村条例は、飼い主の義務、登録、適正飼養・管理、放し飼いの制限、餌やりの禁止(飼い猫以外に猫に、みだりに餌や水などを与えてはならない)、多頭飼養の制限(5匹以上飼養する場合は、村長の許可が必要)などの規定を置き、違反行為に対して、村長は、指導、勧告、命令をすることができるとし、さらに、命令違反行為等に対して、5万円以下の過料又は2万円以下の過料を科すとしている。

〇 東京都小笠原村は、平成10年12月に「飼いネコ適正飼養条例」を制定したが、「小笠原村愛玩動物の適正な飼養及び管理に関する条例」を令和2年3月に制定し、令和3年4月1日から施行したことに伴い、廃止している。

 

【猫に関する条例その4-その他】

〇 以上の条例のほか、猫のみを対象とする条例としては、

佐賀県鳥栖市 ねこの愛護及び管理に関する条例 平成25年3月29日公布

平成25年4月1日施行

徳島県那賀町 ネコの愛護及び管理に関する条例 平成29年3月17日公布

平成29年4月1日施行

徳島県海陽町 ネコの愛護及び管理に関する条例 平成29年12月15日公布

平成29年12月15日施行

鹿児島県伊佐市 伊佐市猫の愛護及び管理に関する条例 令和4年3月22日公布

令和4年6月1日施行

福岡県遠賀町 遠賀町猫の愛護及び管理に関する条例 令和5年3月20日公布

令和5年10月1日施行

埼玉県上里町 上里町ネコの愛護及び管理に関する条例 令和5年3月23日公布

令和5年4月1日施行

がある。いずれも、飼い主の遵守事項、飼いネコ以外へのえさやり等の禁止、遺棄の禁止などを規定しているが、罰則規定は置いていない。

〇 なお、全国の猫に関する条例については、環境省作成の動物愛護管理行政事務提要(令和4年度版)「猫の保護(愛護)及び管理に関する条例、規則、要綱等の概要」を参照されたい。

 

【餌やりの禁止その1―猫を含む動物】

〇 猫を含む動物に対する給餌に関し、罰則規定を設けている条例がある。

〇 早い時期に制定されたものとして、

東京都荒川区 荒川区良好な生活環境の確保に関する条例 平成20年12月17日公布

平成21年4月1日施行

愛媛県上島町 上島町良好な生活環境の確保に関する条例 平成22年9月27日公布

平成22年10月1日施行

がある。

 荒川区条例は、「区民等は、自ら所有せず、かつ、占有しない動物にえさを与えることにより、給餌による不良状態を生じさせてはならない。」(5条)とし、

「給餌による不良状態」については、 

「次のいずれかに該当するものにより周辺住民の生活環境に係る被害が生じていると認められる状態であって、かつ、複数の周辺住民からの区長に対する苦情の申出等により、周辺住民の間で当該被害の発生が共通の認識となっていると認められる状態をいう。

ア 給餌によるえさを目当てに集散する動物の鳴き声その他の音

イ 給餌によるえさの残さ又は給餌によるえさを目当てに集散する動物のふん尿その他の汚物の放置又は不適切な処理及びこれらにより発生する臭気

ウ 給餌によるえさを目当てに集散する動物の毛又は羽毛

エ 給餌によるえさを目当てに集散する動物の威嚇行為」

としている。給餌そのものを禁止しているのではなく、給餌により不良状態を生じさせることを禁止していることとなる。

 そのうえで、区長は、第5条の規定に違反して給餌による不良状態を生じさせた者に対して、勧告をし、勧告に従わない場合は、命令する(8条)ことができるとし、命令に従わない場合は、審査会の意見を聴いて、公表することができる(11条)としている。また、命令に違反した者に、5万円以下の罰金に処する(14条)としている。

 上島町条例も、ほぼ荒川区条例と同様の規定を置いている(なお、荒川区条例は代執行や違反者の公表に関する規定を置いているが、上島町条例はこうした規定は置いていない)。

〇 また、

京都市 京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例 平成27年3月27日公布

平成27年7月1日施行

(罰則規定は、平成27年10月1日施行)

は、所有者等のない動物に対して不適切な給餌を禁止する規定を置いている。すなわち、

 「市民等は,所有者等のない動物に対して給餌を行うときは,適切な方法により行うこととし,周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない。」(9条1項)とするとともに、「市長は,前項(9条1項)の動物に対する給餌について,必要があると認めるときは,適切な給餌の方法に関し市民等が遵守すべきを定めることができる。」(9条2項)としている。そのうえで、市長は、9条1項の規定に違反し,又は同条第2項に規定する基準に従わずに行われている給餌に起因して周辺の住民の生活環境に支障が生じていると認めるときは、勧告をし、勧告に従わない場合は、命令することができる(10条)とし、また、命令に違反した者に、5万円以下の過料に処する(14条)としている。

 なお、9条1項の規定では「所有者等のない動物」が対象となっているが、9条2項に基づき定められた基準は「条例2号4号に規定する野良猫に対し、継続的又は反復して給餌を行うものに適用する」としており、また、市の責務の一つとして「野良猫に対する適切な給餌(給水を含む。以下同じ。)に係る活動を支援すること」(4条3号)を規定している。本条例の不適切な給餌の禁止に関する規定は、野良猫に対して継続的又は反復して給餌する者を想定したものと言え、また、条例は、野良猫に対する不適切な給餌を規制するだけでなく、市に対して地域猫活動等に対して支援を行うことを求めているものと考えられる。

 条例の内容や条例制定時の議論等については京都市HP「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例(野良猫への適切な給餌の基準等,条例に関する情報のまとめページ)」を、条例制定後の市の取組みについては「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例の施行に係る取組について」を参照のこと。また、自治体法務研究2016年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「京都市動物との共生に向けたマナー等に関する条例」を参照のこと。

 京都市の取組みを含む野良猫問題に対する行政の対応については、箕輪さくら「野良猫問題に対する行政の関与」(自治総研503号 令和2年9月号)を参照されたい。

〇 大阪市は、

大阪市

大阪市廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例

令和元年12月14日改正施行

の一部を改正して、はと、からすその他の動物に餌を与えた者に、清掃等を義務づけることとした。「はと」と「からす」を例示としているが、広く動物に対する餌やりを対象にしている。他方で、動物への餌やりを禁止するものではなく、公共の場所等の清潔を保持するため、餌やり後の清掃等を義務づけるものである。

 すなわち、「公共の場所又はその周辺において、はと、からすその他の動物に餌を与えた者は、当該与えた行為により同項に規定する公共の場所に、餌又は動物のふん尿その他の汚物、毛若しくは羽毛が散乱し、又はふん尿その他の汚物による臭気が発散しないよう、清掃を行う等の必要な措置を講じなければならない。」(26条4項)としている。そのうえで、市長は、これに違反し、生活環境を著しく阻害していると認められる者に対して、命令を出すことができ(29条)、命令に違反した者は、5万円以下の過料に処する(43条1項2号)としている。

〇 また、

岡山県浅口市 浅口市動物と共生できる社会の実現の推進に関する条例 令和3年3月15日公布

令和3年4月1日施行

愛知県大府市 大府市人と犬及び猫との共生に関する条例 令和3年12月22日公布

令和4年6月1日施行

宮崎県宮崎市 宮崎市動物との共生に関する条例 令和3年12月23日公布

令和4年6月1日施行

は、飼い主のいない動物や猫への餌やりに関して規定を置き、市町村長の命令に違反した者に罰則を科している。

 浅口町条例は、飼い主のいない動物への餌やりに関して規定を置き、「市民等は、飼い主のいない動物に餌やりをすることにより、公共の場所又はその周辺において、餌若しくは動物のふん尿その他の汚物、毛若しくは羽毛が散乱し、又はふん尿その他の汚物による臭気が発散しないよう、清掃を行う等の必要な措置を講じなければならない。」(10条2項)としている。そのうえで、市長は、餌やりに起因して周辺の住民の生活環境に支障が生じていると認めるときは、勧告をし、勧告に従わない場合は、命令することができる(11条)とし、また、命令に違反した者に、5万円以下の過料に処する(13条)としている。

 大府市条例は、条例自体は犬と猫を対象にしているが、給餌に関しては猫のみに対して規定を置き、「市民等は、所有者等のいない猫に対して給餌を行うときは、適正な方法により行うこととし、周辺の住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌を行ってはならない。」(9条1項)としている。そのうえで、市長は、9条1項の規定に違反して周辺の住民の生活環境に支障が生じていると認めるときは、勧告をし、勧告に従わない場合は、命令することができる(10条、11条)とし、また、命令に違反した者に、5万円以下の過料に処する(14条)としている。

 宮崎市条例は、条例自体は哀願目的又は伴侶として自宅等で飼養する動物を対象にしているが、給餌に関しては猫のみに対して規定を置き、「飼い主のいない猫に対し、継続的に又は反復して給餌を行う者は、当該猫の繁殖を防止するために必要な措置を講じた上で、適切な給餌及びふん尿の処理を行わなければならない。」(11条)としている。そのうえで、市長は、11条の規定に違反して者に対して、勧告をし、勧告に従わない場合は、命令することができる(13条)とし、また、命令に違反した者に、5万円以下の過料に処する(16条1号)としている。

〇 なお、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)は、令和元年6月19日の一部改正に伴い、動物の給餌に伴う生活環境の保全措置が規定され、令和2年6月1日に施行された。

 動物の給餌等により、騒音又は悪臭の発生、動物の毛の飛散、多数の昆虫の発生等によって周辺の生活環境が損なわれているときは、都道府県知事は、その事態を生じさせている者に対し、指導・助言、勧告、命令をすることができる(25条1項~3項)とし、命令に違反した者は、50万円以下の罰金に処する(46条の2)としている。

 動物愛護法の改正内容については、環境省HP「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年6月19日法律第39号)」を参照されたい。

 

【餌やりの禁止その2―カラス・ハト】

〇 カラスに対する給餌を禁止する条例としては、

大阪府箕面市 箕面市カラスによる被害の防止及び生活環境を守る条例 平成22年12月24日公布

平成23年7月1日施行

奈良県奈良市 奈良市カラスによる被害の防止及び良好な生活環境を守る条例 平成25年6月18日公布

平成25年10月1日施行

富山県富山市 富山市カラス被害防止条例 平成31年3月26日公布

令和元年7月1日施行

 箕面市条例は、「市民等は、給餌によりカラス被害を生じさせてはならない。」(5条)とし、「給餌」については「自ら所有せず、かつ、占有しないカラスに餌を与えること(餌を目当てにカラスが集散することを認識しながら、カラスが食べることができる場所に餌を置き、又は放置する行為を含む)を継続し、又は反復して行う行為をいう。」と、「カラス被害」については「給餌を目当てに集散するカラスによる次のいずれかに該当するものにより周辺住民の身体若しくは財産又は生活環境に著しい被害が生じていると認められる状態であって、かつ、複数の周辺住民からの市長に対する苦情の申出等により周辺住民の間で当該被害が共通の認識になっていると認められる状態をいう。 イ 鳴き声その他の音 ロ ふん尿その他汚物及びその放置により発生する臭気 ハ 羽毛の飛散」として定義づけている(2条3号、4号)。

 また、「給餌によりカラス被害を生じさせているときは、当該給餌をした者は、速やかにこれを回収しなければならない。」(6条1項)と、回収義務の規定を置いている。

 そのうえで、市長は、5条又は6条1項の規定に違反した者に対して、勧告をし(8条)、勧告に従わない場合は、命令することができる(9条)とし、命令に従わない場合は、公表することができる(10条)としている。また、命令に違反した者に、10万円以下の罰金に処する(12条)としている。

 奈良市条例及び富山市条例も、ほぼ同様の規定を置いているが、命令に違反した者に対する罰金は、5万円以下としている。

 なお、箕面市のカラス被害防止対策については、箕面市HP「カラス対策」を参照されたい。

〇 カラス被害の防止を目的とする条例ではあるが、給餌の禁止ではなく、ごみの適正な排出とごみ集積場所の管理に重点を置く条例がある。

千葉県市川市

市川市民が安全で安心して快適に生活することができる環境の

向上のためのカラス被害の防止等に関する条例

平成30年7月12日公布

平成31年1月1日施行

である。

 本条例は、「集合住宅の所有者等は、カラス被害を発生させないよう、又は発生したカラス被害を低減し、若しくはなくすことができるよう、ごみの集積場所の設置及び管理をしなければならない。」(8条1項)、「ごみの集積場所を利用する集合住宅以外の住宅、事業所等の所有者若しくは管理者又は占有者は、その利用に当たって、カラス被害を発生させないよう、ごみの適正な排出に努めるものとする。」(9条1項)などとしている。助言及び支援、改善指導及び改善勧告、改善命令、公表等について規定しているが、罰則規定は置いていない。

 本条例の内容及び運用等については、市川市HP「カラス被害防止条例が施行されました」を参照されたい。また、自治体法務研究2020年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「市川市民が安全で安心して快適に生活することができる環境の向上のためのカラス被害の防止等に関する条例」を参照のこと。

〇 東京都世田谷区は、

東京都世田谷区

世田谷区環境美化等に関する条例

平成30年3月6日改正施行

の一部を改正して、カラス、ハト等に対する給餌による迷惑行為を行うことのないよう努めなければならないとの規定を置いた。

 すなわち、「給餌」を「自ら所有せず、かつ、占有しないカラス、ハト等の鳥(以下「野鳥」という。)に継続して餌を与える行為をいう。」(2条9号)とし、「給餌による迷惑行為」を「給餌をすることにより、その餌を目当てとする野鳥を集散させ、当該野鳥による次のいずれかに該当するものにより周辺住民の身体若しくは財産又は生活環境に著しい被害(複数の周辺住民からの苦情の申出等により、周辺住民の間で当該被害の発生が共通の認識となっているものをいう。)を生じさせる行為をいう。 ア 鳴き声その他の音 イ ふん尿その他の汚物の放置及びこれらにより発生する臭気 ウ 羽毛の飛散 エ 攻撃、威嚇及び破壊行為」(2条10号)としたうえで、区民の責務として「区民等は、周辺住民の良好な生活環境を確保するため、給餌による迷惑行為を行うことのないよう努めなければならない。」(4条3項)としている。罰則はない。

〇 東京都大田区は、

東京都大田区

大田区ハト・カラスへの給餌による被害防止条例

令和4年3月11日公布

令和4年4月1日施行

を制定し、ハト、カラスへの給餌を禁止した。

 すなわち、「給餌」を「ハト・カラスに餌を与えること(ハト・カラスが集散することを認識しながら、ハト・ カラスが食べることができる場所に他の動物へ与えた餌を放置する行為を含む。)」(2条2号)、「ハト・カラスへの給餌による被害」を「給餌による餌を目当てに集散するハト・カラスの鳴き声その他の音」、「給餌による餌の残さ、給餌による餌を目当てに集散するハト・カラスのふん尿その他の汚物の放置又は不適切な処理及びこれらにより発生する臭気」、「給餌による餌を目当てに集散するハト・カラスの羽毛」、「給餌による餌を目当てに集散するハト・カラスの威嚇行為」又は「給餌による餌又は給餌による餌の残さが原因となって発生するねずみ又は害虫等」の「いずれかに該当するものにより、区民等又は被害箇所の管理者による苦情や相談があり、被害が確認できる状態」と定義づけたうえで、区民等の責務として「区民等は、良好な生活環境を確保するため、ハト・カラスへの給餌による被害を生じさせることがないよう努めなければならない。」(4条1項)とするとともに、区民等の禁止事項として「公共の場所において、ハト・カラスへの給餌を行うこと」(5条1号)及び「ハト・カラスへの給餌による被害を公共の場所に生じさせること」(5条2号)を区民等に禁止した。

 区長は、5条2号の規定に違反した者に対し、当該行為の是正又は中止を指導することができる(8条)とし、指導に従わず、ハト・カラスへの給餌による被害を公共の場所に生じさせた者には5万円以下の過料を科す(10条)としている。

 本条例の内容等については、大田区HP「大田区ハト・カラスへの給餌による被害防止条例」を参照されたい。

〇 静岡県藤枝市は、藤枝市まちをきれいにする条例を、令和6年4月1日改正施行し、カラス、ハト等の野鳥への給餌を禁止した。

静岡県藤枝市

藤枝市まちをきれいにする条例(改正前)

藤枝市まちをきれいにする条例の一部を改正する条例

令和5年12月14日改正公布

令和6年4月1日改正施行

 すなわち、「迷惑行為となる給餌」を「給餌(カラス、ハト等の鳥(以下「野鳥」という。)に対するものに限る。)により、その餌を目当てに集合した野鳥に起因する次に掲げる事象により、周辺住民の生活環境を悪化させるものをいう。ア 鳴き声その他の音の発生、イ ふん尿その他の汚物及びその臭気の発生、ウ 羽毛の飛散、エ 人への攻撃若しくは威嚇又は物の破損」(改正後2条10号)と定義づけたうえで、「市民等、事業者及び所有者等は、迷惑行為となる給餌を行ってはならない。」(改正後14条)としている。

 市長は、違反行為に対して指導、勧告、措置命令を行うことができる(改正後17条、18条)とし、措置命令に従わない者には3万円以下の過料を科す(改正後22条)としている。

 

【餌やりの禁止・その3―猿】

〇 猿に対する餌付けを禁止する条例としては、

群馬県みなかみ町 みなかみ町猿の餌付け禁止条例 平成17年10月1日公布

平成17年10月1日施行

栃木県日光市 日光市サル餌付け禁止条例 平成18年3月20日公布

平成18年3月20日施行

福島県福島市 福島市サル餌付け禁止条例 平成18年3月20日公布

平成18年7月1日施行

鹿児島県屋久島町 屋久島町猿のえ付け等禁止条例 平成19年10月1日公布

平成19年10月1日施行

大阪府箕面市 箕面市サル餌やり禁止条例 平成21年9月30日公布

平成22年4月1日施行

がある。

 このうち、みなかみ町の条例は、餌付け違反行為に対して1万円の過料を科し、屋久島町の条例は、餌付け禁止行為及び命令違反行為に対して5万円以下の過料を科し、箕面市の条例は、餌付け禁止行為及び命令違反行為に対して1万円以下の過料を科している。日光市及び福島市の条例は、罰則規定は置いていない。

 

【餌やりの禁止・その4―イノシシ】

〇 いのししに対する餌付けを禁止する条例としては、

神戸市 神戸市いのししからの危害の防止に関する条例 平成26年10月31日公布

平成26年12月1日施行

兵庫県西宮市 西宮市いのしし餌やり禁止条例 平成24年12月28日公布

平成25年4月1日施行

がある。

〇 神戸市条例は、平成14年に制定された「神戸市いのししの出没及びいのししからの危害の防止に関する条例」が改正されたものである。

 規制区域を指定し(5条)し、規制区域内において餌付け行為を禁止し(6条)、市長は、禁止行為をした者に対して勧告し、勧告に従わない場合は、命令することができる(8条)とし、命令に従わない場合は、公表することができる(9条)としている。罰則規定は置いていない。

 なお、条例の内容や取組み等については、神戸市HP「イノシシ被害対策」を参照されたい。また、自治体法務研究2015年夏号条例制定の事例「神戸市いのししからの危害の防止に関する条例」を参照のこと。

〇 西宮市条例は、禁止区域を指定し(5条)し、禁止区域内においていのししに対する餌やりを禁止する(6条)とともに、市長は違反行為をした者に対して中止するよう勧告する(7条)としている。罰則規定は置いていない。

 なお、条例の内容等については、西宮市HP「いのししに対する餌やりは禁止です] を参照されたい。

 

【餌やりの禁止・その5―野生動物】

〇 農林水産業等の被害の防止の観点から、特定の鳥獣に対する餌付けを禁止する条例としては、

滋賀県 ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例 平成18年3月30日公布

平成18年9月1日施行

がある。

 知事は、野生鳥獣種による農林水産業や生活環境の被害の防止のため長期的な観点から特に必要があると認めるときは、当該野生鳥獣種を指定野生鳥獣種として指定する(39条1項)としたうえで、「何人も、指定野生鳥獣種の個体(人が飼養または保管をするものを除く。)に飲食物を与えてはならない。」(41条)としている。罰則規定は置いていない。

 指定野生鳥獣種として、ニホンザル、ツキノワグマ、イノシシ、ニホンジカ及びカワウが指定されている(滋賀県告示第1129号「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例第39条第1項の規定による指定野生鳥獣種の指定」)。

〇 生物多様性の保全の観点から、特定の鳥獣に対する餌付けを禁止する条例としては、

北海道 北海道生物の多様性の保全等に関する条例 平成25年3月29日公布

平成25年7月1日施行

がある。

 知事は、道内又は道内の特定の地域における生物の多様性に著しい影響を及ぼし又は及ぼすおそれがあると認める餌付け行為を、指定餌付け行為として指定する(26条1項)としたうえで、指定の対象となる区域においては、指定餌付け行為を行ってはならない(27条)とし、違反した者に対して、知事は勧告、公表を行うことができる(29条、30条)としている。罰則規定は置いていない。

 ヒグマに餌を与える行為が指定餌付け行為として指定され、北海道全域が対象区域とされている(北海道HP「ヒグマに餌を与えないでください」)。

〇 令和3年5月6日に自然公園法が改正され(自然公園法の一部を改正する法律(令和3年5月6日公布、施行日は令和4年4月1日))、新たに国立公園や国定公園の一部地域でクマやサルなど野生動物への餌付けが禁止されることとなった。

 すなわち、37条1項に新たに3号が追加され、国立公園又は国定公園の特別地域、海域公園地区又は集団施設地区内においては、何人も「野生動物(鳥類又は哺乳類に属するものに限る。以下この号において同じ。)に餌を与えることその他の野生動物の生態に影響を及ぼす行為で政令で定めるものであつて、当該国立公園又は国定公園の利用に支障を及ぼすおそれのあるものを行うこと」をしてはならないとし、そのうえで、国又は都道府県の職員は、違反行為をした者に対して、行為をやめるべきことを指示することができ(改正後37条2項)、指示に従わないで違反行為をした者は30万円以下の罰金に処する(改正後86条9号)としている。

 改正法の内容等については、環境省HP「自然公園法の一部を改正する法律案の閣議決定について」(法案は原案通り可決されている)を参照されたい。

 なお、自然公園法の改正を踏まえ、都道府県立自然公園の特別地域や集団施設地区内においても野生動物への餌付けを禁止するため、県立自然公園条例等を改正する動きが見られる。例えば、広島県立自然公園条例は、令和5年1月1日に改正施行され、自然公園の特別地域又は集団施設地区内において、「野生動物(鳥類又は哺乳類に属するものに限る。以下この号において同じ。)に餌を与えることその他の野生動物の生態に影響を及ぼす行為で規則で定めるものであつて、当該自然公園の利用に支障を及ぼすおそれのあるものを行うこと」(改正後25条1項3号)を禁止し、知事は、職員に、違反行為をした者に対してやめるべきことを指示させることができ(改正後25条2項)、指示に従わないで違反行為をした者は30万円以下の罰金に処する(改正後45条9号)としている。



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