手話言語に関する条例

(令和6年3月29日更新)

【全国の制定状況】

〇 一般財団法人全日本ろうあ連盟によると、手話言語条例の制定自治体は、令和6年3月28日現在、37都道府県、20特別区、350市、104町、6村である。同連盟HP「手話言語条例マップ」では、これらの条例が施行順に一覧で示されている。また、情報・コミュニケーション条例の制定自治体は、令和6年3月21日現在、115自治体である。同連盟HP「情報・コミュニケーション条例 成立状況一覧」において、同じく施行順に一覧で示されている。

 

【手話言語条例】

〇 上記「手話言語条例マップ」によると、全国最初に制定された手話言語条例は、

鳥取県 鳥取県手話言語条例 平成25年10月11日公布

平成25年10月11日施行

である。

 鳥取県条例は、「手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及に関し基本理念を定め、県、市町村、県民及び事業者の責務及び役割を明らかにするとともに、手話の普及のための施策の総合的かつ計画的な推進に必要な基本的事項を定め、もってろう者とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現すること」(1条)を目的としたうえで、手話の意義を「手話は、独自の言語体系を有する文化的所産であって、ろう者が知的で心豊かな社会生活を営むために大切に受け継いできたものであることを理解しなければならない。」(2条)と規定する。そして、県の責務(4条)、市町村の責務(5条)、県民の役割(6条)及び事業者の役割(7条)を定めている。さらに、手話の普及に関する施策について、計画の策定及び推進、手話を学ぶ機会の確保等、手話を用いた情報発信等、手話通訳者等の確保、養成等、学校における手話の普及、事業者への支援、ろう者等による普及啓発、手話に関する調査研究及び財政上の措置を定める(8条~16条)とともに、鳥取県手話施策推進協議会を設置する(17条)こととしている。

 なお、鳥取県条例の内容、施策の取組状況等については、鳥取県HP「鳥取県手話言語条例」を参照されたい。また、自治体法務研究2014年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例 「鳥取県手話言語条例」を参照のこと。

〇 市町村で全国最初に制定された手話言語条例は、

北海道石狩市 石狩市手話に関する基本条例 平成25年12月19日公布

平成25年4月1日施行

である。

 石狩市条例は、「市民の手話への理解の促進を図ることにより、地域における手話の使いやすい環境を構築することで、手話を使用する市民が、手話により、自立した日常生活を営み、社会参加をし、及び心豊かに暮らすことができる地域社会の実現に寄与すること」(1条)を目的とし、「市民は、手話により相互に意思を伝え合う権利を有し、その権利は尊重されなければならない。」(2条)と規定する。そのうえで、市の責務(3条)及び市民の役割(4条)を定めるとともに、市は、手話の普及啓発に関する事項、手話による情報取得及び手話の使いやすい環境づくりに関する事項、手話による意思疎通支援の拡充に関する事項等を定めた施策の推進方針を策定するものとしている(5条)。

 石狩市内容、制定経緯、施策の取組状況等については、石狩市HP「石狩市手話基本条例の推進」を参照されたい。

〇 なお、全日本ろうあ連盟は、都道府県手話言語条例モデル及び市町村手話言語条例モデル案を示している(同連盟HP手話言語法制定推進事業)。

 また、手話言語条例について論じたものとして、二神麗子「手話言語条例制定の背景とその影響」(都市問題2021年11月号 78頁以下)がある。

 

【情報・コミュニケーション条例】

〇 上記一般財団法人全日本ろうあ連盟HP「情報・コミュニケーション条例 成立状況一覧」によると、全国最初に制定された情報・コミュニケーション条例は

兵庫県明石市

明石市手話言語を確立するとともに要約筆記・点字・音訳等

障害者のコミュニケーション手段の利用を促進する条例

平成27年3月31日公布

平成27年4月1日施行

 同市によれば、同条例は、「手話の普及と利用促進を目指す『手話言語条例』の内容に加え、情報・コミュニケーション支援が必要な障害者の情報保障やコミュニケーション推進を目指す『情報コミュニケーション条例』の内容を規定した2本立ての条例」(明石市HP「手話言語・障害者コミュニケーション条例を制定しました」)であるとしている。なお、本条例の内容、検討経緯、施策取組状況等については、左記HPを参照されたい。

 明石市条例は、「手話等コミュニケーション手段についての基本理念を定め、市の責務並びに市民及び事業者の役割を明らかにし、総合的かつ計画的な施策を推進することにより、障害のある人がその障害特性に応じたコミュニケーション手段を利用しやすい環境を構築し、もって障害のある人もない人も分け隔てられることなく理解しあい、お互いに一人ひとりの尊厳を大切にして安心して暮らすことができる地域社会を実現すること」(1条)を目的としているが、「手話等コミュニケーション手段」については、「独自言語としての手話、要約筆記等の文字の表示、点字、音訳、平易な表現、代筆及び代読その他日常生活又は社会参加を行う場合に必要とされる補助的及び代替的な手段としての情報及びコミュニケーション支援用具等」(3条4号)と定義づけている。また、市の責務(4条)、市民の役割(5条)及び事業者の役割(6条)を定めるとともに、市長は、手話等コミュニケーション手段の普及及び利用の促進を図るための施策を策定するものとする(7条)としている。そのうえで、手話に関して、手話を学ぶ機会の提供、手話を用いた情報発信等、手話通訳者等の確保及び養成及び学校における手話の普及(9条~12条)を規定し、また、要約筆記・点字・音訳に関して、要約筆記等を学ぶ機会の提供、要約筆記等を利用するための環境整備を要約筆記者等の確保及び養成(13条~15条)を規定し、さらには、手話及び要約筆記等以外の手話等コミュニケーション手段の利用促進に関する施策の推進(16条)を規定しているほか、明石市手話言語等コミュニケーション施策推進協議会を設置する(17条)としている。

〇 明石市条例は、「手話言語条例」と「情報・コミュニケーション条例」の2つの性格を有するとされているが、上記一般財団法人全日本ろうあ連盟HP「情報・コミュニケーション条例 成立状況一覧」によれば、情報・コミュニケーション条例のみの性格を有する条例として、

神奈川県横須賀市

横須賀市共生社会実現のための障害者の情報取得

及びコミュニケーションに関する条例

平成27年12月18日公布

平成28年1月1日施行

などがあるとしている。

 横須賀市条例は、「障害者の情報取得及びコミュニケーションを円滑に行うことについての基本理念を定め、市の責務、市民及び事業者の役割を明確にし、総合的かつ計画的に施策を推進することにより、障害者が個人の障害特性に合わせた情報を取得し、及びコミュニケーション等手段を利用しやすい環境を構築し、もって障害の種別又は障害の有無によって分け隔てられることなく相互に理解し合い、誰もが安心して暮らせる地域社会を実現すること」(1条)を目的としているが、「コミュニケーション等手段」については、「音声、音訳、代用音声等の音声言語並びに文字(拡大文字を含む。)、手話、筆談、要約筆記、字幕、点字、触手話、指点字等の非音声言語並びに絵図、記号、サイン、ジェスチャー並びに重度障害者用意思伝達装置、パソコン等の情報機器等並びに情報の取得及びコミュニケーションを行う際に必要な手段(人的支援を含む。)として活用されている全てのもの」(2条3号)と定義づけている。また、市の責務(4条)、市民の役割(5条)及び事業者の役割(6条)を定めるとともに、市は、情報取得及びコミュニケーションの支援の充実(コミュニケーション等支援者の養成・コミュニケーション等支援者の派遣の拡充・情報取得及びコミュニケーションの支援のための機器の情報収集、利用普及)、コミュニケーション等手段の普及の啓発(市内の講演会等でのコミュニケーション等支援者の配置の啓発・障害者の理解を深めるための、市民への啓発)及び情報取得の機会の拡大及び方法の充実(録音版、点字版等、多様な方法での情報発信・不特定多数の人が集まる場所における音声、文字、手話、視覚情報等による情報提供の充実)に関する施策を推進するものとする(7条)としているほか、協議会を設置する(8条)こととしている。

 なお、横須賀市条例の内容等については、横須賀市HP「共生社会実現のための障害者の情報取得及びコミュニケーションに関する条例」を参照のこと。



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