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特殊詐欺に関する条例

                                                   (令和3年4月1日更新)

【特殊詐欺とは】

〇 特殊詐欺とは、「面識のない不特定の者に対し、電話その他の通信手段を用いて、預貯金口座への振込みその他の方法により、現金等をだまし取る詐欺をいい、振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺)及び振り込め詐欺以外の特殊詐欺(例えば、金融商品等取引名目、ギャンブル必勝法情報提供名目等の詐欺)を総称したものである。」(「オレオレ詐欺等対策プラン」令和元年6月25日犯罪対策閣僚会議 1頁注)とされる。

〇 特殊詐欺に関する条例は、大きく2つのパターンに分けることができる。すなわち、

@     特殊詐欺による被害を防止するための単独条例

A     既存の生活安全条例等を改正し、特殊詐欺による被害を防止するための規定を置くもの

 である。

 

【単独条例】

〇 特殊詐欺に関して、単独条例を制定し、その被害防止対策などを定めているもの(令和3年3月30日現在で確認できるもの)として、

熊本県県民を特殊詐欺被害から守る条例平成21年3月27日公布

平成21年4月1日施行

令和3年3月26日改正施行

岡山県 岡山県特殊詐欺被害防止条例平成22年3月17日公布

平22年4月1日施行

平成26年3月20日改正施行

徳島県 徳島県振り込め詐欺等の被害の防止に関する条例平成26年3月20日公布

平成26年4月1日施行

千葉県柏市柏市振り込め詐欺等被害防止等条例平成28年3月23日公布

平成28年4月1日施行

愛知県半田市 半田市振り込め詐欺等被害防止に関する条例平成29年7月12日公布

平成29年7月12日施行

埼玉県三郷市 三郷市振り込め詐欺等の被害防止に関する条例平成31年3月27日公布

平成31年4月1日施行

埼玉県 埼玉県特殊詐欺撲滅条例平成31年3月19日公布

平成31年3月19日施行

三重県桑名市 桑名市特殊詐欺根絶条例 令和元年7月2日公布

令和元年7月2日施行

埼玉県坂戸市 坂戸市振り込め詐欺等の被害防止に関する条例 令和元年9月30日公布

令和元年9月30日施行

大分県 大分県特殊詐欺等被害防止条例令和元年12月23日公布

令和2年4月1日施行

山梨県 山梨県電話詐欺等被害撲滅に関する条例令和2年3月30日公布

令和2年3月30日施行

愛媛県 愛媛県特殊詐欺等撲滅条例令和3年3月26日公布

令和3年4月1日施行

 がある。

〇 このうち、熊本県条例は、平成21年制定当時の条例名は「県民を振り込め詐欺被害から守る条例」であったが、令和3年3月に改正され「県民を特殊詐欺被害から守る条例」となった(「県民を振り込め詐欺被害から守る条例の一部を改正する条例」(令和3年3月26日公布・施行))。また、岡山県条例は、平成22年制定当時の条例名は「岡山県振り込め詐欺被害防止条例」であったが、平成26年3月に改正され「岡山県特殊詐欺被害防止条例」となった。

〇 全国の市町村で最初に振り込み詐欺等に関する条例を制定したのは、柏市である。条例制定の経緯等については、自治体法務研究2016年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「柏市振り込め詐欺等被害防止等条例」を参照のこと。

〇 多くの条例は、「特殊詐欺」又は「振り込め詐欺等」とは、「振り込め詐欺」及び「振り込み詐欺類似行為」である定義づけ、「振り込み詐欺」とは、 「オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺」であると定義づけている。

  そのうえで、例えば、桑名市条例(2条)では、「オレオレ詐欺」、「架空請求詐欺」、 「融資保証金詐欺」、「還付金等詐欺」及び「振り込み詐欺類似行為」を、それぞれ

  「オレオレ詐欺」 親族等を装い電話をかけ、虚偽の名目で直ちに現金が必要であると信じ込ませ、指定した預貯金口座に現金を振り込ませる手口その他これに類する方法 による詐欺(刑法第246条又は第246条の2の罪に当たる行為をいう。)

「架空請求詐欺」 架空の事実を口実に金品を要求する文書等を送付して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませる手口その他これに類する方法による詐欺

「融資保証金詐欺」 融資を受けるための保証金等の名目で、指定した預貯金口座に現金を振り込ませる手口その他これに類する方法による詐欺

「還付金等詐欺」 国又は地方公共団体の職員等を装い、医療費、税金、年金に係る保険料等の還付等に必要な手続であるとかたり、現金自動預入払出兼用機を操作させて預貯金口座間の送金により現金を振り込ませる手口その他これに類する方法による詐欺

「振り込め類似詐欺」 金融商品の取引、宝くじの当せん番号等の提供、異性との交際のあっせんその他の名目で、 虚偽の情報を提供するなどして、指定した預貯金口座に現金を振り込ませる手口その他これに類する方法による詐欺 (振り込め詐欺を除く。)

 と、定義づけている。

〇 これに対して、大分県条例は、「特殊詐欺等」を、次に掲げる行為(2条)と定義づけている。

(1) 詐欺(刑法第246条の罪をいう。)又は電子計算機使用詐欺(同法第246条の2の罪をいう。)に当たる行為のうち、面識のない不特定の者(以下この条において「相手方」という。)を電話、郵便その他の通信手段(以下この条において「電話等」という。)を用いて対面することなく欺き、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの

(2) 窃盗(刑法第235条の罪をいう。)に当たる行為のうち、相手方を電話等により対面することなく欺き、相手方の住居等に赴いて相手方と接触し、隙を見て財物を窃取するもの

(3) 強盗(刑法第236条の罪をいう。)に当たる行為のうち、相手方を電話等により対面することなく欺き、在宅状況、資産状況、世帯人数等を確認した上、相手方の住居等に赴き、暴行又は脅迫を用いて財物を強取するもの

(4) 恐喝(刑法第249条の罪をいう。)に当たる行為のうち、相手方を電話等により対面することなく欺き、併せて脅迫を用いて畏怖させ、第1号の方法により、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの

  愛媛県条例も、大分県条例とほぼ同様の定義規定を置いている(2条)。

  熊本県条例(改正後)は、「詐欺・・・若しくは電子計算機使用詐欺・・・に当たる行為のうち、面識のない不特定の者を電話その他の通信手段を用いて対面することなく欺き、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により財物を交付させ、若しくは財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの又は面識のない不特定の者を電話その他の通信手段を用いて対面することなく欺いた上で、窃盗・・・、強盗・・・若しくは恐喝・・・に当たる行為をすること」(2条1項)としている。

〇 なお、山梨県条例は、「電話詐欺」という用語を使っているが、「オレオレ詐欺や架空請求詐欺などの特殊詐欺では、ほぼ全ての犯行に電話が使用されています。 そこで山梨県警察では、『特殊詐欺』を『電話詐欺』と呼称して被害を防ぐ取組を推進しています。」 (山梨県警察HP「電話詐欺」参照)ことを踏まえたものと考えられる。条例上は、「電話詐欺等」を 「詐欺・・・又は電子計算機使用詐欺・・・に当たる行為のうち、面識のない不特定の者を電話その他の通信手段を用いて対面することなく欺き、 指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの又は 面識のない不特定の者を電話その他の通信手段を用いて対面することなく欺いた上で、窃盗・・・、強盗・・・又は恐喝・・・に当たる行為をすること」(2条)と定義づけている。

〇 条例の内容については、多くの場合、県(市)の責務、県(市)民の役割、事業者の役割、普及啓発、情報の提供、通報などの規定を設けているが、これらに加え、

・エー・ティー・エム利用時の留意事項(熊本県条例10条)、

・被害防止に関する留意事項(岡山県条例10条、半田市条例7条、坂戸市条例6条) 

・被害者への支援(柏市条例8条、三郷市条例8条、大分県条例14条、愛媛県条例14条)

・特殊詐欺警戒宣言(桑名市条例8条2項)

 などの規定を置くものもある。

〇 こうした理念的な規定に加えて、大分県条例は、犯罪拠点(アジト)対策及び架電先リスト(名簿)対策に関する規定を置いている。

まず、犯罪拠点(アジト)対策として、建物の貸付けに係る規制等や旅館営業者等の営業に係る規制等の規定を置いている。すなわち、

「何人も、自己が貸付けをしようとする県内に所在する建物が特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、当該建物を貸し付けてはならない。」(15条)としたうえで、「建物の貸付けをしようとする者は、当該貸付けに係る契約の締結の前に、当該契約の相手方に対し、当該建物を特殊詐欺等の用に供するものでないことを書面により確認するよう努めるものとする。」(16条1項)、「物の貸付けの代理又は媒介をする者は、当該代理又は媒介に係る建物が特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、当該貸付けに係る契約の代理又は媒介をしてはならない。」(17条1項)等とし、また、「旅館業法第2条第1項に規定する旅館業及び住宅宿泊事業法第2条第3項に規定する住宅宿泊事業(以下この項において「旅館業等」という。)を営む者は、宿泊しようとする者により旅館業等を営む施設が特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、当該施設に宿泊させてはならない。」(18条1項)等としている。

また、架電先リスト(名簿)対策として、個人情報の提供等に係る規制等の規定を置いている。すなわち、

「何人も、特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、個人情報(個人情報の保護に関する法律第2条第1項第1号に規定する個人情報のうち、氏名、生年月日、住所、電話番号等又はこれらの組合せであって、特殊詐欺等の用に供されるおそれがあるものに限る。)を第三者に提供してはならない。」(19条1項)等とし、また、「個人情報取扱事業者(法第2条第5項に規定する個人情報取扱事業者をいう。)は、個人データ(同条第6項に規定する個人データのうち、氏名、生年月日、住所、電話番号等又はこれらの組合せであって、特殊詐欺等の用に供されるおそれがあるものに限る。)を第三者(同条第5項各号に掲げる者を除く。)に提供するに際し、法第25条第1項の記録の作成を行う場合は、運転免許証の提示を受ける方法その他の規則で定める方法により、氏名又は名称その他の規則で定める事項の確認を行わなければならない。」(20条1項本文)としている。

  愛媛県条例も、大分県条例と同様に、犯罪拠点(アジト)対策及び架電先リスト(名簿)対策に関する規定(15条〜20条)を置いている。

 

【既存の生活安全条例など】

〇 特殊詐欺に関して、既存の生活安全条例などにおいて関係する規定を置き、その被害防止対策などを定めているものとして、

滋賀県 「なくそう犯罪」滋賀安全なまちづくり条例平成15年3月20日公布

平成27年4月1日改正施行

東京都 東京都安全安心まちづくり条例平成15年7月16日公布

平成27年9月1日改正施行

大阪府 大阪府安全なまちづくり条例平成14年3月29日公布

令和元年6月1日改正施行

 がある。

  いずれも、条例改正により、特殊詐欺に関する規定がおかれた。

〇 「特殊詐欺」の定義については、「詐欺(刑法第246条の罪をいう。)又は電子計算機使用詐(刑法第246条の2の罪をいう。)のうち、面識のない不特定の者を電話その他の通信手段を用いて対面することなく欺き、不正に調達した架空又は他人名義の預貯金口座への振り込みその他の方法により、当該者に財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの」(東京都条例31条1項)とするなど、いずれも概括的な書きぶりとなっている。

〇 東京都条例には犯罪拠点(アジト)対策に関する規定(33条)が、大阪府条例には犯罪拠点(アジト)対策の及び架電先リスト(名簿)対策に関する規定(22条〜25条)が、置かれている。こうした規定は、大分県条例に先行して置かれている。

〇 大阪府条例の関係規定の内容や運用等については、大阪府HP「大阪府安全なまちづくり条例」に特殊詐欺に関する条項が追加されました」を参照のこと。




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