児童虐待に関する条例
(令和6年12月14日更新)
【条例制定状況】
〇 児童虐待防止に関して基本理念や施策などを定める条例で令和6年12月1日時点で確認できるものとしては、以下のようなものがある。
〇 都道府県の条例
三重県 | 平成16年3月23日公布 | 平成16年4月1日施行 令和2年4月1日改正施行 |
議員提案 | |
和歌山県 | 平成20年7月4日公布 | 平成20年8月1日施行 |
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大阪府 | 平成22年12月22日公布 | 平成23年2月1日施行 |
議員提案 | |
愛媛県 | 平成26年3月28日公布 | 平成26年3月28日施行 |
議員提案 | |
愛知県 | 平成26年3月28日公布 | 平成26年4月1日施行 |
議員提案 | |
岡山県 | 平成27年12月25日公布 | 平成28年4月1日施行 |
議員提案 | |
千葉県 | 平成28年12月27日公布 | 平成29年4月1日施行 令和元年10月18日改正施行 |
議員提案 | |
埼玉県 | 平成29年7月11日公布 | 平成30年4月1日施行 |
議員提案 | |
茨城県 | 平成30年11月19日公布 | 平成31年4月1日施行 |
議員提案 | |
東京都 | 平成31年3月29日公布 | 平成31年4月1日施行 |
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福島県 | 令和2年3月24日公布 | 令和2年4月1日施行 |
議員提案 | |
沖縄県 | 令和2年3月31日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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群馬県 | 令和3年3月26日公布 | 令和3年4月1日施行 |
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京都府 | 令和4年3月18日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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福岡県 | 令和4年3月29日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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秋田県 | 令和5年3月17日公布 | 令和5年4月1日施行 |
議員提案 |
〇 指定都市の条例
大阪市 | 平成22年12月15日公布 |
平成22年12月15日施行 |
議員提案 | |
堺市 | 平成23年6月23日公布 |
平成23年6月23日施行 令和2年10月5日改正施行 |
議員提案 | |
川崎市 | 平成24年10月10日公布 |
平成25年4月1日施行 |
議員提案 | |
名古屋市 | 平成25年3月29日公布 |
平成25年4月1日施行 |
議員提案 | |
横浜市 | 平成26年6月5日公布 令和3年10月5日改正公布 |
平成26年11月5日施行 令和3年10月5日改正施行 |
議員提案 | |
北九州市 | 平成30年12月19日公布 |
平成31年4月1日施行 |
議員提案 | |
岡山市 | 平成30年12月20日公布 |
平成31年4月1日施行 |
議員提案 | |
神戸市 | 平成31年3月7日公布 |
平成31年4月1日施行 |
議員提案 | |
福岡市 | 子どもを虐待から守る条例 |
令和5年3月20日公布 |
令和5年4月1日施行 |
議員提案 |
〇 市町村(指定都市以外)の条例
東京都武蔵野市 | 平成15年12月18日公布 | 平成16年2月1日施行 |
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福岡県志免町 | 平成17年9月28日公布 | 平成17年9月28日施行 |
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大阪府東大阪市 | 平成17年12月29日公布 | 平成17年12月29日施行 |
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大阪府藤井寺市 | 平成22年12月22日公布 | 平成22年12月22日施行 |
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青森県八戸市 | 平成23年3月18日公布 | 平成23年4月1日施行 |
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千葉県浦安市 | 平成24年3月29日公布 | 平成24年7月1日施行 |
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北海道猿払村 | 平成25年3月12日公布 | 平成25年3月12日施行 |
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兵庫県高砂市 | 平成23年6月10日公布 | 平成23年6月10日施行 |
議員提案 | |
青森県弘前市 | 平成25年3月22日公布 | 平成25年4月1日施行 |
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千葉県柏市 | 平成25年6月28日公布 | 平成25年9月28日施行 |
議員提案 | |
埼玉県川口市 | 平成25年9月26日公布 | 平成25年10月1日施行 |
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東京都国分寺市 | 平成26年3月27日公布 | 平成26年9月1日施行 |
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茨城県阿見町 | 平成27年3月23日公布 | 平成27年4月1日施行 |
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宮崎県都城市 | 平成28年12月26日公布 | 平成28年12月26日施行 |
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福岡県飯塚市 | 平成30年12月28日公布 | 平成31年4月1日施行 |
議員提案 | |
岡山県総社市 | 平成31年3月22日公布 | 平成31年3月22日施行 |
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岡山県浅口市 | 令和2年3月18日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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茨城県神栖市 | 令和2年3月25日公布 | 令和2年3月25日施行 |
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岡山県笠岡市 | 令和2年3月26日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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千葉県松戸市 | 令和2年3月30日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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北海道苫小牧市 | 令和2年12月18日公布 | 令和3年1月1日施行 |
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福岡県中間市 | 令和3年4月1日公布 | 令和3年4月1日施行 |
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沖縄県糸満市 | 令和3年12月28日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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東京都青梅市 | 令和5年6月30日公布 | 令和5年6月30日施行 |
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千葉県野田市 | 令和5年12月15日公布 | 令和6年1月1日施行 |
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鹿児島県志布志市 | 令和6年3月27日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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大阪府摂津市 | 令和6年3月28日公布 | 令和6年4月1日施行 |
〇 児童虐待に関する法律などの主な動きは、以下のとおりである。
昭和22年12月 | 児童福祉法制定 |
平成12年5月 | 児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)制定 |
平成17年11月 | 高齢者に対する虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)制定 |
平成23年6月 | 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(障害者虐待防止法)制定 |
平成24年8月 | 子ども・子育て支援法等制定 |
平成25年6月 | |
平成28年6月 | 児童福祉法等の一部改正 |
平成29年6月 | 児童福祉法及び児童虐待防止法の一部改正 |
平成30年3月 | 東京都目黒区で児童虐待事案発生 |
平成30年7月 | 児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」決定 |
平成31年1月 | 千葉県野田市で児童虐待事案発生 |
平成31年3月 | 児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議 「児童虐待防止対策の抜本的強化について」決定 |
令和元年6月 | 児童福祉法等の一部改正 |
令和4年6月 | 児童福祉法等の一部改正 |
【概括的状況】
〇 都道府県の条例は、和歌山県、東京都、沖縄県、群馬県、京都府及び福岡県の条例を除き、議員提案によって制定されている。また、指定都市の条例も、すべて議員提案によって制定されている。
〇 全国で最初に児童虐待防止等を目的として制定されたのは、武蔵野市条例である。また、都道府県では、三重県条例が最初に制定されている。これらは、児童虐待防止法制定(平成12年)の後に制定されている。
〇 愛媛県、埼玉県、藤井寺市、八戸市、猿払村、川口市、阿見町、松戸市、青梅市及び野田市の条例は、児童の虐待とともに高齢者及び障害者の虐待をも防止すること等を目的としているが、児童虐待防止法、高齢者虐待防止法(平成17年)及び障害者虐待法(平成23年)が制定されてきていることを踏まえたものと考えられる。
また、愛媛県、八戸市、阿見町及び青梅市の条例は、配偶者に対する虐待も対象に含めている。
〇 弘前市、柏市及び国分寺市の条例は、児童虐待防止のみならずいじめ対策への対応等をも目的としているが、児童虐待防止法に加え、いじめ対策防止法(平成25年)が制定されてきていることを踏まえたものと考えられる。
〇 石川県のいしかわ子ども総合条例(平成19年3月22日公布、平成19年4月1日施行)は、子どもに関する総合的な条例であるが、子どもの虐待防止等に関する規定(78条~83条)を置いている。また、子どもや子育てに関する条例を制定している都道府県や指定都市があるが、その中で何らかの形で虐待防止等に関する規定を置いているものもある(北海道子どもの未来づくりのための少子化対策推進条例(平成16年10月19日公布、平成16年10月19日施行)15条、なごや子どもの権利条例(平成20年3月27日公布、平成20年4月1日施行など)14条など)。
〇 市町村では、子ども条例や子どもの権利条例などが制定されているが、何らかの形で虐待防止等に関する規定を置いているものも少なくない(世田谷区子ども条例(平成13年12月10日公布、平成14年4月1日施行)12条、豊田市子ども条例 (平成19年10月9日公布、平成19年10月9日施行)16条、多治見市子どもの権利に関する条例 (平成15年9月25日公布、平成16年1月1日施行)7条3項及び4項等、豊島区子どもの権利条例 (平成18年3月29日公布、平成18年4月1日施行)15条など)。
〇 平成30年3月に東京都目黒区で児童虐待事案が、平成31年1月には千葉県野田市で児童虐待事案が発生するなど、児童虐待がさらに大きな社会問題となってきているが、こうした状況を受けて、平成30年以降も、茨城県、東京都、福島県、沖縄県、群馬県、京都府、福岡県、秋田県、北九州市、岡山市、神戸市、福岡市、飯塚市、総社市、浅口市、神栖市、笠岡市、松戸市、苫小牧市、中間市、糸満市、青梅市、野田市及び摂津市で条例が制定され、千葉県で条例改正がなされている。
〇 国における児童虐待の防止等の取り組みについては、児童福祉法、児童虐待防止法等に基づき行われてきた。平成28年6月に、児童福祉法等の一部を改正する法律(平成28年法律第63号 概要)が制定され、児童が権利の主体であることの明確化、親権者は児童のしつけに際して監護及び教育に必要な範囲を超えて児童を懲戒してはならない旨の明記、児童虐待の発生予防(子育て世代包括支援センターの法定化、支援を要する妊婦等に関する情報提供等)、児童虐待発生時の迅速・的確な対応(市町村における支援拠点の整備、児童相談所に児童心理司、医師又は保健師、指導及び教育担当の児童福祉司(スーパーバイザー)及び弁護士の配置等、児童相談所の権限強化等)、被虐待児童への自立支援(親子関係再構築支援、里親委託の推進等)の措置等が定められ、また、平成29年6月には、児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律(平成29年法律第69号 概要)が制定され、虐待を受けている児童等の保護者に対する指導への司法関与、家庭裁判所による一時保護の審査の導入、接近禁止命令を行うことができる場合の拡大等の措置等が定められた。
しかし、平成30年3月に東京都目黒区で児童虐待事案が発生するなど、深刻な児童虐待事件が後を絶たないことなどから、児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議が設置され、同年7月に「児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策」が決定された。さらに、平成31年1月に千葉県野田市で児童虐待事案が発生したことを受けて、同年3月に「児童虐待防止対策の抜本的強化について」(ポイント)が決定された。これを踏まえ、令和元年6月に、児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号 概要)が制定され、親権を持つ者等による体罰の禁止、児童相談所の体制強化及び設置促進、関係機関間の連携強化等の措置等が定められた(原則として、令和2年4月1日施行)。
また、令和4年6月に、児童虐待の相談対応件数の増加など、子育てに困難を抱える世帯がこれまで以上に顕在化してきている状況等を踏まえ、子育て世帯に対する包括的な支援のための体制強化等を行うため、児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号 概要)が制定され、要保護児童等への包括的かつ計画的な支援の実施の市町村業務への追加、市町村における児童福祉及び母子保健に関し包括的な支援を行うこども家庭センターの設置の努力義務化、市区町村における子育て家庭への支援の充実等が定められた(原則として、令和6年4月1日施行)。
政府における児童虐待防止対策については、子ども家庭庁HP「児童虐待防止対策」を参照されたい。また、最近の関係法の改正の動向や内容等については、鈴木亜由美「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等改正案―主な内容と論点―」(立法と調査No.412 2019年5月)を参照のこと。
【都道府県及び指定都市の条例の概略】
〇 都道府県及び指定都市の条例では、総則、予防(未然防止)、早期発見・早期対応、援助・指導・支援、人材育成などの柱建てで構成されている例が多い。
これは、児童虐待防止法が、国及び地方公共団体の責務(4条)として、予防、早期発見、迅速かつ適切な児童虐待を受けた児童の保護及び自立の支援、児童虐待を受けた児童が家庭で生活するために必要な配慮をした適切な指導及び支援、関係機関の職員・学校の教職員・児童福祉施設の職員等に対する研修、広報・啓発活動等に関して、関係機関との連携強化、体制整備、実施等を掲げていることに対応したものと考えられる。
〇 ほとんどの条例が、「虐待」の定義について児童虐待防止法2条の定義を引用している。ただし、法2条に規定する児童虐待に加え、大阪府条例は、経済的虐待(保護者がその管理に属しない子どもの財産を不当に処分すること)を含む(2条3号)とし、埼玉県条例は、養護者又は児童等の親族が当該児童等の財産を不当に処分することその他当該児童等から不当に財産上の利益を得ることなどを含む(2条1号)としている。また、群馬県条例及び福岡県条例は、「子どもに必要な医療を受けさせないことその他の子どもの利益に反する著しく不適切な養育を行うこと」(両条例ともに2条3号ホ)を加えている。
〇 総則には、目的、定義、基本理念、都府県(市)の責務、保護者の責務、(市町村の役割)、都府県民(市民)の役割、関係機関の役割、施策の実施状況の報告、啓発活動などを定めているのが多い。これらに加え、都道府県の条例の多くは、基本計画や行動計の策定を規定している。
〇 保護者の責務として、東京都条例、千葉県条例(令和元年10月改正)、福島県条例、三重県条例(令和2年3月改正)、群馬県条例、京都府条例、福岡県条例、秋田県条例、堺市条例(令和2年10月改正)、横浜市条例(令和3年10月改正)及び福岡市条例は、保護者の体罰禁止の規定(東京都6条2項、千葉県6条2項、福島県6条2項、三重県8条1項、群馬県5条3項、京都府4条2項、福岡県6条2項、秋田県5条2項、堺市6条2項、横浜市6条1項、福岡市5条2項)を置いている。なお、令和元年6月に改正された児童虐待防止法において、体罰禁止の規定が置かれている(14条1項)。
〇 予防(未然防止)として、子育て支援に関する施策の実施、関係機関との連携、関係機関の支援などを規定しているのが多い。
〇 早期発見・早期対応として、早期発見(通告しやすい環境づくり等)、通告に係る対応等(虐待通告があった際の調査、安全確認措置等)、通告に係る体制整備、立入調査時の警察等への協力要請。情報共有などを規定しているのが多い。
〇 虐待通告があった場合に、児童相談所等は48時間以内に安全確認を行う旨規定するものも少なくない(和歌山県14条3項、大阪府13条1項、愛知県15条1項、岡山県14条1項、川崎市15条2項及び岡山市13条2項)。群馬県条例は、24時間以内に安全確保を行うよう努めなければならない(11条1項)としている。
なお、 児童相談所運営指針は、「安全確認は、児童相談所職員又は児童相談所が依頼した者により、子どもを直接目視することにより行うことを基本とし、他の関係機関によって把握されている状況等を勘案し緊急性に乏しいと判断されるケースを除き、通告受理後、各自治体ごとに定めた所定時間内に実施することとする。当該所定時間は、各自治体ごとに、地域の実情に応じて設定することとするが、迅速な対応を確保する観点から、『48時間以内とする』ことが望ましい。」(第3章第3節3)としている。
〇 転入、転出時における他の児童相談所や市町村等との連携に関する規定を置くものも少なくない(茨城県17条、東京都12条1項、三重県20条(令和2年3月改正)、群馬県14条、京都府17条、福岡県12条、川崎市20条、横浜市9条2項、北九州市9条2項、岡山市16条及び神戸市10条5項)。
なお、児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策には、転居した場合の児童相談所間における情報共有の徹底が明記されている。
〇 援助・指導・支援として、虐待を受けた子どもへの支援、虐待を行った保護者への支援・指導、子ども自身による安全確保への支援などを規定しているのが多い。
〇 人材育成等として、研修の実施、充実や体制の整備などを規定しているのが多い。なお、茨城県条例では、児童相談所について「児童福祉司等の専門的知識を有する職員の国の定める基準を超える人数の配置」など体制強化に努めること(24条)を規定している。
〇 福岡県条例は、児童福祉法12条6項の規定を踏まえ、県は児童相談所の業務に関して第三者による評価を実施する旨の規定(19条3項)を置いている。
〇 沖縄県条例は、子どもの権利についても規定しており、「全ての子どもは、適切に養育されること、能力が十分に発揮されること、虐待から守られること、自己の意見を表明することその他の個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する。」(3条)としている。
〇 東京都児童福祉審議会28年期第3回本委員会(平成30年7月31日)の参考資料「児童虐待防止等に関する他自治体の条例の構成(参考例・概要比較)」は、千葉県、愛知県、岡山県、大阪府、和歌山県及び横浜市の条例の構成の比較をしている。
また、公明党神戸市会議員団「児童虐待防止条例の策定検討報告書」(平成31年3月)中「(仮称)子どもを虐待から守る条例(案)第1回検討会」(平成30年6月28日)資料「子供を虐待から守る条例比較表」は、大阪市、堺市、名古屋市、川崎市及び横浜市の条例の条文比較をしている。
〇 埼玉県条例については、自治体法務研究2017年冬号CLOSEUP先進・ユニーク条例「埼玉県虐待禁止条例」を参照のこと。東京都条例については、自治体法務研究2019年秋号条例制定の事例CASESTUDY「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」を参照のこと。また、児童虐待問題の現状と自治体の役割等ついては、自治体法務研究2019年秋号特集「子どもの見守りと自治体の役割」を参考のこと。
【市町村(指定都市以外)の条例の概略】
〇 指定都市以外の市町村の条例では、目的、定義及び基本理念を置くとともに、市(町村)の責務、保護者の責務、市(町村)民の役割及び関係機関の役割などの規定に比較的重きが置かれている例が多い。
〇 児童虐待の予防や対応については、情報共有、関係機関のネットワークの構築、通告や相談に係る対応、子どもや保護者に対する支援や指導などを規定しているものが多いが、これらは、指定都市以外の市町村には児童相談所は設置されず(中核市は設置可能であり、横須賀市、金沢市、明石市が設置。特別区も設置可能。児童福祉法59条の4参照)、児童福祉法、児童虐待防止法等において都道府県と市町村の役割が異なることを踏まえたものであると考えられる。
〇 なお、野田市条例について、野田市は「本市では、平成31年1月に発生した、あってはならない痛ましい児童虐待死亡事件を踏まえ、事件の再発防止に全力で取り組んできた。しかし、本市における児童虐待はいまだ後を絶たず、全国的にも増加の一途をたどっており、高齢者及び障がい者に対する痛ましい虐待も後を絶たず、大きな社会問題となっている。・・・このようなことから、児童、高齢者、障がい者、3つの虐待全てに対応する条例の制定を目指し、・・・構成において、第1条の目的から第9条の市民の責務まで、共通して制定できる条文については、総則として一つにまとめ、具体的な内容については、各虐待を章ごとに、第2章児童虐待、第3章高齢者虐待、第4章障がい者虐待に分けて、実務の具体的なルールを規定することで、単なる理念ではなく実効性のある条例案に取りまとめ、(令和5年)12月議会に上程した。・・・なお、各虐待を章ごとに分けて、実務の具体的なルールを条例に規定しているのは、全国にも例がない。」(野田市資料「虐待のない社会を目指して実効性のある虐待防止条例案を上程」)としている。
また、摂津市条例については、摂津市は「令和3年8月に、本市で3歳男児が虐待により亡くなるという痛ましい事案が発生し、二度と同じような事案が起こらないように、職員体制の強化や関係機関等との連携強化に取り組んでいます。市では、より一層、保護者及び関係機関、市民等が一体となって子どもを虐待から守る取組を推進し、虐待のない地域社会を実現するために、本条例を制定しました。」(摂津市HP「『摂津市子どもを虐待から守る条例』を制定しました。」)としている。