盗撮行為に関する条例(迷惑防止条例の改正)

                                                  (令和3年1月22日更新)

【盗撮行為の規制の拡大】

〇 まず、新聞記事から紹介する。「増えるスマホ盗撮、迷惑防止条例に『盲点』」という見出しの記事である(読売新聞2019年12月21日電子版)。

「不特定多数の人が出入りする公共の場や乗り物で盗撮を禁じる条例を改正し、規制場所を拡大する自治体が相次いでいる。スマートフォンなどの普及により、出入りが制限される学校や職場などでも被害が増えているにもかかわらず、取り締まれないケースがあるためだ。読売新聞の調査では、改正したのは(令和元年12月)20日までに31都道府県に上る。
 盗撮行為は『迷惑防止条例』で禁止されており、19日に岐阜県議会、20日に秋田、茨城県議会で改正案が可決された。『不特定または多数』が利用する学校や事務所、貸し切りバスなどにも範囲を広げ、条例を適用できるようにした。塾やスポーツジム、カラオケボックスなども想定しているという。
 秋田県での改正は、秋田市の中学校の教室で4月、男性臨時講師が女性教員のスカート内を小型カメラで動画撮影した事件がきっかけとなった。被害届を受けて捜査した県警は、校舎内を『公共の場所』と解釈することができず、同条例での立件を見送った。県議会では『被害者感情を考えると許せない』『条例の盲点だ』などと意見が続出した。
 迷惑防止条例は1960年代頃から、公衆に著しく迷惑をかけるなどの行為を防ぐのを目的に全国で施行され、盗撮行為の禁止も公共の場所が前提となっていた。しかし、スマホの普及などで盗撮が行われる場所が広がり、SNSなどで画像が拡散するなど被害が深刻化してきた。
 読売新聞の調査では、改正した31都道府県のうち、大阪府はタクシー車内を条文に明記し、福岡県は商業施設の授乳室をホームページで例示するなどしている。2018年2月に改正条例を施行した佐賀県では、同年中の盗撮の摘発が28件と前年から倍増した。
 このほか、千葉、山梨、香川の各県は改正案提出を目指して準備を進めており、山形、高知など7県が『検討中』。一方、青森、広島など6県は『具体的な問題が起きていないため、議論になっていない』などとして検討に入っていない。(以下、省略)」

〇 上記記事によると、令和元年12月に、岐阜県、秋田県及び茨城県で、迷惑防止条例を改正し、盗撮行為の規制場所を拡大した、このような改正をした都道府県は、読売新聞の調査では、令和元年12月20日までに31都道府県である、ということになる。

なお、京都府も平成元年12月議会で迷惑防止条例を改正し、千葉県、山梨県、香川県及び愛媛県は平成2年3月議会で改正し、さらに神奈川県及び静岡県は令和2年6月議会で、山形県及び三重県は令和2年9月議会で、埼玉県は令和2年12月議会で改正している。

 

【岐阜県、秋田県及び茨城県の条例改正の内容】

〇 それでは、岐阜県、秋田県及び茨城県がどのように改正されたか、具体的に見てみる。いずれも条文は改正後のもので、     は改正により追加された条文、(      )は改正前の条文である。

岐阜県

岐阜県迷惑行為防止条例

令和2年4月1日改正施行

第3条 何人も、正当な理由がないのに、公共の場所にいる者又は公共の乗物に乗っている者に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号のいずれかに掲げる行為をしてはならない。

(3)通常衣服等で覆われている人の下着等の映像を見、又は記録する目的で、写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置し、又は通常衣服等で覆われている人の下着等に向けること。

  何人も、正当な理由がないのに、学校、事務所その他の不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りする場所にいる者又はタクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用する乗物に乗っている者(前項に規定する者を除く。)に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号のいずれかに掲げる行為をしてはならない。

(3)通常衣服等で覆われている人の下着等の映像を見、又は記録する目的で、写真機 等を設置し、又は通常衣服等で覆われている人の下着等に向けること。

 3 何人も、正当な理由がないのに、前2項に規定する場所にいる者又は乗物に乗っている者に対し、衣服等を透かして見る方法により衣服等で覆われている人の下着等の映像を見、又は記録する目的で、衣服等を透かして見ることができる写真機等を設置し、又は人に向けてはならない。

 4 何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、便所、更衣室その他人が公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が)通常衣服等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる者に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号のいずれかに掲げる行為をしてはならない。

(2)当該状態でいる人の姿態の映像を見、又は記録する目的で、写真機等を設置し、又は当該状態でいる人に向けること。  

秋田県

秋田県迷惑行為防止条例

令和2年4月1日改正施行

第4条 2 何人も、正当な理由がないのに、次に掲げる場所又は乗物において、下着等を撮影し、 又は撮影しようとして写真機その他の機器を人に向け、若しくは設置してはならない

(1)公共の場所又は公共の乗物

(2事務所、教室、貸切バスその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物

 3 何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所(前項各号に掲げる場所を除く。)において当該状態でいる人を撮影し、又は撮影しようとして写真機その他の機器を当該状態でいる人に向け、若しくは設置してはならない

茨城県

茨城県迷惑行為防止条例

令和2年4月1日改正施行

第2条 何人も,道路,公園,駅,興行場,飲食店その他の不特定かつ多数の者が利用し,若しくは出入りすることができる場所(以下「公共の場所」という。)(第3項に規定する場所に該当する場合を除く。)又は汽車,電車,乗合自動車,船舶,航空機その他の不特定かつ多数の者が利用し,若しくは出入りすることができる乗物(以下「公共の乗物」という。)(同項に規定する場所に該当する場合を除く。)にいる他人に対し,みだりに次に掲げる行為をしてはならない。

(3) 人を著しく羞恥させ,又は人に著しく嫌悪の情を催させるような方法で,写真機,ビデオカメラその他これらに類する機器(以下この条において「写真機等」という。)を使用して身体等を撮影し,又は撮影しようとすること。

(4) 衣服等を透かして身体等を見ることができる機器(以下「透視機器」という。)を使用して,他人の身体等の映像を見,若しくは見ようとし,又は他人の身体等を撮影し,若しくは撮影しようとすること。

  何人も,学校,事務所その他の不特定の者若しくは多数の者が利用し,若しくは出入りすることができる場所(公共の場所又は次項に規定する場所に該当する場合を除く。)又はタクシーその他の不特定の者若しくは多数の者が利用し,若しくは出入りすることができる乗物(公共の乗物又は次項に規定する場所に該当する場合を除く。)にいる他人に対し,みだりに前項第2号から第4号までに掲げる行為をしてはならない。

  何人も,住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服の全部又は一部を着けないでいるような場所にいる他人に対し,みだりに次に掲げる行為をしてはならない。

(2)写真機等を使用して,人の姿態を撮影し,又は撮影しようとすること。

(3)透視機器を使用して,他人の身体等若しくは人の姿態の映像を見,若しくは見ようとし,又は他人の身体等若しくは人の姿態を撮影し,若しくは撮影しようとすること。

  何人も,前3項に規定する行為(写真機等又は透視機器を使用して行う行為に限る。)をする目的で,写真機等又は透視機器を設置してはならない

〇 3県の条例は、書きぶりは異なるものの、改正後は、

a 公共の場及び公共の乗物での下着等の盗撮

b 学校、事務所、タクシーその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物での下着等の盗撮

c 住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所での盗撮

 のいずれをも、禁止の対象にしている。

  なお、改正前は、岐阜県条例はa及びcのうちの公衆浴場、公衆便所等を、秋田県条例はa及びcを、茨城県条例はaのみを、それぞれ禁止の対象としており、3県において、その禁止対象は異なっていた。

  また、改正後も、岐阜県条例及び茨城県条例は透視機器による撮影等を禁止しているが、秋田県条例は透視機器に関する規定は置いていない。

さらに、罰則については、改正後は、岐阜県条例は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、写真機等を使用して被写体の映像を記録したものであるときは1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、常習者の場合は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金、秋田県条例及び茨城県条例は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金、常習者の場合は1年以下の懲役又は100万円となっており、県によって罰則は異なる。

 

【全国の状況】

〇 迷惑防止条例は、名称は異なるものの、47都道府県とも有しており、すべての都道府県において、盗撮禁止の規定を有している。その基本的な内容を、令和2年12月議会終了後の時点で比較すると、以下のようになる。

a 公共の場及び公共の乗物での下着等の盗撮

b 学校、事務所、タクシーその他の特定かつ多数の人が集まる場所又は利用する乗物での下着等の盗撮

c 住居、浴場、更衣場、便所その他通常人が衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場合がある場所での盗撮

のうち、いずれを禁止の対象にしているかについては、

a、b及びcを禁止するもの  北海道、秋田県、山形県(令和3年2月1日改正施行)、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県(令和3年4月1日改正施行)、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県(令和3年1月1日改正施行)、京都府、兵庫県、和歌山県、岡山県、島根県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県(bは「公衆の目に触れるような場所」での盗撮)、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、沖縄県

a、b及びcのうちの公衆浴場、公衆便所等を禁止するもの   栃木県、富山県、滋賀県、大阪府、宮崎県(bは「公衆の目に触れるような場所」での盗撮)、鹿児島県

a及びcを禁止するもの    群馬県、奈良県、

a及びcのうちの公衆浴場、公衆便所等を禁止するもの     鳥取県、高知県

aを禁止するもの       青森県、岩手県、長野県、広島県

〇 なお、上記読売新聞記事は「犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長の上谷さくら弁護士は『スマホの普及で誰もがカメラを持ち歩く時代に、都道府県によって盗撮行為への対応が分かれるのはおかしい』と条例改正の必要性を指摘。その上で『『盗撮罪』を創設するなどして全国一律に取り締まることも検討すべきだ』と話している。」としている。

 




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