避難行動要支援者名簿に関する条例

 (令和6年1月23日更新)

【避難行動要支援者名簿の作成と利用・提供】

〇  災害対策基本法(昭36年法律第223号)は、市町村長は、避難行動要支援者(災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要する要配慮者)について、避難行動要支援者名簿を作成しなければならない旨規定した(49条の10)うえで、避難行動要支援者名簿の利用と提供について、以下のような規定を置いている。

(名簿情報の利用及び提供)

第49条の11 市町村長は、避難支援等の実施に必要な限度で、・・・避難行動要支援者名簿に記載し、又は記録された情報(以下「名簿情報」という。)を、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。

2 市町村長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、地域防災計画の定めるところにより、消防機関、都道府県警察、・・・民生委員、・・・市町村社会福祉協議会、自主防災組織その他の避難支援等の実施に携わる関係者(次項において「避難支援等関係者」という。)に対し、名簿情報を提供するものとする。ただし、当該市町村の条例に特別の定めがある場合を除き、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。次項において同じ。)の同意が得られない場合は、この限りでない。

3 市町村長は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があると認めるときは、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者その他の者に対し、名簿情報を提供することができる。この場合においては、名簿情報を提供することについて本人の同意を得ることを要しない。

〇 同条の規定は、

①    避難行動要支援者名簿の名簿情報を、避難支援等の実施に必要な限度で、市町村内部で目的外利用できる。

②     平常時に、名簿情報を、避難支援等の実施に必要な限度で、消防、警察、民生委員、自称防災組織等の避難支援等関係者に対して、本人の同意を得て、または条例に特別の定めを置いて提供する。

③    災害時には、名簿情報を、避難支援等関係者に対して、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があるときは、本人の同意を得ずして提供することができる。

 ことを定めたものである。

〇 このような避難行動要支援者名簿に関する規定は、東日本大震災で得られた防災対策上の課題に対応するために災害対策基本法が改正された際に、追加された(平成26年4月1日改正施行)。

 これは、これまで政府において、「『災害時要援護者の避難支援ガイドライン』(平成18年3月)に基づき、各市町村における災害時要援護者名簿の作成等を促進してきたところであるが、こうした名簿の作成・利用に当たっては、高齢者や障害者等に関する個人情報の利用・提供が個人情報保護条例によって制限され、①防災部局と福祉部局等との間で必要な個人情報の共有が行えない、②民生委員や消防団等の外部の避難支援者への情報提供が行えないという問題があったところである。しかしながら、災害多発国である我が国においては、いつどこで災害が発生してもおかしくなく、自力避難が困難な高齢者や障害者等を災害から保護するためには、全ての市町村において名簿が確実に作成され、平常時から避難支援体制を構築しておくことが重要である。このため、今般の法改正では、・・・避難行動要支援者名簿・・・の作成を市町村長に義務付け、名簿の作成に必要な個人情報の利用が可能となるよう個人情報保護条例との関係を整理するとともに、名簿の活用に関して平常時と災害発生時のそれぞれについて避難支援者に情報提供を行うための制度を設けることとしたものである。」(平成25年6月21内閣府政策統括官(防災担当)付参事官・消防庁国民保護・防災部防災課長・厚生労働省社会・援護局総務課長通知「災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について」10頁以下)としている。

 法律の規定と各自治体が制定している「個人情報保護条例との関係の整理」の考え方については、上記内閣府通知13頁~18頁を参照されたい。

〇 災害対策基本法は、令和3年5月20日に改正施行され(内閣府HP「災害対策基本法等の一部を改正する法律(令和3年法律第30号)」参照)により、避難行動要支援者ごとに個別避難計画を作成することが市町村の努力義務として定められた(49条の14)。個別避難計画情報については、避難行動要支援者名簿の名簿情報と同様に、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対して、本人等の同意を得て、または条例に特別の定めを置いて提供する(49条の15第2項)と規定している。

〇 なお、令和3年5月に成立した「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」による改正個人情報保護法の施行(令和5年4月1日)後の避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の取扱いについては、令和4年6月28日付け内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(避難生活担当)・消防庁 国民保護・防災部防災課長通知「避難行動要支援者の避難確保に向けた名簿情報の提供・活用及び個別避難計画の作成について」及び令和4年9月2日付け内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(避難生活担当)・消防庁 国民保護・防災部防災課長通知「改正個人情報保護法の施行後の避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の情報提供に関する「条例に特別の定めがある場合」の取扱いについて」において示されている。

〇 避難行動要支援者の避難行動支援に関しては、内閣府HP「避難行動要支援者の避難行動支援に関すること」を参照されたい。

 

【条例の制定状況と内容】

〇 全国の市区町村では、災害対策基本法49条の11第2項を踏まえ、「避難行動要支援者名簿に関する条例」や「避難行動要支援者名簿情報の提供に関する条例」などの名称の条例を制定し、または防災対策に関する基本条例等を改正または制定して関係規定を置く団体が少なくないが、条文の書き方については、いくつかのタイプに分かれる。

 

①    避難行動要支援者の同意を得ないで避難支援等関係者に対して名簿情報を提供ができるものの、避難行動要支援者が拒否又は不同意の申出をした場合は、提供できないとするもの(このタイプの条例が最も多い)

兵庫県明石市 明石市避難行動要支援者名簿情報の提供に関する条例 平成28年3月24日公布

平成28年9月1日施行

第3条 市長は、災害の発生に備え、法第49条の11第2項の規定により、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、名簿情報を提供するものとする。この場合においては、名簿情報を提供することについて避難行動要支援者の同意を得ることを要しない。

2 前項の規定にかかわらず、市長は、避難行動要支援者が、規則で定める方法により、名簿情報の提供の拒否を申し出たときは、当該避難行動要支援者に係る名簿情報を提供することができない。

栃木県塩谷町 塩谷町災害時避難行動要支援者名簿に関する条例 令和元年9月30日公布

令和元年9月30日施行

第4条 町長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、前条第1項の規定により作成した避難行動要支援者名簿に記載し、又は記録された情報(以下「名簿情報」という。)を提供するものとする。この場合においては、名簿情報を提供することについて避難行動要支援者の同意を得ることを要しない。

2 前項の規定にかかわらず、町長は、避難行動要支援者が名簿情報の提供の拒否を申し出たときは、当該避難行動要支援者に係る名簿情報の提供をすることができない。

北海道石狩市 石狩市避難行動要支援者名簿に関する条例 平成27年12月17日公布

平成28年4月1日施行

第4条 市長は、災害の発生に備え、避難支援等関係者に対し、避難支援等(石狩北部地区消防事務組合にあっては、消防組織法(昭和22年法律第226号)第1条に規定する任務を含む。第6条及び第7条において同じ。)の実施に必要な限度で、前条第1項の規定により作成した避難行動要支援者名簿に記載し、又は記録された情報(以下「名簿情報」という。)を提供するものとする。

2 前項の規定にかかわらず、市長は、避難行動要支援者が、規則で定める方法により名簿情報の提供について同意しない旨を申し出たときは、当該避難行動要支援者に係る名簿情報を提供することができない。

新潟県小千谷市 小千谷市避難行動要支援者の個人情報の提供等に関する条例 令和5年3月27日公布

令和5年4月1日施行

第4条 市長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、避難行動要支援者の同意を得ることなく当該避難行動要支援者に係る名簿情報を提供することができるものとする。。

2 前項の規定にかかわらず、市長は、避難行動要支援者が名簿情報の提供の拒否を申し出たときは、当該名簿情報の提供をすることができない。

 

②    避難行動要支援者が拒否又は不同意の申出をした場合でも、一定の場合は名簿情報を提供できるとするもの

三重県津市 津市避難行動要支援者名簿情報の提供に関する条例 平成27年6月25日公布

平成27年7月1日施行

第3条 市長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、津市地域防災計画の定めるところにより、避難支援等関係者に対し、名簿情報を提供するものとする。ただし、次に掲げる場合を除き、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。)の同意が得られない場合は、この限りでない。

(1)避難行動要支援者が当該名簿情報の提供に関し、規則で定めるところにより拒否の申出をしていない場合

(2)前号の拒否の申出をした場合であっても、津市防災会議において、避難支援等の実施のために名簿情報の提供が必要であると認める場合

(3)第1号の拒否の申出をした場合であっても、津市情報公開・個人情報保護審査会の意見を聴いて、市長が避難支援等の実施を支援するために名簿情報の提供が必要であると認める場合

 

③ 一部の避難行動要支援者を除く名簿情報については、その同意を得ないで名簿情報を提供できるとするもの

愛媛県八幡浜市 八幡浜市避難行動要支援者名簿に関する条例 平成29年6月23日公布

平成29年6月23日施行

第4条 市長は、災害の発生等に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、名簿情報を提供するものとする。ただし、福祉施設その他の自宅以外に居住する者に係る名簿情報の提供については、この限りでない。

 

④ 一部の避難支援等関係者に対しては、避難行動要支援者の同意を得ないで名簿情報を提供できるとするもの

長野県茅野市 茅野市災害に強い支え合いのまちづくり条例 平成27年3月30日公布

平成27年4月1日施行

第22条 市は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、長野県警察、諏訪広域消防、民生委員法(昭和23年法律第198号)に定める民生委員(以下「民生委員」という。) 、社会福祉法人茅野市社会福祉協議会、自主防災組織その他避難支援等の実施に携わる関係者として規則で定めるもの(以下「避難支援等関係者」という。に対し、避難行動要支援者名簿に記載された情報(以下「名簿情報」という。)を提供するものとする。この場合において、長野県警察、諏訪広域消防及び民生委員へ提供する場合に限り、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。次項において同じ。)の同意を得ることを要しないものとする。

宮崎県日之影町 日之影町福祉情報の取扱いに関する条例 平成28年9月2日公布

平成28年10月1日施行

第7条 町長は、災害の発生に備え、地域における支え合い活動を推進するために必要があると認めるときは、次に掲げる団体、者又は機関(以下「団体等」という。)に対し、避難行動要支援者名簿に記載された情報(以下「名簿情報」という。)を提供することができる。この場合において、第1号から第5号までに規定する団体等へ提供する場合に限り、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。以下次項において同じ。)の同意を要しないものとする。

(1) 民生委員法(昭和23年法律第198号)に定める民生委員

(2) 介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の46第3項の地域包括センター

(3) 社会福祉法(昭和26年法律第455号)第109条第1項の市町村社会福祉協議会

(4) 警察法(昭和29年法律第162号)第53条第1項の警察署

(5) 消防組織法(昭和22年法律第226号)第9条の消防本部、消防署及び消防団

(6) 前各号に定めるもののほか、地域における支え合い活動に携わる関係者として規則で定めるもの

岐阜県岐阜市 岐阜市避難行動要支援者名簿の名簿情報の提供に関する条例 令和5年3月31日公布

令和5年4月1日施行

第3条 市長は、法第49条の11第2項の規定により、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者(注 「災害対策基本法(・・・)第42条第1項の規定による岐阜市地域防災計画に定める者に限る。」(1条)とされている。)に対し、名簿情報を提供するものとする。この場合において、市長は、名簿情報を提供することについて避難行動要支援者の同意を得ることを要しない。

 

⑤ 一部の避難支援等関係者に対しては、避難行動要支援者の同意を得ないで名簿情報を提供できるとするが、名簿提供を受ける避難支援等関係者は自治体と協定を結ぶものとするもの

愛媛県松山市 松山市避難行動要支援者名簿に関する条例 令和5年3月27日公布

令和5年4月1日施行

第3条 名簿情報の提供を受けようとする避難支援等関係者は,市長と名簿情報の取扱いに関する協定を締結しなければならない。

第4条 市長は,災害の発生等に備え,避難支援等の実施に必要な限度で,前条の規定により協定を締結した避難支援等関係者に対し,名簿情報を提供するものとする。この場合においては,名簿情報を提供することについて本人の同意を得ることを要しない。

東京都町田市 町田市避難行動要支援者の名簿情報の提供に関する条例 令和5年3月31日公布

令和5年4月1日施行

第3条 市長は、災害の発生に備え、法第49条の11第2項の規定により、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、名簿情報を提供するものとする。この場合において、東京消防庁町田消防署、警視庁町田警察署及び南大沢警察署、町田市の区域に置かれた民生委員法(・・・)に定める民生委員、社会福祉法人町田市社会福祉協議会その他避難支援等の実施に携わる関係者として町田市規則で定める者に提供する場合に限り、名簿情報を提供することについて避難行動要支援者の同意を得ることを要しない。

第4条 前条の規定により名簿情報の提供を受けようとする避難支援等関係者は、市長と名簿情報の取扱いに関する協定を締結するものとする。

 

〇 令和3年5月の災害対策基本法の改正施行により、避難行動要支援者ごとに個別避難計画を作成することを市町村の努力義務とする(49条の14)ともに、市町村長は、個別避難計画情報を、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対して、本人等の同意を得て、または条例に特別の定めを置いて、提供する(49条の15第2項)とされたが、個別避難計画の作成及び個別避難計画情報の提供等に関して定める条例が制定されている。例えば、以下のような条例がある。

愛知県大府市

大府市避難行動要支援者名簿に関する条例(改正前)

大府市避難行動要支援者名簿及び個別避難計画

に関する条例(改正後)

平成30年12月26日公布

令和4年3月25日改正公布

平成31年4月1日施行

令和4年4月1日改正施行

第9条 市長は、避難行動要支援者の同意を得て、個別避難計画を作成するものとする。

2 個別避難計画は、避難行動要支援者のうち、浸水想定区域、土砂災害警戒区域その他の災害時に人命に危険を及ぼす可能性が高いと市長が認める区域に居住する者(社会福祉施設その他の自宅以外の場所に居住する者を除く。)及び個別避難計画の作成を希望する者について作成するものとする。 (3項、4項 略)

第10条 市長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、個別避難計画に記載し、又は記録された情報(以下「個別避難計画情報」という。)を提供するものとする。

2 市長は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があると認めるときは、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者その他の者に対し、個別避難計画情報を提供することができる。 (3項 略)

静岡県裾野市

裾野市避難行動要支援者名簿に関する条例

令和4年3月8日公布

令和4年4月1日施行

第10条 市長は、地域防災計画の定めるところにより、名簿情報に係る避難行動要支援者ごとに、当該要支援者について避難支援等を実施するための計画(以下「個別避難計画」という。)を作成するよう努めるものとする。ただし、個別避難計画を作成することについて当該避難行動要支援者の同意が得られない場合は、この限りでない。 (2項~5項 略)

第11条 市長は、避難支援等の実施に必要な限度で、前条第1項の規定により作成した個別避難計画に記載し、又は記録された情報(以下「個別避難計画情報」という。)を、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。

2 市長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、地域防災計画の定めるところにより、避難支援等関係者に対し、個別避難計画情報を提供するものとする。ただし、個別避難計画情報を提供することについて当該個別避難計画情報に係る要支援者及び避難支援等実施者(以下「避難行動要支援者等」という。)の同意が得られない場合は、この限りでない。

3 長は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があると認めるときは、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者その他の者に対し、個別避難計画情報を提供することについて当該個別避難計画情報に係る避難行動要支援者等の同意を得ることを要しない。 (4項 略)

北海道滝川市

滝川市避難行動要支援者名簿情報及び個別避難計画情報の提供等に関する条例

令和5年3月8日公布

令和5年4月1日施行

第2条第2項 市長は、法第49条の15第2項ただし書の規定により避難支援等関係者に個別避難計画情報を提供する場合には、個別避難計画情報を提供することについて避難行動要支援者等(同項に規定する個別避難計画情報に係る避難行動要支援者及び避難支援等実施者をいう。第6条第2項において同じ。)の同意を得ることを要しないものとする。

第6条 第3条及び第4条の規定は、法第49条の15第2項の規定による個別避難計画情報の提供を受けた避難支援等関係者又は同条第3項の規定による個別避難計画情報の提供を受けた避難支援等関係者その他の者(以下これらの者を「個別避難計画情報の提供を受けた者」という。)について準用する。

2 個別避難計画情報の提供を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員)若しくは職員その他の個別避難計画情報を利用して避難支援等の実施に携わる者又はこれらの者であった者は、正当な理由がなく、当該個別避難計画情報に係る避難行動要支援者等に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

鳥取県米子市

米子市避難行動要支援者名簿情報及び個別避難計画情報の提供に関する条例

令和5年3月29日公布

令和5年6月1日施行

第3条 市長は、法第49条の10第1項及び第49条の14第1項の規定により、次に掲げる者について、避難行動要支援者名簿及び個別避難計画を作成するものとする。(1号~5号 略)

第5条 市長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、個別避難計画情報を提供するものとする。この場合においては、個別避難計画情報を提供することについて当該個別避難計画情報に係る避難行動要支援者及び避難支援等実施者の同意を得ることを要しない。

2 市長は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があると認めるときは、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者その他の者に対し、個別避難計画情報を提供することができる。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

 

〇 内閣府資料「避難行動要支援者の避難行動支援に関する事例集(平成29年3月)」は、避難行動要支援者名簿に関する条例のうちいくつかの条例を例示している(39頁~64頁)。

 また、内閣府及び総務省消防庁は「避難行動要支援者名簿及び個別避難計画の作成等に係る取組状況の調査結果」(令和5年1月1日現在)を公表しているが、これによると、全国の市区町村のうち、平常時の名簿情報の提供に際し、条例に特別の定めがある団体は160団体であり、このうち、「ア:本人同意がなくても名簿情報を提供することとしている」団体は4団体、「イ:条例により、名簿情報の提供に拒否を申し出た者を除き、名簿情報を提供することとしている」団体は65団体、「ウ:特定の避難支援等関係者(提供先)に対しては、本人同意がなくても名簿情報を提供することとしている」団体は7団体、「エ:個人情報保護条例上の規定を根拠として、名簿情報を提供することとしている」団体は77団体であり、「ア~エ以外に該当する場合」は7団体(5(2)災害対策基本法第49条の11第2項に基づく条例の特別の定めについて)であるとしている。

 

【参考】

〇 避難行動要支援者名簿等については、自治体法務研究2019年春号特集「災害時の避難行動要支援者等への支援」を参考のこと。

〇 防災行政における個人情報の取り扱い等について論じるものとして、宇賀克也「自治体のための解説個人情報保護制度」(第一法規 平成30年6月)105頁以下、高野祥一「地方自治体の個人情報の管理・共有―災害時の個人情報の取り扱いに関する残された課題を中心として」(都市問題vol.110 2019年2月)、幸田雅治「避難行動要支援者名簿情報の共有条例について人権の観点から考えるー行き過ぎた平常時共有に警鐘を鳴らす」(自治実務セミナー 2023年3月)等がある。



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