避難行動要支援者名簿に関する条例

                                                  (令和3年1月22日更新)

【避難行動要支援者名簿の作成と利用・提供】

〇  災害対策基本法(昭36年法律第223号)は、市町村長は、避難行動要支援者(災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要する要配慮者)について、避難行動要支援者名簿を作成しなければならない旨規定した(49条の10)うえで、避難行動要支援者名簿の利用と提供について、以下のような規定を置いている。

(名簿情報の利用及び提供)

第49条の11 市町村長は、避難支援等の実施に必要な限度で、・・・避難行動要支援者名簿に記載し、又は記録された情報(以下「名簿情報」という。)を、その保有に当たって特定された利用の目的以外の目的のために内部で利用することができる。

2 市町村長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、地域防災計画の定めるところにより、消防機関、都道府県警察、・・・民生委員、・・・市町村社会福祉協議会、自主防災組織その他の避難支援等の実施に携わる関係者(次項において「避難支援等関係者」という。)に対し、名簿情報を提供するものとする。ただし、当該市町村の条例に特別の定めがある場合を除き、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。次項において同じ。)の同意が得られない場合は、この限りでない。

3 市町村長は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があると認めるときは、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者その他の者に対し、名簿情報を提供することができる。この場合においては、名簿情報を提供することについて本人の同意を得ることを要しない。

〇 同条の規定は、

@    避難行動要支援者名簿の名簿情報を、避難支援等の実施に必要な限度で、市町村内部で目的外利用できる。

A     平常時に、名簿情報を、避難支援等の実施に必要な限度で、消防、警察、民生委員、自称防災組織等の避難支援等関係者に対して、本人の同意を得て、または条例に特別の定めを置いて提供する。

B    災害時には、名簿情報を、避難支援等関係者に対して、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があるときは、本人の同意を得ずして提供することができる。

ことを定めたものである。

〇 このような避難行動要支援者名簿に関する規定は、東日本大震災で得られた防災対策上の課題に対応するために災害対策基本法が改正された際に、追加された(平成26年4月1日改正施行)。

これは、これまで政府において、「『災害時要援護者の避難支援ガイドライン』(平成18年3月)に基づき、各市町村における災害時要援護者名簿の作成等を促進してきたところであるが、こうした名簿の作成・利用に当たっては、高齢者や障害者等に関する個人情報の利用・提供が個人情報保護条例によって制限され、@防災部局と福祉部局等との間で必要な個人情報の共有が行えない、A民生委員や消防団等の外部の避難支援者への情報提供が行えないという問題があったところである。しかしながら、災害多発国である我が国においては、いつどこで災害が発生してもおかしくなく、自力避難が困難な高齢者や障害者等を災害から保護するためには、全ての市町村において名簿が確実に作成され、平常時から避難支援体制を構築しておくことが重要である。このため、今般の法改正では、・・・避難行動要支援者名簿・・・の作成を市町村長に義務付け、名簿の作成に必要な個人情報の利用が可能となるよう個人情報保護条例との関係を整理するとともに、名簿の活用に関して平常時と災害発生時のそれぞれについて避難支援者に情報提供を行うための制度を設けることとしたものである。」(平成25年6月21内閣府政策統括官(防災担当)付参事官等通知「災害対策基本法等の一部を改正する法律による改正後の災害対策基本法等の運用について」10頁以下)としている。

なお、法律の規定と各自治体が制定している「個人情報保護条例との関係の整理」の考え方については、上記内閣府通知13頁〜18頁を参照されたい。

 

【条例の制定状況と内容】

〇 全国の市区町村では、災害対策基本法49条の11第2項を踏まえ、「避難行動要支援者名簿に関する条例」や「避難行動要支援者名簿情報の提供に関する条例」などの名称の条例を制定し、または防災対策に関する基本条例等を改正または制定して関係規定を置く団体が少なくないが、条文の書き方については、いくつかのタイプに分かれる。

 

@    避難行動要支援者の同意を得ないで避難支援等関係者に対して名簿情報を提供ができるものの、避難行動要支援者が拒否又は不同意の申出をした場合は、提供できないとするもの(このタイプの条例が最も多い)

兵庫県明石市明石市避難行動要支援者名簿情報の提供に関する条例平成28年3月24日公布

平成28年9月1日施行

第3条 市長は、災害の発生に備え、法第49条の11第2項の規定により、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、名簿情報を提供するものとする。この場合においては、名簿情報を提供することについて避難行動要支援者の同意を得ることを要しない。

2 前項の規定にかかわらず、市長は、避難行動要支援者が、規則で定める方法により、名簿情報の提供の拒否を申し出たときは、当該避難行動要支援者に係る名簿情報を提供することができない。

栃木県塩谷町塩谷町災害時避難行動要支援者名簿に関する条例 令和元年9月30日公布

令和元年9月30日施行

第4条 町長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、前条第1項の規定により作成した避難行動要支援者名簿に記載し、又は記録された情報(以下「名簿情報」という。)を提供するものとする。この場合においては、名簿情報を提供することについて避難行動要支援者の同意を得ることを要しない。

2 前項の規定にかかわらず、町長は、避難行動要支援者が名簿情報の提供の拒否を申し出たときは、当該避難行動要支援者に係る名簿情報の提供をすることができない。

北海道石狩市 石狩市避難行動要支援者名簿に関する条例 平成27年12月17日公布

平成28年4月1日施行

第4条 市長は、災害の発生に備え、避難支援等関係者に対し、避難支援等(石狩北部地区消防事務組合にあっては、消防組織法(昭和22年法律第226号)第1条に規定する任務を含む。第6条及び第7条において同じ。)の実施に必要な限度で、前条第1項の規定により作成した避難行動要支援者名簿に記載し、又は記録された情報(以下「名簿情報」という。)を提供するものとする。

2 前項の規定にかかわらず、市長は、避難行動要支援者が、規則で定める方法により名簿情報の提供について同意しない旨を申し出たときは、当該避難行動要支援者に係る名簿情報を提供することができない。

 

A    避難行動要支援者が拒否又は不同意の申出をした場合でも、一定の場合は名簿情報を提供できるとするもの

三重県津市 津市避難行動要支援者名簿情報の提供に関する条例 平成27年6月25日公布

平成27年7月1日施行

第3条 市長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、津市地域防災計画の定めるところにより、避難支援等関係者に対し、名簿情報を提供するものとする。ただし、次に掲げる場合を除き、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。)の同意が得られない場合は、この限りでない。

(1)避難行動要支援者が当該名簿情報の提供に関し、規則で定めるところにより拒否の申出をしていない場合

(2)前号の拒否の申出をした場合であっても、津市防災会議において、避難支援等の実施のために名簿情報の提供が必要であると認める場合

(3)第1号の拒否の申出をした場合であっても、津市情報公開・個人情報保護審査会の意見を聴いて、市長が避難支援等の実施を支援するために名簿情報の提供が必要であると認める場合

 

B 一部の避難行動要支援者を除く名簿情報については、その同意を得ないで名簿情報を提供できるとするもの

愛媛県八幡浜市 八幡浜市避難行動要支援者名簿に関する条例 平成29年6月23日公布

平成29年6月23日施行

第4条 市長は、災害の発生等に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、避難支援等関係者に対し、名簿情報を提供するものとする。ただし、福祉施設その他の自宅以外に居住する者に係る名簿情報の提供については、この限りでない。

 

C 一部の避難支援等関係者に対しては、避難行動要支援者の同意を得ないで名簿情報を提供できるとするもの

長野県茅野市茅野市災害に強い支え合いのまちづくり条例 平成27年3月30日公布

平成27年4月1日施行

第22条 市は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、長野県警察、諏訪広域消防、民生委員法(昭和23年法律第198号)に定める民生委員(以下「民生委員」という。) 、社会福祉法人茅野市社会福祉協議会、自主防災組織その他避難支援等の実施に携わる関係者として規則で定めるもの(以下「避難支援等関係者」という。に対し、避難行動要支援者名簿に記載された情報(以下「名簿情報」という。)を提供するものとする。この場合において、長野県警察、諏訪広域消防及び民生委員へ提供する場合に限り、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。次項において同じ。)の同意を得ることを要しないものとする。

宮崎県日之影町 日之影町福祉情報の取扱いに関する条例 平成28年9月2日公布

平成28年10月1日施行

第7条 町長は、災害の発生に備え、地域における支え合い活動を推進するために必要があると認めるときは、次に掲げる団体、者又は機関(以下「団体等」という。)に対し、避難行動要支援者名簿に記載された情報(以下「名簿情報」という。)を提供することができる。この場合において、第1号から第5号までに規定する団体等へ提供する場合に限り、名簿情報を提供することについて本人(当該名簿情報によって識別される特定の個人をいう。以下次項において同じ。)の同意を要しないものとする。

(1) 民生委員法(昭和23年法律第198号)に定める民生委員

(2) 介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の46第3項の地域包括センター

(3) 社会福祉法(昭和26年法律第455号)第109条第1項の市町村社会福祉協議会

(4) 警察法(昭和29年法律第162号)第53条第1項の警察署

(5) 消防組織法(昭和22年法律第226号)第9条の消防本部、消防署及び消防団

(6) 前各号に定めるもののほか、地域における支え合い活動に携わる関係者として規則で定めるもの

 

D 個人情報保護条例に定める手続きに従って、名簿情報を提供ができるとするもの

神奈川県海老名市海老名市災害対策基本条例 平成26年10月2日公布

平成27年1月1日施行

第16条 3市長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、かつ、自主防災組織及び民生委員法(昭和23年法律第198号)に定める民生委員をはじめ法第49条の11第2項に定める範囲の関係者に対し、避難行動要支援者名簿の情報を提供するものとする。

4 市長は、前項の規定により避難行動要支援者名簿の情報の提供を行うときは、海老名市個人情報保護条例第13条に規定する所要の手続を経るものとする。

山形県遊佐町遊佐町災害対策基本条例 平成28年3月14日公布

平成28年4月1日施行

第15条 3 町長は、災害の発生に備え、避難支援等の実施に必要な限度で、自主防災組織及び民生委員法(昭和23年法律第198号)に規定する民生委員をはじめ法第49条の11第2項に規定する範囲の関係者に対し、避難行動要支援者名簿の情報を提供することができる。

4 町長は、前項の規定により避難行動要支援者名簿の情報の提供を行うときは、遊佐町個人情報保護条例第9条に規定する所要の手続を経るものとする。

東京都渋谷区渋谷区震災対策総合条例 平成8年3月29日公布

平成28年4月1日施行

(平成31年3月28日最終改正施行)

第36条の2 区長は、前条第1項に規定する体制の整備を行うため、避難行動要支援者(要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するものをいう。)名簿を作成するものとする。

2 区長は、前項の名簿に含まれる個人情報(渋谷区個人情報保護条例(平成元年渋谷区条例第40号。以下「保護条例」という。)第2条第1号に規定する個人情報をいう。以下同じ。)のうち区規則で定めるものについて、保護条例第14条第2項の規定により目的外利用をし、又は自主防災組織等及び区規則で定めるものに対して、保護条例第15条第2項の規定により外部提供をし、必要な個人情報を共有させることができる。

 

【参考】

〇 避難行動要支援者名簿等については、自治体法務研究2019年春号特集「災害時の避難行動要支援者等への支援」を参考のこと。

〇 防災行政における個人情報の取り扱いについて論じるものとして、宇賀克也「自治体のための解説個人情報保護制度」(第一法規 平成30年6月)105頁以下、高野祥一「地方自治体の個人情報の管理・共有―災害時の個人情報の取り扱いに関する残された課題を中心として」(都市問題vol.110 2019年2月)等がある。




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