公文書管理に関する条例
(令和7年3月11日更新)
【条例制定状況】
〇 自治体の公文書管理条例の制定状況については、総務省が「地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査等(令和3年3月31日公表)」において、令和2年4月1日時点での公文書管理条例等の制定状況をとりまとめている(「公文書管理条例等、情報公開条例等の制定状況について」)。この調査によると、都道府県47団体(100.0%)、市区町村1,695団体(97.4%)において「公文書管理条例等」が制定済とされている。しかし、「公文書管理条例等」とは、「条例のほか、規則、規程、要綱等で定めている場合がある」としており、条例のみならず、規則等も含んだ数となっている。
〇 内閣府は、令和6年7月に「地方公共団体における公文書管理の取組調査」結果を公表している。令和6年4月1日時点で、全ての都道府県及び市区町村(都道府県経由)を対象に、公文書管理のためのルールの制定状況、歴史公文書の保存及び利用に関するルールの制定状況、歴史公文書の選別状況、公文書館の設置状況及び文書管理システムの導入状況を調査している。
これによると、「公文書管理のためのルール」については、都道府県は全団体(うち、条例は19団体)、市区町村は1733団体(99%)が制定しており、44都道府県では管内の全市区町村でルール等を制定している。なお、「ルール」については「条例かどうかといった形式は問わず、『一般的なルール』の必要条件は特に定義していない」(前記「地方公共団体における公文書管理の取組調査」)とされ、規則、規程、要綱等が含まれる。また、都道府県で条例を制定している19団体の条例のうち、福岡県の「福岡県立公文書館条例」(歴史公文書の保存、利用等を規定。なお、福岡県は、公文書管理に関しては「福岡県文書管理規程」を制定)が含まれている。また、19団体の条例には、静岡県の「静岡県公文書等の管理に関する条例」(令和6年3月28日公布・令和7年4月1日施行)は含まれていない。
〇 公文書管理条例について、条例のみに限った制定状況については、地方自治研究機構が各自治体の例規集等を調べたところ、令和7年3月7日時点で、以下の通り、都道府県で19団体、指定都市で8団体、市区町村(指定都市を除く)で39団体の制定が確認できる。全体としてみると、公文書管理条例を制定している自治体は少ないといえる。
〇 都道府県
島根県 | 島根県公文書等の管理に関する条例 | 平成23年3月11日公布 | 平成23年4月1日施行 |
熊本県 | 熊本県行政文書等の管理に関する条例 | 平成23年3月23日公布 | 平成24年4月1日施行 |
鳥取県 | 鳥取県公文書等の管理に関する条例 | 平成23年10月14日公布 | 平成24年4月1日施行 |
香川県 | 香川県公文書等の管理に関する条例 | 平成25年3月22日公布 | 平成26年4月1日施行 |
東京都 | 東京都公文書等の管理に関する条例 | 平成29年6月14日公布 | 平成29年7月1日施行 |
愛媛県 | 愛媛県公文書の管理に関する条例 | 平成30年7月20日公布 | 平成30年10月1日施行 |
山形県 | 山形県公文書等の管理に関する条例 | 平成31年3月15日公布 | 令和2年4月1日施行 |
滋賀県 | 滋賀県公文書等の管理に関する条例 | 平成31年3月22日公布 | 令和2年4月1日施行 |
高知県 | 高知県公文書等の管理に関する条例 | 令和元年7月3日公布 | 令和2年4月1日施行 |
兵庫県 | 公文書等の管理に関する条例 | 令和元年10月7日公布 | 令和2年4月1日施行 |
新潟県 | 新潟県公文書の管理に関する条例 | 令和元年10月18日公布 | 令和2年4月1日施行 |
三重県 | 三重県公文書等管理条例 | 令和元年12月23日公布 | 令和2年4月1日施行 |
長野県 | 長野県公文書等の管理に関する条例 | 令和2年3月19日公布 | 令和4年4月1日施行 |
群馬県 | 群馬県公文書等の管理に関する条例 | 令和2年3月27日公布 | 令和3年4月1日施行 |
岩手県 | 公文書の管理に関する条例 | 令和4年7月19日公布 | 令和4年10月1日施行 |
山口県 | 山口県公文書等管理条例 | 令和5年3月14日公布 | 令和6年4月1日施行 |
徳島県 | 徳島県公文書等の管理に関する条例 | 令和5年3月14日公布 | 令和6年4月1日施行 |
鹿児島県 | 鹿児島県公文書等の管理に関する条例 | 令和5年3月22日公布 | 令和6年4月1日施行 |
静岡県 | 静岡県公文書等の管理に関する条例 | 令和6年3月28日公布 | 令和7年4月1日施行 |
〇 指定都市
名古屋市 | 名古屋市情報あんしん条例 | 平成16年3月31日公布 | 平成16年4月1日施行 |
大阪市 | 大阪市公文書管理条例 | 平成18年3月31日公布 | 平成18年4月1日施行 |
札幌市 | 札幌市公文書管理条例 | 平成24年6月13日公布 | 平成25年4月1日施行 |
相模原市 | 相模原市公文書管理条例 | 平成25年12月24日公布 | 平成26年4月1日施行 |
熊本市 | 熊本市公文書管理条例 | 令和2年12月18日公布 | 令和3年4月1日施行 |
新潟市 | 新潟市公文書管理条例 | 令和3年3月26日公布 | 令和3年10月1日施行 |
仙台市 | 仙台市公文書等の管理に関する条例 | 令和5年3月14日公布 | 令和5年4月1日施行 |
千葉市 | 千葉市公文書等管理条例 | 令和5年12月19日公布 | 令和6年4月1日施行 |
〇 市区町村(指定都市除く)
熊本県宇土市 | 宇土市文書管理条例 | 平成13年3月23日公布 | 平成13年4月1日施行 |
北海道ニセコ町 | ニセコ町文書管理条例 | 平成16年12月17日公布 | 平成16年12月17日施行 |
広島県安芸高田市 | 安芸高田市公文書等の管理に関する条例 | 平成23年12月22日公布 | 平成24年4月1日施行 |
埼玉県志木市 | 志木市公文書管理条例 | 平成24年3月22日公布 | 平成24年4月1日施行 |
秋田県秋田市 | 秋田市公文書管理条例 | 平成24年12月27日公布 | 平成26年4月1日施行 |
滋賀県草津市 | 草津市市政情報の管理に関する条例 | 平成24年12月27日公布 | 平成25年3月31日施行 |
長野県小布施町 | 小布施町公文書管理条例 | 平成25年3月25日公布 | 平成25年4月1日施行 |
香川県高松市 | 高松市公文書等の管理に関する条例 | 平成25年3月27日公布 | 平成26年4月1日施行 |
香川県三豊市 | 三豊市公文書等の管理に関する条例 | 平成27年3月27日公布 | 平成27年4月1日施行 |
神奈川県藤沢市 | 藤沢市公文書等の管理に関する条例 | 平成28年6月24日公布 | 平成29年4月1日施行 |
栃木県高根沢町 | 高根沢町公文書管理条例 | 平成29年12月14日公布 | 平成30年1月1日施行 |
熊本県天草市 | 天草市行政文書管理条例 | 平成30年12月21日公布 | 平成31年4月1日施行 |
岩手県大槌町 | 大槌町公文書管理条例 | 平成31年3月7日公布 | 平成31年4月1日施行 |
栃木県那須町 | 那須町公文書の管理に関する条例 | 平成31年3月7日公布 | 平成31年4月1日施行 |
東京都豊島区 | 豊島区公文書等の管理に関する条例 | 平成31年3月25日公布 | 令和元年10月1日施行 |
群馬県渋川市 | 渋川市公文書等の管理に関する条例 | 令和元年12月12日公布 | 令和3年4月1日施行 |
東京都八王子市 | 八王子市公文書の管理に関する条例 | 令和元年12月17日公布 | 令和2年4月1日施行 |
東京都世田谷区 | 世田谷区公文書管理条例 | 令和2年3月25日公布 | 令和2年4月1日施行 |
滋賀県野洲市 | 野洲市公文書の管理に関する条例 | 令和2年3月25日公布 | 令和2年4月1日施行 |
千葉県市川市 | 市川市公文書等の管理に関する条例 | 令和2年3月25日公布 | 令和2年7月1日施行 |
山形県鶴岡市 | 鶴岡市公文書等の管理に関する条例 | 令和2年3月25日公布 | 令和3年4月1日施行 |
神奈川県茅ケ崎市 | 茅ヶ崎市公文書等管理条例 | 令和2年3月26日公布 | 令和3年4月1日施行 |
山形県酒田市 | 酒田市公文書等の管理に関する条例 | 令和3年3月18日公布 | 令和4年4月1日施行 |
石川県金沢市 | 金沢市公文書等の管理に関する条例 | 令和3年3月22日公布 | 令和3年4月1日施行 |
愛知県犬山市 | 犬山市公文書管理条例 | 令和3年3月24日公布 | 令和3年4月1日施行 |
香川県丸亀市 | 丸亀市公文書等の管理に関する条例 | 令和3年3月29日公布 | 令和3年4月1日施行 |
東京都小平市 | 小平市公文書等の管理に関する条例 | 令和3年3月31日公布 | 令和3年10月1日施行 |
滋賀県甲賀市 | 甲賀市公文書等の管理に関する条例 | 令和3年7月5日公布 | 令和4年4月1日施行 |
鹿児島県鹿児島市 | 鹿児島市公文書管理条例 | 令和3年12月17日公布 | 令和4年4月1日施行 |
兵庫県尼崎市 | 尼崎市公文書の管理等に関する条例 | 令和4年3月9日公布 | 令和4年4月1日施行 |
北海道東神楽町 | 東神楽町公文書管理条例 | 令和4年3月15日公布 | 令和4年4月1日施行 |
香川県さぬき市 | さぬき市公文書等の管理に関する条例 | 令和4年6月23日公布 | 令和5年4月1日施行 |
高知県高知市 | 高知市公文書等の管理に関する条例 | 令和5年4月1日公布 | 令和6年4月1日施行 |
福島県郡山市 | 郡山市公文書管理条例 | 令和6年3月15日公布 | 令和6年4月1日施行 |
埼玉県上尾市 | 上尾市公文書管理条例 | 令和6年3月22日公布 | 令和6年4月1日施行 |
大阪府和泉市 | 和泉市公文書の管理等に関する条例 | 令和6年3月25日公布 | 令和6年4月1日施行 |
山口県宇部市 | 宇部市公文書等管理条例 | 令和6年3月29日公布 | 令和7年4月1日施行 |
滋賀県湖南市 | 湖南市公文書の管理に関する条例 | 令和6年12月25日公布 | 令和7年4月1日施行 |
愛媛県愛南町 | 愛南町公文書の管理に関する条例 | 令和7年3月7日公布 | 令和7年4月1日施行 |
【法律の制定とその後の状況】
〇 平成21年7月に 公文書等の管理に関する法律(平成21年7月1日公布、平成23年4月1日施行 公文書管理法)が制定された。平成19年に、消えた年金記録(社会保険庁)、海上自衛隊補給艦とわだ航泊日誌の誤廃棄(防衛省)、C型肝炎関係資料の放置(厚生労働省)などの事案があり、「とりわけ、保存期間満了前の誤廃棄や倉庫への放置など、昨今の公文書管理に係る不適切な事例は、国に対する信頼を失わせるものであり、その再発防止は不可欠」であり、「公文書管理の在り方を抜本的に見直し、歴史的に重要な公文書が保存・利用されるよう、職員の意識改革を図るとともに、作成から利用までのライフサイクルを通じた公文書管理法制を確立し、公文書管理体制を充実強化することにより、国民の期待に応え得る公文書管理システムを構築していくことが必要である。」(公文書管理の在り方等に関する有識者会議最終報告「「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」~今、国家事業として取り組む~」平成20年11月4日 2頁)との問題認識のもと、制定された。なお、同法は、国の行政機関等を対象にしており、自治体については、「地方公共団体は、この法律の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない。」(34条)としており、必要な措置を講ずる努力義務を課している。
〇 また、平成29年から30年にかけて、森友学園への国有地売却をめぐる交渉記録の書換え(財務省)、南スーダンPKO日報の不存在・不開示決定後の発見(防衛省)などの事案があり、「一連の公文書をめぐる問題により、行政への信頼が損なわれている」として、平成30年7月20日に行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議において「公文書管理の適正の確保のための取組について」が決定され、「文書管理の状況を常にチェックする体制を構築して文書管理のPDCAサイクルを確立するとともに、これまでのともすれば各府省任せの文書管理から、政府全体で共通・一貫した文書管理へと考え方の転換を図り、文書管理の実務を根底から立て直すことを目指す」こととされた。なお、国の文書管理に関する法令や運用等については、内閣府HP「公文書管理制度」を参照のこと。
【個別自治体の条例】
〇 宇土市、名古屋市、ニセコ町及び大阪市条例は、公文書管理法が制定される以前に制定されている。
〇 宇土市では、情報公開条例制定の前提として、文書管理のあり方が検討され、フォルダー方式によるファイリングシステム導入が決定されたが、そのシステムの維持管理を確実にする観点から、宇土市文書管理条例が制定された。
ニセコ町では、平成10年情報公開条例が制定され、また平成12年に制定されたニセコ町まちづくり基本条例8条に「町は、まちづくりに関する情報を正確かつ適正に収集し、速やかにこれを提供できるよう統一された基準により整理し、保存しなければならない。」と規定されていることを踏まえ、ファイリングシステムを導入し、そのうえでニセコ町文書管理条例が制定された。
大阪市では、第3セクターの破綻や超過勤務手当に係る不適正事案に端を発して文書管理のあり方が問題となり、また、職員厚遇問題からコンプライアンス改革を進めることとなり、そうしたことを踏まえて、大阪市公文書管理条例が制定された。
これらの3条例制定の背景については、宇賀克也「逐条解説公文書等の管理に関する法律第3版」(第一法規 平成27年7月)277頁以下を参考にしている。また、同書では、それぞれの条例の内容についても、詳しい解説がなされている。そのうえで、3条例の特色は、宇土町条例は「ファイリングシステム重視型文書管理条例」、ニセコ町条例は「情報公開重視型文書管理条例」、大阪市条例は「文書作成・保存重視型文書管理条例」であるとしている(同書323及び324頁)。
なお、宇土市条例については、自治体法務研究2012年夏号条例制定の事例CASESTUDY「宇土市文書管理条例について」を参照のこと。
〇 名古屋市情報あんしん条例は、上記3条例と異なり、情報セキュリティと文書管理を一体的に規定したものであり、6条で「実施機関は、行政文書を適正に管理しなければならない」(1項)、「実施機関は、規則で定めるところにより、行政文書の管理に関する定めを設けるものとする」(2項)、「前項の規則においては、行政文書の分類、作成、保存及び廃棄に関する基準その他の行政文書の管理に関して必要な事項について定めるものとする」(3項)とし、条例施行規則において文書管理に関する定めが置かれている。本条例については、宇賀克也「情報公開・個人情報保護」(有斐閣2013年8月)162頁(注9)を参照のこと。
〇 公文書管理法制定後、島根県公文書等の管理に関する条例、熊本県行政文書等の管理に関する条例、鳥取県公文書等の管理に関する条例等が制定された。これらの条例については、上記宇賀克也「逐条解説公文書等の管理に関する法律第3版」324頁以下に詳しい。
〇 平成29年、30年の森友学園への国有地売却をめぐる交渉記録の書換え問題などを契機に、特に都道府県において積極的な条例制定の動きがみられる。平成29年以降、東京都公文書等の管理に関する条例、愛媛県公文書の管理に関する条例、山形県公文書等の管理に関する条例、滋賀県公文書等の管理に関する条例、高知県公文書等の管理に関する条例、兵庫県公文書等の管理に関する条例、新潟県公文書の管理に関する条例、三重県公文書等管理条例、長野県公文書等の管理に関する条例、群馬県公文書等の管理に関する条例、(岩手県)公文書の管理に関する条例、山口県公文書等管理条例、徳島県公文書等の管理に関する条例、鹿児島県公文書等の管理に関する条例及び静岡県公文書等の管理に関する条例が制定されている。
このうち、東京都条例については豊洲築地市場の決定過程を示す文書の不作成問題、愛媛県条例については愛媛県における加計学園獣医学部設置をめぐる協議記録問題が契機となっているとされる。
なお、山口県公文書管理条例検討会第1回会議(令和3年10月19日)参考資料3「公文書管理法と条例制定済都県の公文書管理条例との比較表」は、島根県から群馬県までの14都県条例の内容比較一覧表を掲載している。
〇 また、平成29年以降、市区町村においても、高根沢町公文書管理条例、天草市行政文書管理条例、大槌町公文書管理条例、那須町公文書の管理に関する条例、豊島区公文書等の管理に関する条例、渋川市公文書等の管理に関する条例、八王子市公文書の管理に関する条例、世田谷区公文書管理条例、野洲市公文書の管理に関する条例、市川市公文書等の管理に関する条例、鶴岡市公文書等の管理に関する条例、茅ヶ崎市公文書等管理条例、熊本市公文書管理条例、酒田市公文書等の管理に関する条例、金沢市公文書等の管理に関する条例、犬山市公文書管理条例、新潟市公文書管理条例、丸亀市公文書等の管理に関する条例、小平市公文書等の管理に関する条例、甲賀市公文書等の管理に関する条例、鹿児島市公文書管理条例、尼崎市公文書の管理等に関する条例、東神楽町公文書管理条例、さぬき市公文書等の管理に関する条例、仙台市公文書等の管理に関する条例、高知市公文書等の管理に関する条例、千葉市公文書等管理条例、郡山市公文書管理条例、上尾市公文書管理条例、和泉市公文書の管理等に関する条例、宇部市公文書等管理条例、湖南市公文書の管理に関する条例及び愛南町公文書の管理に関する条例が制定されている。
なお、大槌町条例は、東日本大震災の検証を行った際のヒアリング記録などが破棄された問題が契機となっているとされる。
【その他】
〇 上記宇賀克也「逐条解説公文書等の管理に関する法律第3版」338頁以下では、地方公共団体の課題として、①住民自治の理念にのっとった公文書管理法制を設けるという認識が、公文書管理条例の目的規定に示されることが必要であることなど、②現用文書と非現用文書を包摂し文書のライフスタイル全体を視野に入れたオムニバス方式の公文書管理条例とすることが望ましいことなど、③公文書管理法が用いている「特定歴史公文書等」に対応する非現用文書についても、住民の利用請求権を保障することなど、④地方独立行政法人や地方3公社も公文書管理条例で規律すべきことなど、⑤指定管理者については、行政事務を代行している限りにおいて、公文書管理条例の実施機関とすることは可能であることなど、⑥コンプライアンス確保の仕組み(公文書管理状況の長への報告の義務づけ、報告結果の概要の公表、監査など)についても、条例で定めるべきことなど、⑦公文書管理委員会のような外部の有識者の知見を活用する仕組みを整備すべきことなどを指摘している。
〇 早川和宏「地方公共団における公文書管理条例制定の状況と特色」(「地方公共団における公文書管理制度の形成―現状と課題」(公職研2017年4月)66頁以下)は、公文書管理法の趣旨にのっとると、最低限、①現用文書(行政文書・法人文書に相当する文書)のみならず、非現用文書(特定歴史公文書等に相当する文書)の管理についても定めていること、②国立公文書館等に相当する組織を設け、特定歴史公文書等に相当する文書の保存・利用について定めていること、③公文書管理委員会に相当する組織を設け、その専門的知見・第三者性を生かすこと、④地方公共団体が保有する歴史公文書等の利用関係を、情報提供ではなく権利・義務の関係として定めること、⑤地方公共団体自身はもとより、地方独立行政法人等に対しても、文書管理に関する義務を課すものであること、が公文書管理条例で規律されていることが必要であるとしている。そのうえで、平成27年3月までに制定された各条例を分類し、それぞれの特色について述べている。
〇 小池知子「「公文書管理条例」には何が求められるのか」(ガバナンス2020年2月号)は、日弁連法務研究財団有志による公文書管理条例研究班で作成された公文書管理条例案を紹介するとともに、自治体が公文書管理条例を制定する際の留意点について述べている。
〇 宮間純一編「公文書管理法時代の自治体と文書管理」(勉誠出版 2022年10月)や友岡史仁編著「公文書管理ー自治体条例制定・公文書保存実務ー」(信山社 2023年3月)は、自治体における文書管理や公文書管理条例のあり方等を多面的に論じているので参照されたい。