星空保全条例・光害防止条例

(令和7年2月3日更新)

【はじめに】

〇 星空防止条例や光害防止条例を取り上げるが、本稿では、光害を防止することを目的とする条例又は光害を防止する規定を置く条例を「光害防止条例」とし、光害防止条例のうち、特に星空の保全を目的とする条例又は星空の保全に関する規定を置く条例を「星空保全条例」とする。

〇 「光害」とは、「ひかりがい」と読み、「照明の設置方法や配光が不適切で、景観や周辺環境への配慮が不十分なために起こるさまざまな影響」のことを言う(環境省HP「星が見えない!光害ってなに?」)とされる。

 光害を防止するため、環境省は「光害対策ガイドライン」(令和10年3月策定、令和18年12月及び令和3年3月に改訂)を策定しているが、「光害」は法令用語ではなく、「光害」の防止を目的とする法律もない。ましてや、「星空」も法令用語ではなく、「星空」の保全を目的とする法律はない。

〇 他方で、自治体では、平成元年11月に岡山県の旧美星町が、光害を防止し、星空を保全することを目的とし、屋外照明器具等の制限や基準を定め、その遵守を義務づける「美しい星空を守る美星町光害防止条例」を制定して以来、星空保全条例が、また、平成13年12月に岡山県が「岡山県快適な環境の確保に関する条例」を制定し、光害防止の観点から、屋外照明器具設置者に対する努力義務やサーチライト等の投光器の使用の禁止を規定して以来、星空保全条例以外の光害防止条例が、他の市町村や都道府県でも制定されるようになった。

〇 以下、こうした星空保全条例や光害防止条例を概観する。

〇 なお、環境省は、平成13年9月に地方自治体向けに「光害防止制度に係るガイドブック」を作成し、光害防止条例制定の際の検討ポイント等を示している。また、星空保全条例や光害防止条例の制定状況等については、鈴木颯汰・上河原献二「星空保全条例の制定動向と制定契機について」(環境情報科学学術研究論文集35号 令和3年11月)が論じている。

 

【星空保全条例】

〇 まず、星空保全条例としては、以下のような条例が確認できる。すなわち、

岡山県美星町(合併前)

 

   井原市(合併後)

美しい星空を守る美星町光害防止条例(旧条例) 平成元年11月22日公布

平成元年11月22日施行

美しい星空を守る井原市光害防止条例(新条例) 平成16年12月17日公布

平成17年3月1日施行

令和3年1月1日改正施行

群馬県高山村 高山村の美しい星空を守る光環境条例 平成10年3月20日公布

平成10年10月1日施行

熊本県清和村(合併前)

   山都町(合併後)

光源の適正化による星空保全及び資源の節約

に関する条例(合併により廃止)

平成14年6月18日公布

平成14年6月18日施行

兵庫県 景観の形成等に関する条例

平成17年4月1日改正施行

鳥取県 鳥取県星空保全条例 平成29年12月26日公布

平成30年4月1日施行

岡山県浅口市 浅口市日本一の天体観測適地を守る条例 平成30年3月23日公布

平成30年4月1日施行

東京都神津島村

神津島村星空公園条例 令和元年12月4日公布

令和2年1月1日施行

神津島村の美しい星空を守る光害防止条例 令和元年12月4日公布

令和2年1月1日施行

熊本県山都町 山都町星空環境保全条例 令和2年3月9日公布

令和2年3月9日施行

沖縄県国頭村 国頭村星空公園設置条例 令和6年3月22日公布

令和6年3月22日施行

である。 

〇 以上の条例のうち、兵庫県条例は景観の形成等に関する条例に星空の保全に関する規定を置いているが、他の条例はすべて星空の保全を目的とする条例である。

 

(旧美星町・井原市の条例)

〇 星空保全条例や光害防止条例として全国で最初に制定されたのは、平成元年11月制定の岡山県美星町の「美しい星空を守る美星町光害防止条例」である。しかし、美星町は平成17年3月に井原市に編入されたため、現在は、「美しい星空を守る井原市光害防止条例」に改められている。新旧条例は、一部内容の変更はあるものの、基本部分はほぼ同じである。

〇 光害から美しい星空を守るため、井原市美星町の区域内を対象に、市民等(市民、旅行者及び滞在者)及び事業者に対して、照明器具の設置及び使用等の制限を課すものである。

〇 新条例は、適用区域(2条)、光害防止の目標(4条)、市、市民等及び事業者の責務(5条~7条)、光害防止審議会(8条)、光害防止モデル地区の指定(10条)、照明器具等の制限及び配光基準(11条)、新規の公共の屋外照明について(14条)、照明時間の制限の奨励(16条)、光害の監視(18条)、調査・改善命令・公表(19条~21条)等の規定を置いている。罰則規定はない。

 光害を「空気中の分子又は塵挨が人工の照明を散乱、反射することによって発生する散乱光のため、自然の状態の星空の背景が明るくなり、星が見えにくくなること」(2条1号)と定義づけている。

 光害防止の目標は、旧条例では「国際天文学連合の勧告にならい、人工光による夜空の明るさの増加の程度が、自然の状態の夜空の明るさの1割を越えないようにすること」(3条)としていたが、新条例では「井原市美星町の区域内において、夜空の明るさが前年度の明るさを下回ること」(4条)としている。

 照明器具等の制限等は、屋外照明は原則として規則に定める光源、配光基準及び敷地ごとに定める合計光束基準を満たすものとすること、屋外での投光機の使用は原則として禁止すること、建築物・看板等を照明する場合は下から上に向けて投光することを禁止すること、屋外照明にその用途に応じ適正で必要最小限の光を使用するよう十分な配慮をしなければならないこと、事業所等の屋内照明はできるだけ屋外に光を漏らさないよう配慮しなくてはならないこと等を規定している(11条 新条例)。

 照明時間は、屋外照明は午後10時から翌朝日の出までの間消灯することを奨励するものとしている(16条 新条例)。

 市長は、屋外照明の基準に従わない者に対して改善命令を出すことができ、命令違反者に対して氏名等の公表をすることができるとしている(20条、21条 新条例)

〇 旧条例は、米国のキットピーク国立天文台に近いアリゾナ州ツーソン市で1972年(昭和47年)に制定された条例を参考にしているとされている(井上繁「まちづくり条例―その機能と役割」(ぎょうせい 1998年1月)264頁)。

〇 条例前文を読むと、旧美星町の条例立案者の思いが伝わってくる。少し長くなるが、参考までに掲載する。

 「美星町には、流れ星の伝説と、その名にふさわしい美しい星空がある。天球には星座が雄大な象形文字を描き、その中を天の川が流れている。さらに、地平線から天の川と競うように黄道光が伸び、頻繁に流れ星がみられる。また、夜空の宝石ともいえる星雲や星団は、何千年、何万年以上もかかってその姿を地上に届けている。これら宇宙の神秘をかいま見ることができる環境は、町民のみならず全人類にとってかけがえのない財産となっている。しかし、宇宙は今、光害によってさえぎられ、視界から遠ざかって行こうとしている。人工光による光害の影響は半径100㎞以上にも及び人々から星空の美と神秘に触れる機会を奪うだけでなく過剰な照明は資源エネルギーの浪費を伴い、そのことが地球をとりまく環境にも影響を与えている。また、過剰な照明により、夜の安全を守るという照明本来の目的に反するのみならず、動植物の生態系にも悪影響を与えることも指摘されている。 近隣には主要な天文台が設置されているとおり、町の周辺は天体観測に最も適した環境にあり、町はこれまで『星の郷づくり』に取り組んできた。そして、今後も多くの人々がそれぞれに感動をもって遙かなる星空に親しむよう宇宙探索の機会と交流の場を提供することが町及び町民へ与えられた使命と考える。このためわが美星町民は 町の名に象徴される美しい星空を誇りとしてこれを守る権利を有し 義務を負うことをここに宣言し、全国に先がけてこの条例を制定する。」(旧条例前文 新条例もほぼ同じ)

〇 なお、井原市は、米国のNPO団体「国際ダークスカイ協会(IDA)」による「星空保護区」の認定を目指し、様々な活動に取り組み、令和3年11月1日付で認定を受けた(井原市HP「【美星町】アジア初となる「星空保護区(コミュニティ部門)」に認定」)。

(高山村の条例)

〇 美星町条例に続いて、制定されたのが、平成10年3月制定の群馬県高山村の「高山村の美しい星空を守る光環境条例」である。「高山村における夜間照明等の光環境に関し、村民の夜間の安全性や生産活動等の社会的活動に必要な照明を確保しつつ、人工光の増加を抑制することによって、高山村の美しい星空と光環境を維持すること」(1条)を目的としている。

 高山村に県立ぐんま天文台が建設されたことを契機として、条例が制定された(高山村HP「高山村光環境条例 ~美しい星空を守り伝えるために~ 」参照)。

〇 条例の目的、内容、構成などは、美星町条例とかなりの程度似ており、村、村民及び事業者等の責務(2条、3条)、光環境審議会の設置(4条)、光環境モデル地区の指定(6条)、照明器具等の制限(7条)、照明時間の制限の奨励(11条)、光の監視(12条)、調査・改善命令・公表(13条~15条)等の規定を置いている。

(旧清和村の条例)

〇 旧清和村は、平成14年に「光源の適正化による星空保全及び資源の節約に関する条例」を制定した。しかし、平成17年2月の合併により(山都町が発足)、旧清和村が廃止され、同条例も廃止された。なお、山都町は、令和2年3月に「山都町星空環境保全条例」を制定している。

 旧清和村には、村立の清和高原天文台(現在の山都町清和高原天文台)が設置されていた。

〇 同条例は、「村民の生活と生産に必要な照明を確保しつつ光源の適正化を図ることで、美しい星空の保全によって天文の啓発に資するとともに、資源の節約及び自然に近い生態系を維持すること」(1条)を目的とし、村、村民及び事業者等の責務(2条、3条)のほか、照明器具等の制限(4条)、環境保全委員会(6条)等の規定を置いていた。

(兵庫県の条例)

 兵庫県条例は、平成17年4月1日に「景観の形成等に関する条例」 を改正施行し、新たに第3章の3として「星空景観形成地域」に関する規定を置いた。

 すなわち、知事は、星空景観形成地域を指定し、同地域においては星空景観の形成を阻害する行為を禁止するとともに、知事が定めた星空景観形成照明基準の遵守を義務づけている(21条の2~21条の5)。また、違反行為に対して、知事は改善命令等をすることができる(21条の6)とするほか、同地域内で多数の照明器具を使用する特定施設を設置等する場合は知事への届出を義務づけている(21条の7)。命令違反者や無届出者等に対して罰則を科す(33条、35条)こととしている。

(鳥取県の条例)

〇 鳥取県は、平成29年12月に「 鳥取県星空保全条例」を制定した。

〇 目的は、「県内随所で天の川を観測することができる鳥取県の美しい星空が見える良好な環境について、これが清浄な大気と光害の少なさによってもたらされることを踏まえ、光害の防止に関して、行政、県民等及び事業者の責務及び役割を明らかにし、県民生活及び事業活動に必要な照明を確保しつつ必要な規制を行うとともに、星空環境を観光及び地域経済の振興や環境教育に活用することを推進する」(1条)こととしている。

〇 光害の防止に関する規制は、①全県を対象に、投光器やレーザーを原則として禁止する(7条)、②星空保全地域を指定し、当該地域に係る星空保全照明基準を定め、照明器具を設置・使用する者に当該基準の遵守を義務づける(9条~12条)、の二つの態様であり、いずれの場合も、知事は、規定に違反する者に対して勧告をすることができ、勧告に従わない場合は鳥取県景観審議会の意見を聴いて命令をすることができ(8条、14条)、命令違反者に対して罰則を科す(22条)こととしている。

〇 本条例の内容、運用等については、鳥取県HP「星空環境・保全」を参照のこと。また、鳥取県は、同県を「星取県」としてPRしている(鳥取県HP「CATCH the STAR 鳥取県」参照)。

(浅口市の条例)

〇 平成30年に制定された浅口市の「浅口市日本一の天体観測適地を守る条例」は、「浅口市が晴天率が高く、大気が安定しているため、優れた天体観測適地として広く認められ、世界最先端の観測が行われていることを踏まえ、観測に影響を与える光(以下「光害」という。)の防止に努めることで、浅口市の美しい星空環境を守ること」(1条)を目的としている。

 浅口市には、旧岡山天体物理観測所(国立天文台ハワイ観測所岡山分室)が設置され、また、京都大学岡山天文台も設置されている。

〇 本条例は、3条から構成され、目的のほかは、市の役割(2条)並びに市民及び市内事業者の役割(3条)を規定している。

(神津島村の条例)

〇 東京都神津島村は、令和元年12月に、星空に関する条例を二つ制定した。すなわち、「神津島村星空公園条例」と「神津島村の美しい星空を守る光害防止条例」である。 

〇 二つの条例は、美しい星空を保護することを目的とするもので、神津島村は、これらの条例に基づく取り組みを進めることにより、「星空保護区」の認定を目指し(神津島村HP「東京都初!!めざす!☆『星空保護区』認定」)、その結果、令和2年12月1日付で認定を受けた(神津島村HP「東京都初! 星空保護区認定決定」)。

 なお、神津島の星空のことについては、NPO法人神津島観光協会HP「神津島まるごとプラネタリウムー東京の島で星空さんぽー」を参照されたい。

〇 星空公園条例は、神津島村の全区域内を「星空公園」として指定するものである。目的(1条)、指定範囲(2条)、村長等の責務(3条)の3条から構成されている。都市公園や自然公園等国の法令に基づくものや地方自治法244条の公の施設でもなく、「優れた星空を保護するとともに、その利用の増進を図り、もって村民の生活や動植物などへの環境保護の向上に資する」(1条)ために、神津島の全区域を「星空公園」として位置付けることとしたものと考えられる。

〇 美しい星空を守る光害防止条例は、光害から美しい星空を守るため、神津島村の全区域内を対象に、村民等(村民、旅行者及び滞在者)及び事業者に対して、屋外照明及び屋外照明広告看板の設置・運用、屋外アクティビティでの照明器具の使用等に制限を課すものである。

〇 光害防止の目標(4条)、村、村民等及び事業者の責務(5条~7条)、光害防止審議会(8条)、屋外照明の設置・運用において配慮すべき事項(10条)、屋外アクティビティからの光漏れの制限(11条)、照明を使用する屋外広告看板の制限(12条)、光害の監視(15条)、調査・改善命令・公表(17条~18条)等の規定を置いている。罰則規定はない。

 光害防止の目標を、神津島村の区域内において夜空の明るさ mag/arcsec²(マグニチュードパー平方秒角といい、単位平方秒角あたりの等級を示す。)の数値が前年度よりも悪化しないこと(4条)とし、屋外照明について相関色温度は3,000K(ケルビン)以下でなければならない、照射方向は上方光束がゼロとなるように設置する、点灯時間は施設や店舗等は閉館・閉店時刻をもって消灯する、屋外照明広告看板は日没時刻の1時間後以降から日の出時刻の1時間前まで点灯してはならず日没時刻以降の輝度は100cd/㎡(カンデラ毎平方メートル)以下でなければならないとするなど、極めて専門的でかつ詳細な基準を設けている(10条~12条)。これらの基準は、「星空保護区」の認定を得るために必要なものと考えられる。

(山都町の条例)

〇  平成30年に制定された山都町の「 山都町星空環境保全条例」は、「山都町が天文台を有する町として、天体観測に適した環境を後世へ引き継いでいく必要があることを踏まえ、町民の生活と生産に必要な照明を確保しつつ光害の防止を図ること」(1条)を目的としている。

 本条例は、平成30年度の子ども議会において提案があったことを踏まえて制定された(山都町HP「山都町星空環境保全条例を制定しました」参照)。

〇 町、町民及び事業者の責務(3条、5条)、照明器具等の減灯又は消灯の協力要請(4条)、照明器具等の制限(6条)等の規定を置いている。

(国頭村の条例)

〇 沖縄県国頭村は、星空保護区の認定を目指し、令和6年3月に、「国頭村星空公園設置条例」を制定した。

〇 本条例は、4条から構成され、「暗い夜空と暗い自然環境を守るべき資源として保護すると共に、滞在型観光の拠点としてその利用促進を図り、村民の生活や動植物等への環境保全に資すること」を目的とし、村内の4つの観光施設(国頭村森林公園、やんばる学びの森、奥やんばるの里、安田くいなふれあい公園)を星空公園として指定している(1条、2条)。そして、星空公園は「やんばるダークスカイ・フォレスト(Yambaru Dark Sky Forest)」と呼称、表記する(3条)とし、村長等の責務(4条)を規定している。

 あわせて、光害害防止のため、国頭村屋外照明管理規則(令和6年3月22日公布・施行)を制定し、施設等に対する屋外照明の設置・運用について配慮すべき事項を定めている。

〇 国頭村は、「2022年8月にダークスカイ・ジャパンの下部組織である星空保護推進機構により国頭村内4つの観光施設(国頭村森林公園・やんばる学びの森・奥やんばるの里・安田くいなふれあい公園)を調査したところ、これらの施設が星空保護区に認定された地域に匹敵する「夜空の暗さ」があることがわかりました。 この調査を契機に、国頭村はこれら4つの施設の星空保護区認定を目指すため、生活に必要な灯を維持しつつ、「不必要な光(光害)」の改善に取り組んでいます。」(国頭村HP「国頭村アストロツーリズム専用ホームページ開設のお知らせ」)とし、「国頭村内で見ることのできる、四季折々の星座や惑星、流星群などの天体ショーの情報を、星好きな皆様にお届け」するため、専用のホームページ「やんばるダーク スカイ☆フォレスト(Yambaru Dark Sky Forest)」を開設している。

 

【星空保全条例以外の光害防止条例】

〇 星空保全条例以外の光害防止条例としては、以下のような条例が確認できる。すなわち、

岡山県 岡山県快適な環境の確保に関する条例 平成13年12月21日公布

平成14年4月1日施行

佐賀県 佐賀県環境の保全と創造に関する条例平成14年10月7日公布

平成15年4月1日施行

熊本県 熊本県生活環境の保全等に関する条例

平成16年10月1日改正施行

浜松市 浜松市音・かおり・光環境創造条例  平成16年3月23日公布

平成16年10月1日施行

大分県 美しく快適な大分県づくり条例  平成16年3月31日公布

平成16年4月1日施行

埼玉県草加市 草加市公害を防止し市民の環境を確保する条例 平成16年9月17日公布

平成17年4月1日施行

東京都八王子市 八王子市サーチライト等の使用規制に関する条例 平成16年9月28日公布

平成16年10月1日施行

山梨県 山梨県生活環境の保全に関する条例 

平成17年10月1日改正施行

宮崎県 みやざき県民の住みよい環境の保全等に関する条例  平成17年3月29日公布

平成17年10月1日施行

石川県金沢市 金沢市における夜間景観の形成に関する条例    平成17年9月22日公布

平成17年10月1日施行

東京都清瀬市 清瀬市サーチライト等の使用規制に関する条例    平成17年9月30日公布

平成17年10月1日施行

佐賀県嬉野市 嬉野市サーチライト等の使用規制に関する条例    平成18年1月1日公布

平成18年1月1日施行

神奈川県横須賀市 横須賀市サーチライト等の使用規制に関する条例    平成19年3月29日公布

平成19年4月1日施行

神奈川県茅ケ崎市 茅ヶ崎市民の美しく健康的な生活環境を守る条例   

平成19年7月1日改正施行

長野県飯田市 飯田市土地利用調整条例    平成19年6月26日公布

平成20年1月1日施行

長崎県 長崎県未来につながる環境を守り育てる条例    平成20年3月25日公布

平成20年10月1日施行

香川県 香川県生活環境の保全に関する条例   

平成20年10月1日改正施行

さいたま市 さいたま市生活環境の保全に関する条例    平成20年10月17日公布

平成21年4月1日施行

千葉県浦安市 浦安市環境保全条例    平成20年12月25日公布

平成21年7月1日施行

長野県

良好な生活環境の保全に関する条例

令和3年10月18日改正施行

である。

〇 これらの条例のうち、八王子市、清瀬市、嬉野市及び横須賀市の条例はサーチライト等の使用規制を目的とし、金沢市条例は夜間景観の形成を目的としているが、他の条例は環境保全条例等において光害防止に関する規定を置いている。

 令和3年に改正施行された長野県条例を除き、いずれの条例も平成13年から平成20年までの間に制定されている。

〇 環境保全条例等において光害防止に関する規定を置いている条例のうち、都道府県条例は、岡山県、佐賀県、熊本県、大分県、山梨県、宮崎県、長崎県、香川県及び長野県の条例である。

 これらの条例は、光害防止に関する規定として、屋外照明設備の設置者の努力義務、サーチライト等投光器の使用禁止・違反者に対する知事の命令・命令違反者に対する罰則等の規定を置いている(但し、佐賀県条例は命令違反者に対する罰則規定はなく、宮崎県条例は屋外照明設備の設置者の努力義務規定はない。岡山県条例20条~24条、29条、佐賀県条例84条、91条、熊本県条例87条~92条、107条、大分県条例31条~33条、35条5号、山梨県条例50条~52条、74条、宮崎県条例63条、64条、76条2号、長崎県条例40条~42条、100条3号、香川県条例119条~121条、141条2号、長野県条例51条~52条の3、60条)。

 岡山県条例は、星空保全条例を除く光害防止条例としては、全国最初に制定されたが、光害を「発光器具から照射される光の量又は方向により、不快感、信号等の重要情報の認知力の低下、動植物への影響、天体観測への障害等人の活動及び動植物に悪影響が生ずること」(2条7号)と定義づけている。

 長野県条例は、令和3年10月に改正施行され、光害防止に関する規定が追加されたが、これは、塩尻市内のラブホテルが夜空にサーチライトを照射し市民らから「光害」だと苦情が出ていた問題が契機となっている(信濃毎日新聞令和3年3月4日記事「「光害」県が規制検討 知事「条例改正を視野に」」参照)とされる。本条例の改正内容等については、長野県HP「光害防止について」を参照されたい。

〇 環境保全条例等において光害防止に関する規定を置いている条例のうち、市町村条例は、浜松市、草加市、茅ケ崎市、飯田市、さいたま市及び浦安市の条例である。

 このうち、浜松市条例は、騒音、悪臭及び光害の防止を目的としているが、光害防止に関しては、照明器具等の減灯等の協力要請、照明器具等の設置等における配慮、営業時間外における減灯又は消灯の奨励、投光器等の使用禁止・違反者に対する市長の勧告、命令、公表等(10条~15条)を規定している。光害を「照明器具又は光源(以下「照明器具等」という。)から発せられる光のうち、その目的とする照射範囲の外に漏れる光(以下「漏れ光」という。)又は過剰な輝きが周辺に及ぼす安眠の妨げ、天体観測への影響、道路標識、信号機等の視認性の低下等の影響のこと」(2条2号)と定義づけている。

 また、草加市条例は光害防止による夜間の生活環境の保全(52条)を、茅ケ崎市条例はサーチライト等の使用禁止と違反者に対する市長の勧告、公表(19条)、飯田市条例はサーチライト等の使用禁止(3条)を、さいたま市条例は屋外照明設備の設置者の努力義務、サーチライト等の使用禁止と違反者に対する市長の勧告(104条~107条)を、浦安市条例は投光器等の使用に当たっての市民生活への配慮(62条)を規定している。

〇 サーチライト等の使用規制を目的とする条例は、八王子市、清瀬市、嬉野市及び横須賀市の条例であるが、いずれの条例もサーチライト等の使用を禁止している。違反者に対しては、八王子市及び嬉野市の条例は市長による警告、勧告、公表を規定し、清瀬市条例及び横須賀市の条例は市長による勧告、命令、公表、命令違反者に対する罰則を規定している。

〇 金沢市条例は、夜間景観の形成を目的としているが、照明環境形成地域の指定、照明環境形成基準の策定、同地域内における一定の行為をする場合の市長への事前協議、市長による助言、指導、勧告、公表等(7条~13条)、夜間景観形成区域の指定、夜間景観形成基準の策定、同地域内における一定の行為をする場合の市長への届出、市長による助言、指導、勧告、公表等(14条~21条)を規定している。

〇 なお、上記の条例のほか、ラブホテル建築規制条例ではサーチライト等の照明設備があるラブホテルの建築を禁止している(例えば、茨城県小美玉市の小美玉市茨城空港周辺におけるラブホテルの建築等規制条例2条3号、別表第2)ものがあり、風力発電設備設置・運用規制条例では小型風力発電設備等設置の際の光害防止配慮義務を規定している(例えば、稚内市小型風力発電設備等の設置及び運用の基準に関する条例10条)ものがある。



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