ほめる条例

                                                  (令和3年1月21日更新)

【一日ひと褒め条例】

〇 兵庫県多可町は、平成30年12月、議員提案により、

兵庫県多可町

多可町一日ひと褒め条例

平成30年12月26日公布

平成31年1月1日施行

 を制定した。

〇 4条から構成され、目的(1条)、住民等の役割(2条)、事業所の役割(3条)及び町の役割(4条)に関する規定を置いている。

〇 まず前文で、「情報通信技術の発達により生活は便利になった」ものの、「匿名のまま他人を批判、傷つけることができる時代にもなった」としたうえで、「褒める言葉や感謝の言葉は、人々により一層寛容な心を養い、元気な社会づくりに大きく寄与できる」との基本的な認識を示している。そして、条例の目的を「一日に一度は人を褒めるまたは感謝の気持ちを伝えることにより、互いの心を尊重し、明るく前向きな活力ある社会を築くこと」(1条)とし、住民等は「他の人の良い言動や成果を見つけ出し、感謝の気持ちを素直に伝えるとともに、積極的に称賛することに努める」(2条)こと、事業者は「経営者及び従業員が積極的に互いにコミュニケーションを図り、風通しの良い職場をつくるとともに、職場環境の改善につながる言動等に対し、称賛することに努める」(3条)こと、町は「褒める言葉、感謝の気持ちを伝える住民等及び事業所の取り組みを支援するとともに、意識の啓発、啓蒙に努める」(4条)ことを、それぞれの役割として規定している。いずれも理念的な規定である。

〇 本条例は、町を明るく健全で活気あるものとするため、若い商工業者から構成される商工会未来創造実践部と町議会が意見交換を重ね、褒めることによる人間関係・社会関係への効果や課題等も検討のうえ、条例案を議会側が作成し、パブリックコメントを経て、議会運営委員会が条例案を発議し、制定されたとされる(自治体法務研究2019年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「多可町一日ひと褒め条例」参照)。

 

【ほめることを規定する条例】

〇 多可町条例のように、「ほめる」ことを規定する条例は、全国でいくつかある。しかし、意外なこと(?)に極めて少ない。

  まず、条例名で「ほめる」を使っているものとしては、多可町条例のほかは、確認できるものとしては、以下の2条例である。

岡山県井原市

井原市子誉め条例

平成16年3月18日公布

平成16年4月1日施行

鹿児島県志布志市

志布志市子ほめ条例

平成18年1月1日公布

平成18年1月1日施行

  この2つの条例は、いわゆる「子ほめ条例」と言われるもので、善行を行い又は学業等に優れた児童生徒を市町村が表彰することを規定している。志布志市条例では、ボランティア賞、親切賞、親孝行賞、友情賞、あいさつ賞、努力賞、創造賞、勤労賞、読書賞、学芸賞、スポーツ賞及び特別賞の12の賞を定めている。

〇 次に、上記の条例のほか、「ほめる」を本文中に使っている条例として確認できるものは、以下の4条例である。 

岡山市

岡山市市民協働による自立する子どもの育成を推進する条例

平成18年12月27日公布

平成19年4月1日施行

岩手県遠野市

遠野市わらすっこ条例

平成21年3月23日公布

平成21年4月1日施行

岩手県奥州市

奥州市子どもの権利に関する条例

平成24年1月6日公布

平成24年4月1日施行

鹿児島県姶良市

姶良市子育て基本条例

平成25年3月27日公布

平成24年4月1日施行

  このうち、遠野市条例及び奥州市条例とは関係部分はほぼ同じ規定で、地域住民、教育関係者、市等の共通の責務の一つとして、「子どものよさを見つけてほめることで、子どもが自信及び誇りを持ち、自分を見つめ、生きる力を養うために必要な支援(こと)」(遠野市条例8条3号、奥州市条例9条3号)を掲げ、また、岡山市条例と姶良市条例とも関係部分はほぼ同じ規定で、家庭の責務(役割と責任)の一つとして、「子どもの思いを受け止め、適切に褒め、叱ることで、子どもが自立に必要な力を身につけられるようにすること」(岡山市条例4条1項2号、姶良市条例4条2号)を掲げている。子どもへの保護者等の責務として、前者は「ほめること」、後者は「適切に褒め,叱ること」に着目している。

 

【廃止か、存続か。市町村合併により分かれた「子ほめ条例」の動向】

〇 いわゆる「子ほめ条例」は、昭和60年に栃木県国分寺町が制定した「国分寺町童生徒表彰に関する条例が最初とされる。その後各地に広がり、平成15年当時、秋田県飯田川町、秋田県雄和町、新潟県相川町、栃木県南那須町、栃木県大田原市、栃木県国分寺町、和歌山県上富田町、岡山県鏡野町、島根県江津市、山口県錦町、大分県朝地町、大分県前津江村、鹿児島県東町及び鹿児島県志布志町の14市町村で制定されていた(福留強「子ほめ条例のまちは変わるのか」(イザラ書房 2005年5月)130頁)とされる。

〇 国分寺町条例は、「町立小・中学校児童生徒の優れた個性を発見してこれを表彰し、もって児童生徒の健全な心身の発達を助長すること」(1条)を目的とし、町長が学校長の上申・教育員会の内申に基づき、児童生徒に努力賞、奉仕賞、親切賞、体育賞又は学芸賞の表彰(賞状と銅製メダル)を行い、表彰は義務教育終了まで1人1回とする旨を規定していた(清水英男「地域ぐるみの青少年育成に関する一考察―児童・生徒に関する表彰条例『子ほめ条例』を中心として」(聖徳大学生涯学習研究所紀要2号 2004年3月)16頁以下)。他の条例もほぼ同様の内容を持ち、学校と地域が連携して、児童生徒の良さを積極的に見つけ、表彰しようとするものである(「子ほめ条例」の意義等については。上記福留著書及び清水論文を参照のこと)。なお、これらの条例には、一部を除き、「ほめる」という用語は使用されていない。

〇 平成15年当時「子ほめ条例」を制定していた上記14市町村は、比較的人口規模の小さな団体が多いが、当時進められていた市町村合併により、多くの団体が他の市町村と合併した。その結果、秋田県飯田川町(平成17年3月合併して潟上市に)、秋田県雄和町(平成17年1月秋田市に編入)、新潟県相川町(平成16年1月合併して佐渡市に)、山口県錦町(平成18年3月合併して岩国市に)、大分県朝地町(平成17年3月合併して豊後大野市に)、大分県前津江村(平成17年3月に日田市に編入)では、合併とともに条例は廃止され、その後合併後の市においては同種の条例は制定されていない。

〇 一方で、栃木県南那須町(平成17年10月合併して那須烏山市に)、栃木県大田原市(平成17年10月他市町村を編入)、栃木県国分寺町(平成18年1月合併して下野市に)、岡山県鏡野町(平成17年3月合併して鏡野町に)、鹿児島県東町(平成18年3月合併して長島町に)、鹿児島県志布志町(平成18年1月合併して志布志市に)では、栃木県大田原市は合併後も条例が存続し、他の町では合併により条例は廃止されたものの新市町において同種の新たな条例が制定された。また、和歌山県上富田町は、合併をせず、条例は存続している。なお、島根県江津市は、平成16年10月に他の町を編入し、条例(江津市児童生徒の表彰に関する条例)は存続したものの、平成28年3月廃止された。

〇 以上の結果、上記14市町村の条例のうち、合併後の新市町において同種の新たな条例が制定されたものも含め、現在施行されている条例は、以下のとおりである。

栃木県那須烏山市

那須烏山市児童生徒を伸ばすすこやか条例

平成17年10月1日公布

平成17年10月1日施行

栃木県大田原市

大田原市児童生徒表彰条例

平成2年3月26日公布

平成2年4月1日施行

栃木県下野市

下野市児童表彰条例

平成18年12月20日公布

平成12年12月20日施行

和歌山県上富田町

上富田町児童表彰に関する条例

平成12年12月22日公布

平成13年4月1日施行

岡山県鏡野町

かがみのっ子表彰に関する条例

平成17年3月1日公布

平成17年3月1日施行

鹿児島県長島町

長島の子表彰に関する条例

平成22年9月27日公布

平成22年10月1日施行

鹿児島県志布志市

志布志市子ほめ条例

平成18年1月1日公布

平成18年1月1日施行




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