議会基本条例

                                                  (令和3年1月22日更新)

【議会基本条例】

〇 議会基本条例の全国の制定状況については、自治体議会改革フォーラムとNPO法人公共政策研究所の2つの組織が調査をし、ホームページ上で公表している。

  このうち自治体議会改革フォーラムHP「議会基本条例制定状況(自治体リスト)【2020年7月1日更新】」は、都道府県順に、制定自治体名と制定年を列挙している。それによると、2019年4月1日現在全国、全国888の自治体で議会基本条例を制定しており、全国の自治体における制定自治体の割合(制定率)は49.7%となる。また、内訳は、道府県が32団体(68.1%)、指定都市が16団体(80.0%)、特別区が3団体(13.0%)、市が509団体(66.0%)、町村が328団体(35.4%)である(カッコ内はいずれも制定率)。自治基本条例が全国の2割強の自治体で制定されているのに対して、議会基本条例は5割弱の自治体で制定されていることになる。また、自治基本条例は都道府県では2道県のみが制定しているが、議会基本条例は32道府県が制定している。条例名は、ごく一部を除き、すべて「議会基本条例」という名称であり、その例外は、北海道足寄町の「議会総合条例」、岩手県葛巻町の「議会総合条例」及び滋賀県愛荘町の「議会改革条例」であるとしている。

  もうひとつのNPO法人公共政策研究所「全国自治基本条例・議会基本条例の施行状況(2019.12.1現在)」は、NPO法人公共政策研究所が、令和元年(2019年)10月28日〜12月20日の間、全国1788自治体ホームページ例規集調査により調査・分析した、自治基本条例と議会基本条例の施行状況に関する資料である。自治基本条例と議会基本条例の施行順に、自治体名、条例名、施行日を掲載するとともに、年度別施行状況と都道府県別普及率を分析している。これによると、議会基本条例は、令和元年(2019年)12月1日現在、全国860の自治体で制定されている。また、全国で最初に施行されたのは、平成18年5月の栗山町議会基本条例であることがわかる。全国最初の自治基本条例は、平成13年4月のニセコ町まちづくり基本条例であるので、議会基本条例は自治基本条例に比べて約5年遅れて制定され始めたこととなる。ちなみに、両町とも、北海道の自治体である。下記の表は、この資料の中で掲載されている、議会基本条例の年度別の施行状況である。これによると、平成20年代前半、制定する自治体が一気に増加し、平成25年度では単年度で155の自治体で制定された。その後、増加傾向は鈍化しているが、令和元年度までに約半数の自治体で制定されている。

 

【議会基本条例とは】

〇 議会基本条例とは、「議会の組織及び運営の方針と基本的ルールを定める条例」であるとされる(礒崎初仁「自治体政策法務講義(改訂版)」(第一法規 平成30年3月)64頁)。

〇 議会基本条例は、地方分権推進に伴い議会の役割と権限が強化されている一方で、住民からは議会や議員の活動に対して厳しい目が向けられている中で、地方議会自らが議会の活性化、議会の改革の取組みを積極的に行うようになり、その大きな柱として制定が進められてきたものである。

  議会の活性化、議会の改革の動きは、一般的に、住民との関係の強化と政策形成機能の強化の両面から進められてきた。住民との関係強化の面では、会議の公開、議員の賛否公開、参考人・公聴会の充実、議会報告会や住民との意見交換会の開催、議会審議への住民参加、議会モニター制度、夜間・土日会議の開催など、政策形成機能の強化の面では、一問一答方式の導入、首長等への反問権の付与、積極的な議員間討論の実施、議決事項の追加、委員会による政策提言、議員提案条例の提出、外部専門家の活用、事務局体制の強化、通年議会制度などが進められてきた。こうした新たな議会のあり方、運営のルールなどを、条例の形で住民に示し、議会、議員の活動の指針とするのが、議会基本条例であるとも言える。

〇 江藤俊昭「地方議会改革と議会基本条例」(自治体法務研究2018年夏号特集「市町村議会の活性化と住民参加」)は、「議会基本条例制定の最も大きな意義は、『新たな議会増像』−@閉鎖的な議会から住民に開かれ住民と歩む議会、A質問・質疑だけの場から議員間討議を重視する議会、Bそれらを踏まえながら追認機関ではなく首長等と政策競争をする議会、という3つの原則−を宣言したことである」と評価する一方で、議会基本条例の制定はあくまで「『形式』の改革にすぎない」のであり、「議会改革によって住民福祉の向上につなげることが必要である」としている。

〇 吉田勉「第5章自治制度の改革第4節議会改革の取組み」(自治体法務検定公式テキスト政策法務編2019年度検定対応(第一法規 平成31年2月)228頁以下)は、議会改革の状況、議会基本条例の内容、課題等についてコンパクトにまとめている。廣瀬克也・自治体議会改革フォーラム「議会改革白書2016年版」(生活社 2016年10月)は「議会基本条例10年」を、また、自治体法務研究2018年夏号は「市町村議会の活性化と住民参加」を、それぞれ特集しているので、参照されたい。

  

【条例の具体例】

〇 議会基本条例の内容については、個々の条例によって異なるが、前文、総則(目的・基本方針等)、議会・議員の活動原則、議会運営の基本ルール、住民との関係、長との関係、政策形成・調査機能の強化、議会基本条例の位置づけ等が規定されることが多い。

〇 上記礒崎著書は、議会基本条例は、下記の4つのタイプに分けることができるとしている(65頁)。  

@理念型条例    議会のあり方や基本理念について定める条例

A基本事項型条例  議会の組織・運営の基本事項について定める条例

B改革推進型条例  議会の組織・運営のうち、議会審議の活性化、住民参加の推進等に重点をおいて定める条例

C総合型条例    議会の組織・運営について、法定の条例事項を含めて総合的な規定を定める条例

〇 以下、これまで制定された特徴的な条例を紹介し、その内容等について概観する。

  なお、出石稔「議会基本条例」(自治体法務研究「比較解説 自治立法のトレンド」2008年春号)は、平成20年までに制定された自治基本条例について、詳細に分析をするとともに、内容について考察し、解説しているので、参照されたい。以下の記述は、出石解説及び礒崎著書を参考にしている。

〇 栗山町

北海道栗山町

栗山町議会基本条例

平成18年5月18日公布

平成18年5月18日施行

  全国で最初に制定された議会基本条例である。議員定数の削減などにより住民との協働による議会を目指す必要がある中で、議会改革・活性化策に努め、「町民に開かれた議会づくり」に取り組んできた集大成として制定した(栗山町HP「議会の活動−議会基本条例−」)としている。

  現在、前文、目的(1章)、議会・議員の活動原則(2章)、町民と議会の関係(3章)、町長と議会の関係(4章)、自由討議の拡大(5章)、政務活動費(6章)、議会改革の推進(7章)、議会・議会事務局の体制整備(8章)、議員の身分・待遇、政治倫理(9章)、最高規範性及び見直手続(10章)の、全体で10章、27条(なお、平成18年制定当時は、9章21条)から構成される。

  前文では、二元代表制における議会の使命、地方分権下での議会の役割、討論の広場である議会の責務を踏まえ、議会運営の独自ルールの遵守と実践により、町民に信頼される議会を築く決意を表明している。

  そのうえで、議会と議員の活動原則を示す(2条、3条)とともに、地方自治法に基づく必須条例事項である議員定数及び議員報酬並びに任意条例事項である議決事件の追加及び政務活動費に関する規定、独自ルールである、議会主催による一般会議の設置、請願・陳情の町民からの政策提案としての位置づけ、全議案に対する議員賛否の公表、議会報告会開催の義務化、町長等の反問権の付与、政策形成過程に関する資料の提出の義務化、議員相互間の自由討議、政治倫理、議会モニター、議会サポーター、正副議長志願者の所信表明に関する規定等を置いている。

  さらに、条例の最高規範性(25条)及び1年ごとの条例見直し(27条)の規定を置いている。この見直し規定により、これまで9次にわたる条例改正がなされてきている。

  本条例の内容、改正経緯、議会改革の取組み等については、栗山町HP「議会の活動−議会基本条例−」を参照のこと。

〇 湯河原町

神奈川県湯河原町

湯河原町議会基本条例

平成18年12月12日公布

平成19年4月1日施行

  全国で2番目に公布された議会基本条例である。湯河原町自治基本条例と同時に施行されている。18条から構成されている。町民を代表する議事機関として議会の使命を規定している(2条)。会派活動の規定(11条)や議員の懲罰(13条)等の規定を置いている。条例の最高規範性に関連して、議会は「この条例で定める目的、原則等を実現するために必要な事項について条例、規則等を制定し、議会運営の仕組みを体系的に整備しなければならない」(18条1項)と規定している。

〇 三重県

三重県

三重県議会基本条例

平成18年12月26日公布

平成18年12月26日施行

  全国で3番目に公布され(施行としては2番目)、都道府県で最初に制定された議会基本条例である。「三重県議会では、分権時代を先導する議会を目指して、積極的に議会改革に取り組んできましたが、これまでの取り組みを後戻りさせることなく、さらなる改革に取り組むことを決意し、この条例を制定した」(三重県HP「議会基本条例」)としている。現在、10章、28条で構成されている。

  基本理念として「議会は、分権時代を先導する議会を目指し、県民自治の観点から、真の地方自治の実現に取り組むものとする」(2条)と規定し、また、知事等との関係の基本原則として「議会は、二元代表制の下、知事等と常に緊張ある関係を構築し、事務の執行の監視及び評価を行うとともに政策立案及び政策提言を通じて、県政の発展に取り組まなければならない」(8条1項)等と規定している。会派に関する規定(5条)を置いている。

  「別に条例で定めるところにより、附属機関を設置することができる」(12条)とするとともに、調査機関、検討会等の設置の規定を置いている(13条、14条)。

  「必要があると認めるときは、この条例の規定について検討を加え」ること(28条)しており、これまで3次にわたり改正されている。

  三重県議会の議会改革の取組み等については、三重県HP「議会改革のさまざまな取組」を参照のこと。

〇 伊賀市

三重県伊賀市

伊賀市議会基本条例

平成19年2月28日公布

平成19年2月28日施行

  全国で4番目に公布された議会基本条例である。現在、10章、26条で構成されている。伊賀市自治基本条例が約2年前に制定されており、「この条例は、伊賀市の最高規範である『伊賀市自治基本条例』の第5章『議会の役割と責務』の具体化を目指したもの」(伊賀市HP「伊賀市議会基本条例」)としている。議会報告会の開催について、独立した規定(8条)を置いている。議会報告会は、「市民からの要請ではなく、積極的に出向いての議会報告会」であるとしており、また、「住民自治協議会等の単位で開催することや、報告会での議員の役割、班編成など詳細は要綱で定め」ている(伊賀市議会資料「伊賀市議会基本条例」)。

〇 会津若松市

福島県会津若松市

会津若松市議会基本条例

平成20年6月23日公布

平成20年6月23日施行

  「会津若松市議会は、議会からの政策サイクルを提唱し、実践」しており、「議会改革のトップランナー」の一つとされる(江藤俊昭「議会改革の第2ステージ」(ぎょうせい 平成28年9月)27頁)。

  本条例は、23条から構成されるが、「議員としての『議決責任』(8条)と『説明責任』(5条1項)を条文に明記したというのが、第一の特徴」であるとし、「議決責任は説明責任の遂行をもって果たす」ため、「『議員間討議』(12条)が重要である」としたうえで、「市民との意見交換会」(5条5項〜7項)、「広報広聴委員会」(6条)、政策討論会(13条)により、意見聴取→意見整理・問題発見・課題設定→問題分析・政策立案という「政策サイクル」を回している(目黒章三郎「会津若松市議会の議会改革と議会基本条例」(自治体法務研究2018年夏号特集「市町村議会の活性化と住民参加」))としている。会津若松市議会の議会改革の取組みについては、会津若松市HP「議会改革」を参照のこと。

〇 川崎市

川崎市

川崎市議会基本条例

平成21年6月23日公布

平成21年7月1日施行

  指定都市で最初に制定された議会基本条例である。7章20条で構成される。他の議会基本条例が、それぞれの議会の独自ルールを具体的に規定しているのに対して、議会及び議員の役割及び活動原則、議会と市長等との関係、議会運営、市民と議会、議会の体制整備に関して、基本的事項を中心に規定している。また、議員定数、定例会の回数、委員会、政務活動費、議員報酬及び費用弁償並びに資産等の公開については、別の条例で定める(19条1項)としている。A基本事項型条例のタイプ(礒崎著書)とされる。本条例の内容、制定経緯等については、川崎市HP「議会基本条例(条例解説、用語解説)」を参照のこと。

〇 横須賀市

神奈川県横須賀市

横須賀市議会基本条例

平成22年6月25日公布

平成22年6月25日施行

  横須賀市は、平成14年に「横須賀市議会会議条例」を制定したが、これは議会基本条例のさきがけとなったと評価されている(出石解説)。地方自治法120条で本会議に関することは「会議規則」を定めることとされる一方で、委員会に関することは「委員会条例」を制定することとされているのに対して、「会議条例」を制定して、議会法制の再整備を実現したとされる(出石解説)。

  議会基本条例は、この横須賀市会議条例を廃止し、それを吸収した形で、本会議に関する基本的事項なども含めた、総合的な議会基本条例として制定された。C総合型条例のタイプ(礒崎著書)とされる。10章、34条から構成される。平成29年改正施行により、通年議会制を明記している(4条)。横須賀市の議会改革の取組み等については、横須賀市HP「これまでの主な議会改革の歩み」を参照のこと。

〇 飯綱町

長野県飯綱町

飯綱町議会基本条例

平成24年9月25日公布

平成25年10月5日施行

  飯綱町議会は、政策サポーター制度の創設、政策提言の実施など積極的に議会改革を行っていることで知られており、これまで何度かマニフェスト大賞優秀成果賞等を受賞している。そうした取組みの中で、議会基本条例が制定されている。「他の町村の模倣ではなく、理念だけでもなく、議員間討議を経て、4年9か月の実践から作り上げた条例」であるとしている(清水満「飯綱町議会の議会改革と議会基本条例」(自治体法務研究2018年夏号特集「市町村議会の活性化と住民参加」))。

  7章、22条で構成されている。「目指す議会像」として、「住民に開かれた議会」、「町長と切磋琢磨する議会」、「自由で活発な議論が展開される議会」、「政策提言のできる議会」、「住民の声を行政に反映する議会」、「飯綱町の民主主義と住民自治発展の推進力となる議会」を示している(2条)。「議会は、政策提言活動に積極的に取り組む。その際、町民目線での政策研究の一環として『政策サポーター制度』を創設することができる」(7条)と規定し、政策サポーター制度を条例において位置付けて、議会は「議会活動の評価等を1年ごとに調製し、議会白書として町民に公表する」(16条2項)として、議会の自己評価と議会白書の公表を義務付けている。飯綱町議会の改革の経緯と白書の内容については、「平成30年度版飯綱町議会白書」を参照のこと。

〇 武蔵野市

東京都武蔵野市

武蔵野市議会基本条例

令和2年3月24日公布

令和2年4月1日施行

  令和2年4月、武蔵野市自治基本条例とともに施行された。11章、25条から構成されている。

〇 江藤俊昭「地方議会改革と議会基本条例」(自治体法務研究2018年夏号特集「市町村議会の活性化と住民参加」)は、議会基本条例は、各自治体において見直しが進められ、 改正が重ねられつつある結果、内容が「豊富化」してきているとし、その具体例を一覧表にして示しているので、参照されたい。




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