歯科保健に関する条例

                                                  (令和3年1月22日更新)

【全国の制定状況】

〇 歯科保健に関する条例の制定状況については、8020推進財団が調査し、そのHP「都道府県歯科保健条例制定マップ」で公表している。

  これによると、都道府県については、平成31年3月29日現在、44道府県で制定されている。全国で最初に制定されたのは、平成20年7月の新潟県歯科保健推進条例である。この後、平成21年に3道県で制定され、平成22年から平成26年にかけて一気に制定が進み、平成31年3月には沖縄県歯科口腔保健の推進に関する条例が制定されている。条例未制定の団体は、東京都、福井県及び大阪府の3都府県である。

  兵庫県の健康づくり推進条例以外はすべて歯科保健に関する単独条例であり、条例名は、「歯科保健推進」(新潟県、長野県)、「歯科口腔保健の推進」(埼玉県、福島県、群馬県、福岡県)を除き、多くは「歯・口腔の健康づくり」、「歯と口腔(口)の健康づくり」等となっている。なお、兵庫県の健康づくり推進条例は「健康づくりの推進のための施策」の一つとして「歯及び口腔の健康づくり」を規定(12条、13条)している。また、最初に条例名に「歯」、「口腔(口)」及び「健康」を使用したのは、平成21年6月制定の北海道歯・口腔の健康づくり8020推進条例である。

〇 市町村については、同じく上記「都道府県歯科保健条例制定マップ」によると、令和2年10月1日現在、全国161団体で制定されている。その内訳は、市が115団体、特別区が3団体、町が39団体、村が4団体となっている。市町村で最初に制定されたのは平成22年12月の裾野市民の歯や口腔の健康づくり条例である。その後平成23年から27年にかけて全国の多くの市区町村で制定が進められた。平成28年以降も、毎年、数団体が条例を制定しており、最も新しいものは、令和2年6月制定(公布)の横須賀市歯及び口腔の健康づくり推進条例である。条例名は、その大部分は「歯科口腔保健の推進」または「歯と口腔の健康づくり」となっている。地域的には、栃木県、千葉県、埼玉県、静岡県、愛知県、岐阜県において制定市町村の数が多い。

 

【条例制定の経緯等】

〇 全国最初に制定された新潟県歯科保健推進条例は、「県歯科医師会および『子供の歯を守る会』が中心となって,自由民主党県議団,県行政等への働きかけと条例案の具体化に向けた作業が行われ」(深井穫博・大内章嗣「歯科保健推進条例の広がりと今後の展望」(保健医療科学 2011 Vol.60 No.5)369頁)、県議会において議員提案により提出され、平成20年7月に成立したものである。また、「新潟県で議員発議による歯科保健推進条例が制定されたという情報は,ただちに歯科保健行政担当者や都道府県歯科医師会関係者に一種の『コロンブスの卵』をみるような驚きとともに伝わり,2009年(平成21年)6月には,『北海道歯・口腔の健康づくり8020推進条例』が制定されるなど,次々とまさに連鎖していった」(上記深井穫博・大内章嗣論文370頁)とされる。

  条例を制定している44道府県のうち、福島県、山梨県、兵庫県、福岡県及び沖縄県を除く39道府県では、議員提案により制定されている。歯科医師会関係者による県議会関係者等への働きかけにより、各道府県において条例制定が進められていったと見ることができる。

〇 逆に、市町村においては、首長提案による条例が議員提案による条例よりはるかに多い。ちなみに、総務省「地方自治月報」における議員提案による条例に関する調によると、平成29年度末までに議員提案により制定された歯科保健に関する条例は26条例であるが、同じく平成29年度末までに制定された150条例(上記「都道府県歯科保健条例制定マップ」)に占める割合は、2割弱に過ぎない。8割以上が首長提案により制定されていることになる。

  また、三重県伊賀市が平成25年度第1回伊賀市健康づくり推進協議会に提出した「市区町村歯科口腔保健条例の概要」によると、平成25年4月中旬までに首長提案により制定された22市区町村の条例の経緯については、@歯科医師会からの要望(請願なし) 22団体、A首長が歯科医で首長の施策 3団体、B歯科大学との連携のため 1団体(以上、複数回答含む)となっており、首長にも歯科医師会関係者から働きかけがなされていたことが窺える。

〇 歯科口腔保健の推進に関する法律(平成23年法律95号)が、平成23年8月10日に公布・施行された。この法律の制定までの経緯については、上條英之「歯科口腔保健法の制定と背景」(保健医療科学 2011 Vol.60 No.5))に詳しいが、歯科保健医療関係者の間では長年にわたる悲願であったとも言え、「一部の都道府県での条例制定の動きと歯科関係者の熱意も影響し、結果的に議員立法により」(上記上條論文361頁)、制定されるに至ったとされる。

  同法は、「歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持(以下「歯科口腔保健」という。)の推進に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、歯科口腔保健の推進に関する施策の基本となる事項を定めること等により、歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的に推進し、もって国民保健の向上に寄与すること」(1条)を目的とし、国と地方公共団体は、歯科口腔保健に関する知識等の普及啓発、定期的に歯科検診を受けること等の勧奨、障害者等が定期的に歯科検診を受けること等のための施策、口腔の健康に関する調査及び研究の推進等を講じる(7条〜11条)こととされ、歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の策定を、国には義務づけ(12条)、都道府県には努力義務を課している(13条)。

  なお、法律制定後においても、都道府県、市町村のいずれにおいても、条例制定は進められた。

〇 法律や条例制定の背景には、歯科口腔保健施策の充実を求める関係者の熱意があったと考えられるが、条例や法律の制定が歯科保健事業予算の確保や地域歯科口腔保健推進体制の整備に与えた影響について分析した論文がある。田村光平・堀江博・今村知明「都道府県における歯科保健条例の制定が歯科保健事業予算に与えた影響」(ヘルスサイエンス・ヘルスケア Volume 13,No.1 2013)、神光一郎・川崎弘二・土居貴士・上根昌子・神原正樹「歯科保健条例および歯科口腔保健法制定後の地域歯科口腔保健推進体制の実態について」(日本公衆衛生雑誌62巻6号 2015年6月15日)等である。

 

【条例の内容】

〇 これまで制定された条例は、一般的には、目的、基本理念、自治体・関係者の責務、計画の作成、基本的施策の実施、財政上の措置等が規定されている。

〇 条例の具体例として、都道府県の条例と市町村の条例について、最初に制定された条例、法施行後制定された条例及び最近(令和2年10月現在)制定された条例を、それぞれ一つずつ紹介する。

新潟県

新潟県歯科保健推進条例

平成20年7月22日公布

平成20年7月22日施行

三重県

みえ歯と口腔の健康づくり条例

平成24年3月27日公布

平成24年3月27日施行

沖縄県

沖縄県歯科口腔保健の推進に関する条例

平成31年3月29日公布

平成31年3月29日施行

静岡県裾野市

裾野市民の歯や口腔の健康づくり条例

平成22年12月22日公布

平成22年12月22日施行

名古屋市

名古屋市歯と口腔の健康づくり推進条例

平成25年3月29日公布

平成25年3月29日施行

神奈川県横須賀市

横須賀市歯及び口腔の健康づくり推進条例

令和2年6月30日公布

令和2年10月1日施行

〇 上記6条例のうち、県条例は、市町村との関係について、新潟県条例は、市町村の役割(4条)のほか、市町村長は市町村歯科保健計画を定めることができ。県は市町村に足して必要な支援を行う(10条)と規定しているのに対して、三重県条例は、市町の役割(6条)、連携・協力・調整(9条)及び助言・情報提供(10条)の規定を置き、また、沖縄県条例は、県の責務として、市町村に対する情報の提供、助言等の支援(3条3項)について定めている。

  基本的施策については、新潟県条例(11条)では11項目、三重県条例(11条)では10項目について、具体的かつ比較的詳細に列挙し、沖縄県条例(6条)では、法律で定めるもののほか、4項目について規定している。

  市町村条例も、基本的施策について、裾野市条例(7条)では8項目、名古屋市条例(6条)では15項目、横須賀市条例(7条)では16項目を、具体的かつ比較的詳細に列挙している。また、裾野市条例は、住民歯科保健推進会議の設置(8条)について規定している。なお、名古屋市条例は、市の責務として、「歯と口腔の健康づくりに関する施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するもの」(2条)としているが、計画策定の規定は置いていない。

  新潟県条例の内容、実施状況等については、新潟県HP「全国に先駆けて制定 『新潟県歯科保健推進条例』のページ」を参照のこと。




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