更生支援に関する条例

(令和5年11月28日更新)

【更生支援に関する条例】

〇 犯罪をした者等が円滑に社会復帰できるよう支援する条例が、令和5年11月1日時点で、兵庫県明石市、奈良県、奈良県奈良市及び同県五條市で制定されている。すなわち、

兵庫県明石市

明石市更生支援及び再犯防止等に関する条例

平成30年12月26日公布

平成31年4月1日施行

奈良県

奈良県更生支援の推進に関する条例

令和2年3月30日公布

令和2年4月1日施行

奈良県奈良市

奈良市更生支援に関する条例

令和3年3月31日公布

令和3年4月1日施行

奈良県五條市

五條市更生支援の推進に関する条例

令和3年6月30日公布

令和3年6月30日施行

である。

〇 再犯の防止等の推進に関する法律(平成28年法律104号 再犯防止推進法)が、議員立法により、平成28年12月14日公布・施行された。

 同法は、「再犯の防止等に関する施策に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定める」(1条)ものであるが、基本理念として、再犯の防止等に関する施策は、「犯罪をした者等が円滑に社会に復帰することができるようにすることを旨として、講ぜられるものとする」(3条1項)としている。

 地方公共団体については、「基本理念にのっとり、再犯の防止等に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」(4条2項)としたうえで、国が定める再犯防止推進計画を勘案して、地方再犯防止推進計画を定める努力義務を課す(8条)とともに、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の地域の状況に応じ、国の施策に準じた施策(特性に応じた指導及び支援等、就労の支援、非行少年等に対する支援、就業の機会の確保等、住居の確保等、保健医療サービス及び福祉サービスの提供、住民の理解の増進等)を講ずるように努めなければならない(24条)としている。

 明石市、奈良県及び奈良市の条例は、再犯防止推進法に規定する地方公共団体の責務を踏まえ、制定されたものと考えることができる。

 

【明石市の条例】

〇 明石市更生支援及び再犯防止等に関する条例は、5章21条から構成されている。

 1章では総則(目的、定義及び基本理念)、2章では市及び関係機関等の責務と役割、連携協力、3章では基本的施策、4章では地域社会における共生、5章では基盤整備、市民等の理解増進等を規定している。

〇 本条例の目的は、「更生支援に関する施策の基本となる事項を定め、罪に問われた者等が必要とする更生支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進することにより、罪に問われた者等の円滑な社会復帰を促進して共生のまちづくりを推進」するとともに、再犯防止推進法が定める地方公共団体の責務の趣旨を踏まえ、「市民が犯罪による被害を受けることなく、すべての市民が安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与」すること(1条)、すなわち、更生支援による支援対象者の円滑な社会復帰と再犯防止推進法の趣旨を踏まえた再犯の防止としている。

 3章に定める基本的施策については、特性に応じた支援等、就労の支援等、非行少年等に対する支援等、住居の確保等の支援等及び福祉サービス等の提供による支援等に関して、再犯防止推進法に準じた規定を置いている。

 4章については、地域社会における共生の配慮、地域における見守り等、地域活動への参加促進及び親族等に対する情報提供等について規定しているが、いずれも地域であればこそ取り組むことができる支援について定めている。これは、再犯防止推進法にはない本条例独自の規定である。

〇 明石市では、特に、触法障害者等(軽度の知的障害者や高齢認知症者のうち、地域で自立した生活ができずに軽微な犯罪を繰り返している人)が、地域で自立した生活ができるよう、そして二度と罪を犯さないよう、地域の関係機関等と連携して支援等の取組を平成28年から行っているが、こうしたな更生支援の取組をさらに確かなものとするため、本条例を制定した(明石市作成パンフレット「明石市更生支援及び再犯防止等に関する条例」参照)としている。

 明石市はこれまでも、市民の誰もが安全に安心して暮らすことができる共生のまちづくりの推進のため、様々な取組(こども・子育て家庭の支援、障害者や高齢者に対する配慮の促進、犯罪被害者等の支援、地域総合支援体制の構築など)を進めてきており、「更生支援も、この共生のまちづくりを推進するための総合的な取組の一環であって、特別なことではないと考えている」(上記明石市作成パンフレット)としている。

 なお、明石市における更生支援の取組等については、明石市HP「明石市における更生支援の取り組み」を参照のこと。

 

【奈良県の条例】

〇 奈良県更生支援の推進に関する条例は、3章13条から構成されている。

 1章では総則(目的、定義、基本理念、県の責務、関係団体等及び県民等の役割、連携協力)、2章では基本的施策、3章では具体的施策を規定している。

〇 本条例の目的は、「罪に問われた者等が必要とする更生支援に関し、基本理念を定め、県の責務並びに関係団体等及び県民等の役割を明らかにするとともに、更生支援に関する基本的な事項を定め、その施策を総合的かつ計画的に推進することにより、罪に問われた者等の円滑な社会復帰の促進及び共生のまちづくりの推進を図る」こと(1条)としている。

 再犯防止推進法との関係については、条例上は定義規定(2条1号)で「犯罪をした者等」の定義を引用するほかは特に規定していないが、奈良県HP「奈良県の更生支援の取組について」では、本条例は、再犯防止推進法8条に規定する地方再犯防止推進計画の一つとして考えている旨記述している。

 2章に定める基本的施策については、特性に応じた支援等、就労の支援、住居の確保の支援、福祉サービス等の提供による支援及び県民等の理解の増進に関して、再犯防止推進法に準じた規定を置いている。

 3章については、具体的施策として、更生支援に係る施策を一体的かつ効果的に実施するため法人を設立する(13条)こととしている。この法人は、罪に問われた者等を雇用し、①職場における就業体験の機会その他就労の場の確保・提供、②住居の貸与等、③職業訓練及び社会的教育の実施、④社会復帰に必要な支援を実施するものとし、民間企業に就職した者が離職した場合には、当該者の希望により再度受け入れを行うこととしている。刑務所出所者等を雇用する新たな組織の設立を条例上明記したこととなるが、本条例により、令和2年7月に「一般財団法人かがやきホーム」が設立されている(前記奈良県HP参照)。

〇 本条例の制定意図を、奈良県は、上記HPにおいて、以下の通り、示している。

 「罪に問われた方等の中には、安定した仕事や住居がない方、薬物やアルコールなどの依存のある方、高齢で身寄りがない方など地域社会で生活する上での様々な課題を抱えている方が多く存在します。
 しかしながら、国の刑事司法手続を離れた後、罪に問われた方等が地域において就労の場や住まいを確保し、更には社会的な教育を受けるなど円滑な社会復帰を進めることができる支援体制は未だ十分には整っていません。そのため、これらの方の中には、地域社会で孤立し、個々に抱えた様々な課題を解決できないまま、再び罪に問われる方も少なくありません。
 このような状況に鑑み、奈良県は、国の司法行政と地域の福祉を繋ぐ役割を自ら担い、就労の場づくりを行うこと等により罪に問われた方等の社会復帰を支援し、誰もが地域の一員として包摂される社会の実現を目指します。」

 

【奈良市及び五條市の条例】

〇 奈良市更生支援に関する条例は、3章14条から構成されている。

 1章では総則(目的、定義、基本理念、市の責務、関係団体等及び市民等の役割)、2章では罪に問われた者等及び支援者を孤立させない支援体制の整備等、3章では社会的排除の解消を規定している。

 前文で、「再犯の防止等の推進に関する法律が定めた地方公共団体の責務を踏まえ、罪に問われた者等が地域社会に復帰し、一市民としての生活を送るために必要な支援を行うことで、罪に問われた者等の立ち直りを支え、ひいては犯罪の被害に遭う人を一人でも減らすことを目指します。」としたうえで、「関係機関や民間の支援者、市民の皆さんと共に立ち直ろうとする人を受け入れ、誰一人取り残さない社会の実現に向けて更生支援の取組を推進するため、この条例を制定します。」としている。

 2章においては、更生支援に関する相談窓口の設置と必要な制度の情報の提供、関係機関等との情報共有や協議の場の設置、人材の確保等について、3章においては、地域社会における共生の配慮、市民等の理解の促進、民間の団体等に対する援助等について、規定を置いている。

〇 五條市更生支援の推進に関する条例は、3章14条から構成されている。

 1章では総則(目的、定義、基本理念、市の責務、関係団体等及び市民等の役割、連携協力)、2章では基本的施策、3章では雑則を規定している。

 2章に定める基本的施策については、特性に応じた支援等、就労の支援、住居の確保の支援、保険医療サービス及び福祉サービス等の提供による支援、市民等の理解の増進並びに市民等の活動に対する支援に関して、再犯防止推進法や奈良県条例に準じた規定を置いている。



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