歩きスマホ防止に関する条例

                                                  (令和3年1月15日更新)

【神奈川県大和市の条例】

〇 神奈川県大和市は、全国で初めて、いわゆる「歩きスマホ」を条例で禁止する、

神奈川県大和市

大和市歩きスマホの防止に関する条例

令和2年6月29日公布

令和2年7月1日施行

 を制定した。

〇 本条例は、「歩きスマホが交通事故等を引き起こす可能性のある危険な行為であることに鑑み、公共の場所における歩きスマホの防止について基本的事項を定めることにより、歩きスマホの防止に関する施策の推進及び意識の高揚を図り、もって安心して快適に通行し、及び利用することができる公共の場所の確保に資すること」(1条)を目的としている。

〇 「歩きスマホ」を「スマホ等の画面を注視しながら歩行すること」(2条5号)と定義づけたうえで、「何人も、公共の場所において歩きスマホを行ってはならない。」(5条1項)と規定し、「歩きスマホ」を禁止している。併せて、「何人も、公共の場所におけるスマホ等の操作は、他者の通行の妨げにならない場所で、立ち止まった状態で行わなければならない。」(5条2項)と規定している。

  スマホ等の「画面を注視しながら歩行すること」は禁止しているが、単に「通話」や「操作」をしながら歩行することは禁止していない。罰則規定はない。

  なお、「スマホ等」は「スマートフォン、携帯電話、タブレット端末又はこれらに類する物」(2条4号)、「公共の場所」は「市内の道路、駅前広場、公園その他の公共の用に供される場所(室内及びこれに準じる場所を除く。)」(2条1号)と定義づけている。

〇 こうした条例を制定した背景と基本的な考え方について、大和市は「情報化の進展により、スマートフォンなどのモバイル端末(以下、スマホ等)の急速な普及が進み、人々がメールやウェブページの閲覧、SNSによる交流や地図情報アプリによる道順案内等、リアルタイムで情報を入手する機会が格段に増加しています。こうした中、道路交通法では、自動車や自転車の運転中にスマホ等の画面操作を行う『ながらスマホ』に関しては違反行為となっているものの、スマホ等の画面を注視しながら歩行する『歩きスマホ』に関しては規制の対象外となっています。『歩きスマホ』は、画面を注視することで極端に視野が狭まり周囲への注意が散漫になることから、全国各地で信号無視、他の歩行者への通行妨害や車両との衝突などが後を絶たない状況であり、先般、市内2か所で通行人を調査した結果、歩行者の約12%が『歩きスマホ』を行っていました。そこで、こうした状況を改善するため、道路等の一般の人が通行する公共の空間で事故を誘発する恐れのある『歩きスマホを防止する』する『大和市歩きスマホの防止に関する条例』を制定したいと考えています。」(大和市意見公募手続き用資料「大和市歩きスマホの防止に関する条例の制定について」)としている。

〇 本条例は、8条から構成され、目的(1条)、定義(2条)及び歩きスマホの禁止(5条)のほか、市の責務(3条)、市民等及び事業者の責務(4条)、施策(6条)、財政上の措置(7条)及び委任(8条)に関する規定を置いている。施策(6条)については、「市は、市民等及び事業者と連携し、歩きスマホの防止に関する情報の収集、啓発活動その他必要な施策を実施する。」としている。

〇 なお、本条例については、大和市HP「歩きスマホは禁止です」及び自治体法務研究2020年冬号CLOSEUP先進・ユニーク条例「大和市歩きスマホの防止に関する条例」を参照のこと。

 

【東京都足立区及び荒川区の条例】

〇 大和市条例が制定された後、東京都の足立区と荒川区は「ながらスマホ」を禁止する条例を制定している。すなわち、

東京都足立区

足立区ながらスマホの防止に関する条例

令和2年7月13日公布

令和2年7月13日施行

東京都荒川区

荒川区スマートフォン等の使用による安全を阻害する行為の

防止に関する条例

令和2年10月9日公布

令和3年1月1日施行

 である。

〇 足立区条例は、「ながらスマホ」を「スマホ等を操作し、又は画面を注視しながら歩行すること又は自転車に乗ること」(2条5号)と定義づけたうえで、「何人も、公共の場所においてながらスマホを行ってはならない。」(5条1項)と規定している。

  一方、荒川区条例は、「ながらスマホ」を「スマートフォン等に表示された画像を注視しながら歩行すること並びに道路交通法・・・及び関係法令において禁止されているスマートフォン等の使用をしながら自動車等又は自転車を運転すること」(2条5号)と定義づけたうえで、「区民等は、公共の場所において、ながらスマホを行ってはならない。ただし、スマートフォン等を使用する必要がある特別の事情があると認められる場合は、この限りでない。」(3条1項)と規定している。

  足立区条例と荒川区条例とは、禁止の対象となる「ながらスマホ」の定義は異なっている。歩行に関しては、足立区条例は「画面の注視」のみならず「操作」も禁止の対象にしているのに対して、荒川区条例は「画面の注視」だけを禁止の対象としている。大和市条例も、荒川区条例と同様に「画面の注視」を禁止の対象にしている。また、自転車の運転に関しては、足立区条例は「操作」及び「画面を注視」を禁止しているが、後述の通り、道路交通法等で自動車運転時も含めて「通話」及び「画像の注視」を禁止しているため、荒川区条例は道路交通法等で禁止されている行為を条例での禁止事項としている。なお、両条例ともに、罰則規定はない。

〇 なお、足立区条例は、議員提案により制定されたものであるが、構成と文言自体は大和市条例とほぼ同様となっており、「歩きスマホ」を「ながらスマホ」と、「市」を「区」と、それぞれ置き換え、2条5号の定義規定を変更し、5条2項を一部修正しただけの形となっている。

 

【交通安全条例等で「歩きスマホ」に関する規定を置く条例】

〇 単独条例ではなく、交通安全条例等で「歩きスマホ」に関する規定を置く条例として、以下のようなものがある。すなわち、

京都府

京都府交通安全基本条例

平成26年9月30日公布

平成26年9月30日施行

徳島県

徳島県交通安全の推進に関する条例

令和2年3月17日公布

令和2年3月17日施行

 である。両条例ともに、議員提案により制定されている。

〇 京都府条例は、歩行者の責務として「歩行者は、道路を通行するに当たっては、交通安全に関する法令を遵守するとともに、歩きスマホ(その操作を指で画面上をなぞることにより行う携帯電話又はそれに類似する機器を操作しながら歩行することをいう。)のように車両への注意力が散漫となる行為は慎むなど、道路交通に危険を生じさせないように努めなければならない。」(6条)と規定している。

  また、徳島県条例は、歩行者の役割として、「歩行者は、基本理念にのっとり、道路を通行するに当たっては、交通安全関係法令を遵守するとともに、歩きスマホ(指で画面上をなぞること等により携帯電話又はこれに類する機器を操作しながら歩行することをいう。)その他の車両への注意力が散漫となる行為を慎むなど、道路交通に危険が生じないように努めなければならない。」(7条)と規定している。

  両条例とも、「歩きスマホ」を「指で画面上をなぞることにより行う携帯電話又はそれに類(似)する機器を操作しながら歩行すること」としている。

 

【歩きスマホ規制に関する政府の考え方や他国の事例】

〇 「歩きスマホ」に対する規制に関して、過去に国会議員により質問主意書が出され、政府の見解が示されたことがある。

歩きスマホに関する質問主意書(平成28年1月20日 提出者 初鹿明博)と衆議院議員初鹿明博君提出歩きスマホに関する質問に対する答弁書(平成28年1月29日)である。「歩きスマホを禁止する法規制の是非について、政府の見解を伺います。」との問いに対して、政府の答弁は「お尋ねについては、御指摘のいわゆる『歩きスマホ』による事故の発生状況等を踏まえつつ、慎重に検討すべきものと考える。」としている。

〇 海外では、アメリカ合衆国のハワイ州ホノルル市及びホノルル郡(オアフ島)では、2017年7月に「歩きスマホ」を禁止する条例が制定されている。この条例では、歩行者が道路を横断中に電子機器類の画面を見る行為が禁止されている。道路横断中のみが規制されており、歩道の通行中は規制対象外であり、また、道路横断中であっても単に音声通話をしているだけであれば,規制対象外となっている。罰金額は初回違反が15〜35ドル,1年以内に2回目の違反を犯した場合は35〜75ドル,初回から1年以内にさらに3回目の違反を犯した場合は75ドル〜99ドルとされている。在ホノルル日本国総領事館HP「道路横断中のスマホ等の使用禁止条例の制定(ハワイ州オアフ島)」を参照のこと。

なお、一部マスコミ等において、アメリカ合衆国ニュージャージー州フォートリー市において歩きスマホを禁止する条例が2012年に制定されたとの記述があるが、自治体国際化協会ニューヨーク事務所「ニュージャージー州フォートリー市の歩きスマホ禁止条例及びニュージャージー州議会に提出された歩きスマホ禁止法案に関する調査」(平成29年9月)によると、平成29年9月時点において当該条例の制定は確認されていない。

 

【法令による自動車等の運転時におけるスマホの通話や画像の注視の禁止について】

〇 道路交通法は、自動車及び原動機付自転車の運転時におけるスマホの「通話」や「画像の注視」を禁止している。すなわち、車両等の運転手の遵守行為として、同法71条1項5号の5は「自動車又は原動機付自転車・・・を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。・・・)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。・・・)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第1項第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。・・・)に表示された画像を注視しないこと。」を掲げている。「画像を注視」することのみならず、「通話」することも禁止している。違反行為に対しては、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金等の罰則が科せられる(第117条の4第1号の2、第118条1項3号の2)。警察庁HP「やめよう!運転中のスマートフォン・携帯電話等使用」を参照のこと。 

また、自転車については、車両等の運転手の遵守行為として、道路交通法71条1項6号は「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」を掲げており、この規定に基づき、例えば東京都の公安委員会では、東京都道路交通規則において「自転車を運転するときは、携帯電話用装置を手で保持して通話し、又は画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと。」(8条4号)と規定しており、自動車と同様自転車についても、「通話」や「画像の注視」を禁止している。他の公安委員会においても同様の内容を規則で定めている。

 




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