債権管理に関する条例

 

【全体の状況】

〇 自治体の債権管理については、地方自治法同法施行令などの法令に基づき運用されており、条例としては地方自治法231条の3第2項に基づく延滞金徴収条例等が制定されてきている。

  しかし、自治体財政の悪化や行財政改革の推進に伴い、債権回収の必要性や債権管理の適正化の重要性が認識され、一部の自治体では、平成10年代頃から、債権の管理や放棄等を定めた条例(以下、「債権管理に関する条例」という)が制定されるようになった。債権管理条例、債権の管理に関する条例、私債権の管理に関する条例、債権の放棄に関する条例等の名称の条例である。令和2年6月末現在、全国で概ね600程度の自治体で制定されている。

  現在施行されている条例に限って見ると、平成11年に世田谷区で制定され、その後平成13年に葛飾区、平成14年に杉並区、新宿区、足立区、練馬区、平成17年に中野区、平成18年に大田区、江戸川区、墨田区で制定されており、東京都の特別区において平成10年代に相次いで制定された。

他の地域の自治体では、平成17年に富山県射水市、平成18年に福島県南相馬市、北海道月形町、島根県安来市、北海道旭川市、埼玉県八潮市、平成19年に北海道当麻町、北海道室蘭市、長野県伊那市、北海道東神楽町、秋田県大仙市、神奈川県秦野市、静岡県浜松市、香川県小豆島町で制定されている。

平成20年代に入り、全国の多くの自治体で制定されるようになり、今では約3分の1の自治体で制定されるに至っている。令和の時代に入っても、長崎県雲仙市、北海道美深町、岐阜県川辺町、茨城県稲敷市、福島県白河市などで制定されている。

ちなみに、指定都市は、ほとんどの市(大阪市、広島市を除く18市)が制定しているのに対して、都道府県は、北海道、埼玉県、東京都、神奈川県、三重県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、岡山県、山口県、高知県、佐賀県で制定されており、制定団体は13都道府県と比較的少ない。

〇 国の債権管理に関しては、国の債権の管理等に関する法律(昭和31年法律114号)が制定されているが、自治体の債権管理に関しては、独立の法律はなく、地方自治法、同法施行令等で規定されている。地方自治法240条は、自治体の債権管理の対象となる債権は、金銭の給付を目的とする権利(1項)としたうえで、「その督促、強制執行その他その保全及び取立て」(2項)及び「その徴収停止、履行期限の延長又は当該債権に係る債務の免除」(3項)について政令で定めるとし、地方自治法施行令171条から171条の7までにおいて、督促、強制執行等、履行期限の繰上げ、債権の申出等、徴収停止、履行期限の特約等及び免除に関する規定が置かれている。なお、地方税法の規定に基づく徴収金に係る債権等(地方自治法240条4項)はこれらの政令の規定は適用されない。

自治体の債権のうち、分担金、使用料、加入金、手数料、過料その他の歳入に係る債権については、地方自治法231条の3第1項により督促を行い、また、同条2項、4項等により、手数料・延滞金の徴収、送達・公示送達等を行うこととされている。さらに、このうち分担金、加入金、過料、法律で定める使用料その他の歳入に係る債権については、同条3項により、地方税の滞納処分の例により処分することができるとしている。また、債権の消滅時効に関しては、原則として同法236条の規定が適用されるが、時効期間に関しては「他の法律に定めがあるもの」(1項)、時効の援用及び利益放棄の特例に関しては「法律に特別の定めがある場合」(2項)は、適用除外とされる。民法はこれらの「法律」に該当し、民法が適用される債権は適用除外とされている。

このように、債権の種類によって、法令の適用関係は異なる。逆に言うと、法令の適用関係により、債権の種類を分類することができる。地方自治法231条の3の規定に関して言えば、同条1項に規定する債権とそれ以外の債権、同条1項に規定する債権のうち同条3項に規定する債権とそれ以外の債権にそれぞれ分けることができ、地方自治法236条1項又は2項に関して言えば、私法上の債権として民法等が適用され、適用除外とされるものとそれ以外のものとに分けることができる。

自治体の債権には、公法上の債権と私法上の債権がある。これを前提として、例えば、「私法上の原因に基づいて発生する債権」(江戸川区条例)と規定し、私法上の債権のみを対象とする条例は少なくない。しかし、どの債権が公法上の債権であるか私法上の債権があるかは、一義的に明確ではないとされる。このため、例えば、地方自治法231条の3第1項に規定する債権及び地方税に係る債権を「公債権」としたうえで公債権以外の債権を「私債権」と定義づけるもの(東京都条例等)や地方自治法236条2項の規定により時効の援用を要しない債権以外の債権を条例の対象とするもの(芦屋市条例等)がある。

また、公法上の債権か私法上の債権かということではなく、滞納処分ができる債権(地方自治法231条の3第3項に規定する債権及び地方税に係る債権)か否かということで整理をし、前者を「強制徴収債権」とし後者を「非強制徴収債権」とするものも少なくない(北九州市条例等)。さらに、公債権を「強制徴収公債権」と「非強制徴収公債権」とに分けるものも少なくない(荒川区条例等)。

〇 債権管理の具体的な項目、すなわち、督促、強制執行等、履行期限の繰上げ、債権の申出等、徴収停止、履行期限の特約、免除、消滅時効等については、債権の種類によって法令の適用関係は異なるものの、各法令で規定されている。したがって、これらの項目に関連した事項を条例で規定するにしても、法令を踏まえたものとする必要がある。一方で、債権放棄については、法令や条例に特別の定めがある場合を除くほかは議会の議決事項(地方自治法96条1項10号)とされているため、条例で規定することにより議会の議決を不要とする必要性が生じうる。

〇 地方自治法231条の3第2項は、同条1項に規定する債権の督促をした場合の手数料及び延滞金については条例で定めるとしており、税外歳入に係る延滞金及び過料に関する条例や税外収入金の督促及び滞納処分に関する条例などの延滞金徴収条例等が古くから制定されている(本稿では、これらの延滞金徴収条例等は「債権管理に関する条例」の対象外とする)が、延滞金徴収条例等を廃止して、延滞金等の規定を債権管理に関する条例に盛り込むものもある(神奈川県秦野市条例等)。

〇 以上を踏まえて、債権管理に関する条例は、対象とする分野、対象とする債権の範囲、規定する項目等により、様々なタイプに分けることができる。

@ 自治体の行政分野全般を対象とするのか、水道、病院等特定の分野を対象にするのか(特定分野型)、

A 滞納処分ができる債権を含む債権全体を対象にするのか(債権全体型)、滞納処分ができない債権のみを対象にするのか(非強制徴収債権型)、私債権のみを対象にするのか(私債権型)、

債権全体型の場合、税に係る債権を含めるか、否か、また、延滞金等についても規定するのか、否か、

私債権型の場合、私債権の定義をどうするのか(私法上の債権とするのか、公債権以外の債権とするのか、時効の援用を要しない債権以外の債権とするのか)、

B 総則部分を除くほか、債権管理全般にわたる項目を規定するのか(包括規定型)、債権放棄のみを規定するのか(債権放棄型)、それとも、債権放棄単独条例とするのか、

包括規定型の場合、地方自治法施行令171条から171条の7まで規定と同様の規定を置くのか、これらの条文を引用するにとどめるか(引用条文型)、

などにより、様々なバリュエーションがある。以下、こうしたことを踏まえつつ、債権管理に関する条例を概観することとする。

 

【平成10年代に制定された東京都特別区の条例及び東京都条例―包括規定型・債権放棄型、非強制徴収債権型・私債権型の各タイプの条例の形成】

〇 まず、平成10年代に制定された東京都23区の条例のうち、いくつかを紹介する。この段階から、制定される条例は既にいくつかのタイプに分かれている。

〇 包括規定型・非強制徴収債権型の条例として、

東京都世田谷区

世田谷区の債権の管理等に関する条例

平成11年12月10日公布

平成12年4月1日施行

東京都杉並区

杉並区の債権の管理に関する条例

平成14年3月19日公布

平成14年3月19日施行

東京都足立区

足立区の債権の管理等に関する条例

平成14年6月28日公布

平成14年9月1日施行

がある。

世田谷区条例は、総則部分(他の条例との関係(3条)・債権の徴収に関する一般原則(4条))を規定したのち、債権管理の具体的な項目、すなわち、督促、強制執行等、履行期限の繰上げ、債権の申出等、徴収停止、履行期限の特約等、免除及び債権の放棄(5条〜12条)について規定している。強制執行等以下の規定は、債権の放棄を除き、ほぼ地方自治法施行令171条から171条の7までの当該条文と同様の内容となっている。また、杉並区条例及び足立区条例も同様の構成をとっているが、総則部分で、杉並区条例は台帳の整備について規定し(5条)、足立区条例はさらに徴収計画について規定している(5条)。

これらの条例は、債権管理全般にわたる項目を規定するものであり、包括規定型の条例となっている。

また、3条例とも、総則部分及び督促は区の債権全体を対象にしているが、強制徴収以下の規定は、債権の放棄も含めて、滞納処分を行うことができない債権のみを対象にしている。地方自治法231条の3第3項に規定する債権及び地方税に係る債権は、地方税法等の規定により滞納処分がなされるため、これらの債権を対象外としている。非強制徴収債権型の条例でもある。

なお、杉並区以降の条例のほとんどは、いかなるタイプの条例であっても、台帳の整備に関する規定を置いている。また、足立区条例と同様に、徴収計画に関する規定を置くも条例は少なくない。

〇 債権放棄型の条例として、

東京都新宿区

新宿区の債権の整理に関する条例

平成14年3月26日公布

平成14年4月1日施行

東京都中野区

中野区の債権の管理に関する条例

平成17年12月7日公布

平成18年4月1日施行

がある。 

新宿区条例及び中野区条例は、総則部分(区長の責務(3条)及び台帳の整備(4条))を除き、債権の放棄(5条)のみを規定している。包括規定型のように地方自治法施行令とほぼ同様の条文を規定することは、不要との判断であると考えられる。総則部分以外は債権の放棄のみを規定するものであり、債権放棄型の条例である。

また、新宿区条例は、総則部分も含めて対象を地方自治法231条の3第1項に規定する歳入に係る債権及び同法第240条4項各号に規定する債権を除く債権を対象としており、私債権(公債権以外の債権)型であり、中野区条例は総則部分については債権全体を債権の放棄については滞納処分を行うことができない債権を対象にしており、非強制徴収債権型である。

  なお、新宿区条例は、条例名に「債権の整理」との文言を使用しているが、「整理」を条例名で使用しているのは、大阪府債権の回収及び整理に関する条例(平成22年11月4日公布・施行)を除き、他にない。

〇 私債権(私法上の債権)型条例として、

東京都江戸川区

江戸川区の私債権の管理に関する条例

平成18年3月29日公布

平成18年4月1日施行

私債権(公債権以外の債権)型条例として

東京都

東京都債権管理条例

平成20年3月31日公布

平成20年7月1日施行

がある。

江戸川区条例は、包括規定型の条例であるが、対象を、総則部分も含めて、「私法上の原因に基づいて発生する債権」(2条1項)すなわち私法上の債権(私債権)に限定している。私債権(私法上の債権)型である。条例名も、「私債権の管理に関する条例」としている。条例対象を私法上の債権に限定した理由として、「債権管理に関する地方自治法の規定は、・・・その適用関係が複雑でわかりにくいものとなって」おり、「こうした法令の適用関係の複雑さ解消し条例をシンプルで使いやすさにするため」であり、特に「強制徴収公債権は、地方税の滞納処分の例により処分することになっているのでことさら条例に盛り込む必要はな」く、また、「非強制徴収債権は、現行の規定で対応することとし、仮に未済債権が滞留する事情が生じたとしても同債権は5年で絶対的に消滅する」ことがあげられている(自治体法務研究2011年冬号条例制定の事例CASESTUDY「『江戸川区の私債権の管理に関する条例』の意義と特徴について」参照)。

なお、江戸川区条例は、専決処分に関する規定(8条)を置いているが、既に定められている「訴えの提起、和解及び損害賠償額の決定に関する区長の専決処分について」(平成16年3月17日付け江戸川区議会議決)を確認的に規定している。

東京都条例は、平成20年に制定されている。包括規定型であるが、江戸川区条例と同様に、私債権を対象にしている。しかし、「私債権」の定義を「都の債権のうち、公債権(地方自治法第231条の3第1項に規定する歳入に係る債権及び地方税法第1条第1項第4号に規定する地方税に係る債権をいう。)以外のもの」(2条2号)としている。どの債権が私法上の債権があるかは、一義的に明確ではないとされるため、地方自治法等の条文を引用した定義規定にしているものと考えられる。私債権(公債権以外の債権)型である。

 

【その後に続く条例とその進展】

〇 上記の東京都特別区の条例に続き、全国各地で条例が制定されているが、さらにバリュエーションは増えている。

〇 水道、病院等特定の分野のみを対象とする条例(特定分野型条例)として、例えば、

富山県射水市

射水市水道事業債権管理に関する条例

平成17年11月1日公布

平成17年11月1日施行

島根県安来市

安来市水道事業の債権の管理等に関する条例

平成18年6月27日公布

平成18年6月27日施行

東京都青梅市

青梅市病院事業の債権の管理に関する条例

平成20年3月25日公布

平成20年3月25日施行

などがある。

射水市条例及び安来市条例は専ら水道事業の債権を対象にし、青梅市条例は専ら病院事業の債権を対象にしている。このうち、射水市では、別途、市の債権全般を対象とする射水市債権管理条例(平成25年12月20日公布・平成26年4月1日施行)を制定している。

なお、水道の給水や病院事業の使用料等に関する個別条例において、債権放棄の規定が置かれることは少なくない(例えば、広島市水道給水条例41条の3、伊丹市病院事業使用料および手数料条例5条)。

〇 債権放棄だけを定める条例(債権放棄単独条例)として、例えば、

北海道旭川市

旭川市私法上の債権の放棄に関する条例

平成18年9月15日公布

平成18年9月15日施行

島根県浜田市

浜田市私法上の債権の放棄に関する条例

平成21年9月30日公布

平成21年9月30日施行

兵庫県

県が保有する債権の放棄に関する条例

平成25年3月5日改正施行

などがある。

旭川市条例も浜田市条例も、趣旨規定を除き、原則として債権放棄のみ規定している。両条例とも、私法上の債権を対象にしており、私債権(私法上の債権)型である。

兵庫県条例も、債権放棄単独条例であるが、保母修学資金等の返還の免除に関する条例(昭和39年3月31日公布・施行)が平成25年に改正されたものである。各種の就学資金等の放棄・免除とともに、私債権の放棄について規定しているが、私債権は「県が保有する債権(時効による消滅について、時効の援用を要しないものを除く)」と定義付けており、私債権(時効の援用を要しない債権以外の債権)型である。

〇 税に係る債権を含めた債権全体型条例として、

浜松市

浜松市債権管理条例

平成19年12月14日公布

平成19年12月14日施行

高知県香南市

香南市債権管理条例

平成20年9月24日公布

平成20年10月1日施行

などがある。

浜松市条例は、市の債権を、市税、公課(市税以外の市の債権のうち、国税又は地方税の滞納処分の例により処分することができるもの)及びその他の債権(市の債権のうち、市税及び公課以外のもの)に分け(2条)、市の債権全体を対象に履行期限の繰上げ(6条)について、市税及び公課を対象に滞納処分等(7条)について、その他の債権を対象に強制執行等、債権の申出等、徴収停止、履行延期の特約等及び債権の放棄(8条〜12条)について、それぞれ規定している。浜松市の担当者は、「この条例により市の債権に係る法的体系が整理されたことから、一般職員にもわかりやすくなった」とし、また、「本市は、この条例の施行により、債務者に対して訴訟も辞さない厳しい姿勢を示した」(自治体法務研究2008年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「浜松市債権管理条例」参照)としている。なお、浜松市条例は、不納欠損額の見込みに関する規定(4条)を置いている。

香南市条例は、市の債権を、強制徴収公債権(税に係る債権及び国税又は地方税の滞納処分の例により処分することができる債権)、非強制徴収公債権(地方自治法231条の3第1項に規定する歳入に係る債権で、強制徴収公債権以外のもの)、私債権(私法上の原因に基づき発生する債権)に分け(2条)、債権管理の手続等を規定している(7条〜15条)。強制徴収公債権に税に係る債権を含めている。

〇 延滞金等も規定する債権全体型条例として、

神奈川県秦野市

秦野市債権の管理等に関する条例

平成19年12月14日公布

平成20年2月1日施行

兵庫県洲本市

洲本市債権の管理に関する条例

平成20年12月18日公布

平成21年1月1日施行

神戸市

神戸市債権の管理に関する条例

平成28年3月31日公布

平成28年4月1日施行

などがある。

秦野市条例及び洲本市条例は、それぞれ「秦野市諸収入金に対する延滞金徴収条例」及び「洲本市の市税外収入金の督促及び滞納処分に関する条例」を廃止し、これらの条例に規定されていた延滞金等に関する事項も規定している。滞納処分を行うことができる債権も条例の対象としているが、浜松市条例と異なり、市税に係る債権については対象としていない。秦野市条例は、市の債権を、市税の滞納処分の例により徴収する債権、その他公法上の債権及び私法上の債権に分け、債権管理の手続等を規定している。洲本市条例は、地方自治法231条の3第1項に規定する債権を「市税外債権」としたうえで、同条3項に規定する歳入に係る市税外債権とそれ以外の市税外債権に分けて規定しているが、市税外債権以外の債権については対象としていない。なお、秦野市条例は、滞納者情報の相互利用(6条)の規定を置いているが、当該自治体に内部における債務者等の情報の利用等に関して規定する条例は少なくない(例えば、浦安市債権管理条例(情報の利用 5条の2)、新潟市債権管理条例(庁内の情報共有 6条)、さいたま市債権管理条例 (債務者に関する情報の共有 7条))。

神戸市条例は、「債権の管理に関する条例」(昭和39年3月条例74号)が全部改正されて、制定されており、延滞金等に関する事項も規定している。市の債権を、市税、公課(市税以外の市の債権のうち、国税又は地方税の滞納処分の例により処分することができるもの)及びその他の債権(市の債権のうち、市税及び公課以外のもの)に分け、債権管理の手続等を規定している。税に係る債権を含みかつ延滞金等も規定する債権全体型条例である。

〇 債権全体型条例として、

東京都荒川区

荒川区債権管理条例

平成22年3月19日公布

平成22年4月1日施行

などがある。

荒川市条例は、滞納処分を行うことができる債権も対象にしているが、税に係る債権は対象とせず、延滞金等に関する規定は置いていない。また、区の債権を、公債権、私債権、強制徴収公債権、非強制徴収公債権に分類して定義規定を置いた(2条)上で、債権全体と私債権等(私債権及び非強制徴収公債権)について債権管理の手続等を定めている。

〇 私債権型(消滅時効について時効の援用を要しない債権を除く債権)条例として、 

兵庫県芦屋市

芦屋市債権管理に関する条例

平成21年3月27日公布

平成21年4月1日施行

京都府

京都府債権の管理に関する条例

平成23年7月29日公布

平成23年7月29日施行

などがある。

芦屋市条例は債権放棄型であるが、債権放棄の規定の対象を「市の債権(消滅時効について時効の援用を要しない債権を除く。)」(7条)としている。市の担当者は、「公債権、私債権を定義付けることは難しく、債権放棄規定において私債権の特徴である時効の援用を踏まえて『消滅時効について時効の援用を要しない債権を除く』としました」(自治体法務研究2011年冬号条例制定の事例CASESTUDY「芦屋市債権管理に関する条例について」参照)としている。

京都府条例も債権放棄型かつ私債権(消滅時効について時効の援用を要しない債権を除く債権)型の条例である。総則部分で、債務者の資力の状況等に応じた措置に関する規定(4条)を置いている。

なお、前述の兵庫県条例も、私債権(消滅時効について時効の援用を要しない債権を除く債権)型である。

〇 包括規定型条例であって引用条文型のものとして、

横浜市

横浜市の私債権の管理に関する条例

平成21年12月15日公布

平成21年12月15日施行

静岡市

静岡市債権の管理に関する条例

平成23年2月22日公布

平成23年2月22日施行

などがある。

横浜市条例は、私債権(私法上の債権)型であり、一応、債権放棄のみならず、強制執行等についても規定している。しかし、「地方治法施行令第171条から第171条の4までの規定の定めるところにより、その督促、強制執行その他その保全及び取てに関し必要な措置をとらなければならない。」(6条2項)及び「令第171条の5から第171条の7までの規定の定めるところにより、その徴収停止、履行期限の延長又は当該市の私債権に係る債務の免除をすることができる。」(6条2項)と規定し、それぞれの項目について、関係する自治法施行令の条文のみを引用するにとどめている。

静岡市条例は、税に係る債権を含めた債権全体型であり、一応、債権放棄のみならず、滞納処分、強制執行等についても規定している。しかし、強制徴収債権(税に係る債権を含む)に関して、「滞納処分その他その保全及び取立てに関する措置並びに徴収猶予価の猶予及び滞納処分の停止については、法令又は条例若しくは規則の定めるところにより処理しなければならない。」(6条2項)とし、非強制徴収債権に関して、横浜市条例と同様に地方自治法施行令の条文を引用して規定している(6条3項、4項)。

〇 都道府県や指定都市の条例で、他とは異なる特徴をもつものを紹介する。

大阪府

大阪府債権の回収及び整理に関する条例

平成22年11月4日公布

平成22年11月4日施行

鳥取県

鳥取県債権回収計画等に関する条例

平成25年3月29日公布

平成25年4月1日施行

三重県

三重県公債権の徴収に関する条例

平成26年4月1日改正施行

三重県

三重県債権の管理及び私債権の徴収に関する条例

平成26年3月27日公布

平成26年4月1日施行

北九州市

北九州市債権管理条例

平成29年6月21日公布

平成29年6月21日施行

大阪府条例は、基本的には債権放棄型・私債権(消滅時効について時効の援用を要しない債権を除く債権)型の条例であるが、「債権の回収及び整理に関する条例」とし、総則部分で、債権の回収及び整理に関する、基準、計画策定、措置及び進捗状況の公表(2条〜5条)について定めている。

鳥取県条例は、「債権回収計画等に関する条例」とし、債権回収計画の策定等(2条)及び債権の管理により収集した情報の利用等(3条)のみ規定している。本条例は、議員提案により制定されている。

三重県条例は、「公債権の徴収に関する条例」と「債権の管理及び私債権の徴収に関する条例」の2つの条例を制定している。前者は、三重県税外収入通則条例(昭和39年3月25日公布・施行)が26年に改正されたものであり、延滞金に関する規定のほか、公債権(地方自治法第231条の三第1項に規定する歳入に係る債権であって、時効の援用を要しないもの)について規定している。後者は、私債権(公債権以外の債権)について規定している。

北九州市条例は、強制徴収債権(税に係る債権を含む)を対象として徴収猶予(6条)、非強制徴収債権を対象として債権放棄(7条)について規定している。

 

【最近制定された条例】

〇 平成31年及び令和元年に制定された債権管理に関する条例で、確認できるものとして、28条例あるが、それらをタイプ別に分けると、

債権全体型(税・延滞金等を含む)・包括規定型北海道大樹町、島根県邑南町、山形県東温市、新潟県燕市、茨城県結城市、
愛媛県松山市、北海道美深町、茨城県稲敷市、福島県白河市
債権全体型(税を含む)・包括規定型北海道奥尻町、高知県芸西村、兵庫県佐用町、岐阜県川辺町
債権全体型(税を含む)・包括規定(引用条文)型宮崎県新富町、新潟県柏崎市、愛媛県四国中央市、長崎県雲仙市
非強制徴収債権型・包括規定型佐賀県伊万里市
非強制徴収債権型・債権放棄型熊本県苓北町、広島県尾道市
私債権(私法上の債権)型・包括規定型山梨県南アルプス市
私債権(公債権以外の債権)型・包括規定型東京都中央区
債権全体型(税を含む)・包括規定(引用条文)型宮城県岩沼市
私債権((時効の援用を要しない債権以外の債権)型・
包括規定型)
鳥取県岩美町
私債権((時効の援用を要しない債権以外の債権)型・
(引用条文)型
山形県羽後町
私債権((時効の援用を要しない債権以外の債権)型・
債権放棄型
北海道更別村、茨城県取手市、香川県観音寺市

となる。

様々なタイプの条例に分かれていると言わざるを得ないが、傾向としては、債権全体型のタイプが多く、私債権型の場合は私債権((時効の援用を要しない債権以外の債権)型が比較的多い。また、ほとんどが包括規定型であり、債権放棄型は少ない。包括規定(引用条文)型も少なからずある。私債権(私法上の債権)型は少ない。特定分野型条例はなく、債権放棄単独条例もない。

  なお、台帳整備に関する規定は広島県尾道市を除く27市区町村の条例で、債務者の情報の利用等に関する規定は北海道奥尻町、宮崎県新富町、熊本県苓北町、高知県芸西町、島根県邑南町、山形県東温町、兵庫県佐用町、香川県観音寺市、愛媛県松山市、長崎県雲仙市、北海道美深町、岐阜県河辺町、茨城県稲敷市及び福島県白河市の条例で、徴収計画に関する規定は茨城県取手市、山形県東温市、岐阜県河辺町及び茨城県稲敷市の条例で、不納欠損額の見込みに関する規定は長崎県雲仙市条例で、専決処分に関する規定は香川県観音寺市条例で、それぞれ置かれている。

 

【その他】

〇 自治体の債権管理に関しては、自治体法務研究2011年冬号特集「自治体の債権管理」を参考のこと。また、田中孝男「条例づくりのための政策法務」(第一法規 平成26年8月)第8章「政策財務と債権管理条例」は、債権管理条例の制定状況、そのタイプごとの規定内容、そのあり方等について記述しているので、参照されたい。




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