移住促進に関する条例

(令和6年1月16日更新)

【京都府の条例】

〇 京都府は、移住促進を図るため、

京都府

京都府移住の促進及び移住者等の活躍の推進に関する条例

令和3年10月8日公布

令和4年4月1日施行

を制定している。

〇 本条例は、「府内における人口の減少その他の社会情勢の変化に対応し、地域社会の活力の向上と持続的発展を図ることが喫緊の課題であることに鑑み、移住の促進及び移住者等が活躍することのできる地域づくりの推進(以下「移住促進等」という。)に関し、基本理念を定め、並びに府の責務及び府民等の役割を明らかにするとともに、税の軽減、補助金の交付、金利に係る負担の軽減等の支援措置その他府が実施する施策について必要な事項を定めることにより、移住促進等に関する施策を迅速かつ重点的に推進し、もって地域の活性化に寄与すること」(1条)を目的としている。

〇 「移住」を「住民基本台帳法・・・第22条第1項に規定する転入(府の区域内に住所を定めるものに限る。)」(2条1号)、「移住者等」を「移住者(移住をする者)」又は「地域と関わろうとする者(府内の地域との間に関わりを持とうとする者であって、当該地域との関わり合いを通じて当該地域の活性化に資する役割を担うことが見込まれるもの)」(2条2号)と定義づけたうえで、移住促進及び移住者等の活躍の推進に関する基本理念(3条)を明記するとともに、「移住促進特別区域」を指定し(6条)、移住促進特別区域への移住者等に対して、税の軽減、補助金の交付、金利に係る負担の軽減等の支援措置を講じる(10条~19条)こととしている。

 本条例の内容については、京都府HP「京都府移住の促進及び移住者等の活躍の推進に関する条例」を参照されたい。なお、本条例の内容等の検討は、「新たな移住・定住に関する研究会」及び「京都府新たな移住に関する条例検討委員会」が設置され、有識者等の参加のもとに進められた。

〇 京都府は、平成28年に「京都府移住の促進のための空家及び耕作放棄地等活用条例」(以下「旧条例」という。)を制定したが、旧条例は、令和4月31日限りで失効することとされていたため、令和3年10月に全部改正され、本条例が制定された。旧条例については、自治体法務研究2016年夏号条例制定の事例CASESTUDY「京都府移住の促進のための空家及び耕作放棄地等活用条例」を参照されたい。

 

【移住促進を目的とした市町村条例】

〇 移住促進を目的とした市町村条例で、条例名に移住促進、移住支援等を明記したものとして、

鹿児島県霧島市

霧島市ふるさと創生移住定住促進に関する条例

平成28年3月29日公布

平成28年4月1日施行

三重県熊野市

熊野市移住・定住促進基本条例

平成28年7月11日公布

平成28年7月11日施行

鹿児島県姶良市

姶良市ふるさと移住定住促進条例

平成29年3月28日公布

平成29年4月1日施行

秋田県にかほ町

にかほ市住みたいまち移住・定住促進条例

平成30年3月20日公布

平成30年4月1日施行

北海道上砂川町

上砂川町移住定住促進条例

平成30年12月17日公布

平成30年12月17日施行

北海道新篠津村

新篠津村移住支援条例

令和元年6月17日公布

令和元年6月17日施行

東京都奥多摩町

奥多摩町移住・定住応援条例

令和2年3月9日公布

令和2年4月1日施行

鹿児島県天城町

天城町移住定住促進条例

令和2年3月11日公布

令和2年4月1日施行

北海道芦別市

芦別市移住定住促進条例

令和3年12月17日公布

令和4年4月1日施行

北海道木古内町

木古内町移住定住新生活しあわせサポート条例

令和4年3月11日公布

令和4年4月1日施行

大分県豊後大野市

豊後大野市移住定住促進条例

令和4年3月17日公布

令和4年4月1日施行

香川県東かがわ市

東かがわ市移住及び定住促進に関する条例

令和4年3月23日公布

令和4年4月1日施行

などがある。

〇 各条例とも、「移住」のみを規定するのではなく、「移住」と「定住」とを併せて規定している。自治体として促進すべき「移住」は、単なる「転入」ではなく、「定住」することが前提の「転入」であるからと考えられる。

 例えば、新篠津村条例は、条例名は「移住支援条例」としているが、「本村へ定住することを目的に転入した者に対して、歓迎の意を込めた支援をする」(1条)こととしている。奥多摩町条例は、「若者等の移住・定住を応援するための措置を講じる」(1条)としているが、「移住・定住」を「永住を前提として町内に住民登録をし、かつ、継続して居住すること」(2条2号)と定義づけている。霧島市条例及び姶良市条例は、「本市における移住定住を促進するために必要な助成措置を講じること」(両条例とも1条)としているが、補助対象者は「転入定住者」又は「転居定住者」(両条例とも3条)としている。熊野市条例は、「移住・定住の促進に関する施策を総合的かつ計画的に推進」(1条)することとしているが、「移住」を「本市以外の市区町村から、熊野市に永住の意思を持った者が転入し、住民基本台帳法の規定による住民基本台帳に記録され、かつ、熊野市を生活の本拠とすること」(2条1号)、「定住」を「熊野市に永住の意思を持った者が、住民基本台帳法の規定による住民基本台帳に記録され、かつ、熊野市を生活の本拠とすること」(2条2号)と定義づけている。にかほ市条例は、「移住及び定住の促進」(1条)を目指しているが、「定住」を「永住を前提として市の住民基本台帳に登録し、かつ、生活及び活動の拠点が市内にあること」、「移住」を「Uーン又はIターンにより市内に転入すること」、「Uターン」を「市内に在住していた者が、市外に転出し、その後市内に転入すること」、「Iターン」を「市外在住者が、市内に初めて転入すること」と、それぞれ定義づけている(2条)。

〇 これらの条例の多くは、移住者、転入者等に対して、補助金や奨励金を支給することを内容としている。霧島市条例は「住宅取得補助金」、「住宅増改築補助金」及び「家賃補助金」(4条)を、姶良市条例は「住宅等取得補助金」、「子ども補助金」、「住宅増改築等補助金」、「家賃補助金」及び「引越費用補助金」(4条及び別表第2)を、上砂川町条例は「上砂川町就業者移住定住奨励金」等(3条)を、新篠津村条例は「移住支援金」(4条)を、奥多摩町条例は「住宅に関する補助金」及び「利子補給」(3条)を、芦別市条例は「出産祝品」、「持ち家取得奨励金」及び「賃貸住宅家賃助成金」(3条)を支給することとしている。

〇 一方で、熊野市条例は、移住・定住促進「基本条例」であり、基本理念を定める(3条)とともに、市、市議会、市民、地域、事業者及び団体の役割(4条~9条)を規定している。また、にかほ市条例は、基本理念を定める(3条)とともに、施策として、多分野が連携する横断的施策の推進、定住住宅取得等の奨励及び支援、市内就職等の奨励及び支援、子育て、教育及び福祉環境の向上対策及び支援等を実施する(4条)ものとし、天城町条例は、基本理念を定める(3条)とともに、施策として、官民が連携する横断的施策の推進、住宅環境の整備及び空き家対策、町内就職等の奨励及び支援、子育て、教育及び福祉環境の向上対策並びに支援等を実施する(4条)ものとし、東かがわ市条例は、基本理念を定める(3条)とともに、住居環境支援、就業促進等に関する施策を推進する(4条)ものとしている。豊後大野市条例は、基本理念を定める(3条)とともに、住宅の確保及び居住の継続に関する支援、就業の機会の創出及び仕事と生活の調和を図る環境の整備、二拠点居住、観光、農村都市交流等の促進、子育て、教育及び福祉環境の向上対策及び支援等を実施する(4条)ものとしている。

〇 補助金や奨励金を支給することを内容とする条例は、時限条例とするものが少なくない。新篠津村条例は「適用の日から起算して5年を経過した日にその効力を失う」(附則2項)とし、奥多摩町条例は「令和7年3月31日限り、その効力を失う」(附則2項)とし、木古内町条例は「令和9年3月31日限り、その効力を失う」(附則)としている。なお、霧島市条例は失効の規定は置いていないが、その前身ともいえる霧島市中山間地域活性化のための移住定住促進に関する条例(平成25年4月1日施行)は施行3年後の平成28年3月31日に失効し、さらにその前身の霧島市移住定住促進に関する条例(平成20年4月1日施行)は施行5年後の平成25年3月31日に失効している。また、姶良市条例は、姶良市移住定住促進条例(平24年4月1日施行)が施行5年後に廃止されたうえで、制定されている。芦別市条例は、平成23年に制定された芦別市定住促進条例が全部改正され、制定されているが、「令和9年3月31日限り、その効力を失う」(附則2項)と規定している。

 

【定住促進条例において転入、Iターン等を規定するもの】

〇 定住促進を目的とする条例は、全国の多くの市区町村で制定されている。定住促進の基本理念や基本的な施策を規定するものもあるが、定住促進のための補助金や奨励金の支給について定めているものが多い。補助金や奨励金の内容は、自治体によって異なるが、①結婚祝い金、誕生祝い金、入学祝い金など、結婚、出産、子育てに関するもの、②就業奨励金、就農奨励金、就職奨励金など、仕事、雇用に関するもの、③住宅取得費補助、住宅地の貸付など、住宅に関するもの④交流事業・イベント開催助成など、地域活性化に関するもの、などである。現に当該自治体に住所を有する者やその子弟のみならず、他の自治体から転入し、定住しようとする者をも対象とする条例は、少なくない。

〇 定住促進条例で、転入者やIターン者等を補助金や奨励金の対象とするものについて、いくつか例を挙げる。

北海道利尻町

利尻町ふるさと定住促進条例

平成6年12月19日公布

平成7年1月1日施行

山梨県小菅村

小菅村若者定住促進の奨励に関する条例

平成8年3月12日公布

平成8年4月1日施行

長野県天龍村

天龍村定住促進条例

平成31年3月25日公布

平成31年4月1日施行

山形県飯豊町

飯豊で幸せになる条例

令和3年3月8日公布

令和3年4月1日施行

などである。

 利尻町条例は、定住促進のための事業として、転入奨励金支給、児童養育奨励金支給、出産祝金支給及び住宅用地及び住居の確保・斡旋を実施する(2条)こととしているが、このうち、転入奨励金は、「本町に生活の本拠を移し、引き続き定住し就業が認められ法定手続を完了した単身世帯以外の世帯に対し、1,000,000円の転入奨励金を支給する。前項の転入者は、5年間在住義務を負うものとする。」(3条1項、2項)としている。

 小菅村条例は、若者の定住促進を図るため、奨励措置(結婚祝金、結婚仲介者報奨金、出産祝金、入学祝金、転入定住奨励金、人材育成資金貸付、定住環境整備資金貸付、里親奨励金及び起業支援金貸付)を講じる(3条及び別表)こととしているが、このうち、転入定住奨励金は、「永住を前提に村外より転入、1年以上の居住の事実がある者で村長が認めたもの」に対して、「1家族につき 10万円」支給する(別表)としている。

 天龍村条例は、「村民が将来に渡って『天龍村に住んで良かった』と、また村外の方々に『天龍村に住んでみたい』と思われるよう、過疎化、高齢化、情報化、国際化など社会経済情勢の変化や、多様化する住民ニーズに対応し、地域の特色を生かした個性あるむらづくりを推進するために必要な措置」(1条)を講じるとし、具体的には、住宅新築事業等に対する補助金(3条1項1号)、Uターン・Iターン助成、後継者助成及び通勤助成(3条1項2号)、結婚祝金及び出産祝金(3条1項3号)等の奨励措置を講じることとしている。「Uターン」は「中学校又は高等学校卒業まで村に居住及び住所を有した者が村外に居住し、再び村に居住及び住所を有し、かつ永住の意思がある者」、「Iターン」は「村外に居住していた者が村に居住及び住所を有し、かつ永住の意思がある者」と定義づけている(2条3号、4号)。

 飯豊町条例は、「町の移住定住施策の一環として町内に移住定住する者の住宅取得や人生の転換期に奨励措置を行う」(1条)としており、住宅取得奨励(3条)、賃貸住宅居住奨励(4条)、ときめき結婚祝(5条)、すこやか出産祝(6条)、めざみっ子入学祝・卒業祝(7条)及びUターン者・Iターン者奨励品(8条)の奨励措置を実施することとしている。「Uターン者」は「過去に町内在住者で、転出の日より起算して3年以上が経過し町内に転入した者」、「Iターン者」は「町外在住者で、町内に初めて転入した者」と定義づけている(2条1号、24号)。なお、飯豊町は、「飯豊町ふるさと定住いいですね条例」を平成4年4月1日に5年間の時限条例として施行し、これまで、内容を見直しの上で3年間または5年間の時限条例として同趣旨の条例を繰り返し制定している。本条例は8代目となる。本条例も、施行後5年後の令和8年3月31日限失効する(附則2項)としている。本条例の内容等については、飯豊町HP「飯豊で幸せになる条例」を参照されたい。

〇 定住促進条例は、地方の人口減少市町村だけでなく、東京都特別区や中核都市等でも制定されている。

東京都台東区

東京都台東区定住まちづくりに関する基本条例

平成3年6月27日公布

平成3年6月27日施行

石川県金沢市

金沢市定住の促進に関する条例

平成13年3月23日公布

平成13年4月1日施行

などである。都心部や市内中心部における人口減少に対応し、人口の定住化を図ろうとするものである。

 台東区条例は、「定住まちづくりに関する基本的な事項を定めるところにより、調和のとれた安全で住み良い生活環境の維持及び向上を図ること」を目的(1条)としており、基本理念(2条)、区長、区民及び事業者の責務(4条~6条)を定めたうえで、基本的計画の策定(7条)、定住の促進、公的住宅の整備、住宅供給の促進等の施策の推進(13条~17条)、事業者への要請(18条~22条)等を規定している。特に、移住者に関する規定はない。

 金沢市条例は、「本市のまちなかを含む居住誘導区域及び一般居住区域における定住の促進について、基本理念を定め、並びに市、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、定住を促進するための基本となる事項等を定めることにより、移住者等による人口の増加及びまちなかの活性化」を図る(1条)こととしている。「まちなか」における定住促進を図ることとし、基本理念(3条)、市、市民及び事業者の責務(4条~6条)を定めるとともに、「まちなか」における土地利用に関する協力要請(8条)、「まちなか住まい共同計画」の作成と認定(9条)、「まちなか住宅団地計画」の作成と認定(10条)、金沢市定住促進会議の設置(14条)等について規定している。市の責務として、移住者等の定着に関する施策を実施する(4条1号)ものとし、「移住者」を「本市の区域内に移住して3年を経過しない者又は移住しようとする者」で一定の要件に該当するもの(2条5項)と定義づけている。

〇 なお、定住促進や移住促進を図るため、定住促進住宅等を設置する自治体も多い。公の施設として設置、運営する場合は、地方自治法244条の2第1項に基づき、条例の制定が必要となる。こうした条例について、以下、若干の例を示す。

北海道当麻町

当麻町定住促進住宅条例

平成5年3月19日公布

平成5年4月1日施行

鳥取県琴浦町

コトウラ暮らしお試し住宅条例

平成24年12月21日公布

平成25年4月1日施行

山形県舟形村

舟形町若者向け定住・移住住宅設置及び管理に関する条例

令和元年9月12日公布

令和元年9月12日施行

 

【その他】

〇 移住促進に関しては、自治体法務研究2016年夏号特集「移住促進と自治体」を参照されたい。


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