人生会議に関する条例

(令和5年12月14日更新)

【はじめに】

〇 「人生会議」の普及啓発や推進について規定する条例がある。

〇 「人生会議」とは、「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のこと」(厚生労働省HP「「人生会議」してみませんか」)とされ、「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」の愛称を「人生会議」に決定した(厚生労働省HP「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を「人生会議」に決定しました」参照)とされている。

〇 人生の最終段階における医療・ケアの在り方として、「医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで」進めることが最も重要な原則であるとされ、「本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要」であり、さらに「本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、家族等の信頼できる者も含めて、本人との話し合いが繰り返し行われることが重要」であり、「この話し合いに先立ち、本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも重要」である(厚生労働省策定「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(平成30年3月改訂))とされている。

〇 なお、厚生労働省の委託調査により、「自治体等における人生会議の普及啓発事例」が取りまとめられている。

 

【人生会議に関する条例】

〇 「人生会議」の普及啓発や推進について規定する条例として、令和5年9月1日時点で、次の条例が制定されていることが確認できる。

大分県

豊かな人生を送るために「人生会議」の普及啓発を推進する条例

令和2年7月8日公布

令和2年7月8日施行

大阪府

いのち輝く人生のため「人生会議」を推進する条例

令和4年12月23日公布

令和5年4月1日施行

である。大分県条例及び大阪府条例ともに、議員提案により、制定されている。

〇 大分県条例は、目的(1条)、定義(2条)、普及啓発の推進等(3条)、人材の育成(4条)、市町村及び関係機関の役割等(5条)の5条から構成されている。

  条例の目的は、「県、市町村及び関係機関が連携・協力し、人生会議に関する普及啓発を広く推進することにより、人生会議に対する県民の理解を深めること」(1条)としている。

 「人生会議」に関して特に定義規定を置いていないが、前文で「国が普及啓発を進める『人生会議』は、本人が希望する医療やケアなどを受けるために大切にしていることや望んでいること、どこでどのような医療やケアを望むかなどについて、自分自身で前もって考え、家族や友人など周囲の信頼する人たちと何度も話し合い、しっかりと共有する取組である。」としている。

 県は、「リーフレットの配布、セミナーの開催等の手段により、広く県民に対して人生会議に関する普及啓発を行うものとする」(3条1項)としているが、その際の留意点として、「人生会議は、本人の主体的な意思によりなされるものであり、取組を行う又は行わないことを強制されるものではないこと」及び「日々の暮らしの中で、誰もが日常的に話し合える環境づくりを進めることが重要であり、知りたくない、考えたくないなど、各人の意思について十分配慮する必要があること」の2点を規定している(2条2項1号及び2号)。

 本条例については自治体法務研究2020年冬号CLOSEUP先進・ユニーク条例「大分県豊かな人生を送るために「人生会議」の普及啓発を推進する条例」及び大分県議会HP「豊かな人生を送るために「人生会議」の普及啓発を推進する条例の制定」を、参照されたい。

〇 大阪府条例は、目的(1条)、定義(2条)、普及啓発の推進等(3条)、人材の育成(4条)、市町村に対する支援(5条)、市町村等の役割等(6条)の6条から構成されている。

  条例の目的は、「この条例は、府、市町村、事業者及び関係機関が連携協力し、人生会議に関する普及啓発を広く推進することにより府民の理解を深め、本人の意思により人生会議を推進すること」(1条)としている。

 大分県条例と同様に「人生会議」に関して特に定義規定を置いていないが、前文で「人生の最終段階に至るまでの医療・ケアについて、自分自身で前もって考え、家族・友人など信頼する人たちや医療・ケアに関わる専門職と、思いが変化するたび、繰り返し話し合い、その内容を記録として残し、共有する」取組みとしている。

 普及啓発の推進等については、大分県条例とほぼ同様の規定を置いているが、「府は、人生会議について、若者世代への理解促進が重要であることにかんがみ、児童及び生徒に対し、府立学校、市町村立学校、私立学校、PTA等と連携し、第一項の施策を実施するよう努めるものとする。」等の規定を置いている。



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