政治倫理条例

                                                  (令和3年1月15日更新)

【制定状況の概観】

〇  埼玉県上尾市は、議員を対象にした「上尾市議会議員政治倫理条例」及び市長、副市長及び教育長を対象とした「上尾市長等政治倫理条例」を制定し、令和2年10月9日に公布した。「上尾市西貝塚環境センターの入札に関する事件に対する第三者調査委員会から『市長や市議会議員等政治家が業者との不適切な関係を持たず、その清廉性および透明性を確保するため政治倫理条例を制定することが不可欠。』といった提言がなされたことを受けて、制定するものです。」(上尾市HP「上尾市長等政治倫理条例について」)としている。平成29年に当時の現職の市長と市議会議長が官制談合防止法違反などで逮捕されたことを受けた措置である。なお、市職員については、「上尾市職員倫理条例」が令和2年3月に制定されている。

〇 こうした自治体の議員や首長等の政治倫理に関して規定する政治倫理条例は、昭和58年に制定された「堺市議会議員及び市長の倫理に関する条例」が全国で最初とされる。この条例制定のきっかけは、「収賄事件で有罪判決を受けた議員の居座りに反発した市民の直接請求であった」(平松毅「堺市議会議員及び市長の倫理に関する条例」(ジュリスト800号特集条例百選1983年10月))とされる。同条例は、平成18年3月に「堺市議会議員の倫理に関する条例」及び「堺市長の倫理に関する条例」が制定されたことに伴い、廃止されている。

〇 政治倫理条例は、その対象を誰にするかによって、@議員を対象にするもの、A長等を対象にするもの、B議員及び長等の両方を対象にするものに、分けることができる。「長等」としているが、市区町村では、市区町村長のならず、副市長村長や教育長等をも対象としているものがある。

  また、資産公開について政治倫理条例の中に関係規定を置くか否かによっても、タイプが分かれる。資産公開については、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」(平成4年法律100号 資産公開法)7条により、都道府県知事、市区町村長、都道府県議員、指定都市議会議員については義務づけられ、平成7年12月31日までに条例で定めることとされた。多くの団体は単独条例を制定したが、一部の団体は政治倫理条例の中に関係規定を置いている。また、義務づけられていない指定都市以外の市区町村議会議員についても、政治倫理条例の中に関係規定を置くか又は単独条例を制定して、資産公開を制度化する団体がある。

〇 政治倫理条例の全国的な制定状況について、統一的な調査結果はないが、都道府県議会議員については4年に一度、市区議会議員及び町村議会議員については毎年、調査が行われている。

  まず、都道府県議会議員については、平成27年7月1日現在、政治倫理条例を制定しているのは9団体である(都道府県議長会「第13回都道府県議会提要」中「議会における政治倫理規定に関する調する調(平成27年7月1日現在)」)。

  次に、市区議会議員については、平成30年12月31日現在、

   政治倫理条例(資産公開の規定を含む)を制定している団体               44団体(うち指定都市3団体)

   政治倫理条例(資産公開の規定を含まない)と資産公開条例をそれぞれ制定している団体  4団体(うち指定都市2団体)

   政治倫理条例(資産公開の規定を含まない)のみを制定している団体           323団体(うち指定都市0団体)

   資産公開条例のみ制定している団体                          15団体(うち指定都市15団体)

 である(全国市議会議長会「市議会の活動に関する実態調査結果」中「議員についての政治倫理・資産公開に関する条例の制定状況(平成30年12月31日現在)」37・38頁)。

  また、町村議会議員については、令和元年7月1日現在、政治倫理条例等(政治倫理について内規や申合せを定めている場合も含む)を制定している町村は286団体(全国町村議会議長会「第65回町村議会実態調査結果の概要(令和元年7月1日現在)」である。

〇 以上の市議会議員及び町村議会議員の調査結果を踏まえつつ、インターネットに掲載している例規集等により調査(令和2年10月9日現在で、確認できるもの)した結果によると、政治倫理条例の全体の制定状況は、概ね以下のようになる。なお、本稿では、資産公開に関する単独条例は対象外とする。また、全自治体の条例をすべて把握できているものではなく、数字は必ずしも正確ではないと考えられるので、留意願いたい。

1 都道府県                             

議員を対象にした条例だけを制定している団体               9団体(岩手県、宮城県、福井県、三重県、 
                                           滋賀県、奈良県、鳥取県、広島県、 
                                           長崎県)

知事を対象にした条例だけを制定している団体               なし

議員及び知事の両方を対象にした条例を制定している団体          なし

議員を対象にした条例と知事を対象にした条例を別々に制定している団体   なし

2 指定都市

議員を対象にした条例だけを制定している団体               1団体(京都市)

市長を対象にした条例だけを制定している団体               なし

議員及び市長の両方を対象にした条例を制定している団体          1団体(熊本市)

議員を対象にした条例と市長を対象にした条例を別々に制定している団体   3団体(千葉市、堺市、福岡市)

3 指定都市以外の市及び特別区

議員を対象にした条例だけを制定している団体               247団体

市長等を対象にした条例だけを制定している団体              6団体(前橋市、富岡市、伊東市、枚方市、  
                                           和歌山市、都城市)

議員及び市長等の両方を対象にした条例を制定している団体         92団体

議員を対象にした条例と市長等を対象にした条例を別々に制定している団体  48団体

4 町村                                   

議員を対象にした条例だけを制定している団体               146団体

町村長等を対象にした条例だけを制定している団体             1団体(熊本県西原町)

議員及び町村長等の両方を対象にした条例を制定している団体        88団体

議員を対象にした条例と町村長等を対象にした条例を別々に制定している団体 16団体

 である。

  これによると、議員、首長等にかかわらず政治倫理条例を制定している団体は、都道府県では9団体、市区町村では649団体である。何らかの形で議員に関する政治倫理条例を制定している団体は、都道府県では9団体、市区町村では642団体である。何らかの形で長等に関する政治倫理条例を制定している団体は、都道府県ではなく、市区町村では255団体である。市区町村長等だけを対象にした政治倫理条例を制定している団体は、7団体に過ぎない。

  なお、熊本県西原村条例及び都城市条例の条例名は「特別職職員の倫理に関する条例」であり、福井県高浜町条例(町長等を対象)の条例名は「常勤特別職政治倫理条例」である。徳島市及び高知市も「特別職職員の倫理に関する条例」を制定しているが、両条例は、一般職職員を対象にした「職員倫理条例」と同様に倫理原則と贈与等の報告を定めているものであるので、本稿では対象には含めていない。 

 

【条例内容の概要】

〇 政治倫理条例にどのような内容を盛り込むかについては、団体によって異なる。一般的には、@政治倫理基準、A請負等の制限、B資産公開、C住民の調査請求、D政治倫理審査会、E問責制度の6項目のうちの全部または一部が規定されている。

  斎藤文男「政治倫理条例のすべて」(公人の友社2016年10月))は、この6項目のどれが欠けても「欠陥条例」(23頁)だとしているが、実際に制定されている条例を見ると、6項目すべてが規定されている条例は少ない。

  少なくとも、資産公開については、義務づけられている知事、市区町村長、都道府県議会議員及び指定都市議会議員については単独条例で規定するものが多く、義務づけられていない指定都市以外の市区町村議会議員については単独条例も含めて規定を置く団体は少ない(上記全国市議会議議長会資料によれば、指定都市を除く市では、政治倫理条例を制定している団体のうち、資産公開に関する規定を置いているのは、1割強に過ぎない)。

〇 政治倫理基準は、ほとんどの条例で規定されている。政治倫理に関して、議員や長等に対して一定の行為を禁止し、その遵守を求めるものであるが、一般的には、(1)不正疑惑行為の禁止、(2)契約等に当たっての特定企業等への有利な取扱いの禁止、(3)政治的・道義的批判を受ける恐れのある寄附の受け入れの禁止(後援団体を含む)、(4)地位利用による金品授受の禁止、(5)職員の職務執行への不当介入の禁止、 (6)職員採用等の推薦禁止などが定められている。これらの項目のほか、人権侵害のおそれのある行為(ハラスメント等)の禁止、職員等に依頼等をしたときの記録義務等を規定している条例もある。

〇 請負等の制限は、地方自治法が議員や長等が当該自治体に対して請負をすること又はこれらの者が役員等を務める法人が当該自治体に対して請負をすることを禁止している(92条の2、142条等)ことを踏まえ、こうした法律で禁止されている事項以外に、請負等に関して一定の制限規定を置くものである。具体的には、議員や長等の一定の親族が役員をしている企業等や議員や長等が実質的に経営に携わる企業等が当該自治体との請負契約等を締結することを辞退するように努める等を規定している。また、当該自治体のみならず当該自治体が2分の1以上出資している法人との請負契約等の辞退を求めるものがあり、さらには、地方自治法244条の2第3項に規定する指定管理者になることを禁止するものもある。

  なお、府中市政治倫理条例が2親等以内の親族が経営する企業は市の工事等の請負工事を辞退しなければならならず、議員は辞退届を提出するよう努めなければならない(4条1項、3項)としていることなどに関して、最高裁判所は、議員が実質的に経営する企業であるのにその経営者を名目上2親等以内の親族とするなどして地方自治法92条の2の規制の潜脱が行われるおそれや当該親族が経営する企業に特別の便宜を図るなどして議員の職務執行の公正が害されるおそれがあること、辞退届の提出まで義務付けるものではないこと、義務を履行しなかった場合の手続も議員の地位を失わせるなどの法的な効果や強制力を有するものではないことなどの理由により、これらの規定は憲法21条1項(表現の自由)、22条1項(職業選択の自由)及び29条(財産権の保障)に違反しない(最高裁平成26年5月27日判決)との判断を示している。

〇 資産公開に関する規定を置く場合は、資産公開法では、国会議員に資産等報告書、所得等報告書及び関連会社等報告書の提出を義務づけ、これらの報告書は7年間保存され何人も閲覧を請求できるとし、資産等報告書は土地、地上権・賃借権、建物、預金(当座預金・普通預金を除く)、有価証券、自動車・美術工芸品等(取得価格が100万円以上)、ゴルフ場会員権、貸付金及び借入金を、所得等報告書は所得と贈与を、関連会社等報告書は報酬を得ている会社等の役員、顧問等を、それぞれ記載することとしているので、この資産公開法に基づく国会議員の例に倣い規定されることとなる。しかし、条例では、当座預金・普通預金、信託、保証債務、貯蓄性保険、50万円以上の動産、税等の納付状況、3万円以上のもてなし、報酬を得ていない企業や団体等の役職などについても、報告の対象とし、また、必要な証明書類を添付しなければならないとするものがある。副市区町村長、教育長等も対象としているものもあり、議員や長等の配偶者、扶養親族や同居親族にも資産等報告書等の提出を義務づけているものもある。さらに、資産等報告書等を閲覧の対象とするだけでなく、要旨を広報紙等に掲載し公表することを義務づけているものもある。一方で、資産等報告書等の提出を毎年義務付けるのではなく、政治倫理審査会が必要と認めた場合のみ当該者に対して提出を求めているものがある。

〇 住民の調査請求は、政治倫理基準や請負等の制限に違反する疑いがある場合や資産等報告書等の記載内容に疑義がある場合に、住民が議長や市区町村長に対して調査や審査を請求することができるとするものである。一人でも請求することができるとするものあれば、有権者の一定割合以上の連署を請求の要件とするものもある。また、住民による調査請求ではなく、議員が議員定数の一定割合以上の連署により議長に審査を請求することができるとするものがある。

〇 政治倫理審査会は、住民等からの調査請求等がある場合などに調査や審査を行う機関として設置される。資産公開に関しては、住民等からの調査請求等の有無にかかわらず、資産等報告書等について審査を行うとするものが多い。調査や審査の対象が、長等の場合や議員、長等の両方とする場合は、通常、地方自治法138条の4第3項に基づく執行機関の付属機関として設置される。この場合、審査会の委員は、通常、有識者や住民等から構成される。任命に当たって、議会の同意を求めるものもある。議員のみを対象とする場合は、議会の特別委員会として設置されることが多く、この場合は議員から構成される。ただし、議会基本条例において議会は附属機関を設置できるとするものがあり、こうした場合などは、議会の附属機関として審査会が設置される。この場合、通常、委員は有識者等で構成される。なお、審査会は議員等による審査の請求があった場合にのみ設置するものもある。

〇 問責制度は、議員や長等が贈収賄罪等で有罪判決があった場合に引き続きその職にとどまるときは説明会を開催するなどとするものである。有罪判決が確定した場合は、公職選挙法11条1項により失職する場合を除き、辞職するものとしているものもある。贈収賄罪に限らず、職務に関連した犯罪、さらには刑事事件すべてを対象とするものもある。また、逮捕後は、逮捕された議員や長等が説明会の開催を請求でき、起訴後や一審有罪判決後は当該議員や長等は説明会の開催を請求しなければならず、しない場合は住民が開催を請求することができるとするものもある。

〇 上記斎藤著書は、上記6項目すべてを対象にしてそれぞれの項目について厳格な内容を求めるモデル条例を示しており、それぞれの内容について解説している。また、樋口雄人「富山県内自治体における政治倫理条例」(高岡法科大学紀要27号2016年3月)は富山県内の政治倫理条例を概観したうえで、その内容等について解説をしている。

〇 以下、具体的な政治倫理条例のいくつかをグループに分けて紹介をする。

 

【都道府県の条例】

〇 まず、都道府県の条例から紹介する。

三重県

三重県議会議員の政治倫理に関する条例

平成18年12月26日公布

平成18年12月26日施行

福井県

福井県議会議員の政治倫理に関する条例

平成19年7月20日公布

平成20年1月1日施行

〇 都道府県では、議員のみを対象にした条例が9県のみで制定されている。

〇 三重県条例は、政治倫理基準(3条)を定めるとともに、審査会に関する規定(5条〜10条)を置いている。審査会は、議員の一定割合(12分の1)以上により審査の請求があった場合にのみ設置され、議員により構成される(4条、5条)。他の県の条例も、福井県条例及び宮城県条例を除き、同様の構成となっている。宮城県条例は、資産公開に関する規定も置いている。なお、滋賀県条例及び鳥取県条例は審査会の委員は議員及び有識者から構成されるとし、また、長崎県条例は有権者がその50分の1以上の連署をもって審査委員会に審査の申立てをすることもできるとしている。

〇 福井県条例は、政治倫理基準及び審査会の規定以外に、請負等の制限に関する規定を置いている。請負等の制限は、議員、その配偶者や2親等以内の親族が役員をしている企業等、議員が資本金その他これに準ずるものの3分の1以上を出資している企業等、議員が顧問料等その名目を問わず報酬を受領している企業等は、県及び県が資本金、基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している法人の発注する工事等の請負及び業務委託の契約を辞退することを求めている(4条)。

 

【指定都市の条例】

〇 次に、指定都市の条例を紹介する。

堺市

堺市議会議員の倫理に関する条例

平成18年3月29日公布

平成18年4月1日施行

堺市長の倫理に関する条例

平成18年3月29日公布

平成18年4月1日施行

熊本市

熊本市政治倫理条例

平成2年4月18日公布

平成2年4月18日施行

福岡市

福岡市議会議員の政治倫理に関する条例

平成10年10月5日公布

平成11年5月2日施行

福岡市長の政治倫理に関する条例

平成10年10月5日公布

平成10年10月5日施行

千葉市

千葉市議会議員の政治倫理に関する条例

平成22年3月23日公布

平成22年4月1日施行

千葉市長の政治倫理に関する条例

平成22年3月23日公布

平成22年4月1日施行

京都市

京都市会議員政治倫理条例

平成19年3月1日公布

平成19年3月1日施行

〇 指定都市で政治倫理条例を制定しているのは5市のみである。内容は、市によって異なるので、5市の条例すべてを紹介する。

〇 堺市は、昭和58年に全国で最初に「堺市議会議員及び市長の倫理に関する条例」を制定したが、問責制度、資産公開、倫理審査委員会の設置及び市民の調査請求を規定していた。平成18年3月に、議員と市長とを別にして現行条例を制定している。議員条例と市長条例とは基本的には同内容であるが、倫理審査会の設置等を市長条例で規定し(8条)、議員条例では市長条例で規定された倫理審査会で審査等を行う(8条)としている。両条例とも、政治倫理基準及び請負等の制限は規定せず、まず、収賄罪等宣告後における釈明に関する規定(2条)を置き、その次に資産公開に関する規定を置いている。資産等報告書には、30万円以上の当座預金、普通預金及び普通貯金、金銭信託、取得価格30万円以上の日常生活の用に供していない動産、30万円以上の現金、30万円以上の債権債務(親族間のものを除く。)をも対象に加え(3条)、所得等報告書には、それぞれ1の出所当たり、3万円以上の収入、1万円以上の利益の供与及び5万円以上のもてなしをも対象に加え(4条)、関連会社等報告書には、報酬の有無にかかわらず会社その他の法人の役員、顧問その他の職を対象にしている(5条)。これらとは別に、30万円以上の国債、地方債、社債、株、その他の有価証券、先物商品及び不動産権益に関する資産取引報告書の提出を毎年義務づけている(6条)。資産公開法の規定に比べて、資産等の内容について細部にまでかつ詳細に報告を義務付けている。倫理審査会は、執行機関の付属機関とし、13名の委員のうち、6人を議員から、7人を有権者で公募に応じたものから、市長が委嘱することとしている(市長条例8条)。市民の調査請求については、一人でも請求できるとしている(10条)。

〇 熊本市条例は、議員と市長の両方を対象にしている。全国で最初に政治倫理基準を導入したとされる(川崎政司「政治倫理」(行政課題別条例実務の要点(第一法規 令和2年7月)4266頁)。政治倫理基準として、(1)契約等に当たっての特定企業等への有利な取扱いの禁止、(2)政治的・道義的批判を受ける恐れのある寄附の受け入れの禁止(後援団体を含む)、(3)地位用利用による金品授受の禁止、(4)職員の職務執行への不当介入の禁止、(5)不正疑惑行為の禁止の5項目を規定している(3条)が、平成2年制定当時は(1),(2),(3),(5)が規定され、平成27年に(4)が追加された。資産公開に関する規定は別途単独条例で定め、請負等の制限は規定していない。政治倫理審査会は、執行機関の付属機関としているが、委員は地方行政に関し識見の高い者のうちから市長が議会の同意を得て委嘱する(4条)とし、市民の調査請求は、有権者総数の200分の1以上の連署をもって行うこととしている(6条)。収賄罪等宣告後における釈明(12条)と併せて、収賄罪等確定後の措置(13条)についても規定している。

〇 福岡市は、議員を対象にする条例と市長を対象にする条例を別々に制定している。両条例の関係は、基本的には堺市条例と同様になっている。上記6項目のすべてが規定されている。資産等報告書、所得等報告書及び関連会社等報告書はすべて、配偶者及び扶養親族の資産等をも対象にしている。そのうえで、資産等報告書の記載対象はほぼ資産公開法と同様であり(4条)、所得等報告書は1件当たり3万円以上の利益の供与及び5万円以上の供応接待を対象に加え(5条)、関連会社等報告書は報酬を得ているものに限定している(6条)。市民の調査請求は、有権者50人以上の連署をもって行うこととし(議員条例10条、市長条例13条)、問責制度については、贈収賄罪に関して逮捕後の説明会、起訴後の説明会、一審有罪判決後の説明会及び確定後の措置に分けて規定を置いている(議会条例は14条〜17条、市長条例は17条〜20条)。請負等の制限については、配偶者及び扶養親族が実質的に経営に携わる法人も市及び市の出資法人と請負契約等を締結しないように努めなければならないとしている(議員条例18条、市長条例21条)。

〇 千葉市も、議員を対象にする条例と市長を対象にする条例を別々に制定しているが、その内容は福岡市条例とほぼ同じである。市等との請負契約等の状況の公表に関する規定を置いている(議員条例18条、市長条例20条)。

〇 京都市は、議員のみ条例を制定している。政治倫理基準(3条)と審査会の設置(4条)のみ規定している。審査会は、議長が調査、審査の必要があると認めた場合のみ、設置できるとしている。

 

【その他の市区町村の条例】

〇 指定都市以外の市区町村の条例をいくつか紹介する。

福岡県築上町

築上町政治倫理条例

平成18年1月10日公布

平成18年1月10日施行

嘉麻市

嘉麻市政治倫理条例

平成18年9月29日公布

平成18年9月29日施行

茨城県つくば市

つくば市議会議員政治倫理条例

平成12年11月2日公布

平成12年11月30日施行

つくば市長等政治倫理条例

平成13年3月30日公布

平成13年4月1日施行

埼玉県上尾市

上尾市議会議員政治倫理条例

令和2年10月9日公布

令和2年10月9日施行

(一部 未施行)

上尾市長等政治倫理条例

令和2年10月9日公布

令和2年10月9日施行

(一部 未施行)

東京都国分寺市

国分寺市政治倫理条例

平成13年12月26日公布

平成14年4月1日施行

東京都新宿区

新宿区議会議員政治倫理条例

平成17年6月20日公布

平成17年6月20日施行

広島県府中市

府中市議会議員政治倫理条例

平成20年3月31日公布

平成20年3月31日施行

和歌山県和歌山市

和歌山市長等の倫理に関する条例

平成15年10月3日公布

平成16年1月1日施行

長野県白馬村

白馬村政治倫理条例

平成7年12月21日公布

平成8年1月1日施行

北海道余市町

余市町政治倫理条例

平成18年9月14日公布

平成19年4月1日施行

〇 築上町条例と嘉麻市条例は、政治倫理・九州ネットワークの「福岡県内市町村の政治倫理条例ランキング表(2013年10月20日現在)」において1位及び2位に位置づけられたものである。6項目すべてを規定し、それぞれの項目についても厳格な内容を規定している。なお、2013年(平成25年)以降、築上町条例は令和2年4月1日に改正施行され、嘉麻市条例は平成30年4月1日最終改正施行まで数次にわたり改正されている。

  築上町条例は、議員、町長、副町長、教育長、公営企業管理者及び公社役員を対象にし、資産等報告書は配偶者及び扶養・同居の親族分も提出を義務づけるとともに必要な証明書類を添付しなければならないとし、税等の納付状況も含んでいる。また、政治倫理審査会委員は有識者及び有権者から町長が委嘱するが議会の同意を必要とせず、町民の調査請求は一人でもできるとし、請負等の制限については配偶者及び2親等以内の親族が役員をしている企業や議員及び町長等が実質的に経営に携わる企業にも請負契約等の辞退を求めている。

  嘉麻市条例は、議員、市長、副市長及び教育長を対象にし、資産等報告書は配偶者及びび扶養する子の分も提出を義務づけるとともに固定資産に係る評価証明書、預貯金に係る残高証明書等を添付しなければならないとし、税等の納付状況も含んでいる。また、政治倫理審査会委員は有識者及び有権者から市長が委嘱するが議会の同意を必要とせず、市民の調査請求は有権者30人以上の連署をもってできるとし、市が、議員及び市長等の配偶者、2親等以内の親族及び同居人が経営し、役員をしている企業等と請負契約等を締結し又は指定管理者の指定をすることを禁止している。

〇 つくば市は、議員を対象にする条例と市長等を対象にする条例を別々に制定している。政治倫理審査会については、「つくば市政治倫理審査会条例」が制定されている。両条例とも、審査会を除く5項目すべてを規定しており、それぞれの項目についても比較的厳格な内容を規定している。市長等条例は、市長、副市長及び教育長を対象としている。資産等報告書に関して、議員条例は、議員の配偶者、扶養親族又は同居親族は審査会から求められたときは提出しなければならないとしているが、市長等条例はそのような規定は置いていない。

〇 上尾市条例案は、議員を対象にする条例と市長等を対象にする条例を別々に制定している。議員条例は、資産公開を除く5項目を規定し、市長等条例は、市長、副市長及び教育長を対象とし6項目すべてを規定しているが、資産公開に関しては市長のみを対象にしている。各項目について、議員条例と市長等条例とは内容、規定の仕方等は異なり、例えば、請負等の制限に関して対象となる親族は、議員条例は配偶者、1親等内の血族又は同居の親族とし、市長等条例は配偶者、2親等内の親族又は同居の親族としている。また、政治倫理審査会への市民の調査請求は、議員条例は有権者総数の500分の1以上の連署をもってできるとし、市長等条例は有権者100人以上の連署をもってできるとしている。

〇 国分寺市条例は、議員、市長,副市長及び教育長を対象にしており、6項目すべてを規定している。副市長及び教育長も資産公開の対象としているが、配偶者や同居親族等は対象にしていない。配偶者、2親等内の親族、同居の親族が役員をしている法人にも請負契約等の辞退を求めている。

〇 新宿区条例は、議員を対象にしたものであるが、政治倫理基準、政治倫理審査会、区民の審査請求について規定している。資産公開、問責制度は規定せず、請負等の制限については、兼業の報告義務のみ規定している(7条)。政治倫理基準として、議員が区の職員等に依頼等をしたときの記録文書等の議長への提出義務(6条)やセクシュアル・ハラスメント等人権侵害のおそれのある行為の禁止(8条)を規定している。

〇 府中市条例は、議員を対象にしたものであるが、政治倫理基準、政治倫理審査会、市民の審査請求、請負等の制限について規定している。資産公開、問責制度は規定していない。請負等の制限については、議員、配偶者、2親等以内の親族、同居の親族が経営する企業及び議員が実質的に経営に関与する企業は、請負契約等を辞退しなければならない(4条1項)とし、議員は関係者の辞退届を提出するよう努めなければならない(4条3項)としている。また、審査会の審査結果について、議長は、議会に諮りこれを市民に公表する(9条1項)とともに、議会に諮り警告を発すること、議員の辞職勧告を行うこと等の措置を講ずることができる(9条2項)としている。前述のとおり、これらの規定の合憲性が裁判で争われた。なお、条例は令和2年に一部改正されている。

〇 和歌山市条例は、市長、副市長及び公営企業管理者を対象にしたものである。和歌山市では、議員を対象にした条例は制定されていない。資産公開については、市長を対象に「政治倫理の確立のための和歌山市長の資産等の公開に関する条例」が制定されている。本条例では、倫理基準、倫理審査会及び市民の調査請求のみ規定している。

〇 白馬村条例は、議員、村長、副村長及び教育長を対象にしている。政治倫理基準、資産公開及び請負等の制限について規定しているが、政治倫理審査会、住民の審査請求及び問責制度は規定していない。資産公開は、議員及び村長のみを対象にしている。

〇 余市町条例は、議員、町長、副町長及び教育長を対象にしている。政治倫理基準、政治倫理審査会、町民の審査請求について規定しているが、請負等の制限、資産公開及び問責制度は規定していない。町長の資産公開については、「政治倫理の確立のための余市町長の資産等の公開に関する条例」が制定されている。

〇 最後に、令和の時代になってから制定された条例(上尾市条例案を除く)を紹介する。

静岡県御殿場市

御殿場市議会議員政治倫理条例

令和元年6月6日公布

令和元年6月6日施行

山形県飯豊町

飯豊町議会議員政治倫理条例

令和元年6月7日公布

令和元年6月7日施行

千葉県匝瑳市

匝瑳市議会議員政治倫理条例

令和元年6月26日公布

令和元年9月1日施行

宮城県富谷市

富谷市議会議員政治倫理条例

令和元年7月1日公布

令和元年7月1日施行

大阪府茨木市

茨木市議会議員政治倫理条例

令和元年9月9日公布

令和元年9月9日施行

愛媛県宇和島市

宇和島市議会政治倫理条例

令和元年9月26日公布

令和3年4月1日施行

新潟県佐渡市

佐渡市議会議員政治倫理条例

令和元年9月27日公布

令和2年4月18日施行

和歌山県紀の川市

紀の川市議会議員政治倫理条例

令和元年9月27日公布

令和元年9月27日施行

新潟県八郎潟町

八郎潟町議会議員政治倫理条例

令和元年10月1日公布

令和元年10月1日施行

鹿児島県南大隅町

南大隅町議会議員政治倫理条例

令和元年12月20日公布

令和2年4月1日施行

大阪府大東市

大東市議会議員の政治倫理に関する条例

令和2年2月20日公布

令和2年2月20日施行

大東市長等の政治倫理に関する条例

令和2年2月20日公布

令和2年2月20日施行

広島県尾道市

尾道市議会議員政治倫理条例

令和2年3月12日公布

令和2年3月12日施行

千葉県成田市

成田市議会議員政治倫理条例

令和2年3月19日公布

令和2年4月1日施行

石川県羽咋市

羽咋市議会議員政治倫理条例

令和2年3月19日公布

令和2年3月19日施行

埼玉県鶴ヶ島市

鶴ヶ島市議会議員政治倫理条

令和2年3月23日公布

令和2年4月1日施行

岩手県紫波町

紫波町議会議員政治倫理条例

令和2年3月24日公布

令和2年4月1日施行

福井県高浜町

高浜町常勤特別職政治倫理条例

令和2年3月24日公布

令和2年3月24日施行

山口県萩市

萩市議会議員政治倫理条例

令和2年3月27日公布

令和2年3月27日施行

青森県南部町

南部町議会議員政治倫理条例

令和2年9月4日公布

令和2年10月1日施行

岡山県赤磐市

赤磐市議会議員政治倫理条例

令和2年10月1日公布

令和2年10月1日施行

〇 これらの条例のうち、大東市は議員を対象にする条例と市長等を対象にする条例の両方を制定している。高浜町条例は町長・副町長・教育長を対象にした条例であるが、議員を対象にした「高浜町議会議員政治倫理条例」は平成21年に制定されている。その他の条例は、議員を対象にした条例である。なお、茨木市は、市長、副市長、水道事業管理者、教育長及び常勤の監査委員を対象にした「茨木市長等政治倫理条例」が平成29年に制定されている。

  条例の主な内容を概観すると、政治倫理基準については、全ての条例で規定されている。このうち、茨木市、宇和島市、尾道市、紫波町及び萩市の条例については、ハラスメントの禁止についても規定している。飯豊町条例は、「認知症と診断されていないこと」(3条9号)を遵守事項に含めている。

  請負等の制限を規定する条例は、半数程度である。茨木市、佐渡市、大東市(両条例)及び鶴ヶ島市の条例は、指定管理者の指定の禁止、辞退、自粛等の規定を置いている。また、匝瑳市、富谷市、佐渡市、八郎潟町、成田市、紫波町及び赤磐市の条例は、市町村から補助を受ける団体の長等への就任の禁止、辞退、自粛、届出、報告等の規定を置いている。

  資産公開を規定する条例は、ない。なお、富谷市条例は税等納付状況報告書の提出を義務づけている(4条)。

  住民の調査要求を規定する条例は、半数程度である。住民の調査請求を規定しない条例であっても、鶴ヶ島市条例を除き、議員の調査請求・審査請求は規定している。

  政治倫理審査会の設置については、紫波町条例を除く条例で規定されている。紫波町条例は、町民または議員からの審査請求があった場合は、議長は、議会運営委員会に諮って会議に付すべき事件に定め、当該付議事件政治倫理審査に関する特別委員会に付託されるとしている(7条〜9条)。

  問責制度については、茨木市条例は職務関連犯罪等の有罪確定後の措置(10条)、赤磐市条例は刑確定後の措置(15条)について、それぞれ規定を置いている。

  なお、御殿場市及び紀の川市の条例は政治倫理の宣誓、富谷市は条例遵守の誓約書の提出について、それぞれ規定を置いている。また、赤磐市条例は議員の要請に対する記録を市長等に求める規定(5条)を置いている。




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