RILG - 一般財団法人 地方自治研究機構


職員倫理、コンプライアンス、公益通報等に関する条例

                                                  (令和3年5月16日更新)

【制定状況の概観】

〇 埼玉県上尾市は、令和2年3月に「上尾市職員倫理条例」を制定した。条例の動き「政治倫理条例」で記述の通り、議員を対象にした「上尾市議会議員政治倫理条例」及び市長、副市長及び教育長を対象とした「上尾市長等政治倫理条例」が令和2年10月に制定されている。これらの条例はいずれも、平成29年に当時の現職の市長と市議会議長が官制談合防止法違反などで逮捕されたことを受けた措置として制定されたものである。

 「上尾市職員倫理条例」は、職員倫理の原則、コンプライアンス審査会の設置、要望等の記録、不当要求行為等への対応、公益通報等を定めている。一般職の職員を対象とし、併せて市長、副市長、教育長その他の特別職の職員も対象としている。議員は対象外である。

〇 議員や長を対象にした政治倫理条例は昭和58年制定の「堺市議会議員及び市長の倫理に関する条例」が全国で最初とされるが、一般職職員を含む自治体の職員を対象にした職員倫理条例は平成9年4月に「北海道職員の公務員倫理に関する条例」が制定されている。

 「国家公務員倫理法(平成11年法律129号)」が、平成11年8月13日に公布され、平成12年4月1日に施行された。同法は、国家公務員を対象にして職員倫理の原則、国家公務員倫理規程の策定、贈与等の報告等を定めているが、地方公共団体については「この法律の規定に基づく国及び行政執行法人の施策に準じて、地方公務員の職務に係る倫理の保持のために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」(43条)としている。同法制定以降、職員倫理の原則、職員倫理規則の制定、贈与等の報告等を規定した職員倫理条例を制定する自治体が増加していく。

〇 平成13年3月に滋賀県近江八幡市が「近江八幡市コンプライアンス条例」を制定した。公正な職務の遂行するにあたっての職員の基本的心構えを定めるとともに、コンプライアンス委員会の設置、不当要求行為等への対応等を規定している。議員を除く特別職職員も対象にしている。不当要求行為等への対応については、平成15年には錦町など熊本県内の市町村が「不当要求行為等の防止に関する条例」を制定したが、近江八幡市条例とほぼ同様の内容となっている。

〇 平成15年7月に東京都千代田区が「千代田区職員等公益通報条例」を制定した。区職員等による公益通報制度を定めた。「公益通報者保護法(平成16年法律122号)」が平成16年6月18日に公布され、平成18年4月1日に施行されたが、千代田区条例はそれに先行して制定されたこととなる。平成16年3月に京都府長岡京市が「長岡京市における法令遵守の推進に関する条例」を制定し、公益通報、不当要求行為等への対応等をあわせて規定した。同じく平成16年3月に東京都杉並区が「杉並区職員の倫理の保持及び公益通報に関する条例」を制定し、職員倫理の原則、公益通報等をあわせて規定した。これらの条例も、公益通報については法律に先行している。公益通報者保護法制定以降、公益通報制度を条例に規定する自治体が増加していく。

〇 平成17年7月に新潟市が「新潟市における法令遵守の推進等に関する条例」を、平成18年3月に宮城県石巻市が「信頼される市政のためのコンプライアンス条例」を、同じく平成18年3月に大阪市が「職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例」を制定した。それぞれ条例名は異なるが、いずれも公益通報、不当要求行為等への対応等を規定している。新潟市条例は、職員倫理の原則についても規定するとともに、職員以外の者が職員に対して特定の団体・個人を有利に扱うなどの働きかけがあった場合は記録しなければならないとしている。

  平成18年9月に神戸市が「神戸市政の透明化の推進及び公正な職務執行の確保に関する条例」を制定した。職員倫理の原則を定めるとともに、不当要求行為等への対応について規定しているが、職員が職員以外の者から受けた要望等を原則としてすべて記録することを記録することを義務づけている。

〇 以上見るように、自治体職員の職員倫理、コンプライアンス、公益通報等に関して、「職員倫理条例」、「コンプライアンス条例」、「法令遵守の推進に関する条例」、「公正な職務の執行の確保に関する条例」、「不当要求行為等の防止に関する条例」、「公益通報条例」、「不祥事防止対策条例」などの条例が制定されているが、これらの条例は、職員倫理の原則・職員倫理規則の制定、不当要求行為等への対応、公益通報について、その全部または一部が規定されている。また、要望等の記録を規定する条例もある。

〇 これらの条例の制定状況については、統計数字はない。インターネットに掲載している例規集等により確認できるもの(令和3年5月16日現在)は、以下の通りである。なお、全自治体の条例をすべて把握できているものではなく、数字は必ずしも正確ではないと考えられるので、留意願いたい。

     職員倫理、公務員倫理、職員の倫理などを条例名に使用しているもの        156団体

     不当要求行為を条例名に使用しているもの                     40団体

     法令遵守、法令の遵守などを条例名に使用しているもの               36団体

     公正な職務の執行、公正な職務執行などを条例名に使用しているもの         34団体

     公益通報を条例名に使用しているもの                       19団体

     コンプライアンスを条例名に使用しているもの                   16団体

     職員不祥事防止を条例名に使用しているもの                     3団体

     市政の透明性の推進などを条例名に使用しているもの                 2団体

  このうち、職員の倫理と公益通報の両方を条例名に使用しているものは2団体(東京都杉並区、板橋区)、公益通報と不当要求行為の両方を使用しているものは1団体(滋賀県長浜市)、市政の透明性の推進と公正な職務執行の両方を条例名に使用しているものは2団体(神戸市、滋賀県草津市)ある。

〇 ちなみに、都道府県は、12団体が制定しているが、北海道及び徳島県が「公務員倫理に関する条例」、青森県、福島県、千葉県、静岡県、岡山県、香川県、高知県及び福岡県が「職員倫理条例」、岩手県が「職員の職務に係る倫理の保持に関する条例」、神奈川県が「職員等不祥事防止対策条例」となっている。神奈川県以外は、職員倫理、公務員倫理、職員の倫理などを条例名に使用している。

  また、指定都市は、11団体が制定しているが、名古屋市及び京都市はそれぞれ「職員の倫理の保持に関する条例」及び「職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」の2条例を制定している。千葉市、静岡市、浜松市及び広島市が「職員倫理条例」、名古屋市、京都市及び熊本市が「職員の倫理の保持に関する条例」、福岡市が「職員の公務員倫理に関する条例」、新潟市が「法令遵守の推進等に関する条例」、名古屋市、京都市及び大阪市が「職員の公正な職務の執行の確保に関する条例」、神戸市が「市政の透明化の推進及び公正な職務執行の確保に関する条例」となっている。職員倫理、公務員倫理、職員の倫理などを条例名に使用しているのが8団体と多く、法令遵守を使用しているのが1団体、公正な職務執行などを使用しているのが4団体となっている。

  コンプライアンスを条例名に使用しているものは、北海道芽室町、宮城県石巻市、栃木県栃木市、埼玉県三芳町、千葉県成田市、岐阜県美濃加茂市、三重県亀山市、滋賀県近江八幡市、兵庫県加西市、宍粟市、岡山県玉野市、総社市、香川県多度津町、愛媛県松山市、福岡県中間市、小郡市である。

  公益通報を条例名に使用しているものは、北海道鹿部町、岩手県大槌町、秋田県大仙市、茨城県坂東市、栃木県鹿沼市、埼玉県深谷市、東京都千代田区、新宿区、目黒区、杉並区、板橋区、大島町、新潟県柏崎市、岐阜県多治見市、愛知県岩倉市、三重県伊賀市、滋賀県長浜市、兵庫県三田市、岡山県赤磐市である。

  職員不祥事防止を条例名に使用しているものは、埼玉県志木市、神奈川県、神奈川県箱根町である。

  なお、不当要求行為を条例名に使用している40団体のうち、熊本県の市町村が18団体となっている。

〇 これらの条例について、いくつかのタイプに分けて、具体例を紹介する。なお、平成30年以降に制定された条例として確認できるものは、すべて紹介する。

 

【主として職員倫理・公務員倫理について規定する条例】

〇 まず、主として職員倫理・公務員倫理について規定する条例を紹介する。

北海道

北海道職員の公務員倫理に関する条例

平成9年4月3日公布

平成9年4月3日施行

平成12年4月1日改正施行

岡山県倉敷市

倉敷市職員倫理条例

平成12年12月22日公布

平成13年4月1日施行

名古屋市

名古屋市職員の倫理の保持に関する条例

平成16年3月26日公布

平成16年4月1日施行

京都府京丹波町

京丹波町職員倫理条例

平成30年9月26日公布

平成30年9月26日施行

千葉県

千葉県職員倫理条例

平成30年12月28日公布

平成31年4月1日施行

千葉県木更津市

木更津市職員倫理条例

平成31年3月21日公布

平成31年4月1日施行

大阪府羽曳野市

羽曳野市職員倫理条例

平成31年3月28日公布

平成31年4月1日施行

茨城県取手市

取手市職員倫理条例

令和元年9月27日公布

令和元年10月1日施行

熊本県八代市

八代市職員倫理条例

令和元年12月23日公布

令和2年4月1日施行

岩手県大船渡市

大船渡市職員倫理条例

令和2年3月19日公布

令和2年4月1日施行

京都府宮津市

宮津市職員倫理条例

令和2年3月27日公布

令和2年4月1日施行

愛媛県松前町

松前町職員倫理条例

令和2年6月25日公布

令和2年6月25日施行

〇 これらの条例は、職員(公務員)倫理の原則、倫理規則の制定等を定めている。また、贈与等の報告、職員の研修、職員の倫理保持状況の報告等を定めているものが多い。一般職の職員のみを対象にする場合が多いが、議員を除く特別職の職員を対象にするものもある。職員(公務員)倫理の原則として、@全体の奉仕者であり、公正な職務の執行に当たらなければならず、不当な差別的取扱いをしてはならないこと、A常に公私の別を明らかにし、職務や地位を私的利益のために用いてはならないこと、B権限の行使の対象となる者からの贈与等を受けること等の国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならないこと、などが定められている。贈与等の報告を求める対象としては、管理職員以上とするものが多いが、職員全体を対象にするものもある。

〇 北海道条例は、平成9年に制定されている。知事を含む特別職職員を対象に加えている。制定当時は、公務員倫理の高揚、全体の奉仕者であることの自覚、公務の民主的かつ能率的な運営の確保、法令の遵守と信用の保持、服務上の義務の遵守、監督管理者及び任命権者の責務に関して、規定していた。国家公務員倫理法施行日の平成12年4月1日に改正施行され、公務員倫理の原則(11条)、公務員倫理規則の制定(12条)、贈与等の報告(13条)等の規定が追加された。贈与等の報告は、管理職員及び特別職職員を対象にしているが、部長級の職員及び特別職職員については、株取引等及び所得等の報告を義務づけている。

〇 倉敷市条例は、国家公務員倫理法制定後、制定されている。一般職職員を対象にしているが、贈与等の報告は管理職員を対象にしている。職員倫理の原則(3条)は、国家公務員倫理法3条とほぼ同様の内容となっている。

〇 名古屋条例は、副市長、教育長、常勤の監査委員、固定資産評価員、地方公営企業の管理者、特別職の市長秘書をも対象に加えている。贈与等の報告は、特別職を含む職員全体を対象にしている。市長の附属機関として、職員倫理審査会を設置する(9条)こととしている。職員倫理の原則(3条)については、法令等を遵守すること、公共の利益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組むこと、勤務時間外においても、自らの行動が公務の信用に影響を与えることを常に認識して行動しなければならないことについても、規定している。

〇 京丹波町、千葉県、木更津市、羽曳野市、取手市、八代市、大船渡市、宮津市及び松前町の条例は、平成30年以降制定されている。千葉県条例は、一般職職員に加え教育長及び公営企業管理者を対象にし、贈与等の報告は、管理職員以上を対象にしているが、部長級以上の職員には、株取引等及び所得等の報告を義務づけている。羽曳野市、大船渡市、宮津市及び松前町の条例は、一般職職員を対象にし、贈与等の報告も一般職職員全員を対象にしている。京丹波町、木更津市、取手市及び八代市の条例は、贈与等の報告に関する規定は置いていない。なお、八代市条例は、一般職職員に加え副市長、教育長及び常勤の監査委員も対象にしている。また、木更津市条例は不正な働きかけに対する措置等に関する規定を置き、宮津市条例は不当要求行為に係る措置等に関する規定を置いている。

 

【主として不当要求行為等への対応を規定する条例】

〇 次に、主として不当要求行為への対応を規定する条例を紹介する。

滋賀県近江八幡市

旧近江八幡市コンプライアンス条例

平成13年3月28日公布

平成13年7月1日施行

現在廃止

熊本県錦町

錦町不当要求行為等の防止に関する条例

平成15年3月20日公布

平成15年4月1日施行

滋賀県守山市

守山市不当要求行為等対策条例

平成15年9月22日公布

平成15年10月1日施行

奈良県五條市

五條市不当要求行為等防止条例

平成30年6月22日公布

平成30年6月22日施行

福岡県築上町

築上町不当要求行為等の防止に関する条例

平成30年9月25日公布

平成30年9月25日施行

三重県桑名市

桑名市職員の公正な職務の執行の確保に

関する条例

平成31年3月25日公布

平成31年4月1日施行

熊本県芦北町

芦北町職員の公正な職務の執行の確保に関する条例

令和2年3月16日公布

令和2年3月16日施行

宮城県名取市

名取市不当要求行為等対策条例

令和2年9月28日公布

令和2年12月1日施行

〇 これらの条例は、職員に対する不当要求行為等を禁止するとともに、不当要求行為等(またその疑いのある行為)があった場合の当該自治体の対応とそれに対応する委員会等の設置を定め、不当要求行為等の行為者への警告等を規定している。

〇 何をもって不当要求行為とするかについては、早い時期に制定された旧近江八幡市条例や錦町条例は、公正な職務の遂行を損なうおそれのある行為又は暴力行為等社会常識を逸脱した手段により要求の実現を図る行為(旧近江八幡市条例8条1項、錦町条例5条1項)とし、具体的な事例は規則で例示している。

  守山市条例は、条例で「不当要求行為等」の定義規定を置き、@特定の個人等に対して有利または不利な取扱いを要求する行為、A市の行政の達成を妨害し、または遅延させることを目的に行われる行為、B職員の採用その他の人事に関して特定の処分を要求する行為、C職員が職務上知り得た情報の提供を求め、または当該職員がその職務上なし得る特定の行為を求める行為、D違法または暴力行為その他の社会的常識を逸脱した手段を用いる行為(故意に職員を傷つける為、脅迫行為、けんか行為、粗野・乱暴な言動により嫌悪を抱かせる行為、金銭および権利を不当に要求する行為)などとしている(2条1項)。

  平成30年以降に制定された五條市、築上町、桑名市、芦北町及び名取市の条例も、規定の仕方に濃淡はあるが、不当要求行為等について同様の定義規定を置いている。

〇 旧近江八幡市条例はコンプライアンス委員会を、錦町、守山市及び築上町の条例は対策委員会を、五條市条例は審査会を、名取市条例は対策委員会及び審査会を、それぞれ設置するとしている。桑名市及び芦北町の条例は、こうした組織の設置に関する規定は置いていない。

〇 旧近江八幡市、錦町、守山市及び芦北町の条例は、不当要求行為等の行為者に対して警告を行い、その旨の公表や指名停止等の措置を講じることができるとし、名取市条例は、不当要求行為等の行為者に対して勧告を行い、勧告に従わない場合はその旨の公表することができるとしている。築上町条例は、さらに捜査機関への告発、仮処分の申請、訴えの提起その他必要な法的措置を講じるものとしている。

〇 旧近江八幡市条例の制定は、市職員に対する恐喝事件(職員が職務上のことで因縁をつけられ、長年にわたり多額の金銭を要求されたが、周囲の職員は事実を知りながら傍観者となり、結果的に不当要求に屈した)が背景となっている(自治体法務研究2006年夏号「行政のコンプライアンス経営−近江八幡市コンプライアンス条例の運用」参照)とされる。

 

【主として公益通報を規定する条例】

〇 主として公益通報を規定する条例として、以下の条例を紹介する。

東京都千代田区

千代田区職員等公益通報条例

平成15年7月2日公布

平成15年8月1日施行

東京都杉並区

杉並区職員の倫理の保持及び公益通報に関する条例

平成16年3月19日公布

平成16年4月1日施行

北海道鹿部町

鹿部町職員等公益通報条例

平成18年5月1日公布

平成18年6月1日施行

茨城県坂東市

坂東市公益通報に関する条例

平成31年3月25日公布

平成31年3月25日施行

〇 これらの条例は、自治体の職員等が、当該自治体の行政の執行等に関して法令違反行為等があると考えられる場合に、自治体に設置された通報処理組織に対して通報することができ、通報を受けた通報処理組織は調査をし、事実と認められる場合は、長は告発、再発防止等の措置を講じるなどとするものである。また、通報をした職員等に対して不利益取扱を禁止している。

〇 公益通報者保護法が平成16年6月18日に公布され、平成18年4月1日に施行されているが、千代田区条例及び杉並区条例は、これに先行して制定されている。

〇 公益通報者保護法は、労働者が、その労務提供先や行政機関に対して犯罪行為や違法行為等を通報した場合、当該通報者を解雇や不利益取扱いから保護するとともに、通報を受けた事業者や行政機関は必要な措置を講じることとするものである。自治体は、内部の職員等から通報(内部通報)がある場合の事業者としての立場と外部の労働者から通報(外部通報)がある場合の行政機関としての立場があるが、千代田区、杉並区及び鹿部町多治見市の条例は内部通報について、坂東市条例は内部通報と外部通報の両方について定めている。

〇 公益通報の対象を、公益通報者保護法は@刑法等の一定の法律に違反する犯罪行為及びAこれらの法律に基づく処分等に違反する行為等としている(2条3項)としているが、例えば千代田区条例は@法令(条例、規則等を含む。)に違反する事実、A人の生命、健康、財産若しくは生活環境を害し、又はこれらに重大な影響を与えるおそれのある事実及びB事務事業に係る不当な事実とするとともに、区の事務事業のみならず、出資団体の事務事業、受託者・請負事業者による事務事業、指定管理者による公の施設の管理についても対象としている(3条1項)。また、それにあわせて、通報者についても、区職員だけでなく、出資団体の職員等、受託者・請負事業者及び指定管理者とその従業員等も対象にしている(2条1号)。

〇 通報処理組織として、千代田区条例は行政監察員を、杉並区条例は公益監察員、鹿部町条例は審査会、坂東市条例は公益通報委員会を設置するとしている。

〇 公益通報制度については、自治体法務研究2006年夏号が「公益通報者保護法と自治体」を特集しているので、参照されたい。

 

【不当要求行為等への対応と公益通報の両方を規定する条例】

〇 不当要求行為等への対応と公益通報の両方を規定する条例として、以下の条例を紹介する。

京都府長岡京市

長岡京市における法令遵守の推進に関する条例

平成16年3月5日公布

平成16年4月1日施行

新潟市

新潟市における法令遵守の推進等に関する条例

平成17年7月1日公布

平成17年10月1日施行

宮城県石巻市

信頼される市政のためのコンプライアンス条例

平成18年3月24日公布

平成18年4月1日施行

大阪市

職員等の公正な職務の執行の確保に関する条例

平成18年3月31日公布

平成18年4月1日施行

近江八幡市

近江八幡市コンプライアンス条例

平成22年7月31日公布

平成22年10月1日施行

埼玉県三芳町

三芳町コンプライアンス条例

平成24年12月21日公布

平成25年4月1日施行

福岡県大野城市

大野城市法令遵守等の推進に関する条例

平成30年6月20日公布

平成30年7月1日施行

栃木県栃木市

栃木市コンプライアンス推進条例

平成31年3月26日公布

平成31年4月1日施行

三重県亀山市

亀山市職員コンプライアンス条例

令和元年6月27日公布

令和元年8月1日施行

〇 これらの条例は、いずれも不当要求行為等への対応と公益通報の両方を規定している。

〇 このうち、長岡京市条例は、議員を除く特別職職員も対象にしている。公益通報者保護法制定前に制定されている。公益通報の対象は法令違反行為(2条4号)とし、公益通報者は職員だけでなく、受託者・請負事業者や指定管理者とその従業員等も対象にしている(2条2号)。法令遵守委員会(7条)と法令遵守マネージャー(8条)を設置している。

〇 新潟市条例は、一般職職員のみを対象にしている。公益通報者保護法公布後、施行前に制定されている。公益通報の対象は「法令違反又は人の生命,身体,財産若しくは生活環境に重大な損害を与える行為」(2条5号)とし、公益通報者は職員と指定管理者の従業員(2条2号)としている。「不当要求行為」とともに「特定要求行為」を規定し、「特定要求行為」は「職員以外のものが職員に対し,その職務に関し,特定の団体又は個人・・・を他のものと比べて有利に扱うなど特別の扱いをすること(不作為を含む。)を求める働きかけ」(2条7号)と定義づけ、「職員は,特定要求行為があったときは,行政の透明化を図るとともに公正な職務の遂行を確保するため記録をし,上司に報告するとともに,当該記録を審査会に提出することにより組織的に対応しなければならない。」(12条1項)とし、法令遵守審査会は「不当要求行為に該当するものか定期的に調査及び審査をする」(13条1項)としている。倫理原則(3条)についても規定している。

〇 石巻市条例及び大阪市条例は、公益通報者保護法施行と同じ日に施行されている。

  石巻市条例は、市長及び副市長も対象にしている。公益通報の対象は「違法行為又は違法のおそれのある行為」(2条6号)とし、公益通報者は職員に限定している(12条)。コンプライアンス委員会(7条)を設置している。「コンプライアンス」について、旧近江八幡市条例は特に定義規定は置いていなかったが、石巻市条例は「職員が、法令を遵守することを基本に、高い倫理観に基づき公務を遂行すること」(2条4号)と定義づけている。

  大阪市条例は、特別職を含む職員全員を対象にし、公益通報の対象は、市職員又は委託先事業者の役職員の職務執行に関する「法令等に違反するもの、人の生命、身体又は財産に危険が生ずるおそれがあるもの、環境を害するおそれがあるものその他不適正なもの」(2条3項)としている。公益通報に関して詳細な規定(6条〜21条)を置いている。公正職務審査委員会(24条)を設置している。

〇 近江八幡市条例は、市町村合併に伴い旧条例が廃止されたことに伴い、制定された。旧条例と異なり、公益通報に関する規定が追加されている。公益通報の対象は「職員等の違法行為等公益を確保するために通報する事実」(2条7号)とし、公益通報者は職員、受託者や指定管理者とその従業員、派遣労働者等としている(2条2号)。

〇 三芳町条例は、9章(総則、コンプライアンス基本方針、コンプライアンス基本原則、コンプライアンス体制の確立、コンプライアンス委員会、不祥事件、公益通報、不当要求行為及び働きかけ、雑則)、38条で構成されている。「フルセットコンプライアンス」の考え方を導入し、@方針の明確化(コンプライアンス基本方針及びコンプライアンス推進計画の策定)、A組織の構築(コンプライアンス委員会の設置)、B予防的コンプライアンス(公益通報、不当要求行為及び働きかけへの対応)、C治療的コンプライアンス(不祥事件の是正手続)、D環境整備コンプライアンス(業務リスクの把握・改善、良好な職場環境の醸成・維持)の項目を盛り込んだ(「フルセットコンプライアンスでアクティブな職員を創出−埼玉県三芳町」(ガバナンス2014年2月号 ぎょうせい)38頁)としている。

〇 大野城市、栃木市及び亀山市の条例は、いずれも平成30年以降に制定されており、一般職職員のみを対象にしている。公益通報について、3条例とも、対象及び通報者は、千代田区条例等と同様に、幅広いものとなっている。大野城市条例は、職員倫理規程の制定(9条)に関する規定を置いている。栃木市条例は、外部通報に関する規定(24条〜26条)も置き、不祥事防止対策についても定めている(31条、32条)。亀山市条例は、職員の倫理保持及び法令遵守の原則(3条)について定めている。

 

【要望等の記録を規定する条例】

〇 要望等の記録を規定する条例として、以下の条例を紹介する。

神戸市

神戸市政の透明化の推進及び公正な職務執行の

確保に関する条例

平成18年9月20日公布

平成19年1月1日施行

大阪府高槻市

高槻市公正な職務の執行の確保等に関する条例

平成20年12月19日公布

平成21年4月1日施行

兵庫県養父市

養父市法令遵守の推進等に関する条例

平成30年3月27日公布

平成30年10月1日施行

徳島県徳島市

徳島市政における要望等に対する公正な職務の

執行の確保に関する条例

平成30年12月20日公布

平成31年4月1日施行

埼玉県上尾市

上尾市職員倫理条例

令和2年3月26日公布

令和2年4月1日施行

(一部 令和2年9月25日施行)

兵庫県朝来市

朝来市公正な職務の執行の確保に関する条例

令和2年3月26日公布

令和2年4月1日施行

茨城県石岡市

石岡市法令遵守の推進に関する条例

令和2年9月17日公布

令和3年1月16日施行

  

〇 神戸市条例は、「要望等」を「職員等以外のものが職員等に対して行う当該職員等の職務に関する要望,提言,提案,相談,意見,苦情,依頼その他これらに類するもの」(2条4号)と定義づけたうえで、執行機関等は、要望等を口頭により受けたときは、その内容を確認し,簡潔に記録し(7条1項本文)、要望等が違法又は不当であるおそれがある場合等は公正職務審査会に諮問する(10条)ものとしている。なお、要望等の内容が単なる問い合わせ又は事実関係の確認にすぎないことが明白であるとき等や公職者(国会議員、地方議会議員、他の自治体の長)以外からの要望等で日常的な営業活動等の場合は、その例外とする(8条)とし、また、要望者は記録の確認を求めることができる(9条)などとしている。いわゆる議員等からの口利きの記録制度については、鳥取県等で要綱や要領等により制度化されていたが、神戸市は、市議会議員のあっせん収賄事件があったことを踏まえ、条例を制定することとした(自治体法務研究2007年夏号CLOSEUP先進・ユニーク条例「神戸市政の透明化の推進及び公正な職務執行の確保に関する条例(神戸市コンプライアンス条例)」参照)とされる。職員等の職務執行その他倫理に係る基本原則(5条)も規定している。

〇 高槻市条例も、神戸市条例とほぼ同様の内容を有するが、不当要求が行われたときは、任命権者は警告等の中止させるために必要な措置を採る(9条)ものとし、これらの措置等について公正職務審査会に諮問する(10条)ものとしている。

〇 養父市、徳島市、上尾市、朝来市及び石岡市の条例は、いずれも平成30年以降に制定されている。

  養父市条例は、職員倫理の原則、職員倫理規則の制定、贈与等の報告及び職員倫理審査会の設置とともに、要望、提案等の記録及び不当要求行為への対応を規定している。要望、提案等の記録及び不当要求行為への対応は、市の機関(市の執行機関、地方公営企業の管理者及び市議会議長)が実施し、特に職員倫理審査会の直接的な関与は規定していない。市の機関は「要望、提案等の概要及びこれに対する対応の方針等の概要を公表する」(16条1項)としている。

  徳島市条例は、要望等の記録及び不当な要望等、不当要求への対応を規定している。本条例とは別に、平成14年に徳島市職員倫理条例を制定しており、職員倫理の原則、職員倫理規則の制定、贈与等の報告及び職員倫理審査会の設置を規定している。実施機関(市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会,公営企業管理者,消防長及び議会)は、要望等が不当な要望等又は不当要求に該当するか判断できない場合であって必要があると認めるときは、職員倫理条例に規定する職員倫理審査会に諮問することができる(9条1項)としている。

  上尾市条例は、職員倫理の原則、コンプライアンス審査会及びコンプライアンス推進委員会の設置とともに、要望等の記録及び不当要求行為等への対応を規定し、あわせて公益通報についても規定している。公益通報について、職員等以外の者もコンプライアンス審査会に通報することができる(23条1項)としている。

  朝来市条例は、職員倫理の原則、職員倫理規則の制定、贈与等の報告、公正職務推進委員会及び公正職務審査会の設置とともに、公益通報、要望等の記録及び不当要求行為等への対応を規定している。

  石岡市条例は、公正職務審査会の設置とともに、公益通報及び要望等の記録を規定している。




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