RILG - 一般財団法人 地方自治研究機構


鬼の条例

                                                  (令和3年4月29日更新)

〇 「鬼滅の刃」のブームにあやかって、今回は鬼にまつわる条例を取り上げる。

 

【鬼でまちおこし】

〇 大阪府河内長野市は、「鬼でまちおこし」条例を制定した。すなわち、

大阪府河内長野市

河内長野市鬼でまちおこし条例

令和2年9月11日公布

令和2年9月11日施行

令和3年11月2日失効

 である。議員提案によるものである。

〇 「本市に伝わる、『鬼住』に由来する『鬼伝説』をテーマに本市の魅力向上の契機とするため、『いい鬼の日』を定めるとともに、市・関係者等による所要の取組及び協力により、地域活性化の機運を醸成し、地域経済を活性化することを目的とする」(1条)としている。

〇 目的(1条)、いい鬼の日(2条)、定義(3条)、市の役割(4条)、事業者及び市民団体の協力(5条)、市民の協力(6条)、個人の嗜好等への配慮(7条)及び委任(8条)の8条から構成されている。

  「いい鬼の日は、11月2日とする。」(2条1項)とし、「毎月2日は、『鬼でまちおこし』の推進日とする。」(2条2項)としている。

  「令和3年11月2日限り、その効力を失う。」(附則2項)としているが、こうした地域づくり・まちおこしの理念的な条例で、時限立法(時限条例)としているのは極めて珍しい。

〇 「『鬼』をテーマにしたまちおこしを、大阪府河内長野市が進めている。同市など奥河内エリアで撮影された映画『鬼ガール!!』がきっかけで、9月には『鬼でまちおこし条例』を制定し、11月2日を『いい鬼の日』と規定。来年11月までの毎月2日を『鬼でまちおこし』の推進日として、鬼にまつわるイベントで地域を盛り上げる考えだ。同市の神ガ丘地区は、昭和29年に合併されるまでは川上村の一部で、『鬼住』という地名だった。村人が鬼を退治したなどの言い伝えが、その由来とされる。・・・条例は、映画の公開で盛り上がる機運を逃さないようにと議員提案され、9月11日に市議会で可決。施行は来年11月2日までと期限が切られている。」(令和2年10月5日産経新聞)とされる。

 

【平成の大合併で設置された「鬼北町」と廃止された「鬼石町」・「鬼無里村」】

〇 現在存在する自治体で、都道府県名及び市区町村名に「鬼」の文字が入るのは、愛媛県の「鬼北(きほく)町」だけである。鬼北町は、広見町と日吉村が合併して平成17年1月1日に設置された。ここでは便宜上、鬼北町例規集の一番上にある条例(条例第1号)を掲げる。

鬼北(きほく)町

愛知県鬼北町

鬼北町役場の位置を定める条例

平成17年1月1日公布

平成17年1月1日

  「鬼北町は、全国1741の地方公共団体の中で唯一『鬼』の文字が入る自治体です。町の南方にそびえる鬼ケ城山系の北に位置することから、古より『鬼北地域』と呼ばれており、平成17年1月1日に旧広見町と旧日吉村が合併し地名の鬼北を取り誕生した町です。四国の西南に位置する小さな町がいかにして活性化を図り生き残っていくか、日々検討し模索する中で、全国唯一と自他共に認めている『鬼』の町名を活かすことが独自性や特色ある町づくりを進める起爆剤になるのではないかとの結論に達しました。平成25年度から『鬼プロジェクトチーム』が主体となり、新たな鬼北町の魅力づくりと産業起こしを目的とした『鬼の町づくり』がスタートしました。」(鬼北町HP「鬼の町づくりについて」)としている。

〇 「鬼北町」は平成の大合併により誕生したが、平成の大合併により廃止された「鬼」の文字が入る市町村がある。群馬県の「鬼石(おにし)町」と長野県の「鬼無里(きなさ)村」である。鬼石町は平成18年1月1日に藤岡市に、鬼無里村は平成17年1月1日に長野市に、それぞれ編入された。現在施行されている条例のうち、条例名に「鬼石」や「鬼無里」の文字が入るものとして、例えば以下のようなものがある。

鬼石(おにし)町

群馬県藤岡市

藤岡市鬼石総合支所設置条例

平成17年12月16日公布

平成18年1月1日施行

鬼無里(きなさ)村

長野県長野市

長野市鬼無里山岳公園条例

平成16年12月28日公布

平成17年1月1日施行

  「鬼石」は、「地名の由来について、『上野国志』は昔弘法大師が御荷鉾山に住む鬼を調伏した折鬼の持っていた石を放り投げ、その石の落ちた場所が鬼石であると伝える。また一説には古来御荷鉾山から山中・三波川・鬼石・秩父にかけて鬼の太鼓ばちと呼ばれた石棒などの石器の用材が産出され、鬼石がその製造地・集散地であったことによるともいわれる。」(「「鬼」の地名」)とされる。

  「鬼無里」は、「地名の由来は木流し里の略かともいう。伝説では、昔当地に住んでいた鬼女を平維盛が誅してから鬼無里と改称したと伝える。」(「「鬼」の地名」)とされる。

 

【鬼の館、鬼ヶ島、鬼の里、鬼ヶ城など】

〇 鬼の館、鬼ヶ島、鬼の里、鬼ヶ城などを名称にした公の施設の設置条例が制定されている事例も少なくない。例えば、以下のようなものがある。

鬼の館

岩手県北上市

北上市立鬼の館条例

平成6年3月22日公布

平成6年4月1日施行

鳥取県伯耆町

鬼の館条例

平成17年1月1日公布

平成17年1月1日施行

長野県白馬村

お善鬼の館条例

平成18年3月24日公布

平成18年3月24日施行

鬼ヶ島

香川県高松市

高松市鬼ヶ島おにの館条例

平成10年3月26日公布

平成10年5月3日施行

鬼の里

京都府福知山市

福知山市鬼の里Uターンプラザ条例

平成17年12月27日公布

平成18年1月1日施行

鬼会の里

大分県豊後高田市

豊後高田市長岩屋伝統文化伝習施設

鬼会の里条例

平成17年3月31日公布

平成17年3月31日施行

鬼ヶ城

福島県いわき市

いわき市いわきの里鬼ヶ城条例

平成7年3月28日公布

平成7年4月1日施行

三重県熊野市

熊野市鬼ヶ城センター複合施設条例

平成24年9月24日公布

平成25年8月1日施行

鬼城山

岡山県総社市

総社市鬼城山ビジターセンター条例

平成17年3月22日公布

平成17年4月1日施行

〇 北上市の「鬼の館」は、「(旧)和賀町が岩手県の代表例な民俗芸能「鬼剣舞」の発祥の地であり、鬼剣舞の鬼は、仏法に帰依し、仏の化身といわれ・・・善鬼として町の誇りであり象徴としてとらえられている」(北上市鬼の館資料「鬼の館だより創刊号」)ことから設置された。

  伯耆町の「鬼の館」は、「鬼が居座ったとされる鬼住山(きずみやま)と、その南、第七代孝霊天皇が陣を張ったとされる聖地・笹苞山(さすとさん)を舞台にした鬼退治の伝説」(伯耆町HP「日本最古の鬼伝説」)があることから旧溝口町で設置された。

  白馬村の「お善鬼の館」は、「長野県北安曇郡白馬村大字北城青鬼(青鬼集落)に位置し、・・・名称は青鬼集落の鎮守である青鬼神社の祭神である善鬼大明神(御善鬼様)を由来」(長野県:歴史・観光・見所HP「青鬼集落」)するとされる。

〇 高松市の「鬼ヶ島」は、「高松市の北約4kmに浮かぶ女木島は、・・・島の中央部にある鷲ヶ峰山頂には『鬼ヶ島大洞窟』という巨大な洞窟があり、その昔、鬼が住んでいたと伝えられていることから、別名「『鬼ヶ島』とも呼ばれています。」(鬼ヶ島観光協会HP「桃太郎伝説が残る鬼ヶ島(女木島)」)とされる。

〇 福知山市の「鬼の里」は、大江山に因んで名付けられている。「大江山には3つの鬼退治の伝説が残っています。1番古いものは、日本の国が成立したころの陸耳御笠(くがみみのみかさ)という土蜘蛛が日子坐王(ひこいますのきみ・祟神天皇の弟)に退治された話です。2つめは聖徳太子の弟にあたる麻呂子親王が、三上ヶ嶽(大江山の古名)で英胡・軽足・土熊などを討った話です。3つめは、よく知られている酒呑童子の話です。」(福知山市HP「日本の鬼交流博物館」)とされる。福知山市には、鬼文化研究所、日本の鬼の交流博物館及び大江山鬼瓦工房も設置され、それぞれ「福知山市鬼文化研究所条例」、「福知山市日本の鬼の交流博物館条例」及び「福知山市大江山鬼瓦工房等条例」が制定されている。なお、これらの施設は、鬼の里Uターンプラザも含めて、旧大江町が設置したものである。

  豊後高田市の「鬼会の里」は、長岩屋地区には「修正鬼会」が行われる天念寺があることに因むものであるが、「『くにさき』の寺には鬼がいる。一般に恐ろしいものの象徴である鬼だが、『くにさき』の鬼は人々に幸せを届けてくれる。修正鬼会の晩、共に笑い、踊り、酒を酌み交わす――。」(仏が鬼になった里くにさきHP「日本遺産のストーリー」)とされる。

〇 いわき市の「鬼ヶ城」は、鬼ヶ城山に因むもので、「鬼ヶ城山の名前から推測されるように、昔はこの山に鬼(朝廷の圧政に抵抗したといわれる大多鬼丸の一味)が住んでいたと言い伝えられている」(福島の山々HP「鬼ヶ城山」)とされる。

  熊野市の「鬼ヶ城」は、「平安時代初期、征夷大将軍坂上田村麻呂が、鬼ヶ城を根城にして鬼と恐れられた海賊『多娥丸(たがまる)』を征討したという鬼ヶ城伝説が残っています。」(「鬼ヶ城」)とされる。

  総社市の「鬼城山」は、「鬼ノ城は、・・・鬼ノ城縁起などにでてくる。それによると『異国の鬼神が吉備国にやって来た。彼は百済の王子で名を温羅(うら)という。彼はやがて備中国の新山(にいやま)に居城を構え、しばしば西国から都へ送る物資を奪ったり、婦女子を掠奪したので、人々は恐れおののいて『鬼ノ城』と呼び、都へ行ってその暴状を訴えた・・・』。これが、一般に温羅伝承と呼ばれる説話で、地名もこれに由来している。」(総社観光ナビ「鬼ノ城」)とされる。

 

【鬼の地名】

〇 日本各地には鬼の文字が入った地名がある。そうした地名で、条例名または条例本文で地名として規定されているものとしては、例えば、以下のようなものがある。なお、表の右の欄の上段は当該地名が規定されている箇所を示し、下段は規定内容を示している。

鬼の舌震(おにのしたぶるい)島根県奥出雲町

奥出雲町立自然公園の設置及び

管理に関する条例

別表(第2条関係)

鬼の舌震地区自然公園

滅鬼(めっき)富山県富山市

富山市消防本部及び消防署の

設置等に関する条例

別表(第4条関係)

八尾消防署 八尾町滅鬼

鬼首(おにこうべ)宮城県大崎市

大崎市鬼首基幹集落センター条例

条例名

鬼首

鬼泪(きなだ)千葉県君津市

君津市公民館の設置及び管理に

関する条例

3条別表

君津市小糸公民館 鬼泪山

鬼王(おにおう)新潟県柏崎市

新潟県柏崎市立学校設置条例

別表第2

西山中学校 西山町鬼王179番地

鬼籠野(おろの)徳島県神山町

神山町立公民館の設置、管理及び

職員に関する条例

別表第1(第2条関係)

神山町立鬼籠野公民館

男鬼(おおり)滋賀県彦根市

彦根市鳥居本町外13ケ町財産区

議会条例

1条

男鬼町

女鬼(めき)宮城県大和町

大和町水道事業給水条例

別表(第2条関係)

宮床 妖女鬼沢

〇 奥出雲町の「鬼の舌震」は、「かつてこの地には玉日姫という美しい女神が住んでいたとされています。その女神をワニが慕い、夜な夜な通ってきたのですが、それを嫌った女神は巨岩で川をせき止めて阻んでしまいました。その後、ワニは一層激しく姫を恋い慕い、『ワニが慕った』が転じて『鬼の舌震』という名前になったといわれています」(奥出雲町公式観光ガイド「鬼の舌震 国の名勝・天然記念物」)とされる。

  富山市の「滅鬼」は、「元々この地は木が生い茂っており、動物や山賊などが住んでいました。しかし、それを見かねた男がこの地に住む人を救うためにこれらの妖鬼を倒し、それから滅鬼という地名になったといいます。」(富山の遊び場HP「【鬼滅の刃 聖地巡礼】富山にある地名が話題に!実際に探索してきた」)とされる。鬼滅は旧八尾町にある。

  大崎市の「鬼首」は、「1200年ほどの昔、箟岳山(宮城県涌谷町)に大武丸という蝦夷がいました。坂上田村麻呂が大武丸を打首にしたところ首が飛びました。その首が落ちた地を鬼切辺(おにきりべ)と呼び、やがて鬼首になりました。」(鬼首温泉観光協会HP「鬼首へようこそ」)とされる。鬼首は旧鳴子町にある。

  君津市の「鬼泪」は、「鬼泪山」に因むが、鬼泪山は「富津市にあり、・・・山上のほとんどがマザー牧場になっている・・・『角川日本地名大辞典12 千葉県 総説・地名編』p.315に・・・地名の由来は、『日本武尊の東征に際し、鬼のような賊が、泪を流したとの故事からきたとの口伝がある』と書かれている。」(レファレンス協同データーベース「千葉県南部にある山で、「鬼泪山」は何と読むのか。また、この山名の由来を知りたい。」)とされる。

  柏崎市の「鬼王」は、「地元では『おによ』と呼ぶ。地名の由来には2説ある。一説は、建保年間和田義盛の嫡孫鬼王丸が長峰山に住んだという伝説による説、もう一説は承応3年にできた二田物部神社由緒の『仁王門の跡、今鬼王村と云ふ、御仁王と云意也』という説である。」(「「鬼」の地名」)とされる。鬼王は旧西川町にある。

  神山町の「鬼籠野」は、「往昔この地で里人を苦しめていた悪鬼を退治するため天児屋根命の末孫藤原某が祈祷をしたところ、六神降臨して神力によって悪鬼を谷へ追いこめ退治したため鬼籠野と称したとする伝承がある。」(「「鬼」の地名」)とされる。

  彦根市の「男鬼」は、「村名は古代、霊仙山にあったとされる霊仙寺の7別院の一つ、男鬼寺という古刹に因みます。」(湖國浪漫風土記HP「樹海の先にある謎の村(3)“男鬼集落”」)とされる。

  大和町の「妖女鬼沢」の名前の由来については、残念ながら確認できなかったが、ある人のツイッターに「金田一がやってきそうな伊達(旧仙台藩)な地名 ・鬼死骸(おにしがい)(旧磐井郡鬼死骸村、現・岩手県一関市) ・妖女鬼沢(ようめきざわ)(宮城県黒川郡大和町宮床妖女鬼沢) ・鬼首(おにこうべ)(宮城県大崎市鳴子温泉鬼首) だいたい坂上田村麻呂の鬼退治伝説に由来するようだ。」というのがあった。

 

〇 以上のように見てみると、日本の全国各地に鬼にまつわる言い伝えがあることが、よくわかる。


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