誹謗中傷に関する条例
(令和6年10月1日更新)
【インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援・防止に関する条例】
〇 インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援・防止に関する条例として、令和6年10月1日時点で制定されていることが確認できるは、以下の条例である。
群馬県 | 令和2年12月22日公布 | 令和2年12月22日施行 |
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大阪府大東市 | 令和3年3月23日公布 |
令和3年4月1日施行 |
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群馬県渋川市 | 令和4年3月9日公布 |
令和4年4月1日施行 |
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愛知県 | 令和4年3月25日公布 |
令和4年4月1日施行 |
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広島県大崎上島町 | 令和4年3月28日公布 |
令和4年4月1日施行 |
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大阪府 | 令和4年3月29日公布 令和5年10月30日改正公布 |
令和4年4月1日施行 令和5年10月30日改正施行 一部令和6年4月1日改正施行 |
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東京都江戸川区 | 令和4年3月30日公布 |
令和4年4月1日施行 |
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三重県 | 令和4年5月19日公布 |
平成4年5月19日施行 |
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大阪府和泉市 | 人権侵害のない社会づくり条例 |
令和4年6月30日公布 |
平成4年6月30日施行 |
佐賀県 | 支え合う社会づくりを進める条例 |
令和5年3月13日公布 |
平成5年3月13日施行 |
福岡県小郡市 | 関する条例 |
令和5年3月20日公布 |
平成5年7月1日施行 |
沖縄県 | 令和5年3月31日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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長野県長野市 | 被害者支援に関する条例 | 令和5年8月30日公布 | 令和5年10月1日施行 |
埼玉県戸田市 | に関する条例 | 令和5年12月22日公布 | 令和5年12月22日施行 |
さいたま市 | 及び被害者支援等に関する条例 | 令和6年2月15日公布 | 令和6年4月1日施行 |
佐賀県唐津市 | 令和6年3月21日公布 | 令和6年3月21日施行 |
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兵庫県たつの市 | 人権侵害のない社会づくり条例 | 令和6年6月28日公布 | 令和6年6月28日施行 |
香川県坂出市 | に関する条例 | 令和6年10月1日公布 | 令和6年10月1日施行 |
(群馬県条例)
〇 群馬県条例は、令和2年12月に、インターネット上の誹謗中傷等による被害者の支援等を目的として、令和2年12月に制定された。インターネット上の誹謗中傷等に対する被害者の支援や被害の防止を定めるものとしては、全国最初の条例である。
〇 前文において、「社会全体のゲームチェンジャーとなったインターネットにも光と闇がある。例えば、匿名性や不特定多数性等、その特性に由来する誤った情報や嫌がらせによる風評被害、悪口等を言いふらし他人の名誉や感情を傷つける誹謗(ひぼう)中傷、プライバシー侵害等が安易に行われ、いじめの温床となる等の問題が世界各地で深刻化している。」とし、「今こそ、表現の自由に配慮しつつ、県民をインターネットの負の側面から守るための必要な対策を講じていく必要がある。」としたうえで、「インターネット上で発信された情報により傷つけられた被害者への支援に関する基本的施策を明らかにし、展開することにより、県民が被害者にも加害者にもなることなく、自由かつ活発に情報を収集し、発信することができる社会、すなわち、誰もがインターネットの恩恵を享受できる、安全で安心な社会を実現することを目指し、この条例を制定する。」としている。
〇 目的(1条)、定義(2条)、県の責務(3条)、県民の役割(4条)、連携協力(5条)、基本的施策(6条)、相談体制(7条)、インターネットリテラシーの向上(8条)、県民の理解の増進(9条)、財政上の措置(10条)の10条から構成されている。
〇 「誹謗中傷等」を「インターネット上において、誹謗中傷、プライバシーの侵害等当該者の権利を侵害する情報(以下この項において「侵害情報」という。)、侵害情報に該当する可能性のある情報又は侵害情報には該当しないが当該者に著しい心理的、身体的若しくは経済的な負担を強いる情報を発信すること」、「被害者」を「誹謗中傷等により平穏な日常生活又は経済活動等を害された者」、「行為者」を「被害者を発生させた者」、「インターネットリテラシー」を「インターネットの利便性、危険性及び基本的なマナーを理解して、正しく情報を取捨選択し、適正な情報を発信し、及びインターネット上のトラブルを回避してインターネットを正しく活用する能力」と定義づけている(2条)。
〇 本条例は、インターネット上の誹謗中傷等を県民に対して禁止することを明文化はせず、その被害者の支援等に関する施策を推進することを規定している。
県の責務(3条)及び県民の役割(4条)を定め、県が取り組む基本的施策として、① 被害者の心理的負担の軽減を含めた相談体制の整備、② 県民の年齢、立場等に応じたインターネットリテラシーの向上に資する施策、③ その他被害者を支援するための施策及び行為者を発生させないための施策を掲げた(6条)うえで、相談体制の整備(7条)、インターネットリテラシーの向上(8条)等について具体的な規定を置いている。
〇 本条例の内容等については、群馬県HP「インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例」及び自治体法務研究2021年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「群馬県インターネット上の誹謗中傷等の被害者支援等に関する条例」を参照されたい。
(群馬県条例に続いて制定された条例)
〇 大東市条例は、議員提案により制定され、「インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者支援に関して、市の責務並びに市民及び議会の役割を明らかにするとともに、これらの施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、市の責務(3条)、市民の役割(4条)、議会の役割(5条)、連携協力(6条)、基本的施策(7条)、インターネットリテラシーの向上(8条)、相談支援体制(9条)、市民の理解の増進(10条)の10条から構成されているが、群馬県条例とほぼ同様の内容を有している。議会の役割に関する規定(5条)を置いている。
本条例の内容等については、大東市HP「大東市インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者支援に関する条例が施行されました」を参照されたい。
〇 渋川市条例は、「インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者の支援に関して、市の責務及び市民等の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、市の責務(3条)、市民等の役割(4条)、連携協力(5条)、基本的施策(6条)、インターネットリテラシーの向上(7条)、相談支援体制(8条)、市民の理解の増進(9条)、財政上の措置(10条)及び委任(11条)の11条から構成されているが、群馬県条例及び大東市条例とほぼ同様の内容を有している。
本条例の内容等については、渋川市HP「渋川市インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者支援に関する条例を制定しました」を参照されたい。
〇 愛知県条例は、人権尊重の社会づくりに関する条例であるが、インターネットを利用して情報を発信する者の表現の自由を不当に侵害しないように留意しつつ、インターネット上の誹謗中傷等(インターネットを利用した情報の発信で、誹謗中傷、プライバシーの侵害その他の人権を侵害すること)を未然に防止するために必要な教育、啓発その他の施策や被害者の支援を図るために必要な施策その他の施策を講ずる旨規定している(7条)。
本条例の内容等については、愛知県HP「愛知県人権尊重の社会づくり条例」を参照されたい。
〇 大崎上島町条例は、議員提案により制定され、「インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者支援に関して、町の責務並びに町民及び議会の役割を明らかにするとともに、これらの施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進する」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、町の責務(3条)、町民の役割(4条)、議会の役割(5条)、基本的施策(6条)の6条から構成されている。
〇 大阪府条例は、令和4年3月に議員提案により制定された(令和4年4月1日施行)。「インターネット上の誹謗中傷等の人権侵害を防止し、府民の誰もが加害者にも被害者にもならないよう、府の責務及び府民の役割を明らかにするとともに、府の施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的とし、目的(1条)、定義(2条)、府の責務(3条)、議会の責務(4条)、府民の役割(5条)、連携協力(改正前6条)、基本的施策(改正前7条)、インターネットリテラシーの向上(改正前8条)、被害者の相談支援体制(改正前9条)、行為者等の相談支援体制(改正前10条)、府民への啓発(改正前11条)、財政上の措置(改正前12条)について規定を置いていた。
条例附則2項の規定に基づき令和4年5月に設置された「大阪府インターネット上の人権侵害の解消に関する有識者会議」の「取りまとめ(令和5年3月17日)」を踏まえ、知事提案により、令和5年10月一部改正された(令和5年10月30日施行、一部令和6年4月1日施行)。不当な差別的言動を「人種、民族、信条、性別、社会的身分、門地、障害、疾病、性的指向、性自認等の共通の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせ等の言動又は当該属性を理由として不当な差別的取扱いをすることを助長し、若しくは誘発すると判断できる言動」と定義づけ(2条1号)、事業者の責務を新たに定める(改正後6条)とともに、府は、「不当な差別的言動に係る侵害情報があることが明らかであり、当該侵害情報による被害者からの申出があったときその他必要があると認めるときは、特定電気通信役務提供者(・・・)に対する当該侵害情報に対する削除の要請又は国その他の関係機関に対する当該侵害情報の通報を行うことができる。」(改正後12条)とし、削除要請等を行ってもなお「当該侵害情報が削除されない場合で、当該侵害情報を発信し、又は拡散した者が明らかであり、必要があると認めるときは、その者に対し、当該侵害情報の削除に向けた説示又は助言を行うことができる。」(改正後13条)としている。
本条例の内容や大阪府の取組み等については、大阪府HP「大阪府インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例」及び大阪府HP「インターネットと人権」を参照されたい。
〇 江戸川区条例は、議員提案により制定され、「インターネットにおいて特定個人の権利が侵害される情報(以下「権利侵害情報」という。)が多く流通している状況に鑑み、江戸川区(・・・)が、インターネットの利用に関する啓発、教育、相談等の施策を総合的に実施することにより、インターネットの健全利用を促進し、もって、江戸川区民(・・・)の権利の擁護に資すること」(1条)を目的とする。
目的(1条)、基本理念(2条)、区の責務(3条)、区民の責務(4条)、事業者の責務(5条)、委任(6条)の6条から構成されている。
誹謗中傷との用語は使用していないが、区民の責務として「インターネットにおいて情報を流通過程に置くときは、他人の権利を侵害しないよう努めなければならない。」(4条1項)等と規定し、また、区の責務として「区民のインターネットリテラシーの向上を図るとともに、健全利用の促進及び権利侵害情報の流通によって自己の権利を侵害された区民の支援をするための施策を策定し、及び実施する責務を有する。」(3条1項)と規定している。
本条例の内容等については、江戸川区HP「江戸川区インターネット健全利用促進条例」を参照されたい。
〇 三重県条例は、人権尊重の社会づくりに関する条例であるが、「人権侵害行為」を「不当な差別、いじめ、虐待、プライバシーの侵害、誹謗中傷その他の他人の権利利益を侵害する行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)」(2条3号)と定義づけたうえで、インターネットを通じて行われる人権侵害行為を防止するため、特定電気通信役務提供者の責務(8条)を規定するとともに、県はモニタリング、インターネット上での人権啓発、インターネットの適切な利用に関するリテラシーの向上を図るための教育及び啓発その他の必要な措置を講ずる(23条)としている(13条)。
本条例の内容等については、三重県HP「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例が制定されました」を参照されたい。
〇 和泉市条例は、議員提案により制定され、「インターネット上の誹謗中傷等の人権侵害を防止し、市民の誰もが加害者にも被害者にもならないよう、市の責務並びに市民及び議会の役割を明らかにするとともに、これらの施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、市の責務(3条)、市民の役割(4条)、議会及び議員の役割(5条)、連携協力(6条)、基本的施策(7条)、インターネットリテラシーの向上(8条)、相談支援体制(9条)、市民の理解の増進(10条)の10条から構成されている。
本条例の内容等については、和泉市HP「「和泉市インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例」について」を参照されたい。
〇 佐賀県条例は、人権尊重の社会づくりに関する条例であるが、「何人も、不当な差別、いじめ、虐待、プライバシーの侵害、誹謗中傷その他の他人の権利利益を侵害する行為(インターネットを通じて行われるものを含む。以下「人権侵害行為」という。)をしてはならない。」(7条1項)としたうえで、人権侵害行為に対する知事の助言・説示・あっせん、勧告、意見聴取、勧告状況の報告(9条~12条)等について規定している。
併せて、「インターネット上の誹謗中傷等」を「インターネットを利用して、プライバシーの侵害に該当する情報、誹謗中傷に該当する情報その他の他人の権利利益を侵害する情報又は人権侵害行為を助長し、若しくは誘発する情報(以下「人権侵害情報等」という。)を発信すること」(13条1号)と定義づけたうえで、県は、インターネット上の誹謗中傷等の防止のための教育及び啓発に取り組む(13条1号)とするとともに、インターネット上の誹謗中傷等が行われた場合で必要があると認められる場合には、人権侵害情報等の送信を防止する措置を講ずる権限を有する者等に対して人権侵害情報等の削除に向けた必要な措置を講ずる(13条2項)としている。
本条例の内容等については、佐賀県HP「「全ての佐賀県民が一人一人の人権を共に認め合い、支え合う社会づくりを進める条例」を制定しました。」を参照されたい。
〇 小郡市条例は、条例上、誹謗中傷の用語は使用されていないが、「インターネット上の人権侵害の防止及び被害者の支援に関して、市の責務及び市民の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、市の責務(3条)、市民等の役割(4条)、連携協力(5条)、基本的施策(6条)、人権意識の高揚及びインターネットリテラシーの向上(7条)、相談支援体制(8条)、委任(9条)の9条から構成されている。
本条例の内容等については、小郡市HP「インターネット上の人権侵害」を参照されたい。
〇 沖縄県条例は、差別のない社会づくりに関する条例であるが、「インターネット上の不当な差別的言動その他の誹謗中傷に関する相談体制の整備その他の必要な施策を講ずる」(8条)としている。
本条例の内容等については、沖縄県HP「沖縄県差別のない社会づくり条例について」を参照されたい。
〇 長野市条例は、議員提案により制定され、「インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者等の支援等に関し、市の責務並びに市民等及び議会の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、市の責務(3条)、市民の役割(4条)、議会の役割(5条)、連携協力(6条)、基本的施策(7条)、インターネットリテラシーの向上(8条)、相談支援体制(9条)、市民等の理解の増進(10条)の10条から構成されている。
本条例の内容等については、長野市HP「インターネットによる人権侵害」を参照されたい。
〇 戸田市条例は、「インターネット上の誹謗中傷等の防止に関して、市の責務及び市民等の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、市の責務(3条)、市民等の役割(4条)、連携協力(5条)、基本的施策(6条)、委任(7条)の7条から構成されている。
本条例の内容等については、戸田市HP「戸田市インターネット上の誹謗中傷等の防止に関する条例を制定しました」を参照されたい。
〇 さいたま市条例は、「インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者の支援に関し、基本理念を定め、市の責務並びに市民等、事業者及び議会の役割を明らかにするとともに、市の施策の基本となる事項を定めることにより、インターネット上の誹謗中傷等の防止及び被害者の支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって 全ての市民等が、互いに思いやりを持ち、基本的人権を尊重しつつ、インターネットの恩恵を享受できる、安全で安心な地域社会の実現に寄与すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、市の責務(4条)、市民等の役割(5条)、事業者の役割(6条)、議会及び議員の役割(7条)、連携協力(8条)、インターネットリテラシーの向上(9条)、相談支援体制の整備(10条)、広報及び啓発(11条)、推進体制の整備(12条)、財政上の措置(13条)、委任(14条)の14条から構成されている。
〇 唐津市条例は、人権尊重の社会づくりに関する条例であるが、「何人も、不当な差別、いじめ、虐待、プライバシーの侵害、誹謗中傷その他の他人の権利利益を侵害する行為(インターネットを通じて行われるものを含む。以下「人権侵害行為」という。)をしてはならない。」(6条1項)としたうえで、特にインターネット上の誹謗中傷等に対する措置として、「人権侵害情報等の送信を防止する措置を講ずる権限を有する者等に対し市が人権侵害情報等の削除を要請することが必要と認めるときは、当該人権侵害情報等の削除に向けた必要な措置を講ずるものとする。」(7条)と規定している。
本条例の内容等については、唐津市HP「唐津市人権が尊重される社会づくり推進条例を制定しました」を参照されたい。
〇 たつの市条例は、「インターネット上の誹謗中傷等の人権侵害を防止し、市民の誰もが被害者にも行為者にもならないよう、市の責務及び市民の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、人権侵害のない社会づくりに資すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、市の責務(3条)、市民の役割(4条)、連携協力(5条)、基本的施策(6条)、市民への啓発(7条)の7条から構成されている。
本条例の内容等については、たつの市HP「たつの市インターネット上の誹謗中傷や差別等の人権侵害のない社会づくり条例の制定」を参照されたい。
〇 坂出市条例は、「インターネット上の誹謗中傷等の防止に関して、坂出市(・・・)の責務および市民等の役割を明らかにするとともに、施策の基本となる事項を定めることにより、これを推進すること」(1条)を目的としている。
目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、市の責務(4条)、市民等の役割(5条)、連携協力(6条)、基本的施策(7条)、委任(8条)の8条から構成されている。
本条例の内容等については、坂出市HP「坂出市インターネット上の誹謗中傷等の防止に関する条例」を参照されたい。
(インターネット上の誹謗中傷に対する政府の対応)
〇 インターネット上の誹謗中傷への対応については、総務省は、令和2年9月に「インターネット上の誹謗中傷への対応に関する政策パッケージ」を公表している。また、プロバイダ責任制限法における発信者情報開示のあり方等について検討を行うため、令和2年4月に「発信者情報開示の在り方に関する研究会」を設置し、令和2年12月 に「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」を公表している。
令和3年4月28日に特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律が一部改正され(令和3年4月28日改正公布、令和4年10月1日改正施行)、インターネット上の誹謗中傷などによる権利侵害についてより円滑に被害者救済を図るため、発信者情報開示について新たな裁判手続(非訟手続)を創設するなどの制度的見直しが行われることとなった(総務省資料「プロバイダ責任制限法の一部を改正する法律(概要)」参照)。
インターネット上の誹謗中傷問題に対する総務省の対応については、総務省HP「インターネット上の誹謗中傷への対策」を参照されたい。
さらに、令和6年5月17日に特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律が制定され(令和6年5月17日公布、一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行)、大規模プラットフォーム事業者に対して、投稿削除申入への迅速な対応、削除基準の策定・公表等が義務づけられ、法律名も「「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」と改められることとなった(総務省資料「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の一部を改正する法律案の概要」参照)。
また、インターネット上の誹謗中傷が特に社会問題となっていることを踏まえ、その対処として、悪質な侮辱行為に厳正に対処するため、令和4年6月17日に刑法が一部改正され(刑法等の一部を改正する法律(令和4年6月17日公布、侮辱罪の法定刑の引上げに係る規定は令和4年7月7日施行))、侮辱罪の法定刑が「拘留又は科料」から「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられた。
なお、改正法案の審議の際、「政府は、第一条の規定の施行後三年を経過したときは、同条の規定による改正後の刑法第二百三十一条の規定の施行の状況について、同条の規定がインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷に適切に対処することができているかどうか、表現の自由その他の自由に対する不当な制約になっていないかどうか等の観点から外部有識者を交えて検証を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」(改正法附則3項)との規定が、修正により追加されている。改正法の内容については、法務省HP「刑法等の一部を改正する法律案」及び「侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A」を参照されたい。
【その他の誹謗中傷に関する条例】
〇 まず、日本語として、「誹謗」は「そしること。悪口を言うこと。」、「中傷」は「無実のことを言って他人の名誉を傷つけること。」、「誹謗中傷」は「根拠のない悪口を言い、相手を傷つけること。」をいう(いずれも「広辞苑第7版」)。誹謗中傷の4文字のうち、「誹」と「謗」は常用漢字ではない。
〇 法律において「誹謗中傷」という用語が使用されているのは、上記の令和4年6月刑法改正の附則3項以外は、公職選挙法142条の7の規定、すなわち「選挙に関しインターネット等を利用する者は、公職の候補者に対して悪質な誹謗(ひぼう)中傷をする等表現の自由を濫用して選挙の公正を害することがないよう、インターネット等の適正な利用に努めなければならない。」のみである。この規定は、インターネット選挙運動解禁に係る「公職選挙法の一部を改正する法律」(平成25年4月26日公布・平成25年5月26日施行 議員立法)により、追加されている。
なお、誹と謗は常用漢字ではないため、公職選挙法、刑法ともに、「誹謗」の文字の上に「ひぼう」と振り仮名が付されている(内閣法制局「法令における漢字使用等について」1(5)ア参照)。
〇 自治体の条例においては、近年、「誹謗中傷」との用語を使用する条例が増加する傾向にある。
誹謗中傷を使っている条例の種類としては、政治倫理条例、職員倫理条例(コンプライアンス条例、公益通報条例等を含む)、犯罪被害者等支援条例、ヘイトスピーチに関する条例、新型コロナウイルスに関する条例、部落差別解消や人権尊重に関する条例などである。以下、それらについて、具体例を見ることとする。
〇 まず、政治倫理条例においては、政治倫理基準において人を誹謗中傷する言動等を禁止する規定を置いている例がある。例えば、
愛知県岡崎市 | 平成28年9月26日公布 | 平成28年10月26日施行 |
は、「差別的な取扱い又は言動、虐待、性的な言動、名誉又は社会的信用を低下させる目的でその者を誹謗中傷する言動その他の人権侵害のおそれのある行為をしないこと。」(4条1項2号)と規定している。なお、政治倫理条例については、「政治倫理条例」を参照されたい。
〇 次に、職員倫理条例(コンプライアンス条例、公益通報条例等を含む)においては、職員に対する不当要求行為として職員を誹謗中傷するビラ等の配布を規定する例がある。例えば、
兵庫県丹波市 | 平成29年3月13日公布 | 平成29年5月1日施行 |
は、「職員への嫌がらせの電話、誹謗中傷するビラ等の配布、自宅周辺での迷惑行為その他プライバシーを侵害し、又は不当な圧力を与える行為」(2条11号キ)と規定している。なお、職員倫理条例等については、「職員倫理、コンプライアンス、公益通報等に関する条例」を参照されたい。
〇 犯罪被害者等支援条例においては、二次的被害に関して規定を置いている例がある。例えば、
大分県中津市 | 平成30年3月30日公布 | 平成30年4月1日施行 |
は、「犯罪等による直接的な被害を受けた後に、周囲の無理解や心ない言動、インターネットを通じて行われる誹謗中傷、報道機関による過剰な取材等により、犯罪被害者等が受ける精神的な苦痛、身体の不調、私生活の平穏の侵害、経済的な損失等の被害をいう」(2条3号)と規定している。なお、犯罪被害者等支援条例については、「犯罪被害者支援に関する条例」を参照されたい。
〇 ヘイトスピーチに関する条例については、ヘイトスピーチの定義に関して規定を置いている例がある。例えば、
大阪市 | 平成28年1月18日公布 | 平成28年1月18日施行 |
は、「特定人等を相当程度侮蔑し又は誹謗中傷するものであること」(2条1項(2)ア)と規定している。なお、ヘイトスピーチに関する条例については「ヘイトスピーチに関する条例」を参照されたい。
〇 新型コロナウイルスに関する条例においては、感染者等に対する不当な差別的取扱いや誹謗中傷を禁止する規定を置いている例が多い。例えば、
千葉県流山市 | 令和2年6月19日公布 | 令和2年6月19日施行 |
は、「市民等は、新型コロナウイルス感染症にり患していること、又はり患している恐れがあること等を理由に、不当な差別的扱いや誹謗中傷を行ってはならない。」(5条3項)と規定している。
また、同じく新型コロナウイルスに関する条例として、
和歌山県 | 令和2年12月24日公布 | 令和2年12月24日施行 |
は、条例名を「誹謗中傷等対策に関する条例」とし、「新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等が行われていることを踏まえ、・・・新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等をなくすために必要な事項を定めることにより、新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等が行われない社会を実現すること」(1条)を目的としている。
新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等をインターネットを通じてまたは発言、落書き、張り紙その他の方法により行うことを禁止(3条)し、そのうえで、県は、誹謗中傷等を行った者に対して必要な説示をするとともに、誹謗中傷等を行わないことやインターネット上に投稿された情報を削除することを促し(8条1、2項)、これに従わない場合は勧告する(8条3,4項)等としている。また、特定電気通信役務提供者は、インターネット上において誹謗中傷等が行われていることを確認したときは、当該情報の送信を防止する措置を行う(7条3項)ものとしている。
なお、新型コロナウイルスに関する条例については「新型コロナウイルスに関する条例」を参照されたい。
〇 部落差別解消や人権尊重に関する条例では、
和歌山県湯浅町 | 平成31年4月1日公布 | 平成31年10月1日施行 |
が、「差別行為」を「誤解や偏見に起因する個人若しくは不特定多数又は被差別部落等を対象とした言動、落書き等の部落差別と見なされる誹謗中傷行為、就職又は結婚等を理由とする被差別部落の調査及びその他これらに類する行為」と定義づけている(2条5号)。
また、
鳥取県 | 平成8年7月9日公布 | 平成8年8月1日施行 令和3年4月1日改正施行 |
は、禁止される「差別行為」の一つとして「誹謗中傷、著しく拒絶的な対応、不当な差別的言動その他の心理的外傷を与える行為」を規定している(7条1項1号)。なお、こうした行為はインターネットを通じて行う行為を含む(7条1項本文)とされている。
なお、部落差別解消や人権尊重に関する条例については「人権の尊重と差別の解消に関する条例」を参照されたい。