RILG - 一般財団法人 地方自治研究機構


脱炭素社会を目指す条例と地球温暖化対策条例

                                                  (令和3年11月8日更新)

【脱炭素社会の実現を目指す国内外の動き】

〇 「京都議定書」が、1997年(平成9年)12月11日に第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で採択された。主要排出国全体の温室効果ガスを2008年(平成20年)から2012年(平成24年)の間に、1990年(平成2年)比で少なくとも5%削減することを目標とし、主要排出国ごとにも温室効果ガス排出量の削減目標を定めた。この取り決めにより、日本は6%の削減を目標とすることとなった。

〇 「パリ協定」が、2015年(平成27年)12月12日に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された。世界の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べ2℃より十分低く保ちつつ、1.5℃に抑える努力を追求し、そのために今世紀後半に温室効果ガスを年間の排出量と吸収量が差し引きでゼロとなる状態(カーボンニュートラル)を実現することを目標としている。そのうえで、主要排出国を含むすべての国に対して、温室効果ガスの削減目標を5年ごとに提出・更新することなどを求めた。日本は、2030年(令和12年)までに2013年(平成25年)比で、温室効果ガス排出量を26%削減するとの中期目標を掲げた(「日本の約束草案(2020年以降の新たな温室効果ガス排出削減目標)」(平成27年7月17日地球温暖化対策本部決定)及び「地球温暖化対策計画」(平成28年5月13日閣議決定))。

〇 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、2018年(平成30年)10月8日に「1.5℃特別報告書」を公表した。この報告書は、将来の平均気温上昇が1.5℃を大きく超えないようにするためには、2050年前後には世界のCO2排出量を正味ゼロにする必要があるとした。また、パリ協定に基づき各国が提出した目標による2030年の排出量では、1.5℃に抑制することはできないとしている。

〇 令和元年6月11日、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」が閣議決定された。最終到達点としての「脱炭素社会(カーボンニュートラル)」を掲げ、それを今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すとともに、2050年(令和32年)までに80%の温室効果ガスの削減に取り組むこととした。

〇 令和2年10月26日、菅総理は、「第203回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説」において、「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。」とした。「積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要です。」としている。

〇 なお、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下「地球温暖化対策推進法」という。)が、京都議定書の採択を受け平成10年に制定され(平成10年10月9日公布)、地球温暖化対策に取り組むための枠組みが定められた。その後、数次の改正を経ているが、地球温暖化対策計画の策定(8条)、地球温暖化対策推進本部の設置(10条)、政府実行計画の策定(20条)、特定排出者の温室効果ガス算定排出量の主務大臣への報告(26条)等が規定されているほか、地方公共団体については「都道府県及び市町村は、単独で又は共同して、地球温暖化対策計画を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとする。」(19条2項)とするとともに、都道府県及び市町村は地方公共団体実行計画を策定する(21条)ものとしている。

〇 また、パリ協定の採択を受けて、平成30年に「気候変動適応法」が制定された(平成30年6月13日公布)。同法は、地球温暖化等の気候変動に起因して生じる生活、社会、経済及び自然環境における影響に対応して、被害防止や軽減等を図る措置を推進することを目的とし、政府に気候変動適応計画の策定を義務づける(7条)とともに、都道府県及び市町村に対して地域気候変動適応計画の策定(12条)と地域気候変動適応センターの機能を担う体制の確保(13条)について努力義務を課している。同法については、環境省HP「気候変動適応法」を参照のこと。

〇 さらに、令和3年に「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律」が制定された(令和3年6月2日公布、施行は公布の日から1年を超えない範囲内で政令で定める日)。同法は、パリ協定に定める目標を踏まえ、2050年までの脱炭素社会の実現等を地球温暖化対策を推進する上での基本理念として規定するとともに、地域の再エネを活用した脱炭素化を促進する事業を推進するための計画・認定制度の創設や脱炭素経営の促進に向けた企業の排出量情報のデジタル化・オープンデータ化の推進等を規定している。同法の内容等については環境省HP「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について」を、地球温暖化対策推進法に基づくこれまでの取り組みや地球温暖化対策計画等については環境省HP「地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画」を参照されたい。

〇 「脱炭素社会に向けて、2050年二酸化炭素実質排出量ゼロに取り組むことを表明した地方公共団体が増えつつ」あるとされ、令和3年10月29日時点では、479自治体(40都道府県、287市、12特別区、116町、24村)が「ゼロカーボンシティ」の表明をしているとされる(環境省HP「地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況」)。なお、脱炭素に向けた地方自治体の取り組みについては、環境省資料「脱炭素に向けた地方自治体の取組について(2021年3月19日)」が参考になる。

  また、令和2年12月に「国・地方脱炭素実現会議」が設置されている。同会議は、「2050年脱炭素社会実現に向けたロードマップ及びそれを実現するための関係府省・自治体等の連携の在り方等について検討し、議論の取りまとめを行う」(内閣官房HP「国・地方脱炭素実現会議」)こととしている。同会議は、平和3年6月9日に「地域脱炭素ロードマップ〜地方からはじまる、次の時代への移行戦略〜」を取りまとめた。

〇 自治体法務研究2021年秋号は、「脱炭素社会の実現と自治体の役割」を特集としているので、参照されたい。

  再生可能エネルギーの利用促進について規定する条例については「再生可能エネルギーの利用促進に関する条例」を、太陽光発電設備の規制について規定する条例については「太陽光発電設備の規制に関する条例」を参照されたい。「再生可能エネルギーの利用促進に関する条例」においては、地球温暖化対策条例、再生可能エネルギーの利用促進に関する条例及び太陽光発電設備の規制に関する条例の制定時期について比較をしているので、あわせて参照されたい。

 

【京都市と京都府の条例】

〇 こうした中、京都市と京都府は、令和2年12月それぞれ地球温暖化対策条例を改正し、2050年(令和32年)までに脱炭素社会の実現を目指すことを明記した。すなわち、

京都市

京都市地球温暖化対策条例

平成16年12月24日公布

平成22年10月12日全部改正公布

令和2年12月18日最終改正公布

平成17年4月1日施行

平成23年4月1日全部改正施行

令和3年4月1日最終改正施行

京都府

京都府地球温暖化対策条例

平成17年12月27日公布

平成22年10月19日一部改正公布

令和2年12月23日最終改正公布

平成18年4月1日施行

平成23年4月1日一部改正施行

令和3年4月1日最終改正施行

 で、

  京都市条例は、前文で新たに「将来の世代が夢を描ける豊かな京都を作り上げていくため,令和32年までに二酸化炭素排出量正味ゼロと生活の質の向上及び持続可能な経済の発展とが同時に達成される脱炭素社会の実現を目指し,あらゆる主体と気候変動に対する危機感を共有し,地球温暖化,そして気候危機に覚悟を持って立ち向かうことを決意し,この条例を制定する。」と規定し、

  京都府条例は、新たに温室効果ガスの削減の長期目標として「府は、気候変動に関する国際連合枠組条約の究極の目的である大気中の温室効果ガスの濃度の安定化に向けて、令和32年度までに、温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成することを、長期的な目標とする。」(2条1項)と規定している。

〇 京都は、いうまでもなく、京都議定書が採択された地であり、京都市は「京都議定書が採択された都市として先導的な役割を果たす」(令和2年改正前前文)、京都府は「京都議定書誕生の地にふさわしい先導的な役割を果たしていく」(前文)としている。

〇 京都市条例は、平成16年12月に、地球温暖化対策に特化した条例としては全国で最初に制定され、京都府条例は、平成17年12月に、都道府県条例としては大阪府に次いで2番目に制定された地球温暖化対策に特化した条例である。京都市条例と京都府条例は、温室効果ガスの削減の数値目標を掲げており、両条例とも、温室効果ガスの排出量を、制定当初は平成22年(平成22年度)までに平成2年(平成2年度)比で10%削減すること(括弧内は京都府条例)を、平成22年改正により令和12年度までに平成2年度比で40%削減することなどを、令和2年12月改正により令和12年度までに平成25年度比で40%以上削減することを、それぞれ目標として掲げた。なお、平成22年改正時及び令和2年改正時は、削減目標は京都市及び京都府の共通目標として掲げている。

〇 京都市条例は、総則(1章)、地球温暖化対策計画(2章)、本市による地球温暖化対策(3章)、事業者及び市民等による地球温暖化対策(4章、特定事業者の義務、特定排出機器販売者の表示等の義務、自動車販売事業者の説明等の義務等)、事業者排出量削減計画による温室効果ガスの排出量の削減(5章)、エネルギー消費量等報告によるエネルギー消費量の削減等(6章)、建築物に係る地球温暖化対策(7章)、評価及び見直し(8章)及び雑則(9章)の9章、78条から構成されている。

  また、京都府条例は、総則(1章)、地球温暖化対策の推進(2章、府による地球温暖化対策、事業活動に係る地球温暖化対策、建築物に係る地球温暖化対策、緑化の推進による地球温暖化対策、自動車交通に係る地球温暖化対策、電気機器等に係る地球温暖化対策、再生可能エネルギーの利用等による地球温暖化対策、環境物品等の購入等の促進による地球温暖化対策、廃棄物の発生抑制等による地球温暖化対策、冷媒用代替フロンの排出の抑制等による地球温暖化対策、森林の保全及び整備等による地球温暖化対策、気候変動適応に係る地球温暖化対策並びに環境教育及び環境学習の推進等による地球温暖化対策)、地球温暖化対策の推進体制(3章)、施策の評価及び見直し等(4章)及び雑則(5章)の5章、66条から構成されている。

〇 京都市条例と京都府条例は、上記の通り温室効果ガスの削減目標について共通目標を定めているが、特定事業者及び特定建築主に対する排出量削減計画の作成・提出、特定事業者に対する環境マネジメントの導入、特定緑化建築物に対する建築物・敷地の緑化、自動車販売事業者に対する自動車環境情報の説明、特定電気機器等の販売者に対する省エネルギー性能の表示・説明等について、共通の義務規定を置いている。

〇 京都市条例の内容、改正経緯等については京都市HP「2050京からCO2ゼロ条例(京都市地球温暖化対策条例)」及び自治体法務研究2021年秋号条例制定の事例CASESTUDY「2050京からCO2ゼロ条例(京都市地球温暖化対策条例)」を、京都府条例の内容、改正経緯等については京都府HP「京都府地球温暖化対策条例の概要」を、それぞれ参照されたい。

 

【脱炭素社会を目指す条例】

〇 京都市及び京都府の条例のほか、脱炭素社会の実現を目指して対策を推進することを明記した条例として、

徳島県

徳島県脱炭素社会の実現に向けた

気候変動対策推進条例

平成28年10月31日公布

平成29年1月1日施行

長野県

長野県脱炭素社会づくり条例

令和2年10月19日公布

令和2年10月19日施行

岐阜県

岐阜県地球温暖化防止基本条例

岐阜県地球温暖化防止及び気候変動適応

基本条例

平成21年3月30日公布

令和3年3月29日改正公布

平成21年4月1日施行

令和3年3月29日改正施行

新潟県妙高市

生命地域妙高ゼロカーボン推進条例

令和3年3月31日公布

令和3年4月1日施行

横浜市

横浜市脱炭素社会の形成の推進に

関する条例

令和3年6月8日公布

令和3年6月8日施行

神奈川県横須賀市

地球を守れ 横須賀ゼロカーボン推進条例

令和3年9月21日公布

令和3年10月1日施行

東京都千代田区

千代田区地球温暖化対策条例

平成19年12月27日公布

令和3年10月14日改正公布

平成20年1月1日施行

令和3年10月14日改正施行

 がある。

〇 徳島県条例は、平成20年に制定された「徳島県地球温暖化対策推進条例」が廃止されたうえで、制定されている。

  「東日本大震災以降、自然エネルギーを活用した新たなエネルギー政策の本格化や、『今世紀後半に温室効果ガス排出の実質ゼロ』を目指す『パリ協定』の発効により、世界全体が『脱炭素社会』に向け第一歩を踏み出すなど、気候変動対策に係る新たな仕組みづくりが進められつつあります。こうした近年の環境情勢の大きな変化を踏まえ、『脱炭素社会』の実現に向け、本県における取組みをより一層加速化するため、この条例を制定しました。」(徳島県HP「『徳島県脱炭素社会の実現に向けた気候変動対策推進条例』について」)としており、「『脱炭素社会』『気候変動対策』を掲げる条例は全国初!」(徳島県資料「徳島県脱炭素社会の実現に向けた気候変動対策推進条例 概要」)としている。

  また、気候変動対策を総合的かつ計画的に推進するための基本方針を定める(8条)とするとともに、気候変動への適応に係る対策に関する規定を置いている(52条〜55条)が、「条例に基づく適応策の基本方針は全国初!」であり、「未来を守る、『対応策』の本格導入!」(上記徳島県資料)としている。

  総則(1章)、気候変動対策に関する基本方針等(2章)、気候変動の緩和に係る対策(3章、家庭生活等及び事業活動に係る配慮、温室効果ガスの排出削減計画書、建築物に係る配慮、交通及びまちづくりに係る配慮、再生可能エネルギー等に係る対策、森林等による吸収作用の保全等に係る対策、フロン類の排出の抑制等に係る対策等)、気候変動への適応に係る対策(4章)、環境教育等の推進(5章)、先導的な技術の活用及び先駆的な取組の実施等(6章)、雑則(7章)、罰則(8章)の8章、69条から構成されている。

  条例においては、温室効果ガスの削減の数値目標は掲げていない。他方、特定事業者に対する温室効果ガスの排出削減計画書の提出等に関して、提出等をしない、または虚偽の提出等をした場合についての罰則規定を設けている(69条)。

  徳島県条例の内容等については、上記徳島県HPや自治体法務研究2017年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「徳島県脱炭素社会の実現に向けた気候変動対策推進条例」を参照されたい。

〇 長野県条例は、議員提案により制定されている。

  前文で、「本県は、気候変動やプラスチック廃棄物等の課題に対して世界中の自治体と協働して取り組むため、『持続可能な社会づくりのための協働に関する長野宣言』を行ったほか、都道府県で初めての『気候非常事態宣言』を行い、2050年には二酸化炭素排出量を実質ゼロにするという決意を表明しました。」とたうえで、「これまで全国トップレベルのごみの減量等、先駆的な取組を行ってきた本県において、県民総ぐるみの運動により持続可能な脱炭素社会を実現し、国際社会の先導役として将来へ良好な環境を引き継ぐため、この条例を制定します。」としている。

  基本理念において、「持続可能な脱炭素社会づくりは、持続可能な社会づくりのための協働に関する長野宣言を踏まえつつ、令和32年度(2050年度)までに二酸化炭素排出量を実質ゼロにすること(二酸化炭素の人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成することをいう。)を目標として行われなければならない。」(2条1項)としている。

  県、事業者及び県民の責務並びに市町村との連携等(3条〜6条)を定め、知事は行動計画を策定しなければならない(7条)とするほか、エネルギー自立地域の確立(8条)、プラスチックの資源循環の推進(9条)、持続可能な脱炭素社会づくりに資する産業イノベーションの創出の促進(10条)、エシカル消費等の推進(11条)、環境教育の推進(12条)等の規定を置いている。16条から構成されている。

  長野県条例の内容、制定経緯等については長野県HP「長野県脱炭素社会づくり条例を制定しました」を、脱炭素社会に向けた長野県の取組みは「国・地方脱炭素実現会議」第1回(令和2年12月25日)資料「長野県説明資料について」を参照されたい。

  なお、長野県は、別途、長野県地球温暖化対策条例を制定している。

〇 岐阜県条例は、平成21年に「岐阜県地球温暖化防止基本条例」として制定されたが、脱炭素社会の実現に向けて地球温暖化対策の更なる推進を図るため、令和3年3月に一部改正され、条例名も「岐阜県地球温暖化防止及び気候変動適応基本条例」とされた。

  改正後、前文で「私たちは、・・・先取の気概をもって、温室効果ガスの人為的な排出量と森林等による吸収量との均衡がとれた脱炭素社会の実現に向けて先導的な役割を果たしていく必要がある」ことを明記している。

  温室効果ガスの排出の抑制対策(緩和策)を強化するとともに、気候変動の影響による被害の防止、軽減を図る対策(適応策)を推進することとしている。

  このうち、適応策については、気候変動適応に関する施策の推進(改正後37条)を規定するとともに、気候変動適応センターを設置する(改正後38条)こととし、また、これまで策定していた「地球温暖化防止計画」に気候変動適応に関する計画を盛り込んだ「地球温暖化防止・気候変動適応計画」を策定する(改正後7条)こととしている。

  緩和策の強化についても、県の事務・事業における率先実施(改正後10条)について規定するとともに、事業計画書に対し、改正後は県が評価を行い、その結果を公表する(改正後15条)こととし、また、中小排出事業者に対する支援(改正後17条)、再生可能エネルギーの地産地消(改正後34条)、水素エネルギーの普及啓発等(36条)等についても新たに規定している。

  岐阜県の地球温暖化対策については、岐阜県HP「岐阜県の地球温暖化対策の概要」を参照されたい。

〇 妙高市条例は、「2050年における二酸化炭素排出量実質ゼロに向けて、市、市民、事業者及び滞在者の責務を明らかにしながら、ゼロカーボンの推進と持続可能な脱炭素型地域の実現を図ることを目的」とし、「市では2020年6月にゼロカーボンの推進を宣言し、更なる地球温暖化対策に取り組むこととしている中、市域で活動するすべての人がゼロカーボンの推進に取り組み、持続可能な脱炭素型地域を実現することを目指すもの」である(妙高市HP「生命地域妙高ゼロカーボン推進条例」)としている。

  目的(1条)、市、市民、事業者及び滞在者の責務(2〜5条)、重点施策(6条)、推進計画(7条)、環境教育の推進(8条)、市民等への支援(9条)及び財政上の措置(10条)の10条から構成されている。

  市は、生命地域妙高ゼロカーボン推進宣言(令和2年6月5日)を踏まえ、総合的かつ計画的にゼロカーボンを推進しなければならない(2条1項)としたうえで、同宣言に掲げた施策を重点的に取り組む(6条)ものとしている。また、市は、推進計画を策定しなければならない(7条)としている。

〇 横浜市条例は、議員提案により制定されている。

  前文で、「横浜市は、事業者及び市民とともに2050年までの脱炭素社会の実現に向け全力で取り組まなければならない。」、「横浜市は、新たな技術革新のプラットフォームとして積極的に役割を果たし、ゼロカーボンシティとしての存在感を示すべきである。」としたうえで、「地球温暖化対策の推進並びに市内経済の循環及び持続可能な発展を図り、脱炭素社会の形成を推進するため、この条例を制定する。」としている。

  市、事業者及び市民の責務(3条〜5条)、施策の基本方針(6条)を定め、市は基本計画を策定するものとする(7条)ほか、再生可能エネルギー等の地産地消の促進(8条)、再生可能エネルギー等を通じた連携の推進(9条)、再生可能エネルギー等の需要拡大(10条)、建築物の再生可能エネルギー等の導入等の取組の促進(11条)、関連産業の支援(12条)、研究開発の促進等(13条)等の規定を置いている。17条から構成されている。

〇 横須賀市条例は、前文で、「これまで本市では、計画を策定し、低炭素社会の構築や気候変動への適応を推進してきたほか、令和3年1月には、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロとすることを目指す姿勢を示しました。」としたうえで、「横須賀が誇るべき豊かな環境を未来へ継承し持続させていくためには、低炭素社会から脱炭素社会へ、これまで以上に大胆な変革が必要不可欠です。市民、事業者、市民団体、行政等のあらゆる主体が危機感を共有し、社会全体が二酸化炭素排出量実質ゼロとなる生活様式及び事業活動へと生まれ変わるとともに、長期に渡って地球環境に影響を及ぼすと考えられている気候変動に柔軟に適応していくことが求められます。」とし、「地球温暖化対策に不退転の覚悟で取り組むため、この条例を制定します。」としている。

  基本理念(4条)、市民、事業者、市民団体及び市の責務(5条〜8条)、施策の基本方針(9条)を定め、市は地球温暖化対策実行計画を策定するものとする(10条)ほか、再生可能エネルギーの普及の促進(11条)、エネルギーの使用の合理化(12条)、移動手段の選択等による温室効果ガスの排出量の削減(13条)、温室効果ガスの吸収源の利用(14条)、気候変動への適応(15条)、広域的な連携(16条)等の規定を置いている。18条から構成されている。

  横須賀市条例の内容等については、横須賀市HP「地球を守れ 横須賀ゼロカーボン推進条例」を参照されたい。

〇 千代田区条例は、平成19年に制定され、2020年(令和2年)までに区内の二酸化炭素排出量を1990年(平成2年)比で25%削減する対策目標を掲げていたが、令和3年10月に一部改正され、基本理念として「区は、2050年までに二酸化炭素の排出量実質ゼロを達成する脱炭素社会をめざし、区民や事業者と協力し合って、その実現に向けて取り組みます。」(改正後3条)を掲げた。

  前文も改正し、「千代田区には、わが国を代表する大企業や官公庁などが多く存在していて、今後も活発な事業活動や都市の再整備が見込まれるため、人々の活動に伴い発生する二酸化炭素の量と吸収源による二酸化炭素の吸収量を均衡させるための取組みが必要です。 」と記している。

  また、区は脱炭素社会の形成に関する指針を作成し、この指針に基づき、一定規模以上の建物の新築や増改築を行う者に対し建物のエネルギー対策を求めるとともに、温暖化対策促進地域を指定し脱炭素社会をめざした取組みを進める(改正後18条)としている。

  あわせて、気候変動対策にも取り組むこととし、これまで策定することとしていた地球温暖化対策推進法19条2項に基づく地域推進計画に加え、気候変動適応法12条に基づく地域気候変動適応計画を策定する(改正後9条)とした。

  千代田区の地球温暖化対策については千代田区HP「地球温暖化対策」を、条例の改正の考え方については千代田区HP「改正千代田区地球温暖化対策条例(概要案)・千代田区地球温暖化対策地域推進計画2021(素案)・千代田区気候変動適応計画2021(素案)に対する意見募集の結果公表」参照されたい。

 

【地球温暖化対策に特化した条例】

〇 以上に紹介した条例ほか、地球温暖化対策に特化した条例として、令和3年9月21日現在確認できるものとしては、以下のようなものがある。

 

(都道府県)

大阪府

大阪府温暖化の防止等に関する条例

平成17年10月28日公布

平成18年4月1日施行

平成30年4月1日最終改正施行

長野県

長野県地球温暖化対策条例

平成18年3月30日公布

平成19年2月20日施行

平成26年4月1日最終改正施行

和歌山県

和歌山県地球温暖化対策条例

平成19年3月14日公布

平成19年9月1日施行

平成28年10月5日最終改正施行

静岡県

静岡県地球温暖化防止条例

平成19年3月20日公布

平成19年7月1日施行

山梨県

山梨県地球温暖化対策条例

平成20年12月26日公布

平成21年4月1日施行

鳥取県

鳥取県地球温暖化対策条例

平成21年3月27日公布

平成21年6月1日施行

平成28年8月23日最終改正施行

北海道

北海道地球温暖化防止対策条例

平成21年3月31日公布

同22年3月1日施行

平成26年4月1日最終改正施行

埼玉県

埼玉県地球温暖化対策推進条例

平成21年3月31日公布

平成21年4月1日施行

平成28年8月12日最終改正施行

神奈川県

神奈川県地球温暖化対策推進条例

平成21年7月17日公布

平成21年10月1日施行

平成28年10月21日最終改正施行

群馬県

群馬県地球温暖化防止条例

平成21年10月23日公布

平成22年4月1日施行

平成28年10月19日最終改正施行

熊本県

熊本県地球温暖化の防止に関する条例

平成22年3月26日公布

平成22年4月1日施行

平成29年4月1日最終改正施行

鹿児島県

鹿児島県地球温暖化対策推進条例

平成22年3月26日公布

平成22年4月1日施行

平成28年12月26日最終改正施行

秋田県

秋田県地球温暖化対策推進条例

平成23年3月14日公布

平成23年3月14日施行

平成28年10月14日最終改正施行

滋賀県

滋賀県低炭素社会づくりの推進に関する条例

平成23年3月22日公布

平成23年4月1日施行

平成30年12月1日最終改正施行

三重県

三重県地球温暖化対策推進条例

平成25年12月27日公布

平成26年4月1日施行

愛知県

愛知県地球温暖化対策推進条例

平成30年10月19日公布

平成30年10月19日施行

 

(指定都市)

広島市

広島市地球温暖化対策等の推進に関する条例

平成21年3月30日公布

平成22年4月1日施行

平成28年4月1日最終改正施行

川崎市

川崎市地球温暖化対策の推進に関する条例

平成21年12月24日公布

平成22年4月1日施行

平成28年10月19日最終改正施行

相模原市

相模原市地球温暖化対策推進条例

平成24年12月21日公布

平成25年4月1日施行

平成28年5月27日最終改正施行

仙台市

仙台市地球温暖化対策等の推進に関する条例

令和元年10月23日公布

令和2年4月1日施行

 

(その他の市区町村)

千葉県柏市

柏市地球温暖化対策条例

平成19年3月28日公布

平成19年4月1日施行

令和元年6月28日最終改正施行

埼玉県川越市

川越市地球温暖化対策条例

平成19年12月19日公布

平成19年12月19日施行

滋賀県草津市

愛する地球のために約束する草津市条例

平成19年12月27日公布

平成20年4月1日施行

令和2年7月1日最終改正施行

和歌山県岩出市

岩出市地球温暖化対策条例

平成20年3月10日公布

平成20年6月1日施行

石川県白山市

白山市地球温暖化対策条例

平成21年12月17日公布

平成22年1月1日施行

埼玉県戸田市

戸田市地球温暖化対策条例

平成21年12月21日公布

平成22年6月1日施行

埼玉県嵐山町

緑と清流・オオムラサキが舞う嵐山町

ストップ温暖化条例

平成23年6月10日日公布

平成23年9月1日施行

平成30年4月1日最終改正施行

東京都中野区

中野区地球温暖化防止条例

平成23年7月7日公布

平成23年7月7日施行

平成30年4月1日最終改正施行

宮崎県五ヶ瀬町

五ヶ瀬町における低炭素社会実現の

ための基本条例

平成23年9月16日公布

平成23年10月1日施行

平成33年3月31日失効

東京都港区

港区民の生活環境を守る建築物の

低炭素化の促進に関する条例

令和2年3月10日公布

令和3年4月1日施行

 

〇 以上の条例はいずれも、地球温暖化対策の推進や温室効果ガスの排出の抑制を目的に掲げ、自治体、住民、事業者等の責務等を定め、また、必要な施策の推進等について規定しているが、脱炭素社会を実現することや温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることなどについては言及していない。

〇 条例で温室効果ガスの削減目標を定めているのは、柏市条例である。柏市条例は「令和12年度の温室効果ガスの排出の量を平成25年度の温室効果ガスの排出の量と比較して24パーセント以上削減すること」(4条1項)を目標としている。

〇 都道府県の条例は、すべての条例で、温室効果ガスの排出が多い事業者に対して地球温暖化対策計画書等の作成と知事への届出を義務づけている。また、多くの条例では、都道府県が地球温暖化対策計画等を策定することを条例上明記し、一定規模の建築物の新築等をする者に対して環境配慮計画等の作成と知事への届出を義務づけている。さらに、自動車の販売店に対する新車の環境情報の提供義務や家電の販売店に対するエアコン、テレビ、冷蔵庫等の省エネ性能の提供義務等を規定する条例も少なくない。そのほか、多くの条例は、省エネの推進、再生可能エネルギーの利用、公共交通機関の利用、アイドリングストップの実施、温室効果ガスの排出量が少ない自動車や電気機器の使用等についての住民や事業者の努力義務を規定している。

〇 指定都市の条例も、都道府県の条例と同様に総合的かつ具体的な規定を置いているが、相模原市条例は温室効果ガスの排出が多い事業者に対する地球温暖化対策計画書の作成・届出の義務規定は置かず、中小規模事業者に対して作成・提出することができる旨の規定を置いている。

〇 その他の市区町村の条例は、都道府県や指定都市の条例と異なり、内容は様々である。柏市、川越市、白山市及び戸田市の条例は、温室効果ガスの排出が多い特定の事業者に対する温室効果ガス削減計画等の作成・提出や特定の建築主に対する環境配慮計画等の作成・提出についての義務規定を置いている。港区条例は、特定の建築主に対して低炭素化計画書の作成・届出を義務づけている。嵐山町及び五ヶ瀬町の条例は、町が地域推進計画(五ヶ瀬町は実施計画)の策定を規定するほか、町の施策を中心に規定し、中野区条例は、建築物の断熱性の向上や電気機械器具等の省エネルギー化等についての区民や事業者の努力義務を規定している。草津市及び岩出市の条例は、市、市民、事業者等の役割や取組等の理念的な規定を置いている。

〇 なお、剱持麻衣「都市自治体における温暖化対策条例の最新動向」(都市とガバナンス第35号(2021.3))は、指定都市、その他の市及び特別区の17条例(下記に示す札幌市、さいたま市、横浜市及び名古屋市の条例を含む)について整理・分析を行っている。

 

【その他地球温暖化対策を規定する条例と東京都条例】

〇 地球温暖化対策に特化した条例でなく、環境保全等に関する条例において地球温暖化対策を規定する自治体は極めて多い。環境省の「地方公共団体における地球温暖化対策の推進に関する法律施行状況調査結果(令和2年10月1日現在)」によると、地球温暖化対策の推進を目的とする条例は882条例あるとされる(「報告書本編:分割1」16頁)。その内容は様々であるが、地球温暖化対策に特化した条例以外のこれらの条例のうち、特定の事業者に対する地球温暖化対策計画書等の作成・届出の義務規定を置いているのは、令和2年12月24日現在確認できるものとしては、以下の通りである。

  都道府県の条例は、岩手県「県民の健康で快適な生活を確保するための環境の保全に関する条例」、栃木県「栃木県生活環境の保全等に関する条例」、茨城県「茨城県地球環境保全行動条例」、東京都「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」、石川県「ふるさと石川の環境を守り育てる条例」、兵庫県「環境の保全と創造に関する条例」、岡山県「岡山県環境への負荷の低減に関する条例」、広島県「広島県生活環境の保全等に関する条例」、香川県「香川県生活環境の保全に関する条例」、長崎県「長崎県未来につながる環境を守り育てる条例」及び宮崎県「みやざき県民の住みよい環境の保全等に関する条例」であり、

  指定都市の条例は、札幌市「札幌市生活環境の確保に関する条例」、さいたま市「さいたま市生活環境の保全に関する条例」、横浜市「横浜市生活環境の保全等に関する条例」及び名古屋市「市民の健康と安全を確保する環境の保全に関する条例」である。

  その他の市区町村については、確認できない。

〇 これらの条例のうち、特に特徴的、先駆的な内容を有するのが、東京都条例である。すなわち、

東京都

都民の健康と安全を確保する環境に

関する条例

平成12年12月22日公布

平成20年7月2日一部改正公布

令和2年6月17日最終改正公布

平成13年4月1日施行

平成21年4月1日一部改正施行

令和3年6月1日最終改正施行

 である。

  本条例は、平成12年に「東京都公害防止条例」を全部改正して制定された。温室効果ガスの排出が多い事業者に対して地球温暖化対策計画書の作成・提出を義務づけたが、この規定は、京都市条例をはじめその後に続く都道府県、指定都市等の同種の規定の嚆矢になるものであった。地球温暖化対策の推進に関する法律も、平成17年に改正され、特定排出者に対して温室効果ガス算定排出量の報告が義務づけられることとなった。

  平成20年に一部改正され、温室効果ガス排出量総量削減義務と排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード制度)が導入された。大規模事業所を対象として具体的な数値目標を示して温室効果ガス排出量の削減を義務づけるとともに、自らの削減努力では削減目標が達成できない場合に排出量取引での削減量の調達を行うことができることとされた。

  本条例の内容等については東京都HP「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例(環境確保条例)・施行規則」を、総量削減義務と排出量取引制度については東京都HP「総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)」を参照されたい。




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