RILG - 一般財団法人 地方自治研究機構


路上喫煙を禁止する条例

                                                  (令和3年9月12日更新)

【路上喫煙を禁止する条例】

〇 本稿では、「路上喫煙を禁止する条例」と取り上げる。

  「路上喫煙」のみならず、「歩行喫煙」や「歩きたばこ」を禁止する条例も含める。道路上または公共の場等において、歩きながら、自転車等に乗りながら、または、立ち止まって、たばこを吸い、または、火のついたたばこを所持することを禁止する条例である。

  こうした条例は、通常、「路上喫煙」等を禁止するだけでなく、「路上禁煙」等を防止するための自治体等の責務や取り組み等を定めている。また、「路上喫煙」等の禁止に特化した条例もあれば、「路上喫煙」等の禁止を、吸い殻等の「ポイ捨て」の禁止と併せて規定する条例や、「環境美化条例」、「環境保全条例」、「まちをきれいにする条例」等において飼い犬等のふんの放置の禁止、落書きの禁止、空き缶等のポイ捨ての禁止等とともに規定する条例もある。罰則規定を置く条例もあれば、置かない条例もある。「路上喫煙」等をしてはならないことを、努力義務とするものもある。

  「路上喫煙」、「歩行喫煙」及び「歩きたばこ」という用語を条例で使用する場合は、通常、条例に定義規定が置かれる。「路上喫煙」は、道路上で喫煙することであり、歩きながら喫煙する場合のみならず、立ち止まって喫煙する場合も含むものとし、「歩行喫煙」及び「歩きたばこ」は、歩きながら喫煙することであり、自転車等に乗りながら喫煙する場合も含まれ、道路上のみならず広場や公園等の公共の場所での行為も含むものとすることが多いが、条例によって、規定の仕方や禁止の対象は異なる。定義規定は置かず、本文中で例えば「道路上で喫煙してはならない」等と規定するものもある。

  なお、「路上喫煙」、「歩行喫煙」、「歩きたばこ」ともに、国の法令用語としては使用されていない。

 

【東京都千代田区の条例】

〇 路上喫煙等を禁止するとともに、違反行為に対して罰則を科する条例を、全国最初に制定したのは、東京都千代田区である。平成14年制定の

東京都千代田区安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例平成14年6月25日公布

平成14年10月1日施行

 である。千代田区がこの条例を制定して以来、全国の自治体で路上喫煙等を禁止する条例が制定されるようになった。

〇 本条例は、「区民等がより一層安全で快適に暮らせるまちづくりに関し必要な事項を定め、区民等の主体的かつ具体的な行動を支援するとともに、生活環境を整備することにより、安全で快適な都市千代田区の実現を図ること」(1状)を目的としており、路上喫煙のみならず、吸い殻や空き缶等のポイ捨て、落書き、置き看板等の放置、チラシ等配付物の散乱、飼い犬等のふん等の放置、善良な風俗を害する活動とその援助協力等に関しても、禁止等の規定を置いている。

  路上喫煙に関しては、「区民等は、公共の場所において歩行中(自転車乗車中を含む。)に喫煙をしないように努めなければならない。」(9条2項)として、広く公共の場所において歩行喫煙をしないことについて努力義務を課すとともに、「路上禁煙地区」を指定し(21条1項)、同地区内における「道路上及び区長が特に必要があると認める公共の場所(以下「道路等」という。)で喫煙する行為並びに道路等(沿道植栽を含む。)に吸い殻を捨てる行為」を禁止している(21条3項)。そのうえで、路上禁煙地区内で喫煙し、又は吸い殻を捨てた者は、2万円以下の過料に処する(24条1項2号)としている。

〇 平成14年に千代田区条例が制定される以前においても、他の自治体において、吸い殻等のポイ捨てに対して罰則を科す条例は制定されていた(「ポイ捨て防止に関する条例」を参照)。また、路上喫煙等をしないことを努力義務とする条例も制定されていた(例えば、東京都調布市の調布市都市美化の推進に関する条例(平成9年9月18日公布・平成10年4月1日施行)は、市民等の努力義務として「歩行中に喫煙をしないこと」(5条2項2号)を規定している。)。しかし、路上喫煙等に対して罰則を科す条例はなかった。

〇 千代田区においても、平成10年に「千代田区吸い殻、空き缶等の散乱防止に関する条例」(通称「ポイ捨て禁止条例」とされていた)が制定され、吸い殻や空き缶等のポイ捨てを禁止し(罰則はなし)、また、市民等の努力義務として「歩行中に喫煙をしないこと」を規定していた。しかし、この「ポイ捨て禁止条例」により「ゴミのポイ捨てや公共の場での歩きたばこを努力義務として禁止してきれいなまちを目指してきました。例えば、街角に数多くの灰皿を設置したり、駅前などでの携帯灰皿の配布(10万個以上)、徹底した清掃や各種PR活動を行ったりするなど、区と住民が一丸となり、懸命に取り組んできました。しかし、罰則を伴わない条例のもとで人々のモラルに訴えかけてきましたが、残念ながら、ほとんど目立った効果はありませんでした。」とし、そこで「マナーやモラルに期待しながらまちの環境を良くしていくことは非常に難しく、人々の道徳心のみに頼ることは、もはや限界であると考えました。このため、議論を重ねた末に、やむを得ず一定のルール(罰則付きの条例)を設けて、住民の悲痛な叫びに応えていくこととしました。」(千代田区HP「千代田区生活環境条例のあらまし」)としている。

〇 路上禁煙地区は、条例施行当時は、歩行者の往来の激しい駅周辺や通学路がある地域など、路上での喫煙行為により他の歩行者に対する迷惑・危険のおそれがある区域として、皇居を除く千代田区の面積の30パーセントが指定されていたが、平成22年4月1日からは千代田区全域が指定されている(千代田区HP「千代田区生活環境条例のあらまし」及び「生活環境条例 路上禁煙地区、環境美化・浄化推進モデル地区」参照)。

  また、路上禁煙地区における道路等での喫煙及び吸い殻のポイ捨てに対する過料は、条例上は「2万円以下」(24条1項2号)としているが、実際に科する過料の額は「当面2000円」としている(千代田区HP「千代田区生活環境条例」)。違反者への取り締まりは、「地域の方々や警察などの関係行政機関と密接に連携・協力して行います。」とし、また、「過料は、職員証を携帯している区の職員が告知し、納付書または直接その場でお支払いただきます。」としている(千代田区HP「千代田区生活環境条例」)。

  千代田区は、過料処分件数を、条例施行後、毎年度、地区別の状況も含め、公表している(千代田区HP「路上喫煙過料処分件数」)。また、定期的に同じ場所や時間でポイ捨て吸い殻の本数の定点観測を行っているとしており、「秋葉原地区の場合、条例施行直前の平成14年9月29日に合計955本でしたが、翌10月に入ると激減し、現在は20本以下の状況が続いています。」としている(千代田区HP「千代田区生活環境条例のあらまし」及び「秋葉原地区のポイ捨て吸い殻定点観測状況」)。

  なお、千代田区は「これまでの取り組みにより、条例は一定の成果をあげてきましたが、まだまだ本来の目的である『マナー・モラルの向上』が充分に図られているとは言えない状況にあります。『マナーからルールへ。』とマナーの問題にあえて罰則というルールを設けましたが、これを罰則などいらない『マナーへ』の回帰を目指して、息長く取り組んでいきます。」(千代田区HP「千代田区生活環境条例のあらまし」)としている。 新宿区条例の制定経緯や制定当時の取組み状況等については、千代田区生活環境課「路上喫煙にNO!」(ぎょうせい 平成15年10月)が詳しい。

 

【条例制定の動向】

〇 千代田区条例が制定された後、他の自治体においても、路上喫煙等を禁止する条例が制定されるようになった。千代田区に続いて制定された条例としては、以下のような条例がある。

福岡市

人に優しく安全で快適なまち福岡をつくる条例

平成14年12月19日公布

平成15年8月1日施行

東京都杉並区

杉並区生活安全及び環境美化に関する条例

平成15年3月17日公布

平成15年10月1日施行

罰則は平成21年10月1日施行

東京都小金井市

小金井市まちをきれいにする条例

平成15年3月26日改正公布

平成15年12月1日改正施行

東京都品川区

品川区歩行喫煙および吸い殻・空き缶等

の投げ捨ての防止に関する条例

平成15年3月31日公布

平成15年10月1日施行

広島市

広島市ぽい捨て等の防止に関する条例

平成15年7月10日公布

平成15年10月1日施行

罰則は平成16年1月1日施行

  いずれの条例も、路上禁煙地区等(福岡市、杉並区及び小金井市は「路上禁煙地区」、品川区は「路上喫煙禁止・地域美化推進地区」、広島市は「喫煙制限区域」)における喫煙(福岡市は道路上での歩行中又は自転車に乗車中での喫煙、杉並区及び小金井市は道路上での喫煙、品川区は道路上(駅舎周辺で一般交通の用に供する場所を含む)での喫煙、広島市は屋外の公共の場(道路、都市公園、自然公園、広場、河川、港湾区域及び空地)での喫煙)を禁止し、違反行為に対して過料(福岡市、杉並区及び広島市は2万円以下の過料、品川区は1万円以下の過料、小金井市は2000円以下の過料)を科している。

  品川区条例は、条例名に「歩行喫煙」を、13条の見出しに「路上喫煙」を使用している。ただし、条例本文中にそれぞれの定義規定は置かず、「何人も、公共の場所において、歩行中(自転車乗車中を含む。)に喫煙をしないように努めなければならない。」(9条)、「何人も、路上喫煙禁止・地域美化推進地区内の道路上(駅舎周辺で一般交通の用に供する場所を含む。・・・)において喫煙してはならない。」(13条)等と規定している。他の条例は、「歩行喫煙」や「路上喫煙」の用語は使用していない。

  杉並区条例は平成10年制定の「清潔で美しい杉並区をみんなでつくる条例」を全部改正し、品川区条例は平成9年制定の「品川区吸い殻・空き缶等の投げ捨ての防止に関する条例」を廃止して、制定されている。また、小金井市条例は平成9年制定の条例を一部改正している。なお、福岡市条例は、議員提案により制定されている。

〇 その後、条例名に「歩きたばこ」や「路上喫煙」の用語を掲げる条例も制定されるようになる。例えば、以下のような条例である。

東京都中央区

中央区歩きたばこ及びポイ捨てをなくす条例

平成16年3月30日公布

平成16年6月1日施行

千葉県船橋市

船橋市路上喫煙及びポイ捨て防止条例

平成16年3月31日公布

平成16年10月1日施行

罰則は平成17年4月1日施行

埼玉県川口市

川口市路上喫煙の防止等に関する条例

平成17年3月25日公布

平成17年5月1日施行

東京都東久留米市

東久留米市ポイ捨て等の防止及び路上喫煙

の規制に関する条例

平成17年6月23日公布

平成18年3月1日施行

  「歩きたばこ」を、中央区条例は「燃焼し、又は加熱したたばこを保持し、又は吸引しながら公共の場所を歩行(自転車等の運転中を含む。)する行為」(2条2号)と定義づけ、また、「路上喫煙」を、船橋市条例は「規則で定める道路上において、たばこを吸うこと及び火の付いたたばこを持つこと」(2条2号)、川口市条例は「道路等において喫煙すること」(2条2号)、東久留米市条例は「道路、駅前広場その他の公共の交通の用に供する場所において喫煙する行為(自動車の車内における喫煙を除く。)」(2条2号)とそれぞれ定義づけている。

  これらの4条例のうち、船橋市条例は重点地区において路上喫煙をした者で市長による勧告に従わないものに対して2万円以下の過料を科する(14条1項1号)としているが、他の条例は罰則規定を設けていない。

〇 路上喫煙等を禁止する条例は、平成10年代の後半から平成20年代にかけて多く制定されているが、平成30年以降も制定される条例は少なくない。「路上喫煙」や「歩行喫煙」を条例名に掲げる条例としては、例えば、以下のようなものがある。

三重県桑名市

桑名市路上喫煙の防止に関する条例

平成30年9月5日公布

平成31年4月1日施行

大阪府大東市

大東市路上喫煙の防止に関する条例

令和元年12月20日公布

令和2年4月1日施行

罰則は令和3年4月1日施行

大阪府和泉市

和泉市特定の場所における路上喫煙の制限に関する条例

令和2年3月25日公布

令和2年10月1日施行

愛知県犬山市

犬山市路上喫煙の禁止に関する条例

令和2年3月27日公布

令和2年10月1日施行

  これらの4条例のほか、令和3年9月1日現在で確認できているものとして、奈良県大和郡山市、岐阜県飛騨市、愛知県豊田市、愛知県刈谷市、京都府亀岡市、広島県府中町、大阪府門真市及び大阪府河内長野市の条例がある。

  これら12市町の条例のうち、路上喫煙等の禁止に関して罰則規定を設けているのは、亀岡市、桑名市、門真市及び大東市の4市である。この4市の条例は、路上喫煙禁止区域において路上喫煙をした者で市長による指導や命令等に従わないものに対して過料(亀岡市は1万円以下の過料、門真市は1000円の過料、桑名市は2万円以下の過料、大東市条例は規則で定める額の過料)を科している。

〇 平成30年7月に健康増進法の一部が改正され、受動喫煙を防止するため多数の者が利用する施設等における喫煙が禁止されたが、この法律改正を契機として、受動喫煙防止に関する条例を制定する自治体が増加している。改正健康増進法は、学校、病院、児童福祉施設、行政機関、旅館、ホテル、飲食店、旅客運送事業自動車、航空機等の屋内又または敷地内の禁煙を定めており、道路、公園、広場等の屋外での喫煙を禁止するものではない。自治体の条例では、受動喫煙防止のため改正健康増進法の規制内容を強化するものが多いが、市町村の条例の中には、併せて、路上喫煙等の禁止を定めるものも少なくない。例えば、

千葉県習志野市

習志野市受動喫煙の防止に関する条例

平成30年10月4日公布

平成31年1月1日施行

罰則は平成31年4月1日施行

長野県松本市

松本市受動喫煙防止に関する条例

平成31年3月15日公布

令和元年7月1日施行

東京都三鷹市

三鷹市受動喫煙防止条例

令和2年10月1日公布

令和3年4月1日施行

奈良県広陵町

広陵町たまらん煙(受動喫煙)から健康を守る

思いやり条例

令和3年3月26日公布

令和3年10月1日施行

 である。

  この4市町のほか、令和3年9月1日現在で確認できているものとして、東京都調布市、大阪府四条畷市、北海道士別市、東京都多摩市、福島県田村市、大阪府高石市、千葉県市原市、大阪府寝屋川市、大阪府豊中市及び東京都清瀬市が、受動喫煙防止に関する条例において、路上喫煙等の禁止を定めている(「受動喫煙防止に関する条例」を参照のこと)。

  これら14市町の条例のうち、路上喫煙等の禁止に関して罰則規定を設けているのは、習志野市、四條畷市、調布市、多摩市、市原市、寝屋川市、豊中市、三鷹市及び広陵町の9市町である。この9市町のうち、習志野市は重点区域における路上喫煙行為に対して1万円以下の過料を、市原市は2万円以下の過料を科すことにしているが、その他の7市町は重点区域等において路上喫煙をした者で市長(町長)による命令等に従わないものに対して過料(多摩市は5万円以下の過料、豊中市は2万円以下の過料、調布市及び三鷹市は2000円の過料、四条畷市、寝屋川市及び広陵町は1000円の過料)を科している。

 

【条例の制定状況と罰則の規定状況】

〇 「路上喫煙を禁止する条例」の全国的な制定状況を調査した資料は確認できない(令和3年2月5日現在)。ただし、都道府県内の市区町村における「路上喫煙を禁止する条例」の制定状況について、調査をし、公表している都道府県がある。このうち、いくつかを紹介する。なお、本稿で記述している各都道府県の条例の制定状況と罰則の規定状況は、それぞれの都道府県の資料を踏まえ、令和3年2月5日時点で、地方自治研究機構において確認したものである。

〇 東京都は、東京都HP「区市町村の取組(路上喫煙・普及啓発等)」において、「路上喫煙防止条例等の概要(基準日 令和2年4月1日)」を掲載している。令和2年4月1日を基準日とした「路上喫煙等防止条例(予定も含む)」の制定状況を取りまとめている。「路上喫煙等防止条例」には、たばこの吸い殻ポイ捨て等を規制する条例も含まれるとしている。これによると、特別区は23区すべての区で、市は26市中20市で、町村は13町村中1村で、「路上喫煙防止条例」を制定していることとなるが、昭島市、日野市、武蔵村山市及び青ヶ島村の条例は、吸い殻のポイ捨て等の禁止は定めているものの路上喫煙や歩行喫煙の禁止は定めておらず、また、基準日以降、三鷹市は「三鷹市受動喫煙防止条例」(令和2年10月1日公布・令和3年4月1日施行)を制定し路上喫煙禁止の規定を置いているので、令和3年2月5日時点では、23区及び18市が「路上喫煙を禁止する条例」を制定している。なお、文京区は、令和2年7月1日改正施行により「文京区歩行喫煙等の禁止に関する条例」を一部改正し、「文京区公共の場所における喫煙等の禁止に関する条例」と名称を改め、文京区内全域の屋外の公共の場所での喫煙を禁止としている。

  23区及び18市の条例の罰則規定については、23区のうち10区(罰則規定が未施行の中野区及び板橋区は含まず)が、18市のうち14市が、罰則規定を置いている。10区及び14市の罰則は全て過料であり、このうち10区のすべて(千代田区、墨田区、品川区、大田区、渋谷区、杉並区、北区、練馬区、足立区、葛飾区)及び4市(小金井市、東村山市、清瀬市、稲城市)は直罰方式(路上喫煙等に対して直ちに罰則を科すもの。以下同じ。)で、10市(八王子市、三鷹市、青梅市、府中市、調布市、町田市、福生市、狛江市、多摩市、羽村市)は間接罰方式(路上喫煙等があった場合に市区町村長が中止等の指導、命令等を行い、この指導、命令等に従わない者に罰則を科すもの。以下同じ。)である。

〇 埼玉県は、「廃棄物減量化等実態調査」において、「路上喫煙の禁止に係る条例」の制定状況等も調査している。直近の調査結果は、令和元年度(令和2年3月31日現在)の「2 条例等」の「2.3 路上喫煙の禁止に係る条例の制定状況」である。これによると、63市町村中27市町が「路上喫煙の禁止に係る条例」を制定しており、また、条例を制定している27市町のうち、15市町が罰則規定を置いている。15市町の罰則はすべて過料であり、このうち1市(川越市)が直罰方式で、14市町(さいたま市、東松山市、春日部市、鴻巣市、上尾市、草加市、越谷市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、久喜市、八潮市、嵐山町)が間接罰方式である。 

〇 千葉県は、HP「千葉県のたばこ対策に関するデータ」において、「各市町村における路上喫煙規制条例制定状況(令和2年4月1日現在)」を掲載している。これによると、54市町村中15市が「路上喫煙規制条例」を制定している。条例を制定している15市のうち12市が罰則規定を置いており、12市の罰則はすべて過料であり、このうち8市(千葉市、市川市、船橋市、松戸市、習志野市、柏市、市原市、八千代市)が直罰方式で、4市(野田市、流山市、我孫子市、印西市)が間接罰方式である。

〇 神奈川県は、少し古くなるが、「平成28年度第1回神奈川県たばこ対策推進検討会」において資料10「市町村における路上喫煙の規制等、たばこ関連条例の制定状況一覧(平成28年4月調)」を提出している。これによると、33市町村中15市町が「路上喫煙規制条例」を制定していることとなるが、逗子市は「逗子市路上喫煙等の防止に関する条例」(平成28年3月9日公布・同年10月1日施行)、座間市は「座間市環境美化条例」(平成30年3月26日公布・平成31年4月1日施行)を制定し、海老名市は条例を一部改正して「海老名市路上喫煙の防止及び美化推進に関する条例」(平成31年5月31日改正施行)としており、令和3年2月5日時点では、17市町が「路上喫煙を禁止する条例」を制定している。この17市町のうち、11市町が罰則規定を置いており、このうち、罰金を科しているのが5市町(藤沢市、平塚市、小田原市、座間市、大磯町)で、すべて間接罰方式であり、過料を科しているのが6市で、このうち直罰方式が3市(横浜市、川崎市、大和市)、間接罰方式が3市(相模原市、鎌倉市、海老名市)である。

〇 なお、指定都市は、20市すべての市で条例を制定している。以下、条例を制定順に示す(括弧内は、公布日)。

  (福岡市)人に優しく安全で快適なまち福岡をつくる条例(平成14年12月19日)、浜松市快適で良好な生活環境を確保する条例(平成15年3月25日)、広島市ぽい捨て等の防止に関する条例(平成15年7月10日)、(名古屋市)安心・安全で快適なまちづくりなごや条例(平成16年10月13日)、札幌市たばこの吸い殻及び空き缶等の散乱の防止等に関する条例(平成16年12月14日)、川崎市路上喫煙の防止に関する条例(平成17年12月22日)、静岡市路上喫煙による被害等の防止に関する条例(平成18年7月25日)、熊本市路上喫煙及びポイ捨ての禁止等に関する条例(平成19年3月13日)、さいたま市路上喫煙及び空き缶等のポイ捨ての防止に関する条例(平成19年3月15日)、大阪市路上喫煙の防止に関する条例(平成19年3月16日)、岡山市美しいまちづくり,快適なまちづくり条例(平成19年3月27日)、横浜市空き缶等及び吸い殻等の散乱の防止等に関する条例(平成19年5月31日改正)、京都市路上喫煙等の禁止等に関する条例(平成19年6月1日)、北九州市公共の場所における喫煙の防止に関する条例(平成20年3月25日)、神戸市ぽい捨て及び路上喫煙の防止に関する条例(平成20年3月31日)、新潟市ぽい捨て等及び路上喫煙の防止に関する条例(平成20年7月1日)、堺市安全・安心・快適な市民協働のまちづくり条例(平成21年9月14日)、千葉市路上喫煙等及び空き缶等の散乱の防止に関する条例(平成22年12月21日)、相模原市路上喫煙の防止に関する条例(平成24年3月27日)、仙台市歩行喫煙等の防止に関する条例(平成27年6月26日)

  大阪市路上喫煙対策委員会の第35回委員会(令和2年12月9日開催)における「配布資料」のうち「政令指定都市における路上喫煙に関する条例について」は、指定都市の「路上喫煙に関する条例」の罰則規定の内容や罰則の適用件数等を掲載している。これによると、指定都市20市中18市が罰則規定を置いており(罰則がないのは、仙台市及び浜松市)、18市の罰則は全て過料である。このうち、さいたま市及び相模原市の2市は間接罰方式であるが、他の16市は直罰方式である。実際に徴収している過料金額は1000円が10市、2000円が7市、過料金額の設定なしが1市であり、過料徴収件数が多いのは大阪市、横浜市、神戸市、京都市などとなっている。

〇 以上を見ると、「路上喫煙を禁止する条例」は、指定都市や東京都特別区では全団体が制定しているものの、例えば、埼玉県では63市町村中27市町が、千葉県では54市町村中15市が、制定していることになる。「ポイ捨てを禁止する条例」が埼玉県では43市町、千葉県が49市町で制定している(いずれも「ポイ捨てを禁止する条例」参照)のに比べると、「路上喫煙を禁止する条例」を制定している市町村はかなり少なく、都市部中心に制定されており、郡部では少ないと言える。

〇 罰則は、指定都市は大半で設けているものの、東京都特別区では対応が分かれ、半数程度の区は罰則規定を置いていない。

  罰則規定の内容については、指定都市、東京都特別区、東京都、埼玉県及び千葉県の市町村、平成30年以降制定されている「路上喫煙」や「歩行喫煙」を条例名に掲げる条例並びに「受動喫煙に関する条例」で路上喫煙等の禁止を規定している条例で罰則規定を置いているものは、すべて過料を科すとしている。罰金は、神奈川県の4市に過ぎない。これらの4市の条例はすべて、広く環境美化やきれいなまちづくり等を目的とするものであり、空き缶等のポイ捨てや飼い犬等のフンの放置等に対する罰金と併せて路上喫煙等に対して罰金を科すものである。いずれにしても、「路上喫煙を禁止する条例」における罰則はそのほとんどが過料で、「ポイ捨てを禁止する条例」や「落書きを禁止する条例」などと比べて、極めて特徴的である。

  また、過料は、指定都市及び東京都特別区では、全て直罰方式となっている。しかし、同じ東京都でも、市は14市中10市が間接罰方式である。また、千葉県の12市のうち8市が直罰方式であり、神奈川県の6市のうち3市が直罰方式であるものの、埼玉県の15市町のうち14市町は間接罰方式で、上記に示した平成30年以降制定されている「路上喫煙」や「歩行喫煙」を条例名に掲げる条例で過料を科している4市はすべて、また、「受動喫煙に関する条例」で路上喫煙等の禁止を規定している条例で過料を科している12市のうち10市は、間接罰方式である。このようにしてみると、人口規模の大きい都市や特別区は直罰方式をとるものの、人口規模が大きくない都市は間接罰をとるものが多いと言えよう。

 

【罰則規定について】

〇 路上喫煙等に対して罰則を科することについては、「路上喫煙に関しては直接これを禁止する法律は存在せず、それが路上喫煙を規制しないという趣旨でもないと解せられるため、当該地域において路上喫煙を禁止する必要性がある場合は、これを条例で規制することができよう。」(福士明「ポイ捨て・路上喫煙禁止」(行政課題別条例実務の要点(第一法規 令和2年12月20日))6802頁)とされる。

〇 千代田区条例は、条例で禁止する路上喫煙に対して過料を科すとしたことで、大きな注目を集めた。一般的に、「条例の刑罰規定は、違反は発生しているにもかかわらず、めったに適用されない。行政が告発をしたとしても、捜査と送致を担当する警察が、それほどの実質的可罰性のない刑罰規定の適用に消極的になることは、容易に想像できる。いわゆるポイ捨て禁止条例に規定される罰金規定が、典型的である。『実効性を期して罰則を規定した→しかし、警察が動かない→罰則規定が張子の虎と化している』という現象は、あちこちでみることができる。」(北村喜宣「条例の義務履行手法としての過料」(地方自治職員研修2003年4月号)20頁)とされるが、他方で「過料は、警察・検察に頼ることなく行政が自律的に適用できるものであり、行政が『その気』になりさえすれば、条例違反に対して効果的な執行をすることが可能となる。」(前記北村論文21頁)とされる。千代田区は、「パトロールは朝から夜まで年中無休で16名の巡回指導員(警察OB)が2名1組で交代勤務する」(中村司「過料―千代田区生活環境条例の場合」(自治体法務研究2006年秋号)78頁)などして、熱心に取締活動等を行い、一定の効果をあげているが、「義務履行確保の手段として過料は一定の有効性を有することが証明された。しかし、それは、経費と労力をかけて実際に徴収し、地域の方々の協力のもとに周知を図ったからこその総合的な成果であり、単に『過料を科します』だけによるものではない。」(前記中村解説79頁)としている。

〇 このように条例の実効性確保の手段としての過料については、「現場での過料徴収を積極的に行うことにより、実効性をかなりの程度確保している例も見られ、過料が有効に機能しうる分野がある」(宇賀克也「行政法概説T(第6版)」(有斐閣2019年)258頁)とされる。他方で、「コストという観点から見ると、千代田区のように人的・物的コストを相当程度負担し得る地方自治体であれば、過料規定を選択したうえで徹底した対策を行うことが可能であろうが、財政的に余裕のない地方自治体においてはこのような対策は採れない以上、刑罰規定の選択も考慮されるべきことになろう。」(深町晋也「路上喫煙条例・ポイ捨て禁止条例と刑罰論―刑事立法学序説―」(立教法学79号 2010年)85頁)との見方もある。例えば、「路上喫煙についても罰金による規制を導入した神奈川県小田原市では、罰金を選択した理由として、小田原市のようなさほど規模が大きくない地方自治体にとっては過料を確実に徴収するとすれば、パトロール費用などのコストが大きすぎるという点を挙げている。」(前記深町論文注(78) 83頁)とされる。

  過料を科す方法として、指定都市や東京都23区ではすべて直罰方式とし、人口規模が大きくない都市は間接罰方式を採るものが多いのも、路上喫煙等を現場で取り締まったうえで違反行為に対してその場で過料を科すことのコストが考慮されていると考えることができよう。なお、令和元年度の過料件数は、千代田区は4090件(前記千代田区HP「路上喫煙過料処分件数」)、大阪市は3999件、横浜市は1146件、神戸市は900件、京都市は825件(指定都市については、前記大阪市「配布資料」)となっている。

  また、過料の執行面の課題として、「例えば、納付書による納付の収入率が低いことである。督促をしたりしているが、2000円のための滞納処分はできない。公平性を保つためにも、収納率を上げることは必要であるが、このあたりにも過料処分の限界がある。」(前記中村解説79頁)、「後日納付を希望する違反者が虚偽の住所氏名を申告すれば実際には徴収できないし、処分の際に逃亡すればそれまでである。これは、過料制度そのもの持つ限界である。」(前記北村論文22頁)等が指摘されている。

  なお、前記深町論文は、「路上喫煙の規制とは、まさしく『喫煙者』のみを狙い撃ちする規制に他ならず、刑罰としての罰金を科すことについては強い抵抗感が生じるがゆえに、行政罰としての過料を科すに留まる条例が多いということになる。」(67頁)としている。

〇 「路上喫煙を禁止する条例」で罰則規定を置かないものも少なくない。例えば、東京都特別区では、23区がすべて条例を制定しているものの、罰則規定を置いているのは約半数に過ぎない。また、東京都下の26市は、条例を制定しているのは18市で、このうち罰則規定を置いているのは14市であり、26市中罰則が定められているのは約半数となる。

  武蔵野市は、条例は制定しておらず、「武蔵野市ようこそ美しいまち推進事業実施要綱」(平成16年3月15日制定)を制定し、路上禁煙地区等を定めている。当然ながら、違反行為に対して罰則はない。このことについて、武蔵野市は「路上禁煙地区を設置する際に、路上喫煙に対して条例や罰則を設けている自治体の事例も検討しました。しかし、(1)支払いを拒否する場合でも強制力がないこと、(2)納付書に虚偽の名前を書いて支払いしない人がいる、(3)パトロールを実施して過料を徴収するには多額の費用がかかるなど、罰則を科す際の実効性に課題が多いため、制度導入を見送りました。このようなことから、市では、喫煙やたばこのポイ捨てについては、新たな条例等を制定し罰則を適用する規制強化よりも、市や市民団体、事業者等とともに、喫煙者自身のマナーに粘り強く訴える啓発活動に取り組んできました。路上禁煙地区の指定前より、歩きたばこやポイ捨てが大幅に減少しています。」(武蔵野市HP「路上喫煙に罰金制度はありますか」)としている。

  新宿区は、平成17年8月1日に改正施行された「新宿区空き缶等の散乱及び路上喫煙による被害の防止に関する条例」により、路上喫煙の禁止(8条1項)が定められた。空き缶等の投棄の禁止(7条)に関しては罰則規定(14条 2万円以下の罰金)があるものの、路上喫煙の禁止に関しては罰則規定を置いていない。新宿区は、路上喫煙禁止キャンペーン、路上喫煙禁止パトロール、路上喫煙禁止の表示物の掲示・啓発等の路上喫煙対策を講じており(新宿区HP「路上喫煙禁止の啓発活動」)、また、その効果を把握するため、路上喫煙率を平成17年6月から調査しているが、路上喫煙率は当初は4%以上あったのに対して、平成23年後以降は0.5%以下で推移している(新宿区HP「路上喫煙率調査」)としている。




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