エスカレーターの安全利用に関する条例
(令和6年12月2日更新)
【エスカレーターの歩行禁止を規定する条例】
〇 エスカレータ―の安全な利用の観点から、エスカレーターの歩行禁止を規定する条例が制定されている。令和6年12月1日時点で確認できる条例として、以下のものがある。
埼玉県 | 令和3年3月30日公布 | 令和3年10月1日施行 |
|
名古屋市 | 令和5年3月23日公布 | 令和5年10月1日施行 |
〇 なお、建築基準法34条1項は「建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁及び開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。」としたうえで、建築基準法施行令129条の12でエスカレーターの構造について規定しているが、法律や政令等で、エスカレーターの利用に関して規定するものは確認できない。
(埼玉県条例)
〇 埼玉県条例は、エスカレーターの歩行禁止を規定する条例としては、全国最初のものである。令和3年3月に、議員提案により、制定されている。
〇 埼玉県条例は、「エスカレーター(動く歩道を含む。以下同じ。)の安全な利用の促進に関し、県、県民及び関係事業者の責務を明らかにするとともに、エスカレーターの利用及び管理に関し必要な事項を定めることにより、エスカレーターの安全な利用を確保し、もって県民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与すること」(1条)を目的としている。
利用者の義務として「エスカレーターを利用する者・・・は、立ち止まった状態でエスカレーターを利用しなければならない。」(5条)と規定し、エスカレーターを立ち止まった状態で利用することを義務づけている。また、エスカレーターの管理者の義務として「エスカレーターを管理する者・・・は、その利用者に対し、立ち止まった状態でエスカレーターを利用すべきことを周知しなければならない。」(6条)と規定し、立ち止まった状態でのエスカレーターの利用を利用者に周知することを義務づけている。そのうえで、知事は、エスカレーターの管理者に対して、周知に関し指導、助言、勧告することができる(7条)としている。
罰則規定は置いていない。
〇 本条例の内容等については、埼玉県HP「エスカレーターの安全利用について」を参照されたい。
(名古屋市条例)
〇 名古屋市条例は、埼玉県条例に引き続き、令和5年3月に、市長提案により制定されている。
〇 名古屋市条例は、「エスカレーターの利用等に関し必要な事項を定めることにより、エスカレーターの安全な利用の促進を図り、もって市民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与する」(1条)を目的としている。
利用上の義務として「利用者は、右側か左側かを問わず、エスカレーターの踏段(人を乗せて昇降する部分をいう。)上に立ち止まらなければならない。」(8条)と規定するとともに、利用方法の周知義務として「管理者等は、利用者に対し、前条に規定する方法によりエスカレーターを利用するよう周知しなければならない。」(9条)と規定し、そのうえで、市長は、管理者等に対して、必要な指導、助言を行うことができる(10条)としている。
罰則規定は置いていない。
〇 本条例の内容等については、名古屋市HP「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」を参照されたい。
【エスカレーターの安全利用の呼びかけについて】
〇 消費者庁は、同庁HP「エスカレーターでの事故に御注意ください!」において、「平成27年6月26日、消費者安全調査委員会は、『平成21年4月8日に東京都内で発生したエスカレーター事故』に関する事故等原因調査報告書を公表しました。報告書では、事故の発生を防止するためには、利用者自らもリスクを認識し利用することが重要であるとされています。消費者庁及び国民生活センターでは、エスカレーターの利用に際し、消費者の皆様に気を付けていただきたい点(エスカレーターでの歩行を避けるなどの配慮等)について、注意喚起を行っています。」として、エスカレーターでの歩行を避けることも含めて、エスカレーターの安全利用について呼び掛けている。
また、消費者庁ニュースリリース(平成27年7月22日)「エスカレーターでの事故に御注意ください!」では、「東京消防庁管内において、平成23年から平成25年までの3年間で3865人が、エスカレーターでの事故により救急搬送されています。転んだり落ちたりといった事故から身を守るために、エスカレーターでは手すりにつかまりましょう。また、エスカレーターの安全基準は、ステップ上に立ち止まって利用することを前提にしています。エスカレーター上の歩行は、すり抜けざまに他の利用者と接触するおそれがあります。子供・高齢者・体の不自由な人など様々な人が利用していることを認識し、なるべく歩行を避けるなどの配慮をしましょう。」として、エスカレーターでは手すりにつかまること及び歩行を避けることについて、注意を促している。
〇 日本エレベーター協会も、同協会HP「エスカレーターのご利用について」において、歩行禁止等について呼び掛けている。「バランスを崩したり、つまずいたりして、転送するおそれがあります。また、他の利用者に接触して転倒させたりするおそれがあります。」としたうえで、「当協会、鉄道事業者などでは、エスカレーターの歩行禁止を呼びかけています。」としている。
なお、日本エレベーター協会「エスカレーターにおける利用者災害の調査報告(第9回)」によると、平成30年1月から令和元年12月までの2年間で、エスカレーターにおける利用者災害の発生件数は1550件で、災害発生場所は交通機関が734件、ショッピングセンターが353件、百貨店が120件などであり、災害発生原因は乗り方不良が805件、酔っ払い153件、キャリーバッグ122件などとなっている。同報告書は、交通機関における事故が多く、また、乗り方不良(手すりを持たず転倒する、踏段上を歩行しつまずき転倒するなど)が原因の事故が多いが、従前に比べて減少傾向にあり、これまでのキャンぺーン等の効果が推測されるとし、引き続きキャンぺーン等の取り組みを進めることが有効であるとしている。
メーカーにおいても、そのホームページで、エレベーターの安全利用について呼び掛けているものがある(日立ビルシステムHP「エスカレーターを歩行することの危険性について」)。