公衆浴場の混浴年齢を定める条例
(令和6年10月25日更新)
【混浴制限年齢に係る国の通知等】
〇 令和3年に入り、公衆浴場の混浴制限年齢を引き下げる条例改正の動きが出てきた。
〇 この動きの契機となったのは、令和2年12月10日付け厚生労働大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知「公衆浴場における衛生等管理要領等の改正について」である。同通知は、都道府県知事、保健所設置市市長及び特別区区長宛てに、以下の内容を通知している。
「公衆浴場の衛生及び風紀については、公衆浴場法(昭和23年法律第139号)第3条第1項において、営業者が必要な措置を講じることとされ、また、同条第2項において、都道府県等が当該措置の基準を条例で定めることとされています。
また、「公衆浴場における衛生等管理要領等について」(平成12年12月15日付け生衛発第1811号厚生省生活衛生局長通知)の別添2「公衆浴場における衛生等管理要領」及び別添3「旅館業における衛生等管理要領」においては、男女の混浴制限年齢の目安を示しています。
今般、「子どもの発育発達と公衆浴場における混浴年齢に関する研究」(令和元年度厚生労働科学特別研究事業)の研究成果や、本改正に係るパブリックコメントの結果等を踏まえ、公衆浴場における衛生等管理要領等に定める男女の混浴制限年齢の目安等を別紙のとおり改正しました。
改正内容についてご留意いただくとともに、本改正を踏まえ条例等を改正する場合には、地域住民等への影響を考慮し、十分な周知期間を確保していただきますようお願いいたします。
なお、本通知は、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言である旨申し添えます。」
である。
〇 公衆浴場法法3条1項は「営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。」としているが、この規定の「風紀に必要な措置」とは「主として男女の混浴の禁止を意味する」(昭和39年5月12日付け厚生省環境衛生局長通知「公衆浴場における風紀の問題について」)と解されている。
また、同条2項は「前項の措置の基準については、都道府県が条例で、これを定める。」としているが、2条3項において「都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあっては、市又は特別区。以下同じ。)」との読み替え規定を置いており、3条2項に規定する基準に関する条例は、都道府県、保健所設置市及び特別区が制定することとされている。
厚生労働省は、従前から、公衆浴場に関する衛生管理の指導に当たっての指針として(前記平成12年12月15日付け厚生省生活衛生局長通知)、「公衆浴場における衛生等管理要領」(以下、「管理要領」という。)を示してきており、男女の混浴制限年齢に関しては、この管理要領の「III 衛生管理、第1 一般公衆浴場、9 入浴者に対する制限(1)」において、「おおむね10歳以上の男女を混浴させないこと。」としてきた。前記令和2年12月10日付け厚生労働大臣官房生活衛生・食品安全審議官通知は、これを「おおむね7歳以上の男女を混浴させないこと。」と改正したことを関係自治体に示したものである。男女混浴制限年齢を従前の「おおむね10歳以上」を「おおむね7歳以上」に変更したものである。
〇 この管理要領改正の根拠の一つとして、同通知は、令和元年度厚生労働科学特別研究事業として「子どもの発育発達と公衆浴場における混浴年齢に関する研究」報告書が令和2年7月に取りまとめられたことを掲げている。
同報告書は、「本研究では、公衆浴場で子どもや親や一般の入浴者すべてが安心して入浴できる、子どもの適正な混浴年齢に関するデータを多面的に収集することを目的とした。地方自治体が定める条例内容の調査、入浴者の混浴に関する意識調査、公衆浴場を営業する者へのトラブル事例の調査、園児や児童の性に関する意識や実態に関する調査をそれぞれ実施した。」とし、「この調査の結果、成人の考える子どもの混浴禁止とすべき年齢は『6歳から』がピークで次いで『7歳から』であり、子どもがはずかしいと思いはじめた年齢も6歳と7歳が相対的に高く、公衆浴場事業者が考える混浴を禁止とすべき年齢は7歳の割合が最も高いことが明らかとなった。また、幼稚園教諭からは、4~5歳の時期に性の意識の芽生えがあるという意見も得た。」としている。そのうえで、「これらのことを総合的に踏まえると、混浴禁止は6歳以上(ただし6歳でも小学校入学前は可)とすることが妥当であると考えられる。」と結論付けている。
同報告書では、混浴制限年齢を「6歳以上(ただし6歳でも小学校入学前は可)」と提言しているが、管理要領(改正後)は「おおむね7歳以上」としている。
【条例で定める各自治体の混浴制限年齢-令和3年1月1日時点】
〇 前記の通り、都道府県、保健所設置市及び特別区は、公衆浴場法2条3項及び3条2項に基づき、公衆浴場の「配置の基準」及び「衛生及び風紀に必要な措置の基準」を、条例で定めることされている。令和3年1月1日現在、47都道府県、85保健所設置市(20指定都市、60中核市、その他5市(小樽市、町田市、藤沢市、茅ヶ崎市、四日市市))、23特別区のすべてで、条例が制定されている。名称は、「公衆浴場法施行条例」とするものが多いが、「公衆浴場条例」、「公衆浴場に関する条例」、「公衆浴場法基準条例」、「公衆浴場の設置場所の配置及び衛生措置等の基準に関する条例」等とするものもある。
〇 これらの155団体の条例が、混浴制限年齢をどのように定めているかは、令和3年1月1日時点では、以下の通りであった。
7歳以上(2団体) |
(都道府県)京都府 |
(指定都市)京都市 |
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8歳以上(14団体) |
(都道府県)愛知県、滋賀県、鳥取県、熊本県、宮崎県 |
(指定都市)名古屋市、熊本市 |
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(中核市)豊橋市、岡崎市、豊田市、大津市、和歌山市、鳥取市、宮崎市 |
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10歳以上(100団体) |
(都道府県)北海道、青森県、宮城県、秋田県、茨城県、群馬県、埼玉県、東京都、神奈川県 |
(指定都市)札幌市、仙台市、さいたま市、横浜市、川崎市、相模原市、静岡市、浜松市 |
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(中核市)函館市、旭川市、青森市、八戸市、秋田市、水戸市、前橋市、高崎市、川越市 |
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(特別区)千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区 |
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(その他)小樽市、町田市、藤沢市、茅ヶ崎市、四日市市 |
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12歳以上(8団体) |
(都道府県)岩手県、山形県、栃木県、岐阜県 |
(中核市)盛岡市、山形市、宇都宮市、岐阜市 |
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条例に規定せず(31団体) |
(都道府県)福島県、千葉県、新潟県、大阪府、奈良県、島根県、広島県、山口県、佐賀県 |
(指定都市)千葉市、新潟市、大阪市、堺市、広島市 |
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(中核市)福島市、郡山市、いわき市、船橋市、柏市、高槻市、東大阪市、豊中市、枚方市 |
〇 以上のうち、富山県、兵庫県及び富山市は、混浴制限年齢は条例での委任を受け規則で定めている(富山県公衆浴場基準条例4条5号・富山県公衆浴場法施行規則5条、(兵庫県)公衆浴場法基準条例4条1項・(兵庫県)公衆浴場規則別表 第一 8(2)、富山市公衆浴場法施行条例4条5号・富山市公衆浴場法施行細則9条6項)。いずれも規則で混浴制限年齢を10歳以上としている(なお、富山県及び富山市は規則を令和3年7月1日改正施行し、兵庫県は規則を令和6年4月1日改正施行して、混浴制限年齢を従前の10歳以上から7歳以上に引き下げている。)。
〇 香川県は公衆浴場に対する措置の基準等に関する条例を令和2年3月24日改正公布、高松市は高松市公衆浴場法施行条例を令和2年3月30日改正公布により、混浴制限年齢を12歳以上から10歳以上に引き下げた(香川県、高松市ともに令和2年4月1日改正施行。なお、香川県、高松市ともに、令和5年4月1日改正施行により、混浴制限年齢を従前の10歳以上から7歳以上に引き下げている。)。
また、北海道は公衆浴場法施行条例を令和2年10月13日改正公布、札幌市は札幌市公衆浴場法施行条例を令和2年12月10日改正公布、函館市は函館市公衆浴場法施行条例を令和2年12月8日改正公布、小樽市は小樽市公衆浴場法施行条例を令和2年12月22日改正公布、旭川市は旭川市公衆浴場法施行条例を令和2年9月15日改正公布により、混浴制限年齢を12歳以上から10歳以上に引き下げた(北海道、札幌市、函館市及び旭川市は令和3年1月1日改正施行、小樽市は令和3年4月1日改正施行。なお、北海道、札幌市、函館市、旭川市、小樽市ともに、令和5年4月1日改正施行により、混浴制限年齢を従前の10歳以上から7歳以上に引き下げている。)。なお、令和2年度第1回北海道公衆浴場問題協議会(令和2年4月28日開催)では、「現行の道条例では、『12歳以上の男女を混浴させないこと』とされているが、昨今の子どもの成育状況や、混浴年齢に関する利用者からの問い合等が多数あることを考慮し、条例における混浴年齢の規定を改めるべきと考える。」との意見が出され、「条例で規定された混浴の制限年齢について、改正を検討していく。」(同協議会「議事概要」)とされていた。
〇 上記の状況を見る限り、同一都道府県内においては、都道府県と関係市は、混浴制限年齢に関して同様の定めをしている。
〇 なお、条例で混浴制限年齢を定めていない団体であっても、例えば、大阪府は、公衆浴場衛生等管理要領により、混浴制限年齢を10歳以上としている(大阪府は、令和3年3月31日に要領を改正し、混浴制限年齢を従前の10歳以上から7歳以上に引き下げている。)。
【条例で定める各自治体の混浴制限年齢-令和3年3月31日以降】
〇 前記厚生労働省の通知を受け、条例等を改正し、混浴制限年齢を引き下げる自治体が少なくない。令和6年10月1日時点で、既に条例改正等をして、混浴制限年齢を引き下げた自治体として確認できるものとして、以下のような団体がある。
すべての団体が、混浴制限年齢を7歳以上に引き下げている。
令和3年3月31日施行 | (都道府県)大阪府(要領改正) |
令和3年4月1日施行 | (都道府県)徳島県 |
令和3年7月1日施行 | (都道府県)茨城県、富山県(規則改正)、石川県、福岡県、長崎県、鹿児島県、沖縄県 |
令和3年10月1日施行 | (指定都市)仙台市 |
令和3年12月1日施行 | (その他) 茅ケ崎市 |
令和4年1月1日施行 | (都道府県)栃木県、東京都、愛媛県、大分県 |
令和4年4月1日施行 | (都道府県)秋田県、岐阜県、和歌山県 |
令和4年6月1日施行 | (都道府県)山形県 |
令和4年7月1日施行 | (都道府県)岩手県、福井県、三重県 |
令和4年9月26日施行 | (その他) 藤沢市 |
令和4年10月1日施行 | (都道府県)青森県、埼玉県、神奈川県、山梨県 |
令和5年4月1日施行 | (都道府県)北海道、岡山県、香川県、高知県 |
令和5年10月1日施行 | (都道府県)群馬県、静岡県 |
令和6年4月1日施行 | (都道府県)宮城県、兵庫県 |
令和6年7月1日施行 | (中核市) 西宮市 |
令和6年10月1日施行 | (都道府県)長野県 |
【条例で定める各自治体の混浴制限年齢-令和6年7月1日時点】
〇 上記の各自治体における条例改正・規則改正の結果、令和6年10月1日時点で確認できる各自治体の混浴制限年齢は、以下の通りである。
また、令和3年4月1日に松本市及び一宮市が中核市に移行している。
7歳以上(110団体) |
(都道府県)北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県 |
(指定都市)札幌市、仙台市、さいたま市、横浜市、川崎市、相模原市、静岡市、浜松市、京都市 |
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(中核市)函館市、旭川市、青森市、八戸市、盛岡市、秋田市、山形市、水戸市、宇都宮市、前橋市 |
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(特別区)千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、品川区、目黒区 |
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(その他)小樽市、町田市、藤沢市、茅ヶ崎市、四日市市 |
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8歳以上(15団体) |
(都道府県)愛知県、滋賀県、鳥取県、熊本県、宮崎県 |
(指定都市)名古屋市、熊本市 |
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(中核市)豊橋市、岡崎市、豊田市、一宮市、大津市、和歌山市、鳥取市、宮崎市 |
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10歳以上(1団体) |
(中核市)姫路市 |
条例に規定せず(31団体) |
(都道府県)福島県、千葉県、新潟県、大阪府、奈良県、島根県、広島県、山口県、佐賀県 |
(指定都市)千葉市、新潟市、大阪市、堺市、広島市 |
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(中核市)福島市、郡山市、いわき市、船橋市、柏市、高槻市、東大阪市、豊中市、枚方市 |