県産木材等の利用促進に関する条例
(令和7年3月24日更新)
【都道府県の条例】
〇 地域で生産された木材等の利用促進を主たる目的とする条例が、近年、都道府県を中心に、主として議員提案により、相次いで制定されている。「県産材利用促進条例」、「県産木材利用促進条例」等とする条例である。
令和7年3月10日時点で、25府県で制定されている。以下の条例である。
徳島県 | 平成24年12月21日公布 | 平成25年4月1日施行 |
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茨城県 | 平成26年3月26日公布 | 平成26年4月1日施行 |
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秋田県 | 平成28年3月15日公布 | 平成28年4月1日施行 |
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富山県 | 平成28年9月30日公布 | 平成28年9月30日施行 |
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岡山県 | 平成29年3月21日公布 | 平成29年4月1日施行 |
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高知県 | 平成29年3月24日公布 | 平成29年4月1日施行 |
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兵庫県 | 平成29年6月12日公布 | 平成29年6月12日施行 |
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福井県 | 平成29年7月14日公布 | 平成29年7月14日施行 |
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栃木県 | 平成29年10月18日公布 | 平成29年10月18日施行 |
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香川県 | 平成29年12月22日公布 | 平成30年4月1日施行 |
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石川県 | 平成30年6月25日公布 | 平成30年6月25日施行 |
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広島県 | 平成30年10月9日公布 | 平成30年10月9日施行 |
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群馬県 | 平成30年12月25日公布 | 平成31年4月1日施行 (一部 令和2年4月1日施行) |
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愛媛県 | 平成30年12月25日公布 | 平成30年12月25日施行 |
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新潟県 | 平成30年12月27日公布 | 平成30年12月27日施行 |
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岩手県 | 平成31年3月26日公布 | 平成31年4月1日施行 |
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山梨県 | 平成31年3月29日公布 | 平成31年3月29日施行 |
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奈良県 | 令和2年3月30日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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三重県 | 令和3年3月23日公布 | 令和3年4月1日施行 (一部 令和3年10月1日施行) |
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宮崎県 | 令和3年3月24日公布 | 令和3年3月24日施行 |
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愛知県 | 令和3年10月15日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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京都府 | 令和4年3月18日公布 | 令和4年4月1日施行 (一部 令和4年10月1日施行) |
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岐阜県 | 令和4年12月20日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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滋賀県 | 令和5年3月22日公布 | 令和5年3月22日施行 |
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長野県 | 令和7年3月10日公布 | 令和7年3月10日施行 |
〇 最初に制定されたのは、平成24年の徳島県条例である。その後、平成26年に茨城県条例、平成28年に秋田県及び富山県の条例が制定され、平成29年には岡山県、高知県、兵庫県、福井県、栃木県及び香川県の条例、平成30年に石川県、広島県、群馬県、愛媛県及び新潟県の条例、平成31年に岩手県及び山梨県の条例、令和2年に奈良県条例、令和3年に三重県、宮崎県及び愛知県の条例、令和4年に京都府及び岐阜県の条例、令和5年に滋賀県条例、令和7年の長野県条例が制定されている。
徳島県、奈良県及び岐阜県の条例は知事提案によるものであるが、他の22条例は議員提案によるものである。
〇 こうした条例を制定する背景・理由については、すべての条例が前文で述べている。例えば、徳島県条例は、「温暖な気候の下、県土の約八割を山地が占め、その山々を縫うように河川が流れる豊かな自然の中で、私たちは、森林から木材、清らかな水等の多くの恩恵を受けながら生活している。しかしながら、戦後に植林された森林の多くが木材として利用可能な段階を迎えたにもかかわらず、長期にわたる木材価格の低迷が林業の衰退及び森林管理の停滞を招き、森林の有する多面的機能の低下が懸念される状況にある。」としたうえで、「県民等においては、地球温暖化の進行に伴い、森林及び林業の重要性に対する意識が高まってきており、森林の有する多面的機能への理解が深まりつつある。」とし、「ここに、私たちは、本県の有する豊富で貴重な森林という資源の重要性を認識し、そこから生産される県産材を積極的に利用することで、豊かな自然に囲まれた郷土を維持し、森林がもたらす多くの恩恵を将来の県民に継承していくことを決意し、この条例を制定する。」としている。
〇 平成22年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(平成22年5月26日公布、同年10月1日施行)が制定された。同法は、公共建築物における木材の利用の促進を目的とし、「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」の策定を国に義務づけ(改正前7条)、都道府県と市町村は任意(改正前8条、同9条)とした。
そうした結果「公共建築物の床面積ベースの木造率は、法制定時の8.3%から令和元年度には13.8%に上昇」しているものの、他方「民間建築物については、木造率の高い低層の住宅以外にも木材の利用の動きが広がりつつあるものの、非住宅分野や中高層建築物の木造率は低位にとどまって」おり(林野庁HP「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律(通称:都市(まち)の木造化推進法)」)、そのため、同法は、令和3年10月1日に改正施行され、法律の対象が公共建築物のみならず民間の建築物にも拡大され、法律名も「脱炭素社会の実現に資するための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」と改められた。「建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」の策定が国に義務づけられ(改正後10条)、都道府県と市町村は任意(改正後11条、同12条)としている。
木材利用の促進に関する国の取組みにについては、林野庁HP「木材の利用の促進について」を、我が国における木材利用の動向等については「令和5年度森林・林業白書」の「第3章第2節 木材利用の動向」を参照されたい。
〇 愛知県、京都府、岐阜県、滋賀県及び長野県の条例を除く各条例は、平成22年10月の法施行後、令和3年10月の法改正施行前に制定されているが、木材利用の促進の対象を公共建築物に限定していない(愛知県、京都府及び岐阜県の条例も、他の条例と同様、対象を公共建築物に限定していない。)。それ以外の分野(公共建築物以外の建築物、建築物以外の工作物、製品、エネルギー等)も含め、幅広い分野における木材利用の促進を図ることを目的としている。
〇 利用促進の対象となる木材は、「県内で生産された木材」(徳島県、茨城県、富山県、岡山県、高知県、兵庫県、福井県、栃木県、香川県、石川県、愛媛県、新潟県、山梨県、奈良県、三重県、岐阜県、滋賀県及び長野県の条例)、「県内で生産又は加工された木材」(広島県、群馬県、岩手県、宮崎県及び愛知県の条例)または「府内の森林において法令に適合して伐採された樹木を材料とする木材」(京都府条例)としている。なお、秋田県条例は、県産木材の利用の促進に関する規定(10条)を置いているものの、条例の対象とする木材は県産木材に限定していない。
〇 各条例は、県産木材等の利用促進に関する基本理念、県の責務、市町村の責務(役割、協力、支援等)、県民等の役割(協力)、林業事業者・木材産業事業者・建築関係事業者等の役割等について、規定している。また、ほとんどの条例は、県産木材等の利用促進に関する計画や指針の策定の規定を置くとともに、県産木材等の利用促進、安定供給、流通加工体制の整備、普及啓発等に関する基本的施策についても規定している。
〇 奈良県条例に関しては、同条例の附則で奈良県森林づくり並びに林業及び木材産業振興条例(平成22年3月26日公布、同年4月1日施行)が廃止され、また同時に奈良県森林環境の維持向上により森林と人との恒久的な共生を図る条例(令和2年3月30日公布、同年2年4月1日等施行)が制定されている。
〇 なお、三重県議会の「三重県産材利用促進に関する条例検討会」は、三重県条例制定のために20回にわたり会議を開催し、調査検討を行ったが、各会議の議事概要及び提出資料はホームページで公開している。公開されている資料のうち、第3回会議資料3「他県における県産材利用促進等に関する条例について」、第3回会議参考資料4、5-1、5-2「制定状況一覧及び構成比較」、第12回会議資料4「県産材(木材)利用促進に関する先進条例制定県に対する書面調査結果取りまとめ」、第14回会議参考資料「県産材等利用促進を主目的とする条例及び森林づくりに関する条例制定状況一覧(令和2年11月1日現在)」等は、令和2年以前に制定された各条例の内容、制定経緯等について整理しているので、参照されたい。
〇 高知県は、「高知県県産木材の供給及び利用の促進に関する条例」とは別に、令和5年3月に、
高知県 | 令和5年3月28日公布 | 令和5年4月1日施行 |
を制定した。
同条例は、木材を使用した非住宅建築物又は4階建て以上の住宅であって一定の要件に該当する「環境不動産」(2条1項)が、「県産木材の利用の増大及び環境への負荷の低減を図ることができる」(前文)ものであるとして、その建築の促進を図ることを目的としている。環境不動産の認定制度(10条)を規定し、認定を受けた環境不動産に対して容積率の緩和(11条)や不動産取得税の免除(12条)を行うこととしている。
環境不動産の認定制度については、高知県HP「「高知県環境不動産」の認定制度がスタートしました」を参照されたい。
【市町村の条例】
〇 市町村においても、地域で生産された木材等の利用促進を主たる目的とする条例が、制定されている。令和7年3月10日時点で施行されていることを確認できるのは、以下の条例である。
高知県梼原町 | 平成14年3月25日公布 | 平成14年4月1日施行 |
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高知県四万十町 | 平成22年3月16日公布 | 平成22年4月1日施行 |
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熊本県山江村 | 平成24年3月16日公布 | 平成24年4月1日施行 |
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宮崎県日南市 | 平成25年2月27日公布 | 平成25年4月1日施行 |
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香川県まんのう町 | 平成28年3月17日公布 | 平成28年4月1日施行 |
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宮崎県日之影町 | 令和元年6月14日公布 | 令和元年6月14日施行 |
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岩手県遠野市 | 令和3年3月15日公布 | 令和3年3月15日施行 |
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福島県いわき市 | 令和3年3月30日公布 | 令和3年4月1日施行 |
〇 梼原町、四万十町、山江村及び日之影町の条例は、市町村又は地域において生産される木材を使用して住宅等を建築した場合に、当該住宅等を建築した者に対して補助金を交付することを内容としている。各条例とも、一定以上の量の町産材等を使用することなどの条件を付している。
なお、梼原町は、平成12年に檮原町森林づくり基本条例を制定し、「町は、森林の有する経済的機能の高度発揮を図るため、木材その他の林産物が町内で加工され、利用されることを促進する施策を講ずる」(8条)等としており、こうした規定を踏まえ、平成14年に本条例を制定している。
〇 日南市、遠野市及びいわき市の条例は、豊かな森づくりの推進と併せて、地域で生産された木材等の利用促進を図ることを目的としている。日南市条例は、議員提案により制定されており、基本理念、市及び森林組合の責務、森林所有者、市民並び林業及び木材産業等事業者の役割等を規定している。遠野市条例及びいわき市条例はともに、令和3年3月に制定されており、基本理念、市の責務、森林所有者、林業事業者、木材産業事業者、建築関係事業者等の役割、市民及び事業者の協力等のほか、市の基本的取組又は市による方針の策定、人材の確保・育成、普及啓発等を規定している。いわき市条例の内容等については、いわき市HP「いわき市豊かな森づくり・木づかい条例」を参照されたい。
〇 日之影町条例は、議員提案により令和元年6月に制定されており、基本理念、町の責務、森林所有者、林業事業者及び木材産業事業者、建築関係事業者並びに町民等の役割等について、規定している。
〇 地域で生産された木材等の利用促進を主たる目的とする条例ではないが、木の文化都市の継承及び創出の推進を目的に、民間施設や公共施設に積極的に木の利用を促進すること等を規定する条例がある。
石川県金沢市 | 令和4年3月4日公布 | 令和4年4月1日施行 |
である。
金沢市条例は、「木の文化都市」を「都市固有の歴史及び自然と調和した木の文化を有し、かつ、木が持つ環境保全機能、再生可能な循環資源としての性質、安らぎや癒しを与える効用等の様々な優れた特性をまちづくりに生かした持続可能な仕組みを備える都市」(2条1号)と定義づけたうえで、「木の文化都市の継承と創出に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって本市固有の歴史、文化及び自然と調和した品格と魅力のある持続可能な都市の実現に寄与すること」(1条)を目的としているが、基本的な施策として、日常生活及び事業活動の中での木の利用(11条)、民間施設等における木の利用等の促進(12条)、市の施設における積極的な木の利用等(13条)等を規定している。
【森林づくり条例や地球温暖化防止条例等に木材利用の促進に関する規定を置いているもの】
〇 地域で生産された木材等の利用促進を主たる目的とする条例以外の条例で、県産木材等の利用促進を規定するものも少なくない。
〇 森林づくり条例、森づくり条例など森林や林業に関する施策の推進に関する条例が制定されているが、こうした条例の多くは、何らかの形で県産木材等の利用促進を規定している。この状況については「森林づくりに関する条例」で述べているので、参照されたい。
なお、「森林を活かす都市の木造化推進協議会」は、「木材利用促進条例」として、上記の24府県の県産木材等の利用促進に関する条例に加え、山形県の「山形県の豊かな森林資源を活用した地域活性化条例」、鹿児島県の「森林資源の循環利用の促進に関するかごしま」及び宮城県の「みやぎ森と緑の県民条例」をあわせた27条例を掲げている(山形県、鹿児島県及び宮城県の3条例については、「森林づくりに関する条例」を参照のこと)。
〇 また、いわゆる地球温暖化対策条例(脱炭素社会を目指す条例を含む)でも、特に都道府県の条例の多くは、森林が温室効果ガスの吸収作用を有することを踏まえ、森林の保全や整備とともに、県産木材等の利用促進に関する規定を置いている。具体的には、北海道、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、山梨県、岐阜県、愛知県、滋賀県、京都府、和歌山県、鳥取県、徳島県及び熊本県の条例である(個々の条例については「脱炭素社会を目指す条例と地球温暖化対策条例」を参照されたい。)。例えば、和歌山県地球温暖化対策条例は、8章「森林の保全及び整備等に関する地球温暖化対策」として、「事業者、県民及び環境保全活動団体は、連携し、及び協働して、森林の適切な保全及び整備並びに紀州材その他の森林資源の利用の推進に努めるものとする。」(22条1項)及び「県は、森林の持つ温室効果ガスの吸収作用及び固定作用に関する事業者及び県民の理解を深めるため、情報提供その他の措置を講ずるよう努めるものとする。」(同条2項)と規定している。
地球温暖化対策条例のうち、市町村の条例でも、京都市地球温暖化対策条例は「特定建築主は,特定建築物又はその敷地内における土地に定着する工作物に別に定める量以上の地域産木材・・・を利用しなければならない。」(53条)、さがみはら地球温暖化の防止に向けた脱炭素社会づくり条例は「市は、事業者、市民及び民間団体と連携し、及び協働して、市内で生産された木材その他の森林資源の利用の推進に努めるものとする。」(26条2項)、白山市地球温暖化対策条例は「事業者及び市民は、連携し、及び協働して、森林の適切な整備及び保全並びに森林資源の利用の推進に努めなければならない。」(20条2項)と規定している。