水産振興に関する条例
(令和6年12月11日更新)
【はじめに】
〇 水産振興に関して、基本理念、自治体の責務、水産業者や住民の役割、基本的施策等を規定する条例(以下、「水産振興に関する条例」という)が、近年、静岡県、三重県、山形県、明石市、愛媛県で相次いで制定されている。すなわち、静岡県は平成31年3月に静岡県水産振興条例を、三重県は令和2年3月に三重県水産業及び漁村の振興に関する条例を、山形県は令和3年3月に山形県水産振興条例を、兵庫県明石市は令和5年3月に明石市豊かな海づくり条例を、愛媛県は令和6年10月にえひめの豊かな海と漁業を育む水産振興条例を制定した。
それでは、こうした水産振興に関する条例は、他にどのような自治体で制定されているのだろうか。調べてみると、意外なほどに極めて少ない。都道府県では、平成14年3月に北海道が北海道水産業・漁村振興条例を、平成15年に3月に宮城県がみやぎ海とさかなの県民条例を、市町村では、北海道釧路市が平成17年10月に釧路市水産業振興条例を、高知県奈半利町が平成19年9月に奈半利町水産業振興条例を制定しているのが確認できる(市町村の条例は、これまで市町村合併により廃止された条例もあるものと考えられるが、ここでは現在施行されている条例で確認できるもの)程度である。
以下、これらの条例を紹介する。
【都道府県の条例】
北海道 | 平成14年3月29日公布 | 平成14年3月29日施行 |
|
宮城県 | 平成15年3月20日公布 | 平成15年4月1日施行 |
|
静岡県 | 平成31年3月26日公布 | 平成31年3月26日施行 |
|
三重県 | 令和2年3月24日公布 | 令和2年4月1日施行 |
|
山形県 | 令和3年3月19日公布 | 令和3年3月19日施行 |
|
愛媛県 | 令和6年10月18日公布 | 令和6年10月18日施行 |
〇 いずれの条例も、前文を付し、基本理念を定め、道県の責務、水産業者等の役割(責務)、道県民等の役割を明らかにし、知事に計画(北海道は「振興推進計画」、宮城県、静岡県、三重県及び愛媛県は「基本計画」、山形県は「振興計画」)の策定を義務づけ、基本的施策を規定している。
北海道及び三重県の条例は、水産業の振興のみならず、漁村の振興を図ることを目的としている。
水産業を、宮城県、静岡県、山形県及び愛媛県の条例は「漁業、水産加工業及び水産流通業」と定義づけ、三重県条例は「漁業及び水産加工業」と定義づけている。
〇 北海道、三重県及び山形県の条例は知事提案により制定され、宮城県、静岡県及び愛媛県の条例は議員提案により制定されている。
〇 基本理念と基本的施策については、例えば、
北海道条例は、基本理念として、・水域環境の保全を図りながら、水産資源の持続的な利用及び増大を旨として水産業の振興を推進すること、・収益性の高い健全な経営の確立及び組織の育成を旨として水産業の振興を推進すること、・漁村が水産業の健全な発展の基盤としての役割を果たすとともに多様な機能を発揮する地域として発展するよう、漁村の振興を推進することの3点を規定し(2条)、基本的施策として、水産資源の適切な管理、栽培漁業の推進、担い手の育成・確保、安定的な水産業経営の育成、協同組合組織の経営安定、安全かつ良質な水産物の安定的供給、水産物の競争力の強化、水産資源の生育環境の保全・創造、環境と調和した水産業の展開、快適で住みよい漁村の構築、活力のある漁村の構築、道民理解の促進、技術の向上などを規定している(8条~20条)。
山形県条例は、基本理念として、・水産資源の保存及び管理並びに水産動植物の増殖及び養殖を推進すること、・漁業の担い手の育成及び確保を図るとともに、県産水産物の付加価値を高めること、・県内外に良質で安全な県産水産物を流通させるための体制の強化及び県産水産物の評価の向上に取り組むこと、・漁村及び内水面漁業地域の振興を図ることの4点を規定し(3条)、基本的施策として、水産資源の維持増大、水産動植物の生育環境の保全・改善・創造、漁業の基盤整備、漁業の担い手の育成・確保、県産水産物の付加価値の向上、効率的かつ安定的な漁業経営の育成、県産水産物の流通の体制の強化・評価の向上、県産水産物の率先利用、漁村・内水面漁業地域の振興、水産に関する調査・技術開発の推進、県民理解の促進などを規定している(8条~18条)。
〇 北海道条例の内容等については北海道HP「北海道水産業・漁村振興条例」、宮城県条例の内容等については宮城県HP「「みやぎ海とさかなの県民条例」とは」を、山形県条例の内容等については山形県HP「山形県水産振興条例」を参照されたい。
【市町村の条例】
北海道釧路市 | 平成17年10月11日公布 | 平成17年10月11日施行 |
|
高知県奈半利町 | 平成19年9月28日公布 | 平成19年9月28日施行 |
|
兵庫県明石市 | 令和5年3月30日公布 | 令和5年4月1日施行 |
〇 釧路市条例は、市町村合併により旧釧路市の釧路市水産業振興条例(昭和45年制定)が廃止され、平成17年10月に制定されている。水産業者等に対する助成措置について規定している。
〇 奈半利町条例は、水産業の基本方向を規定するとともに、漁業者や漁業団体に対する助成措置を規定している。
〇 明石市条例は、「令和4年11月に全国豊かな海づくり大会兵庫大会が、明石市をメイン会場として開催されました。豊かな海づくりは、市民、水産業者等と市が共に理解を深め、相互に協力しながら、さまざまな取組を持続的に行っていく必要があります。」(明石市議会HP「明石市豊かな海づくり条例が制定されました」)として、議員提案により、制定された。
【参考までに】
〇 水産振興に関する条例を制定している上記の6道県及び3市町が、農業振興や林業振興(森林づくり)に関する条例を制定しているか否かを調べてみた。奈半利町、明石市及び愛媛県を除き、北海道、宮城県、静岡県、三重県、山形県及び釧路市は、農業振興、林業振興(森林づくり)及び水産振興に関する条例を、それぞれ別個に制定していることがわかる。以下の通りである。
北海道 |
平成9年4月3日公布 |
平成9年4月3日施行 |
|
平成14年3月29日公布 |
平成14年3月29日施行 |
||
平成14年3月29日公布 |
平成14年3月29日施行 |
||
宮城県 |
平成12年7月10日公布 |
平成12年7月10日施行 |
|
平成30年3月23日公布 |
平成30年4月1日施行 |
||
平成15年3月20日公布 |
平成15年4月1日施行 |
||
静岡県 |
平成17年12月26日公布 |
平成18年4月1日施行 |
|
平成17年12月26日公布 |
平成18年4月1日施行 |
||
平成31年3月26日公布 |
平成31年3月26日施行 |
||
三重県 |
平成22年12月28日公布 |
平成22年12月28日施行 |
|
平成17年10月21日公布 |
平成17年10月21日施行 |
||
令和2年3月24日公布 |
令和2年4月1日施行 |
||
山形県 |
平成13年10月12日公布 |
平成13年10月12日施行 |
|
平成28年12月27日公布 |
平成28年12月27日施行 |
||
令和3年3月19日公布 |
令和3年3月19日施行 |
||
北海道 釧路市 |
平成17年10月11日公布 |
平成17年10月11日施行 |
|
平成17年10月11日公布 |
平成17年10月11日施行 |
||
平成17年10月11日公布 |
平成17年10月11日施行 |
愛媛県は、農業振興に関する条例(「愛媛県の未来を創る農業・農村振興条例(令和3年3月26日公布・令和3年4月1日施行))は制定しているが、林業振興(森林づくり)に関する条例は制定していない。
〇 なお、同一条例で農林水産業の振興について規定している都道府県や市町村もある。令和6年12月1日時点で施行されていることが確認できるものは、以下の通りである。
(都道府県)
青森県 | 平成13年3月26日公布 | 平成13年3月26日施行 |
|
秋田県 | 平成15年3月11日公布 | 平成15年3月11日施行 |
|
徳島県 | 平成20年12月25日公布 | 平成21年4月1日施行 |
|
大分県 | 平成21年3月30日公布 | 平成21年4月1日施行 |
|
福岡県 | 平成26年12月25日公布 | 平成26年12月25日施行 |
|
岩手県 | 平成27年3月27日公布 | 平成27年4月1日施行 |
|
埼玉県 | 平成29年3月28日公布 | 平成29年3月28日施行 |
(市町村)
高知県高知市 | 昭和38年6月25日公布 | 昭和38年6月25日施行 |
|
香川県土庄町 | 昭和55年9月27日公布 | 昭和55年9月27日施行 |
|
熊本県芦北町 | 平成17年1月1日公布 | 平成17年1月1日施行 |
|
徳島県那賀町 | 平成17年3月1日公布 | 平成17年3月1日施行 |
|
北海道八雲町 | 平成17年12月20日公布 | 平成17年12月20日施行 |