終活支援に関する条例

(令和5年12月14日更新)

【神奈川県大和市の条例】

〇 神奈川県大和市は、いわゆる終活を支援するため、令和3年6月に、

神奈川県大和市

大和市終活支援条例

令和3年6月29日公布

令和3年7月1日施行

を、制定した。

〇 条例は、目的(1条)、定義(2条)、基本理念(3条)、市の責務(4条)、事業者の役割(5条)、市民の役割(6条)、基本的施策(7条)、財政上の措置(8条)及び委任(9条)の全9条から構成されている。

〇 「終活」を「自らの死と向き合い、自己の希望及び周囲の人々への影響を考慮したエンディング及び死後の手続に関する準備を行う活動」(2条1号)と定義づけたうえで、「終活支援に関する基本理念及び基本的施策を定めることにより、終活支援に関する施策の総合的な推進を図り、もって心豊かな市民生活の実現に寄与すること」(1条)を目的としている。

〇 基本理念として「市民が主体的に終活に取り組むことができる環境を構築すること」、「終活に関する市民のニーズを的確に把握し、時代に適合した多様な施策を行うこと」及び「市民それぞれの終活に対する考え方を尊重し、理解を深めること」を掲げる(3条)とともに、市が実施する基本的施策として「終活に関する相談支援」、「終活に関する情報の収集及び広報」、「終活に関するイベントの開催」、「市民が終活に取り組みやすい環境整備」等(7条)を規定している。

〇 大和市は、「高齢の一人暮らし世帯の割合が高い状況にあります。誰しも自分の死後のことに不安はあります。終活は、自らの死と死後への不安を軽減するための取り組み。終活に取り組む人を支援するために、終活支援条例を制定しました。」、「2016年からおひとりさまを支援する施策を本格化。これまでに積み上げてきた実績を踏まえて、おひとりさまなどの終活を継続的に支援していきます。」などとしている(大和市発行 やまとニュース100号「全国初 終活支援条例を制定」)。

 本条例については自治体法務研究2022年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「大和市終活支援事業」を、大和市の終活支援事業については大和市HP「おひとり様などの終活支援事業」を参照されたい。

〇 令和5年9月1日時点で、「終活」という用語を使用する法律は確認できない。

 条例では、大阪府の「いのち輝く人生のため「人生会議」を推進する条例」(令和4年12月23日公布・令和5年4月1日施行)が、前文で「自分らしい豊かな人生を全うする上で最も優先されるべきは本人の意思であり、「終活」やリビング・ウィル(事前指示書)への関心が高まっている。」と規定し、「終活」という用語を使用している。

〇 なお、自治体の終活支援事業については、神奈川県横須賀市の「エンディングプラン・サポート事業」及び「わたしの終活登録」の取組みがよく知られている。こうした横須賀市の取組みも含め自治体の終活支援事業について論じたものとして、八木橋慶一「地域福祉における「終活」支援と行政の役割ー横須賀市の事例からー」(地域政策研究(高崎経済大学地域政策学会)22巻4号 令和2年3月)、八木橋慶一「終活における行政の役割――実態と今後の展望」(都市問題 2023年8月号)、塩浜克也「終活事業と自治体」(法学セミナー「終活と法」2020年9月号)などがある。 



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