希少野生生物の保護に関する条例
(令和6年12月10日更新)
【希少野生生物の保護について】
〇 国内外の絶滅のおそれのある野生生物の種を保存するため、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(平成4年6月5日公布、平成5年4月1日施行。以下「種の保存法」という。)が制定されている。
種の保存法が保護の対象とする「希少野生動植物種」(4条2項)には、「国内希少野生動植物種」、「国際希少野生動植物種」及び「緊急指定種」がある。
このうち、「国内希少野生動植物種」は、「その個体が本邦に生息し又は生育する絶滅のおそれのある野生動植物の種であって、政令で定めるもの」(4条3項)であり、レッドリストに掲載されている絶滅のおそれのある種(絶滅危惧Ⅰ類、Ⅱ類)のうち、人為の影響により生息・生育状況に支障をきたしているものの中から指定されている。
「国際希少野生動植物種」は、「国際的に協力して種の保存を図ることとされている絶滅のおそれのある野生動植物の種(国内希少野生動植物種を除く。)であって、政令で定めるもの」(4条4項)であり、ワシントン条約(付属書Ⅰ掲載種)、二国間渡り鳥等保護条約・協定(通報種)に基づいて指定されている。
「緊急指定種」は「国内希少野生動植物種及び国際希少野生動植物種以外の野生動植物の種の保存を特に緊急に図る必要があると認めるとき」に環境大臣より指定される(5条)。
〇 種の保存法は、環境大臣は「希少野生動植物種保存基本方針」を策定する(6条)ものとし、国内希少野生動植物種に関しては、概ね以下のような規制措置や保護措置を定めている。
1 個体等の取扱いに関する規制(特定第一種及び特定第二種国内希少野生動植物種は、それぞれ一部のみ適用)
・捕獲等の禁止(9条)、学術研究等の場合の許可(10条)
・譲渡し等の禁止(12条)、学術研究等の場合の許可(13条)
・輸出入の禁止(15条)、販売目的の陳列・広告の禁止(17条)
・措置命令(11条、14条、16条、18条)、報告聴取・立入検査(19条)
2 特定国内種事業(特定第一種国内希少野生動植物種の譲渡し等の事業)の規制
・届出、遵守事項、指示、報告聴取・立入検査(30条~33条)
3 生息地等保護区
・生息地等保護区の指定(36条)
・管理地区の指定・一定の行為に対する許可(37条)、立入制限地区の指定(38条)
・監視区域の指定・一定の行為に対する届出(39条)
・措置命令、報告聴取・立入検査、実地調査、損失補償等(40条~44条)
4 保護増殖事業
・保護増殖事業計画、認定保護増殖事業、土地への立入り等、損失補償等(45条~48条の3)
5 罰則(57条の2~66条)
〇 種の保存法の概要については環境省HP「種の保存法の概要」を、希少な野生動植物種の保全に関する国の取組み等については環境省HP「希少な野生動植物種の保全」を参照されたい。
〇 絶滅のおそれのある野生生物について、そのリストである「レッドリスト」を、国際的には国際自然保護連合 (IUCN)が作成しており、国内では、環境省等が作成をしている。なお、レッドリストの解説として掲載種の生息状況等をとりまとめ編纂した書籍は「レッドデータブック」と呼ばれる。
環境省は、令和元年度にレッドリスト2020を公表し、3716種の絶滅危惧種を掲載し、また、これとは別に平成29年3月に取りまとめた環境省版海洋生物レッドリストでは、56種の絶滅危惧種を掲載している。これらを合わせると、環境省が選定する我が国の絶滅危惧種は合計で3772種となっている(環境省HP「レッドリスト・レッドデータブック」参照)。これらの絶滅危惧種のうち、令和6年2月現在、種の保存法に基づく「国内希少野生動植物種」として、448種が指定されている(環境省HP「国内希少野生動植物種一覧」参照)。
環境省とは別に、全国の自治体においても、地域における絶滅危惧種について、独自にレッドリストなりレッドデータブックを作成している。作成の状況等について、「地方版レッドデータブックの編纂は、1995年(平成7年)に神奈川県と三重県で出版されたのが初めです。国(環境省)の出版から5年を経過するなかで、地方自治体ではそれぞれの地域性を配慮しながら、独自のレッドデータブックを編纂し、公表するようになりました。この1995年から10年が経過した2005年(平成17年)には全国すべての都道府県でレッドデータブック(あるいはリスト)の公表が終了しており、また名古屋市や松山市などのように、市町村のレッドデータブックを作成しているところもあります。」(日本のレッドデータ検索システムHP「レッドデータブックの歴史」)とされる。都道府県では全団体でレッドデータ又はレッドデータブックが作成されており、その一覧表については全国レッドデータ検索システムHP「地方版レッドデータブックの一覧」において掲載されている。
〇 地方自治体でおいても、地域における絶滅危惧種を保護するため、条例を制定して、種の保存法で規制される希少野生動植物種以外のものを自治体独自に希少野生動植物種等として指定したうえで、捕獲等や譲渡し等を規制し、また、生息地を保護するなどの規定を定めることが少なくない。本稿では、こうした条例を「希少野生生物の保護に関する条例」とする。単独条例が多いが、自然環境の保全に関する条例や生物多様性の保全に関する条例等において希少野生動植物種等について指定、規制、保護等の規定を置いているものもある。
以下、都道府県と市町村とに分けて、希少野生生物の保護に関する条例を概観する。
【都道府県の条例】
〇 令和6年12月1日時点で、36都道府県が希少野生生物の保護に関する条例を制定していることが確認できる。制定年(公布日を基準)順に示すと、以下のとおりである。
平成2年 | 熊本県希少野生動植物の保護に関する条例(平成16年熊本県野生動植物の多様性の保全に関する条例に全部改正) |
平成6年 | 広島県野生生物の種の保護に関する条例 |
平成7年 | (兵庫県)環境の保全と創造に関する条例 |
平成12年 | 埼玉県希少野生動植物の種の保護に関する条例 東京における自然の保護と回復に関する条例 |
平成13年 | 北海道希少野生動植物の保護に関する条例(平成25年廃止され、北海道生物の多様性の保全等に関する条例が制定) 鳥取県希少野生動植物の保護に関する条例 |
平成14年 | 岩手県希少野生動植物の保護に関する条例 佐賀県環境の保全と創造に関する条例 |
平成15年 | 三重県自然環境保全条例 岐阜県希少野生生物保護条例 長野県希少野生動植物保護条例 鹿児島県希少野生動植物の保護に関する条例 岡山県希少野生動植物保護条例 |
平成16年 | (石川県)ふるさと石川の環境を守り育てる条例 福島県野生動植物の保護に関する条例 |
平成17年 | 山口県希少野生動植物種保護条例 香川県希少野生生物の保護に関する条例 高知県希少野生動植物保護条例 宮崎県野生動植物の保護に関する条例 |
平成18年 | (滋賀県)ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例 徳島県希少野生生物の保護及び継承に関する条例 大分県希少野生動植物の保護に関する条例 |
平成19年 | 山梨県希少野生動植物種の保護に関する条例 京都府絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例 |
平成20年 | 長崎県未来につながる環境を守り育てる条例 (愛知県)自然環境の保全及び緑化の推進に関する条例(改正施行) 愛媛県野生動植物の多様性の保全に関する条例 |
平成22年 | 奈良県希少野生動植物の保護に関する条例 島根県希少野生動植物の保護に関する条例 |
平成23年 | 静岡県希少野生動植物保護条例 |
平成26年 | 富山県希少野生動植物保護条例 群馬県希少野生動植物の種の保護に関する条例 |
令和元年 | 沖縄県希少野生動植物保護条例 |
令和2年 | 福岡県希少野生動植物種の保護に関する条例 |
令和3年 | 新潟県希少野生動植物保護条例 |
〇 都道府県で最初に希少野生動植物の保護に関する条例を制定したのは、平成2年の熊本県であり、「熊本県希少野生動植物の保護に関する条例」である。なお、同条例は平成16年に「熊本県野生動植物の多様性の保全に関する条例」に全部改正されている。
平成10年代と平成20年代前半に多く制定されているが、令和の時代に入っても、令和元年に沖縄県、令和2年に福岡県、令和3年に新潟県で条例を制定している。
青森県、宮城県、秋田県、山形県、茨城県、栃木県、千葉県、神奈川県、福井県、大阪府及び和歌山県では、希少野生生物の保護に関する条例の制定は確認できない。
〇 これらの条例は、規定の仕方は条例により様々であるが、全体としては、種の保存法の国内関係部分の規定を踏まえた内容となっている。概ね以下のような構成で規定されていることが多い。なお、3の特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制については、規定していない条例は多い。
1 総則
・目的、定義、県、事業者、県民等の責務
・基本方針の策定
・希少野生動植物種の指定(特定種の指定を含む)
2 個体等の取扱いに関する規制
・捕獲等の禁止、学術研究等の場合の許可
・措置命令、報告聴取・立入検査
3 特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制
・届出・登録、指示、報告聴取・立入検査
4 生息地の保護
・生息地等保護区の指定
・管理地区の指定・一定の行為に対する許可、立入制限地区の指定、監視区域の指定・一定の行為に対する届出
・措置命令、報告聴取・立入検査、実地調査、損失補償等
5 保護増殖(回復)事業
・保護増殖(回復)事業計画、認定保護増殖(回復)事業等
6 推進体制
・保護監視員・保護取締員・保護推進員等の設置等
7 罰則
〇 いくつかの都道府県条例について紹介する。それぞれの条例について、上記の標準的な構成と異なる規定を中心に見ることとする。
広島県 | 平成6年3月29日公布 | 平成6年3月29日施行 |
|
長野県 | 平成15年3月24日公布 | 平成16年1月1日施行 |
|
熊本県 | 平成16年3月8日公布 | 平成16年12月7日施行 |
|
徳島県 | 平成18年3月30日公布 | 平成19年4月1日施行 |
|
京都府 | 平成19年10月16日公布 | 平成20年4月1日施行 |
|
長崎県 | 平成20年3月25日公布 | 平成20年4月1日施行 |
|
北海道 | 平成25年3月29日公布 | 平成25年4月1日施行 |
|
沖縄県 | 令和元年10月31日公布 | 令和2年11月1日施行 |
|
福岡県 | 令和2年10月6日公布 | 令和3年5月1日施行 |
|
新潟県 | 令和3年3月30日公布 | 令和3年5月1日施行 |
広島県条例は、熊本県の旧条例(熊本県希少野生動植物の保護に関する条例)に次いで、制定年が古いが、種の保存法制定の後制定されている。規制・保護の対象を「指定野生生物種」(8条)及び「特定野生生物種」(9条)とし、特定野生生物種については捕獲等の禁止や学術研究等の場合の許可の対象(13条、14条)としているが、特定野生動物種以外の指定野生生物種については捕獲等の届出の対象(12条)としている。特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制に関する規定は置いていない。
長野県条例も、規制・保護の対象を「指定希少野生動植物」と「特別指定希少野生動植物」とに分け(2条2項、3項、8条)、前者については捕獲等の届出、後者については捕獲等の禁止や学術研究等の場合の許可の対象としている(11条、13条、14条)。特別指定希少野生動植物事業の規制に関する規定(17条~20条)を置いている。
熊本県条例は、旧条例を平成16年に全部改正して制定されている。指定希少野生動植物以外の県内希少野生動植物の捕獲等については知事への届出を義務づけている(13条)が、それ以外の規定については、概ね上記の標準的な構成に沿ったものとなっている。
徳島県条例は、指定希少野生生物の指定に関し、県民等から提案ができる(10条)との規定を置いている。また、指定希少野生生物の所持・譲渡し等を禁止しているが(14条)、特定種の指定や特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制に関する規定は置いていない。希少野生生物保護区を指定し、一定行為に対して許可を義務づけるとともに、保護区の区域内で立入制限地区の指定するほか、保護区の周辺地域のうちから緩衝地区を指定し、一定行為に対して届出を義務づけている(20条~29条)。
京都府条例も、指定希少野生生物の指定に当たっての府民からの提案に関する規定を置いている(10条)。また、保全回復事業について、地域住民等と協働して事業を行う保全団体の登録・支援、登録保全団体と地域住民等との協定の認定・支援について規定している(35条~45条)。指定希少野生生物の譲渡し等を禁止しているが(14条)、特定種の指定や特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制に関する規定は置いていない。
長崎県条例は、環境保全を目的とする条例(長崎県未来につながる環境を守り育てる条例)において、希少野生動植物種について指定、規制、保護等に関する規定を置いている。関係条文は全5条(50条~54条)から構成され、希少野生動植物種の指定、希少野生動植物種保存地域の指定、同地域内の捕獲等の禁止、保護増殖事業計画、保護増殖事業等について規定している。
北海道条例は、平成13年に制定された北海道希少野生動植物の保護に関する条例が平成25年に廃止され、新たに生物多様性の保全に関する条例として制定されている。生物多様性保全計画、認定生物多様性維持回復事業等に関する規定(15条~20条)を置いている。
沖縄県条例は、概ね上記の標準的な構成に沿ったものとなっているが、特定種の指定や特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制に関する規定は置いていない。
福岡県条例は、指定希少野生動植物種の指定に当たっての県民からの提案に関する規定を置いている(10条)。指定希少野生動植物種について、一定の場合を除き所持を禁止する(17条)とともに、所持する場合の届出を義務づける(18条)ほか、販売目的の陳列・広告を禁止している(20条)。
新潟県条例は、特定種の指定や特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制に関する規定は置いていないが、指定希少野生動植物の譲渡しの禁止の規定(13条)を置いている。生息地等保全地区を指定し(18条)、一定の行為に対して許可を義務づけている(20条)。
長野県、熊本県、徳島県、京都府、北海道、沖縄県及び福岡県の条例は、外来種対策に関する規定を置いている。
【市町村の条例】
〇 市町村において、地域の野生動物の保護に関する規定を置く条例を制定している団体は少なくないが、これらの条例のうち希少な野生生物について指定、規制、保護等に関する規定を置く条例と見なすことができるもの(令和6年12月1日現在で、制定され、施行されていることが確認できるもの)としては、以下のようなものがある。制定年(公布日を基準)順に示す。
平成14年 | (東京都御蔵島村)御蔵島動植物の保護に関する条例 |
平成15年 | (岐阜県)岐阜市自然環境の保全に関する条例 |
平成16年 | 岡山市環境保全条例(改正施行) (愛知県)春日井市自然環境の保全を推進する条例 |
平成18年 | (鹿児島県)奄美市希少野生動植物の保護に関する条例 (岐阜県)御嵩町希少野生生物保護条例 (静岡県)掛川市自然環境の保全に関する条例 |
平成19年 | (東京都神津島村)神津島動植物の保護に関する条例 (沖縄県)石垣市自然環境保全条例 (滋賀県)東近江市自然環境及び生物多様性の保全に関する条例 |
平成20年 | (愛知県)岡崎市自然環境保全条例 |
平成22年 | (沖縄県)八重瀬町自然環境及び観光資源保全条例 (埼玉県)久喜市自然環境の保全に関する条例 (広島県)北広島町生物多様性の保全に関する条例 (静岡県)富士宮市自然環境の保全及び育成に関する条例 |
平成23年 | (秋田県)藤里町野生動植物の保護条例 |
平成24年 | (栃木県)那須塩原市希少野生動植物種の保護に関する条例 (岡山県)吉備中央町に生息する希少野生動植物を保護する条例 (鹿児島県)徳之島町希少野生動植物の保護に関する条例 (鹿児島県)伊仙町希少野生動植物の保護に関する条例 (鹿児島県)天城町希少野生動植物の保護に関する条例 |
平成25年 | (鹿児島県)大和村希少野生動植物の保護に関する条例 (鹿児島県)宇検村希少野生動植物の保護に関する条例 (鹿児島県)瀬戸内町希少野生動植物の保護に関する条例 (鹿児島県)龍郷町希少野生動植物の保護に関する条例 |
平成26年 | (栃木県)塩谷町希少植物保護条例 |
平成27年 | (鹿児島県)知名町自然環境保全条例 |
平成28年 | (福島県)只見町の野生動植物を保護する条例 |
平成29年 | (沖縄県)竹富町自然環境保護条例 (東京都)あきる野市生物多様性保全条例 神戸市生物多様性の保全に関する条例 |
平成30年 | (広島県)三次市に生息する希少野生動植物を保護する条例 |
令和3年 | (新潟県)妙高市希少野生動植物保護条例 |
令和5年 | (新潟県)糸魚川市希少野生動植物保護条例 |
令和6年 | (栃木県)市貝町サシバの里保全創造条例 |
〇 都道府県の条例は、それぞれ多少の変化はあるものの基本的には種の保存法の国内関係部分の規定を踏まえた構成・内容となっているのに対して、市町村の条例は、都道府県の条例に比べて、バリエーションの幅は広い。市町村の条例では、特定事業(特定種の譲渡し等の事業)の規制に関する規定を置いているものはない。
〇 いくつかの市町村条例について、それぞれの条例の構成・内容の違いにも触れながら、紹介する。
広島県北広島町 | 平成22年3月26日公布 | 平成22年3月26日施行 |
|
沖縄県竹富町 | 平成29年3月21日公布 | 平成29年4月1日施行 |
|
岐阜県御嵩町 | 平成18年6月19日公布 | 平成19年1月1日施行 |
|
鹿児島県奄美市 | 平成18年3月20日公布 | 平成18年3月20日施行 |
|
栃木県那須塩原市 | 平成24年3月29日公布 | 平成24年10月1日施行 |
|
新潟県妙高市 | 令和3年3月31日公布 | 令和3年4月1日施行 |
|
新潟県糸魚川市 | 令和5年6月29日公布 | 令和5年10月1日施行 |
|
東京都御蔵島村 | 平成14年3月29日公布 | 平成14年3月29日施行 |
|
秋田県藤里町 | 平成23年3月18日公布 | 平成23年3月18日施行 |
|
広島県三次市 | 平成30年3月20日公布 | 平成30年4月1日施行 |
|
栃木県市貝町 | 令和6年3月12日公布 | 令和6年4月1日施行 |
北広島町条例は、平成22年に生物多様性の保全に関する条例として制定されており、希少野生生物に関する規定を置いている。指定希少野生生物の指定(10条)、捕獲等や所持等の禁止・学術研究等の場合の許可等(14条~18条)、野生生物保護区の指定・行為規制等(21条~29条)、維持・回復事業(34条~38条)等の規定を置いている。
竹富町条例は、自然環境の保護に関する条例であるが、平成8年に制定された竹富町自然環境保護条例が平成29年に全部改正されて制定されている(条例名は変わらず)。希少野生動植物の保護として、希少野生動植物の指定(8条)、希少野生動植物保護区の指定・行為規制等(11条~16条)、保護管理事業(17条~20条)、特別希少野生動植物の指定(21条)、捕獲等の禁止・学術研究等の場合の許可等(25条~28条)等の規定を置いている。
御嵩町条例は、平成18年に制定されている。希少野生生物保護に関する単独条例である。指定希少野生生物の指定(8条)、捕獲等の禁止・学術研究等の場合の許可等(11条~14条)、希少野生生物保護区域の指定・行為規制等(15条~20条)等の規定を置いている。保護増殖(回復)事業等の規定は置いていないが、希少野生生物保護区域の管理や監視を行うことができる認定自然環境保護団体(21条)の制度を設けている。
奄美市条例は平成18年に制定されたが、平成25年に奄美市、大和村、宇検村、瀬戸内町及び龍郷町の奄美大島5市町村は共通の「希少野生動植物の保護に関する条例」を制定(奄美市は一部改正、他の4町村は新規制定)した(奄美大島自然保護協議会HP「希少野生動植物」参照)。指定希少野生動植物の指定(9条)、捕獲等の禁止・学術研究等の場合の許可等(10条~13条)、生息地等保護区の指定・行為規制等(14条~19)等の規定を置いている。保護増殖(回復)事業等の規定は置いていない。
那須塩原市条例は、平成24年に制定されている。基本方針の策定(8条)、特別希少野生動植物種の指定(9条)、捕獲等の禁止・学術研究等の場合の許可等(12条~15条)等の規定を置いている。生息地等保護区の指定等の規定は置いていないが、生息地等保全協定の締結(18条)や野生動植物保護団体の認定(19条)等を定めている。
妙高市条例は、令和3年に制定されている。基本方針の策定(8条)、指定希少野生動植物の指定(9条)、捕獲等の禁止・学術研究等の場合の許可、措置命令等(10条~12条)等の規定を置いている。生息地等保護区の指定等の規定は置いていない。
糸魚川市条例は、令和5年に制定されている。基本方針の策定(8条)、指定希少野生動植物及び特別指定希少野生動植物の指定(9条)、指定希少野生動植物の捕獲等の届出(11条)、特別指定希少野生動植物の捕獲等の禁止・学術研究等の場合の許可、措置命令等(12条~16条)等の規定を置いている。生息地等保護区の指定等の規定は置いていない。
御蔵島村条例は、平成14年に制定されている。御蔵島に生息する希少動植物の保護を目的とし(1条)、指定動植物の指定(4条)、捕獲・島外への持出し等の禁止(7条)、学術研究等の場合の許可(8条)、返還命令等・過料(9条)等を定めている。
藤里町条例は、平成23年に制定されている。藤里町の希少な野生動植物の保護を目的とし(1条)、保全すべき野生動植物の指定(4条)、捕獲等の禁止(7条)、復元命令(8条)、過料(9条)等を定めている。
三次市条例は、平成30年に制定されている。希少野生動植物の指定(6条)、捕獲等の禁止(7条)、保護区の指定(8条)等を定めている。罰則規定は置いていない。
市貝町条例は、令和6年に制定されている。希少野生動植物の指定(9条)、特別希少野生動植物の指定(10条)、希少野生動植物の捕獲等の届出(13条)、特別希少野生動植物の捕獲等の禁止(14条)、特別希少野生動植物の捕獲等の許可(15条)、措置命令(16条)、希少野生動植物の提案(21条)、罰則(47条~49条)等を定めている。
【特定の野生生物の保護を定める条例】
〇 特定の野生生物の保護のみを目的とする条例も制定されている。対象となる野生生物は条例で明記している。条例の構成・内容は、それぞれの条例により、様々である。以下のような条例である。
ギフチョウ | (岐阜県)揖斐川町ギフチョウ保護条例(平成17年制定 旧谷汲村ギフチョウ保護条例(昭和61年制定)) (山形県)大石田町ギフチョウ及びヒメギフチョウの保護に関する条例(昭和63年制定) など数団体 |
ノグチゲラ | (沖縄県)東村ノグチゲラ保護条例(平成22年制定) |
オオタカ | (鳥取県)鳥取県立大山オオタカの森の保全に関する条例(平成16年制定) |
コウノトリ | (兵庫県)豊岡市コウノトリと共に生きるまちづくりのための環境基本条例(平成18年制定) (島根県)雲南市コウノトリの保護及び共生に関する条例(令和5年制定) |
ブッポウソウ・ ニホンメダカ | (岡山県)吉備中央町に生息する希少野生動植物を保護する条例(平成24年制定) |
イトウ | (北海道)南富良野町イトウ保護管理条例(平成21年制定) |
ホトケドジョウ | (岐阜県)大野町ホトケドジョウ保護条例(平成19年制定) |
カブトガニ | (岐阜県)笠岡市カブトガニ保護条例(平成15年制定) |
ヤシガニ | (沖縄県)多良間村ヤシガニ(マクガン)保護条例(平成22年制定) 宮古島市、石垣市でも制定 |
アツモリソウ | (長野県)富士見町のアツモリソウ保護条例(平成19年制定) |
ヒメサユリ | (山形県)朝日町の花ヒメサユリの保護に関する条例(平成13年制定) (福島県)喜多方市ヒメサユリ保護条例(平成18年制定) |
イワザクラ | (岐阜県)山県市イワザクラ保護条例(平成15年制定) |
ニホンカワウソ | (高知県須崎市)カワウソと共生できるまちづくりのための環境基本条例(平成14年制定) |
イタチ | (沖縄県)多良間村イタチ保護条例(昭和47年制定) |
河鹿蛙 | (京都府)南丹市河鹿蛙保護条例(平成18年制定) |
福寿草 | (青森県)深浦町福寿草保護育成条例(平成17年制定) |
雪割草 | (新潟県)刈羽村雪割草保護条例(平成5年制定) 石川県輪島市、新潟県柏崎市でも制定 |
ミツバツツジ | (千葉県)君津市ミツバツツジ保護条例(平成8年制定) |
白百合 | (大分県)竹田市白百合保護条例(平成17年制定) |
ホタル | (山梨県)身延町ホタル保護条例(平成16年制定 旧下部町ホタル保護条例(昭和62年制定)) (長野県)辰野町ホタル保護条例(平成15年制定) など多数 |
すずむし | (長野県)安曇野松川村すずむし保護条例(平成22年制定) |
ウミガメ | (鹿児島県)鹿児島県ウミガメ保護条例(昭和63年制定) (静岡県)南伊豆町ウミガメ保護条例(平成9年制定) など多数 |
しじみ | (福岡県)大任町しじみ育成保護条例(平成7年制定) |
揖斐川町条例等のギフチョウの保護に関する条例は、許可を得た場合以外は捕獲を禁止し、違反行為に罰則を科している。ギフチョウは、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類ではあるが、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種には指定されていない。
ノグチゲラは、国内希少野生動植物種に指定されている。東村条例は、ノグチゲラの保護地区を指定し、保護地区への立入の禁止等を禁止している。違反行為に罰則を科している。
オオタカの保護を目的とする鳥取県条例は、「大山オオタカの森」を告示し、当該区域における一定の行為を禁止するとともに立入禁止区域を指定している。罰則規定は置いていない。オオタカは、かつては国内希少野生動植物種に指定されていたが、平成29年8月に指定が解除されている。
コウノトリは、国内希少野生動植物種に指定されている。豊岡市条例は、コウノトリと共に生きるまちづくりの推進を目的とし、施策の基本方針や環境基本計画の策定等を規定している。また、雲南市条例は、コウノトリの営巣地周辺への立ち入りの規制、コウノトリの観察・撮影等をするときの市民等の義務等を規定している。
吉備中央町条例は、条例でブッポウソウ及びニホンメダカを希少生物として指定し、生息地等保護区の指定や土地所有者等の義務等を規定している。罰則規定は置いていない。ブッポウソウは、環境省レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類ではあるが、国内希少野生動植物種には指定されていない。
イトウの保護を目的とする南富良野町条例は、保護地の指定、保護区における採捕自粛、上限を超えた持ち帰りの自粛等を規定している。イトウは、環境省レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類ではあるが、国内希少野生動植物種には指定されていない。
ホトケドジョウの保護を目的とする大野町条例は、保護地区における捕獲等を禁止しているが、罰則規定は置いていない。ホトケドジョウは、環境省レッドリストでは絶滅危惧ⅠB類ではあるが、国内希少野生動植物種には指定されていない。
カブトガニの保護を目的とする笠岡市条例は、繁殖地内での生息環境を乱す行為や全域での捕獲や卵の採取等を禁止している。罰則規定は置いていない。笠岡市のカブトガニの繁殖地は天然記念物に指定されている。カブトガニは、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類ではあるが、国内希少野生動植物種には指定されていない。
ヤシガニの保護を目的とする多良間村条例は、採取禁止期間及び採取禁止サイズ等を定め、違反行為に罰則を科している。宮古島市、石垣市でもヤシガニ保護条例が制定されている。ヤシガニは、環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類ではあるが、国内希少野生動植物種には指定されていない。
アツモリソウは、国内希少野生動植物種に指定されている。富士見町条例は、アツモリソウの保護地域を指定し、保護地域内では許可を得た場合以外は採取等を禁止し、違反行為に罰則を科している。
ヒメサユリは、環境省レッドリストでは準絶滅危惧ではあるが、国内希少野生動植物種には指定されていない。朝日町条例は、保護地域での球根、種子の採取や折花等を禁止しているが、罰則規定は置いていない。喜多方市条例は保護地域でのヒメサユリの採取・損傷、土地の形質の変更、土石の採取等を禁止し、違反行為に罰則を科している。
イワザクラは、環境省レッドリストでは準絶滅危惧ではあるが、国内希少野生動植物種には指定されていない。山県市条例は、イワザクラの特別地区を指定し、特別地区内での花茎の採取、宿根の掘取り、自生地の土地の形状変更等を禁止し、違反行為に過料を科している。
ニホンカワウソは、環境省レッドリストでは絶滅とされているが、須崎市条例は、須崎湾で昭和54年に日本で最後にニホンカワウソの姿が確認されたとして、カワウソと共生できるまちづくりを進めるため、環境基本計画の策定等を規定している。
多良間村イタチ保護条例は、「野鼠を撲滅して、農産物の生産を拡充し、農家経済の安定を期するため野鼠の天敵たるイタチを放獣し、その適切な保護と増殖をはかること」を目的とし、犬の放し飼いや殺猟剤の使用等を禁止している。罰則規定は置いていない。
河鹿蛙の保護を目的とする南丹市条例は、保護地域の指定等を規定しているが、罰則規定は置いていない。
福寿草の保護を目的とする深浦町条例は、保護区の指定、保護区における採取行為の禁止等を規定しているが、罰則規定は置いていない。
雪割草の保護を目的とする刈羽村等の条例は、保護地域の指定、保護地域における採取行為の禁止等を規定しているが、罰則規定は置いていない。
ミツバツツジの保護を目的とする君津市条例は、保護地域の指定、保護地域における伐採行為等の届出等を規定しているが、罰則規定は置いていない。
白百合の保護を目的とする竹田市条例は、保護地域における球根の堀取り・折花等、特別地区内における自生地の開墾・形質の変更等を禁止し、特別地区内における違反行為に罰則を科している。
身延町条例等のホタルの保護に関する条例は、保護区域の指定、保護区域における一定行為の禁止等を規定している。罰則規定を置いているものと置いていないものがある。
すずむしの保護を目的とする松川村条例は、保護地域(村内全域)における捕獲を禁止しているが、罰則規定は置いていない。
鹿児島県条例等のウミガメの保護に関する条例は、許可を得た場合等以外の捕獲や卵の採取を禁止している。罰則規定は、鹿児島県条例は置いているが、他の条例は置いていない。
しじみの育成保護を目的とする大任町条例は、保護指定区域における採取を禁止しているが、罰則規定は置いていない。