財政運営・財政健全化に関する条例
(令和6年12月7日更新)
【はじめに】
〇 本稿では、財政運営に関する条例を取り上げる。自治体における財政の規律と健全性を確保することを目的とし、財政運営の基本原則や計画的な財政運営に関する事項等を定める条例である。財政健全化条例といわれることもある。
平成19年に制定された岐阜県多治見市の「多治見市健全な財政に関する条例」がその嚆矢、先駆けとなった(石黒匡人・吉田博「財政運営基本条例~自治体の財政破綻回避と財政規律の制度化」(プラクティス(北海道市町村振興協会発行)9号 平成24年5月)54頁、地方公共団体金融機構 地方財政に関する調査研究会「地方公共団体における財政収支見通しの作成に関する調査研究報告書」(平成30年6月)18頁)とされる。
〇 本稿でいう「財政運営に関する条例」に関連する条例としては、行財政改革、財政改革、財政再建等を推進する条例(以下「行財政改革推進に関する条例」という。)がある。
「行財政改革推進に関する条例」は、一定時期における行財政改革、財政改革、財政再建等を進めることを目的とし、その進め方等を定めるものであり、基本方針、計画・大綱・プログラム等の策定、附属機関の設置等を規定している。条例の名称としては、「行財政改革」、「財政の構造改革」、「財政の再建」、「行政改革」等の用語が使われている。
一方、「財政運営に関する条例」は、各自治体における将来にわたる持続的な財政の規律や健全性を確保することを目的として、財政運営のルールを具体的に定めるものであり、財政運営の基本原則、計画的な財政運営に関する事項等を規定している。条例の名称としては、「健全な財政」、「健全な財政運営」、「財政健全化」等の用語が使われている。
〇 「財政運営に関する条例」と「行財政改革推進に関する条例」とをあわせて、これらの制定状況を時系列的に見ると、以下の通りになる。
なお、制定年は公布日を基準とし、「財政運営に関する条例」は条例名の前に☆を付している。また、「世田谷区行政改革推進条例」、「千代田区行財政改革に関する基本条例」及び「兵庫県の行財政構造改革の推進に関する条例」を除き現在も施行されている条例のみを掲載し、「行財政改革推進に関する条例」には委員会や審議会等の附属機関の設置等のみを規定する条例は含めていない。
平成10年 | (東京都)世田谷区行政改革推進条例(平成14年失効) |
平成12年 | (福島県)泉崎村財政の自主的再建に関する条例 |
平成14年 | (東京都)千代田区行財政改革に関する基本条例(令和5年廃止) (福島県)川俣町財政の構造改革に関する条例 |
平成15年 | 三重県における補助金等の基本的な在り方等に関する条例 |
平成16年 | (福島県)三春町財政の構造改革に関する条例 (長崎県)新上五島町行財政改革推進条例 |
平成17年 | (山梨県)南アルプス市行政改革の推進に関する条例 (島根県出雲市)地方分権確立に向けた出雲市行財政改革推進条例 |
平成18年 | (北海道)枝幸町行財政改革の推進に関する条例例 |
平成19年 | ☆(岐阜県)多治見市健全な財政に関する条例 |
平成20年 | (福島県)本宮市自主的財政健全化に関する条例 兵庫県・行財政構造改革の推進に関する条例(平成31年失効) |
平成22年 | 名古屋市・予算編成の透明性の確保と市民意見の予算への反映に関する条例 |
平成23年 | ☆(富山県)滑川市健全な財政に関する条例 ☆(埼玉県)富士見市健全な財政運営に関する条例 |
平成24年 | ☆(岐阜県)関市健全な財政運営に関する条例 ☆(茨城県)龍ケ崎市財政運営の基本指針等に関する条例 |
平成25年 | ☆(大分県)豊後大野市財政運営の基本指針等に関する条例 |
平成26年 | ☆(大阪府)箕面市財政運営基本条例 ☆横浜市将来にわたる責任ある財政運営の推進に関する条例 |
平成28年 | ☆(大阪府)池田市健全な財政運営に関する条例 ☆(東京都)国立市健全な財政運営に関する条例 |
平成29年 | ☆(滋賀県)草津市健全で持続可能な財政運営および財政規律に関する条例 |
平成30年 | ☆(神奈川県)南足柄市健全な財政に関する条例 兵庫県・行財政の運営に関する条例 |
平成31年 | ☆(大阪府)門真市健全な財政に関する条例 ☆(大阪府)泉南市健全な財政運営に関する条例 |
令和2年 | ☆(大阪府)岸和田市健全な財政運営に関する条例 ☆(兵庫県)川西市財政健全化条例 |
令和3年 | ☆(大分県)杵築市財政健全化条例 ☆(青森県)おいらせ町財政運営に関する条例 |
令和4年 | ☆(千葉県)浦安市健全な財政運営に関する条例 ☆(沖縄県)うるま市健全な財政運営に関する条例 |
令和5年 | ☆(兵庫県)尼崎市財政運営基本条例 ☆京都市持続可能な行財政の運営の推進に関する条例 |
〇 これらを見ると、概ね平成10年代は「行財政改革推進に関する条例」が制定され、概ね平成20年代以降は「財政運営に関する条例」が制定されていることがわかる。「行財政改革推進に関する条例」は平成20年前半以降制定されていないが、「財政運営に関する条例」は令和の時代に入っても制定の動きは続いている。
政府は、平成9年に「行政改革会議」を設置、平成10年に「中央省庁等改革基本法」を制定、平成12年に「行政改革大綱」を決定、平成16年に「今後の行政改革の方針」を決定、平成18年に「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」(行政改革推進法)を制定するなどして、行政改革を進めてきたが、地方自治体に対しても、平成9年に「地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のための指針」、平成17年に「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(新地方行革指針)、平成18年に「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針」等を策定し、事務次官通知を発出するなどして、行政改革や行財政改革の推進を強く促してきた。特に、平成17年の新地方行革指針は、全国の自治体に平成17年から平成21年までの概ね5年間に集中的な行政改革を要請している。
概ね平成10年代に制定された「行財政改革推進に関する条例」はこうした動きや時代的な背景を踏まえたものといえ、また、平成20年代前半以降「行財政改革推進に関する条例」が制定されていないことも結果的にこうした動きと軌を一にしているといえる。
〇 一方で、平成19年に「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(平成19年6月22日公布・平成20年4月1日等施行 地方財政健全化法)が制定された。地方財政健全化法の制定と同時に、昭和30年に制定された「地方財政再建促進特別措置法」(地方財政再建法)は廃止されている。
地方財政再建法が財政の破綻した自治体の財政再建制度を定めていたのに対して、地方財政健全化法は、自治体に対して、毎年度「健全化判断比率」(実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率)の議会への報告と公表を義務づけるとともに、これらの数値が早期健全化基準を上回る場合は「財政健全化計画」を、財政再生基準を上回る場合は「財政再生計画」を策定させ、自主的な改善努力により早期の財政健全化を促すこと等を内容としている(地方財政健全化法については、総務省HP「「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」とは」を参照のこと)。
多治見市条例は、この地方財政再建法と同じ平成19年に制定されている。多治見市条例は「本市の実状や独自の課題認識に基づいており、地方財政健全化法を受けたものではない」(福田康仁「財政自律への挑戦~多治見市健全な財政に関する条例~」((自治体法務NAVI 21号 平成20年2月)とされているが、多治見市条例と地方財政再建法とは、財政の健全性の確保を主眼とし、財政状況を示す指標を設定するとともに、その数値の議会報告と公表を義務づけ、また、一定の数値以上となった場合は健全化(正常化)や再生(再建)のための計画を策定させるなど、類似した内容を有している。
平成23年以降、こうした多治見市条例や地方財政再建法を参考としつつ、全国の自治体で相次いで、「財政運営に関する条例」が制定されてきている。
【財政運営に関する条例】
〇 それでは、個々の「財政運営に関する条例」について見ていくこととする。令和6年12月1日時点で、「財政運営に関する条例」としては、以下の条例が確認できる。
岐阜県多治見市 | 平成19年12月17日公布 |
平成20年4月1日施行 |
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富山県滑川市 | 平成23年3月31日公布 |
平成23年3月31日施行 |
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埼玉県富士見市 | 平成23年12月21日公布 |
平成24年4月1日施行 |
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大阪府 | 平成23年12月28日公布 |
平成24年2月10日施行 |
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岐阜県関市 | 平成24年5月28日公布 |
平成24年5月28日施行 |
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茨城県龍ケ崎市 | 平成24年9月26日公布 |
平成24年10月1日施行 |
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埼玉県和光市 | 平成24年12月20日公布 |
平成25年4月1日施行 |
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大分県豊後大野市 | 平成25年9月30日公布 |
平成26年4月1日施行 |
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大阪府箕面市 | 平成26年3月28日公布 |
平成26年3月28日施行 |
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横浜市 | 平成26年6月5日公布 |
平成26年6月5日施行 |
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佐賀県上峰町 | 平成26年12月9日公布 |
平成27年4月1日施行 |
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大阪府池田市 | 平成28年3月28日公布 |
平成28年4月1日施行 |
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東京都国立市 | 平成28年3月31日公布 |
平成28年4月1日施行 |
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滋賀県草津市 | 平成29年3月28日公布 |
平成29年4月1日施行 |
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千葉県富津市 | 平成29年9月28日公布 |
平成29年9月28日施行 |
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千葉県流山市 | 平成29年12月27日公布 |
平成30年4月1日施行 |
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神奈川県南足柄市 | 平成30年3月23日公布 |
平成30年4月1日施行 |
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大阪府門真市 | 平成31年3月25日公布 |
平成31年4月1日施行 |
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大阪府泉南市 | 平成31年3月29日公布 |
平成31年4月1日施行 |
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大阪府岸和田市 | 令和2年3月24日公布 |
令和2年4月1日施行 |
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兵庫県川西市 | 令和2年3月27日公布 |
令和2年4月1日施行 |
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大分県杵築市 | 令和3年3月22日公布 |
令和3年3月22日施行 |
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青森県おいらせ町 | 令和3年9月13日公布 |
令和3年9月13日施行 |
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山形県南陽市 | 令和3年12月21日公布 |
令和4年4月1日施行 |
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千葉県浦安市 | 令和4年3月23日公布 |
令和4年4月1日施行 |
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沖縄県うるま市 | 令和4年3月24日公布 |
令和4年4月1日施行 |
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福岡県中間市 | 令和4年9月29日公布 |
令和5年4月1日施行 |
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兵庫県尼崎市 | 令和5年3月9日公布 |
令和5年4月1日施行 |
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京都市 | 令和5年3月30日公布 |
令和5年3月30日施行 |
〇 多治見市条例は、「財政運営の指針並びに基本的な原則及び制度を定めることにより、市民自治に基づく健全な財政に資すること」(1条)を目的とし、4編35条から構成されている。
1編は「総則」として、目的、財政運営の指針、責務を定め、2編では「財政運営の原則」として、財政情報の共有(財政情報の公表、財務諸表の作成・公表等)、資産及び負債の原則(基本原則、資産・負債の管理、基金基金の積み立て、起債のあり方等)、執行における原則(歳入及び歳出、使用料、補助金等の見直し、資金運用等)、リスク・マネジメント(リスクの把握、債務保証や損失補償のあり方等)を定めている。
また、3編は「計画的な財政運営」とし、1章で通則(財政判断指標の設定・数値の議会報告と公表、総合計画策定における原則、予算を伴う計画の中期財政計画への反映、中期財政計画の策定・公表等)、2章で財政状況の維持及び向上(財政向上目標の設定・議会報告と公表、財政向上指針の策定・議会報告と公表等)、3章で財政状況の健全性の確保(財政健全基準の設定、財政警戒事態の宣言と財政正常化計画の策定、財政非常事態の宣言と財政再建計画の策定等)等を定めている。4編は「雑則」として規則への委任を定めている。
なお、3編1章の財政判断指標としては、償還可能年数、経費硬直率、財政調整基金充足率、経常収支比率及び実態収支の5項目を掲げている(15条1項 なお、このうち実態収支については平成23年1月1日改正施行により追加されている)。
本条例については、多治見市HP「財務条例」及び上記福田論文を参照されたい。
〇 多治見市条例に続く他の「財政運営に関する条例」も、条例により自ずから内容は異なるものの、総則で目的、基本指針(基本方針、基本理念等を含む)、自治体等の責務等を定めるほかは、大きく分けると、概ね、①財政運営の原則及び②計画的な財政運営に関する事項について定めている。
〇 ①財政運営の原則については、概ね、財政の透明性の確保として財政情報の公開、財務諸表の作成・公開等を、財政運営のルールとして資産・負債の管理、基金の積み立て、地方債の発行(起債)等のあり方、使用料、補助金等の見直し等を規定している。
また、財政リスクの把握(多治見市、大阪市、関市、箕面市)、債務保証や損失補償のあり方・損失補償の原則禁止(多治見市、大阪府、関市、龍ヶ崎市、箕面市、豊後大野市、池田市、岸和田市、南足柄市、中間市)、資金運用(多治見市、和光市)、公共施設の管理(龍ヶ崎市、和光市、豊後大野市、国立市、草津市、泉南市、浦安市、うるま市)等の規定を置いているものもある。
これらに加えて、特に、大阪府条例は、基準財政需要額に公債費が算入されない地方債の発行は収入の確保と支出の抑制を行ったうえでやむを得ない場合に限ること(5条2項、3項)、反復継続した単年度貸付けの禁止(6条)、基金からの借入れの禁止(7条)、一般財源による基金への積立ての原則禁止(14条)等を規定しており、大阪府下の箕面市、池田市、門真市及び岸和田市の条例においても、これらの規定のうちの一部の規定を置いている。
〇 ②計画的な財政運営に関する事項については、概ね、財政収支見通しを含む中期財政計画等を策定し、議会へ報告するとともに公表すること、総合計画は財源の根拠をもって策定すること、予算を伴う計画は中期財政計画等に反映させること等を規定している。
また、多くの条例は、財政指標を算定し、議会へ報告するとともに公表することも規定している。その場合、当該財政指標の項目を条例上明記するものが多いが、その選定を市町村長の判断に委ねているものもある(龍ヶ崎市、国立市、草津市、岸和田市、杵築市)。
具体の財政指標としては、経常収支比率、実質公債費比率、将来負担比率、財政調整基金残高比率、償還可能年数、地方債残高比率等が用いられている。
多治見市条例以外では、例えば、滑川市条例は実質公債費比率、将来負担比率及び地方債残高、富士見市条例は財政調整基金残高比率、地方債残高比率、債務償還可能年限等、大阪府条例は正味収支、本来収支、実質負債残高倍率及び収益的収支比率、和光市条例は経常収支比率、財政調整基金比率、地方債残高比率、人口1人当たりの地方債現在高、実質公債費比率、将来負担比率及び特定目的基金を含めた実質単年度収支、横浜市条例は実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率、流山市条例は実質公債費比率及び将来負担比率、川西市は基金確保比率及び実質公債費率としている。
選定された財政指標に関する目標値については、知事・市町村長の判断に委ねていることが多いが、条例で規定しているものもある(滑川市、流山市、川西市)。
多治見市条例は財政指標の目標値(財政健全基準)を満たさなくなった場合に財政正常化計画や財政再建計画の策定を義務づけているが、地方財政健全化法において定められている制度との関係から、他の条例では同様の規定は置いていない。但し、龍ケ崎市条例は地方財政健全化法の早期健全化基準を上回る早期警戒基準を設定し、健全化判断比率のいずれかが同基準に該当する場合は早期財政健全化計画の策定を義務づけ(21条、22条)、流山市条例は財政判断指標である実質公債費比率及び将来負担比率について地方財政健全化法の早期健全化基準の2分の1を早期警戒基準とし、同基準を上回る場合は健全財政維持計画の策定を義務づけている(13条、14条)。浦安市条例は地方財政健全化法の早期健全化基準より厳しい独自の財政健全化基準を設定し、指標のいずれかが基準以上となった場合は、外部の評価を実施し、その結果を踏まえて改善策を策定する(17条)としている。
なお、龍ケ崎市条例は、公共施設等整備に伴う財政運営影響額を試算し、公表することを義務づけている(19条)。また、箕面市条例は、北大阪急行南北線延伸特定事業を財政上の配慮を要する事業として規定し、同事業の収支計画の公表、財源の確保等について規定している(20条~23条)。
〇 横浜市、南足柄市、おいらせ町及び中間市の条例は、議員提案により制定されている。
横浜市条例は、財政収支見通しを含む中期財政計画等の策定に関する規定は置いていない。
〇 「財政運営に関する条例」については、上記石黒・吉田論文、上記地方公共団体金融機構報告書(18頁以下)、小西砂千夫「財政健全化条例の意義と課題」(ガバナンス 2014年4月号)等を参照されたい。
【行財政改革推進に関する条例】
〇 「行財政改革推進に関する条例」についても、紹介をする。
なお、「世田谷区行政改革推進条例」及び「兵庫県の行財政構造改革の推進に関する条例」を除き、現在も施行されている条例のみを掲載している。以下に示す条例のほかに、時限立法により既に失効したものや市町村合併により廃止されたものをある(例えば、岩手県旧藤沢町は平成14年に「藤沢町行政改革推進条例」を制定したが、平成23年に一関市に編入されたため同条例は廃止)。
行財政改革、財政改革、行政改革、財政再建等を進めるため、委員会や審議会等の附属機関の設置を設置するための条例を制定する自治体は多いが、基本理念や基本方針、計画の策定等について規定するような内容を有する条例は、意外と少ないといえる。
東京都世田谷区 | 世田谷区行政改革推進条例(失効) |
平成10年10月公布 |
平成10年12月1日施行 平成14年11月30日失効 |
福島県泉崎村 | 平成12年5月18日公布 |
平成12年5月18日施行 |
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東京都千代田区 | 平成14年3月20日公布 |
平成14年4月1日施行 令和5年3月14日廃止 |
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福島県川俣町 | 平成14年9月25日公布 |
平成14年9月25日施行 |
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三重県 | 平成15年3月17日公布 |
平成15年4月1日施行 |
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福島県三春町 | 平成16年9月21日公布 |
平成16年9月21日施行 |
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長崎県新上五島町 | 平成16年12月15日公布 |
平成16年12月15日施行 |
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山梨県南アルプス市 | 平成17年2月17日公布 |
平成17年4月1日施行 |
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島根県出雲市 | 平成17年公布 |
平成17年施行 |
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北海道枝幸町 | 平成18年6月28日公布 |
平成18年6月28日施行 |
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兵庫県 | 平成20年10月3日公布 |
平成20年10月3日施行 平成31年3月31日失効 |
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行財政の運営に関する条例(改正前) |
平成30年10月4日公布 |
平成31年4月1日施行 令和4年4月1日改正施行 |
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名古屋市 | 平成22年7月28日公布 |
平成22年7月28日施行 |
〇 これらの条例のうち、世田谷区条例、千代田区条例、新上五島町条例、南アルプス市条例、出雲市条例、枝幸町条例及び兵庫県条例(行財政構造改革の推進に関する条例)は行財政改革の推進を目的とし、泉崎村条例、川俣町条例及び三春町条例は財政改革の推進を目的としているといえる。
なお、世田谷区条例は「行政改革推進条例」との名称であるが、内容的には財政改革に関する事項も含んでいる。
〇 行財政改革の推進を目的とする条例のうち、世田谷区条例は、基本理念・基本方針を定めるとともに、財政改善推進計画の策定、行政改革推進員会の設置等を規定していた。4年の時限立法として制定され、平成14年11月に失効している。
また、千代田区条例は基本理念、数値目標等を規定していたが、令和5年3月に廃止されている。
新上五島町条例は町民の協力や町の説明責任、委員会の設置等を、南アルプス市条例は基本理念、基本方針、実施計画の策定等を、出雲市条例は基本方針、基本姿勢、基本的な取組み等を、枝幸町条例は基本理念、基本方針、大綱の策定、委員会の設置等をそれぞれ規定している。
兵庫県条例(行財政構造改革の推進に関する条例)は基本方針、推進方策の策定、実施計画の策定、県民会議の設置、審議会の設置等を規定していたが、時限立法として制定され平成31年3月31日に失効した。同条例の後継条例として「行財政の運営に関する条例」が平成30年に制定され、運営方針の策定、実施計画の策定、行財政運営審議会の設置等を規定していたが、令和4年4月1日改正施行により、条例名を「県政改革の推進に関する条例」とするとともに、「運営方針」を「改革方針」とし、「行財政運営審議会」を「県政改革審議会」とする等の改正が行われた。
財政改革を目的とする条例は、いずれも福島県下の市町村が制定している。泉崎村条例は「財政の自主的再建に関する条例」、川俣町条例及び三春町条例は「財政の構造改革に関する条例」と条例名は異なるものの、いずれも、財政の健全性の早期回復を目的とし、議会の議決を得て自主的財政再建(健全化)計画又は財政構造改革プログラムを策定し、進捗状況を議会に報告し、住民に公表することを規定している。
〇 三重県条例は補助金の見直しと交付状況の公開等を、名古屋市条例は予算編成過程の公開等を内容とするものであるが、いずれも議員提案により制定されている。
〇 これらの条例については、出石稔「行財政改革推進条例」(自治体法務研究「比較解説 自治立法のトレンド9」2010年夏号)や田中孝男・小林裕「議会と行政が一体となって進める行財政改革~行財政改革の推進に関する条例のベンチマーキング~」(自治体法務NAVI 30号 平成21年8月)が詳しく分析、解説している。
また。兵庫県・行財政構造改革の推進に関する条例については、自治体法務研究2009年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「兵庫県行財政構造改革の推進に関する条例」を参照されたい。