公共施設マネジメントに関する条例

(令和6年1月15日更新)

【公共施設マネジメント】

〇 「公共施設マネジメント」とは、「地方公共団体等が保有し、又は借り上げている全公共施設を、自治体経営の視点から総合的かつ統括的に企画、管理及び利活用する仕組み」(公共施設マネジメントinfoHP「公共施設マネジメントとは」)とされる。

 地方自治体では、これまで整備されてきた公共施設が老朽化し、自治体によっては施設の更新時期が集中することにもなる。今後、人口減少や少子高齢化等により公共施設利用の需要が変化し、他方で、高齢者や子ども等に対する対人サービスの充実が求められ、こうした中で安定的な財政運営を図るためにも、公共施設を自治体経営の視点から総合的に管理し、活用していくことが必要となる。

〇 こうした公共施設マネジメントは、平成20年11月に神奈川県藤沢市が「公共施設マネジメント白書」を作成するなど、一部の自治体では取組みが進められていたが、平成26年4月に総務省が公共施設等総合管理計画の策定を要請(「公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進について」(平成26年4月22日付総財務第74号総務大臣通知))したことを踏まえ、全国の自治体で公共施設等総合管理計画が策定され、それに基づき公共施設のマネジメントの取組みが進められてきている。

 公共施設等総合管理計画については、平成29年9月末時点で、都道府県及び指定都市は全団体、市区町村は99.4%の団体において策定が完了し(総務省自治財政局財務調査課資料「公共施設等総合管理計画の更なる推進に向けて」(平成30年4月23日)7頁)、令和5年3月31日時点では、市区町村も1団体を除き全団体で策定済みである(「公共施設等総合管理計画策定取組状況等に関する調査(結果の概要)令和5年3月31日現在」)。

〇 公共施設等総合管理計画の策定等に関する総務省の対応については、総務省HP「公共施設等総合管理計画」を参照されたい。

 

【公共施設マネジメントに関する条例】

〇 公共施設マネジメントの推進や公共施設等総合管理計画の策定については、そのこと自体は必ずしも条例事項ではない(計画の推進後、個別の公共施設の見直しに伴い、当該公共施設の設置条例等の改正、廃止等が必要となりうることは言うまでもない)。

〇 他方で、公共施設マネジメントの推進に当たって、条例を制定し、自治体、市民、事業者等の責務や役割、基本理念や基本方針、計画の策定等を定めている自治体がある。数としては多くはないが、こうした条例として確認できるものは、以下のとおりである。

千葉県習志野市

習志野市公共施設等再生基本条例

平成26年7月7日公布

平成26年7月7日施行

滋賀県湖南市

湖南市公共施設等マネジメント推進基本条例

平成27年6月23日公布

平成27年6月23日施行

愛知県高浜市

高浜市公共施設マネジメント基本条例

平成27年9月30日公布

平成27年10月1日施行

兵庫県伊丹市

伊丹市公共施設マネジメント基本条例

平成28年3月28日公布

平成28年4月1日施行

岐阜県岐阜市

岐阜市公共施設等マネジメント条例

令和4年3月30日公布

令和4年3月30日施行

佐賀県唐津市

唐津市公共施設再編推進条例

令和5年3月23日公布

令和5年3月23日施行

 習志野市、湖南市、高浜市及び伊丹市の条例は平成26年から28年にかけて制定されており、岐阜市条例は令和4年に、唐津市条例は令和5年に制定されている。

 

(習志野市条例)

〇 習志野市条例は、条例名を「公共施設等再生基本条例」としている。平成26年7月に制定されている。

〇 「公共施設等」を「市が所有する施設であって、次に掲げるもののうち規則で定めるもの」とし、「ア 建築物、イ 道路、都市公園等の土木施設、ウ 下水道、エ 水道施設、オ ガス工作物」を掲げ(2条1号)、「再生」を「建替え、統廃合、長寿命化及び老朽化対策改修の計画的な取組」(2条2号)と定義づけている。

 そのうえで、「公共施設等の建替え、統廃合、長寿命化及び老朽化対策改修の計画的な取組について、その基本理念及び基本的事項を定め、持続可能な行財政運営の下で、時代の変化に対応した公共サービスを継続的に提供することにより、誰もが住みたくなるような魅力あるまちづくりを推進すること」(1条)を目的とし、基本理念(3条)、市、市民、関係団体及び事業者の責務(4条~6条)を定め、市長は「公共施設等の再生に関する情報の一元的な調査、収集及び整理を定期的に実施するとともに、その結果を公表する」(7条1項)とともに、「公共施設等の再生に関する計画を策定する」(同条2項)としている。あわせて、公共施設等再生推進審議会を設置している(8条)。

〇 習志野市は、平成21年3月に「公共施設マネジメント白書」を作成し、平成24年5月に「公共施設再生計画基本方針」を取りまとめ、平成26年3月に「公共施設再生計画」を策定(令和2年3月「第2次公共建築物再生計画」策定)したうえで、平成26年7月に本条例を制定しているが、平成24年5月の基本方針は「公共施設再生の取り組みは、市民に様々な影響を及ぼすとともに、長期間にわたる取り組みとなることから、(仮称)公共施設マネジメント条例の制定を検討し、計画の実現性を高めます。」(23頁)と記述している。条例制定の目的、背景、必要性については習志野市HP「条例制定の目的及び背景」で詳しく説明している。なお、平成26年4月の総務大臣通知を踏まえ、平成28年3月には「公共施設等総合管理計画」を策定(令和3年3月改訂)している。

 本条例の内容等については習志野市HP「公共施設等再生基本条例」、習志野市の公共施設再生の取組みについては習志野市HP「公共施設の再生」を参照されたい。

 

(湖南市条例)

〇 湖南市条例は、習志野市に次いで平成27年6月に制定されている。条例名を「公共施設等マネジメント推進基本条例」としている。

〇 「公共施設等」を「市が公用又は公共用に供するため設置する建築物及び道路、橋梁等インフラ施設」(2条1号)、「マネジメント」を「新設、建替え、統廃合、長寿命化及び老朽化対策改修の計画的な取組」(同条2号)と定義づけたうえで、基本理念(3条)、市、市民、関係団体及び事業者の責務(4条~6条)、公共施設等マネジメントに関する調査の実施・公表と計画の策定(7条)、公共施設等マネジメント推進委員会の設置(8条)を定めているが、習志野市条例とほぼ同様の条例構成となっている。

〇 湖南市は平成27年3月に「湖南市公共施設白書」を策定し、平成27年6月に本条例を制定後、平成28年3月に「湖南市公共施設等総合管理計画」を策定している。

 湖南市の公共施設マネジメントを含む行政改革の取組みについては、湖南市HP「行政改革」を参照されたい。

 

(高浜市条例)

〇 高浜市条例は、平成27年9月に制定されている。条例名を「公共施設マネジメント推進基本条例」としている。

〇 「公共施設」を「市が保有し、又は借り上げている市庁舎、学校、道路、橋りょう、公園、上下水道等公用又は公共の用に供する施設」(2条1号)、「公共施設マネジメント」を「公共施設を効率的かつ効果的に配置し、管理運営することにより、行政サービスの向上を図るとともに、公共施設の維持更新にかかる財政負担を軽減し、平準化すること」(2条2号)と定義づけている。対象施設を、習志野市及び湖南市の条例が「公共施設等」としているのに対して高浜市条例は「公共施設」としているが、いずれも公用又は公共の用に供する施設としている点で同趣旨である。

 前文で、「公共施設マネジメントは、市民一人ひとりの暮らしに直接関わる長期的な取組みです。私たち市民は、この取組みにおいて一貫して守られるべき基本的事項を共有し、協働して次の世代に対する責任を果たしていくため、ここに、高浜市公共施設マネジメント基本条例を制定します。」と記述し、条例制定のねらいを明らかにしている。基本方針(3条)、市、議会、市民、関係団体及び事業者の役割(4条~6条)、市民の協力(7条)、委員会の設置(8条)を定めているが、市の役割として、公共施設全般にわたる総合的な計画の策定とそれに連動した長期の財政計画の策定に関する規定(4条1項、3項)を置いている。

〇 高浜市は平成23年度に「高浜市公共施設マネジメント白書」を作成し、平成26年6月に「公共施設あり方計画(案)」を策定し、平成27年9月に本条例を制定後、平成28年3月に「高浜市公共施設総合管理計画」を策定(平成30年3月改定、令和5年3月改定)している。

 本条例の内容については高浜市HP「公共施設マネジメント基本条例について」を、高浜市の公共施設マネジメントの取組みについては高浜市HP「公共施設のあり方検討について」を参照されたい。

 

(伊丹市条例)

〇 伊丹市条例は、平成28年3月に制定されている。条例名を「公共施設マネジメント基本条例」としている。

〇 「公共施設」を「市が公用又は公共の用に供する建築物、道路、橋りょう、公園、上下水道等の施設(これらに附属する施設を含む。)」(2条1号)、「公共施設の管理」を「公共施設の配置、維持管理、運営及び更新」(同条2号)、「公共施設マネジメント」を「公共施設の管理に係る財政負担を軽減しつつ、行政需要に合ったサービスを安定的に供給するための、公共施設の総合的かつ計画的な管理に関する市の取組」(同条3号)と定義づけている。

 基本理念(3条)、市、市民、事業者等の責務(4条~6条)、公共施設マネジメント推進に関する基本計画の策定(8条)、公共施設マネジメント推進検討委員会の設置(8条)を定めているが、それ以外に、「総量」を「公共施設のうち市が所有する建築物(周壁を有しない駐輪場,あずまやその他これらに類する構造の建築物、仮設の建築物その他小規模なものとして規則で定める建築物を除く。)の延べ床面積の合計」(2条4号)、「総量規制」を「総量を一定の数値以下に制限すること」(同条5号)と定義づけたうえで、総量規制として「市は、目標とする総量(以下「目標値」という。)を定めて総量規制を図るものとする。」(7条1項)と規定するとともに、基本計画には総量規制の目標値を定める(8条2項3号)としている。また、「市は、総量規制に当たっては、公共施設の機能の移転又は複合化、公共施設の統合、民間の資産の活用等、多様な手法により、行政サービスの質の向上及び行政需要への柔軟な対応の確保を図るものとする。」(7条2項)と規定している。

〇 伊丹市は平成24年3月に「伊丹市公共施設白書」(平成26年10月、平成30年3月改訂)を作成し、平成27年3月に「伊丹市公共施設等総合管理計画」(令和5年2月改訂)、平成28年2月に「伊丹市公共施設再配置基本計画」を策定している。本条例は、平成28年3月に制定されているが、附則2項において「この条例の施行の際現に策定されている伊丹市公共施設等総合管理計画は,第8条第1項に規定する基本計画とみなす。」と規定している。条例化の目的として、「公共施設マネジメントには、一貫性を持った中長期にわたる継続した取り組みが必要であり、継続性の担保が必要となります。・・(中略)・・条例化により継続性を担保し、市と市民等で理念を共有することで、一貫した取り組みとして公共施設マネジメントを推進していきます。」(伊丹市HP「伊丹市公共施設マネジメント基本条例」)としている。

 伊丹市の公共施設マネジメントの取組みについては、伊丹市HP「施設マネジメント課」を参照されたい。

 

(岐阜市条例)

〇 岐阜市条例は、令和4年3月に制定されている。条例名を「公共施設等マネジメント条例」としている。

〇 「公共施設等」を「本市において公用又は公共の用に供する建築物、道路、橋りょう、水道、下水道等の施設」(2条1号)、「公共施設等マネジメント」を「公共施設等の整備、維持及び更新に係る費用の平準化を図り、財政上の負担を軽減しつつ、需要に応じた公共サービスを提供するために公共施設等全体を総合的に管理し、及び活用する取組」(同条2号)と定義づけている。

 前文で、「本市では、岐阜市公共施設等総合管理計画を策定し、これに基づき公共施設等マネジメントに取り組んでいるところ、公共施設等マネジメントを効果的かつ効率的に推進していくためには、行政だけでなく利用者である市民も公共施設等マネジメントについて基本理念を共有し、関わっていく必要がある。よって、行政と市民が協働して公共施設等マネジメントに取り組むことで、持続可能な魅力あるまちづくりを推進し、ひいては、幸福な社会が形成されるよう、この条例を制定する。」と記述し、条例制定のねらいを明らかにしている。基本理念(3条)、市の役割(4条)、市民の参画(5条)を定めている。計画に関しては、市の役割として、「市は、岐阜市公共施設等総合管理計画に公共施設等マネジメントに関する基本方針、取組方針等を定め、これに基づき、公共施設等マネジメントを推進するものとする。」(4条1項)と規定している。

〇 岐阜市は、平成25年9月に「岐阜市公共施設白書」を作成し、平成29年3月に「岐阜市公共施設等総合管理計画」を策定(令和4年3月改定)している。

 本条例の内容については岐阜市HP「岐阜市公共施設等マネジメント条例」を、岐阜市の公共施設マネジメントの取組みについては岐阜市HP「公共施設等マネジメント」を参照されたい。

 

(唐津市条例)

〇 唐津市条例は、令和5年3月に制定された。条例名を「公共施設再編推進条例」としている。

〇 「公共施設」を「市が公用又は公共の用に供する建築物及びインフラ施設(上水道、工業用水道、下水道、浄化槽、道路、橋りょう、公園及び漁港の施設)」(2条1号)、「公共施設再編」を「中長期的な視点から、公共施設の適切な維持管理及び最適な配置を実現するための取組」(同条2号)と定義づけている。

 基本理念(3条)、市、市民、事業者等の責務(4条~6条)、基本計画の策定(8条)、公共施設再編審議会の設置(9条)について定めている。

 これらの規定に加えて、伊丹市条例と同様に、総量規制に関する規定を置いている。すなわち、「総量」を「市が所有する公共施設(インフラ施設を除く。)の延べ床面積の合計」(2条3号)、「総量規制」を「総量を一定の数値以下に制限すること」(同条4号)と定義づけたうえで、総量規制として「市は、目標とする総量(以下「目標値」という。)を定めて総量規制を図るものとする。 」(7条)と規定するとともに、基本計画には総量規制の目標値を定める(8条2項3号)としている。

〇 唐津市は、「唐津市公共施設白書」(平成29年3月作成)を作成するとともに、「唐津市公共施設等総合管理計画」(平成28年8月策定、平成31年3月改訂、令和4年3月改訂、令和5年3月改訂)及び「唐津市公共施設再配置計画」(平成30年9月策定、令和4年3月改訂、令和5年3月改訂)を策定している。

 唐津市の公共施設マネジメントの取組みについては、唐津市HP「公共施設等マネジメント」を参照されたい。

 

(その他)

〇 なお、公共施設のマネジメントの推進や計画策定に関する委員会、審議会等の設置について定める条例は少なくない。条例の名称としては、「公共施設マネジメント推進委員会条例」、「公共施設等マネジメント推進審議会条例」、「公共施設等総合管理計画委員会条例」、「公共施設等管理計画策定委員会条例」、「ファシリティマネジメント推進委員会設置条例」等がある。

〇 また、公共施設のマネジメントの推進に関する基金の設置について定める条例もある。条例の名称としては、「公共施設マネジメント基金条例」、「公共施設等再生基金条例」、「公共施設等総合管理計画推進基金条例」、「アセットマネジメント基金条例」等がある。



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