バーベキューを禁止する条例

(令和6年3月2日更新)

【はじめに】

〇 近年のアウトドア生活のニーズの高まりとともに、また特に最近はコロナ禍のもと、河川敷、海岸、都市部の公園等の屋外でバーベキューを楽しむ人が増えている。他方で、人々がバーベキューを行うことにより、ごみの投棄・散乱、騒音や悪臭の発生・拡散、不法駐車の増加等の問題が生じる。このため、条例により、これらの場所でのバーベキューを禁止する自治体が見られる。バーベキューを禁止する一方で、バーベキューを有料又は無料で行うことができる場所や施設を設定・設置をする動きも見られる。

〇 条例でバーベキューを禁止する場合、対象エリアという観点からいくつかのタイプに分かれる。

 ①市町村全域又は特定の区域においてバーベキューを禁止する場合、②河川敷においてバーベキューを禁止する場合、③海岸や海水浴場においてバーベキューを禁止する場合、④都市公園等においてバーベキューを禁止する場合等である。

 以下、それぞれのタイプごとに、いくつかの条例を紹介する。

〇 なお、条例によりバーベキューを禁止することについて論じるものとして、正木宏長「バーベキュー規制についてー公物法の変容、生じつつある都市環境法」(「都市と環境の公法学―磯部力先生古稀記念論文集―」(勁草書房 2016年) 133頁以下)や田中孝男・内藤悟「条例による地域空間管理~バーベキュー規制に関する条例のベンチマーキング」(自治体法務NAVI 50号)がある。本稿は、これらを参考にしている。

 

【市町村の全域又は特定の区域においてバーベキューを禁止する条例】

〇 市町村の全域又は特定の区域においてバーベキューを禁止する条例としては、例えば、以下のような条例がある。

兵庫県芦屋市芦屋市清潔で安全・快適な生活環境の確保に関する条例平成19年3月20日公布

平成19年6月1日施行

平成23年6月1日改正施行

奈良県天川村天川村をきれいにする条例平成29年9月14日公布

平成29年10月1日施行

鳥取県岩美町岩美町キャンプ及びバーベキュー等禁止区域に関する条例昭和46年3月31日公布

昭和46年6月1日施行

令和3年4月1日改正施行

〇 芦屋市条例及び岩美町条例は市長や町長が指定した特定の区域においてバーベキューを禁止し、天川村条例は村の全域においてバーベキューを禁止している。

〇 まず、芦屋市条例は、「市民マナー条例」と呼ばれている。公共の場等において、歩行中や自転車に乗車中の喫煙、たばこの吸い殻や空き缶等の投げ捨て、飼い犬の放し飼いやふんの放置、夜間の花火、落書き等を禁止しているが、平成23年6月1日改正施行により、市内の特定の区域においてバーベキューを禁止する規定を置いている(併せて、同日の改正施行により、市内の特定の区域におけるプレジャーボート等の航行を禁止する規定も置いている。)。

 バーベキューに関して、「バーベキュー等」を「火気を用いて食品を調理する行為」(2条8号)と定義づけたうえで、市長は、「バーベキュー等を特に禁止し、隣接する地域の生活環境及び自然環境を保全する必要があると認める区域を、バーベキュー等禁止区域として指定することができる。」(15条の2第1項)と規定し、「何人も、前条第1項の規定により指定されたバーベキュー等禁止区域内において,バーベキュー等をしてはならない。」(15条の3)と規定している。違反した者に対して、市長は、勧告又は命令をすることができ(18条7号)、命令に従わない者には10万円以下の罰金を科す(20条)としている。

 芦屋市では、本条例に基づき芦屋川流域(城山堰堤以南)及び芦屋キャナルパーク南北護岸をバーベキュー等禁止区域として指定している。なお、芦屋市総合公園においては、有料の「バーベキュー広場」を設置している。

 本条例の内容等については、芦屋市HP「芦屋市清潔で安全・快適な生活環境の確保に関する条例(通称:市民マナー条例)」及び「市民マナー条例【区域を定めた特定の場所で禁止されている事項】」、前記正木論文142頁以下を参照されたい。

〇 天川村条例は、村の環境美化の促進を目的としているが、村内全域において、放置ごみや放置自動車の禁止等をするとともに、バーベキューを禁止している。

 バーベキューに関して、「バーベキュー等」を「屋外で火気を用いて食品を調理する行為」(2条13号)と定義づけたうえで、「地域の生活環境・自然環境の保全及びゲリラ豪雨等による急激な河川増水から生命・財産を守るため、何人も村内全域においてバーベキュー等をしてはならない。」(7条)と規定している。ただし、個人又は法人等が所有管理する土地でごみ等の管理が適切に行われる場合、風俗習慣上または教育等の行事を行う場合及び特に村長が認める場合は、例外としてバーベキュー等を行うことができる(8条)としている。違反行為に対して、罰則規定は置いていない。

 本条例の内容等については、天川村HP「天川村をきれいにする条例を制定」を参照されたい。

〇 岩美町条例は、「キャンプ禁止区域に関する条例」として町内の特定の区域におけるキャンプを禁止していたが、令和3年4月1日改正施行により、町内の特定の区域におけるバーベキューを禁止する規定が追加され、条例名も「キャンプ及びバーベキュー等禁止区域に関する条例」となった。

 「バーベキュー等」を「火気を用いて食品を調理する行為」(2条2号)と定義づけたうえで、町長は、「地すべり、崖くずれ、落石又は溢水のおそれがある場所等禁止行為を行う者の危険防止のため特に必要と認められる地域」、「河川の汚水のおそれのある地域」又は「海岸、湖畔等のうち禁止行為に必要な給排水施設、ごみ、し尿その他の汚物の処理施設等が不備な場所で、多数の者が集合して禁止行為を行うことにより当該地域における環境衛生が著しく阻害され、周辺の住民又は観光客が著しく迷惑をこうむる事態が発生するおそれが極めて強いと認められる地域」に該当する地域を「キャンプ及びバーベキュー等禁止区域」として指定することができる(3条)と規定し、「禁止区域内においては、何人も禁止行為を行ってはならない。ただし、公務上の必要その他特別の理由によりあらかじめ町長の許可を受けたもの、又は災害発生等緊急を要する場合の利用については、この限りでない。」(8条1項)と規定している。関係職員は、禁止区域内において禁止行為を行っている者があるときは、その者に禁止行為をやめるよう指示することができる(8条2項)とし、指示に従わなかった者には1万円以下の罰金又は科料を科す(9条)としている。

 本条例の内容等については、岩美町HP「岩美町キャンプ及びバーベキュー等禁止区域に関する条例の施行について」を参照されたい。

 

【河川敷においてバーベキューを禁止する条例】

〇 河川敷においてバーベキューを禁止する条例としては、例えば、以下のような条例がある。

京都府京都府鴨川条例平成19年7月10日公布

平成19年7月10日施行

東京都狛江市狛江市多摩川河川敷の環境を保全する条例平成23年12月26日公布

平成24年4月1日施行

大阪府高槻市高槻市摂津峡における自然環境の保全等に関する条例平成30年3月28日公布

平成31年4月1日施行

長野県大桑村大桑村阿寺渓谷における自然環境の保全等に関する条例令和3年3月11日公布

令和3年4月1日施行

栃木県鹿沼市鹿沼市大芦川流域における生活環境等の保全に関する条例令和5年12月21日公布

令和6年4月1日施行

〇 京都府条例、狛江市条例及び高槻市条例は、特定の河川の環境保全等を図ることを目的としているが、いずれも、当該河川のうち特定の区域を指定し、当該区域におけるバーベキューを禁止している。

〇 京都府条例は、「鴨川及び高野川(以下「鴨川等」という。)の安心・安全で良好かつ快適な河川環境の整備及び保全」(2条)を図ることを目的としており、鴨川環境保全区域の指定と当該区域における土地の形状変更、工作物の新築・改築に係る知事の許可等(8条~12条)、鴨川納涼床に係る審査基準(14条)、自動車等の乗り入れの禁止(16条)、自転車等の放置の禁止(17条)、打ち上げ花火等の使用の禁止(19条)、落書きの禁止(20条)、バーベキュー等の禁止(21条)、鴨川府民会議の設置(24条)等、多様な内容を定めている。

 バーベキューに関しては、21条は、見出しを「バーベキュー等の禁止」としたうえで、「何人も、鴨川等の区域のうち知事が別に定める区域において、火気を用いて食品を焼いてはならない。ただし、河川法に基づく占用の許可を受けた場合において、当該占用の目的の範囲内でこれを行うときは、この限りでない。」と規定している。違反行為に対して、知事が指定する職員は中止を命じることができる(22条)とし、命令に違反した者には5万円以下の罰金を科す(32条)としている。

 本条例の内容等については、京都府HP「京都府鴨川条例」及び「バーベキュー等の禁止」、高野秀雄「鴨川を安心・安全で美しく親しまれるものとして後世に引き継ぐために~京都府鴨川条例~」(自治体法務NAVI 50号)、前記正木論文138頁以下を参照されたい。

〇 狛江市条例は、「多摩川の自然環境を確保し,もって市民の安全で快適な生活環境を確保すること」(1条)を目的としており、市長は多摩川河川敷環境保全区域を指定することができるとしたうえで、当該区域におけるバーベキューと花火を禁止している。

 バーベキューに関しては、「バーベキュー等」を「火気を用いて食品を調理する行為」(2条4号)と定義づけ、「市長は、地域の生活環境及び自然環境を特に保全する必要があると認めるときは,多摩川河川敷の一定の区域を多摩川河川敷環境保全区域(以下「環境保全区域」という。)として指定することができる。」(8条1項)としたうえで、「何人も,前条第1項の規定により指定された環境保全区域において,バーベキュー等をしてはならない。ただし,市長が特に必要があると認めた場合は,この限りでない。」(9条)と規定している。違反行為をしようとする者に対して市長は中止を勧告することができる(11条)とするとともに、違反行為をした者に対して2万円以下の過料を科す(12条)としている。

 本条例の内容や制定経緯等については、狛江市HP「多摩川河川敷環境保全区域でのバーベキュー等・花火は終日禁止です」が詳しい。これによると、「和泉多摩川駅付近の多摩川河川敷では、バーベキュー利用者が増加し、バーベキューの後に捨てられていくゴミや、夜中の騒音などによる苦情が後を絶」たず、「特に、河川敷に大量に不法投棄されたゴミは、悪臭やカラス発生の原因となっていて、河川敷を利用者や近隣住民の迷惑となってい」た状況にあったため、「平成21年度に『どうする多摩川河川敷』の市民グループによって、多摩川のバーベキュー問題についての市民討議会が行われ、市民提案書と実施報告書が提出され」、「この報告書を受け、市では平成22年度より職員による狛江市多摩川関連問題庁内検討委員会を設置し、多摩川関連問題について検討を行」い、同検討委員会の「狛江市多摩川関連問題第二次報告書」(平成23年9月)により、多摩川河川敷においてバーベキューを全面的に禁止する条例を制定する方針が示された。

 本条例の検討に当たっては、特に河川法との関連で検討が進められた。多摩川は、国土交通省が管理する1級河川であり、国土交通省が河川管理者である。河川敷は基本的には「自由使用」とされており、河川の本来の効用に支障を及ぼさない限りは、河川敷でのバーベキューを行う行為は河川法の規制の対象外とされている。そのため、多摩川の河川敷において狛江市が市民によるバーベキューを規制する方法としては、狛江市が河川法による包括占用許可を受け、当該河川敷を市が管理する都市公園と位置づけたうえで都市公園としてバーベキューを規制する方法(後述するように川崎市ではこの方法によりバーベキューの規制とバーベキュー有料施設の設置を行っている)があるものの、狛江市としては、河川法に抵触しない限り、地域の実情に応じて市の独自条例により河川敷においてバーベキューを規制することは可能と判断し、本条例の制定に至ったとしている。こうしたる狛江市の考え方については、自治体法務研究2012年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「狛江市多摩川河川敷の環境を保全する条例」又は波瀬公一「『静かな多摩川を取り戻したい』という切実な願いをかなえるために~狛江市多摩川河川敷の環境を保全する条例~」(自治体法務NAVI 50号)を参照されたい。また、前記正木論文及び前記田中・内藤解説も、独自条例による河川敷でのバーベキュー規制と河川法との関係等について論じている。

〇 高槻市条例は、「摂津峡の豊かな自然環境の保全及び安全で快適なレクリエーション環境の確保」を図ること(1条)を目的としているが、市長は摂津峡環境保全区域を指定することができる(6条)としたうえで、当該区域におけるバーベキュー及び花火を原則として禁止している(7条)。違反行為に対して、市長は中止を勧告することができる(8条)とするとともに、5万円以下の過料を科す(10条)としている。

 本条例の内容や制定経緯等については、高槻市HP「摂津峡(芥川河川敷の一部)ではバーベキュー等は禁止です」を参照されたい。

〇 大桑村条例は、「阿寺渓谷の、豊かな自然環境及び安全で快適なレクリエーション環境」の確保を図ること(1条)を目的としているが、村長は阿寺渓谷環境保全区域を指定することができる(7条)としたうえで、当該区域におけるバーベキュー、花火、焚き火等を原則として禁止している(8条)。違反行為に対して、市長は中止を勧告することができる(9条)とするとともに、5万円以下の過料を科す(10条)としている。

 本条例の内容等については、大桑村HP「阿寺渓谷に来訪される皆様へ・お知らせ」を参照されたい。

〇 鹿沼市条例は、大芦川流域の良好な生活環境及び豊かな自然環境の保全を図ること(1条)を目的としているが、市長は大芦川流域環境保全区域を指定することができる(7条)としたうえで、当該区域におけるバーベキュー、花火及び騒音を禁止している(8条)。違反行為に対して、市長は中止及び原状回復を勧告することができる(9条)とするとともに、5万円以下の過料を科す(10条)としている。

〇 なお、河川敷におけるバーベキューを禁止するのではなく、バーベキューにより河川や湖を汚濁することを禁止する条例がある。例えば、

静岡市静岡市清流条例平成18年3月24日公布

平成18年7月1日施行

浜松市浜松市川や湖を守る条例平成20年6月12日公布

平成20年7月1日施行

などである。

 静岡市条例は、市長は河川の流域のうち清流の保全のための施策を特に重点的に実施すべき区域(重点区域)を指定することができる(10条)としたうえで、「重点区域においてキャンプ、バーベキュー等のレジャー活動を行う者は、調理くず、廃油その他の廃棄物をみだりに捨てる等の清流を汚濁する行為をしてはならない。」(16条)と規定している。違反行為に対して、市長は指導をすることができる(17条)としているが、罰則規定は置いていない。

 浜松市条例は、レジャー利用者は、レジャー活動を行うに当たり、「釣りやバーベキュー等で使用した食材、用品、調理くず、廃食用油その他の廃棄物をみだりに捨て、又は放置すること」、「河川内において、バーベキュー等で使用した用品を洗浄し、又は洗浄した水を河川内に流すこと」等を行ってはならない(21条1項)としている。特に、水環境及び地域住民の快適な生活環境を保全するための施策を重点的に実施すべきとして指定した環境共生区域(13条)において違反行為をした者に対して、市長は中止又は廃棄物等の撤去を命じることができる(21条3項)とし、命令に違反した者に対して、5000円の過料を科す(27条)としている。

〇 また、条例ではなく、河川管理者と地元自治体が連携して河川敷の利用ルールを定め、河川敷でのバーベキューを禁止している事例もある。

 例えば、国土交通省荒川下流河川事務所は、江東区、江戸川区、葛飾区、墨田区、台東区、荒川区、足立区、北区、板橋区、練馬区、川口市、戸田市及び河川財団とともに、荒川下流河川敷利用ルール検討部会を設置している。同検討部会は「荒川下流河川敷利用ルール」を定め、指定場所を除き「バーベキューや煮炊きなどは行わない。」としている。同ルールは、禁止行為(法律等で禁止されている行為)と危険・迷惑行為(安全対策や防音対策などがない河川敷で実施した場合、他の利用者や付近住民に危険や迷惑を及ぼす行為)とに分けて規制しており、バーベキューに関しては危険行為と位置づけ、法律等で禁止されている行為としては位置づけていない。前記正木論文は、同ルールは、「行政指導の基準を定める行政規則であると解される」(137頁)としている。なお、荒川下流域では、バーベキューは4か所の指定場所で行うことができる(荒川下流河川事務所HP「バーベキューについて」参照)。

 

【海岸や海水浴場においてバーベキューを禁止する条例】

〇 海岸や海水浴場においてバーベキューを禁止する条例としては、例えば、以下のような条例がある。

佐賀県唐津市唐津市浜崎海岸の環境保全に関する条例平成17年1月1日公布

平成17年1月1日施行

神戸市須磨海岸を守り育てる条例平成20年3月31日公布

平成20年4月1日施行

兵庫県明石市明石市海浜の利用並びに海浜利便施設の設置及び管理に関する条例平成13年3月28日公布

平成13年4月1日施行

平成26年4月1日改正施行

神奈川県鎌倉市鎌倉市海水浴場のマナーの向上に関する条例平成26年6月30日公布

平成26年6月30日施行

岡山県玉野市玉野市渋川海水浴場取締条例昭和42年3月29日公布

昭和42年4月1日施行

平成30年9月1日改正施行

〇 唐津市条例、神戸市条例及び明石市条例は海岸においてバーベキューを禁止し、鎌倉市条例は海水浴場においてバーベキューを禁止している。

〇 唐津市条例は、「浜崎海岸(以下「海岸」という。)の快適な環境の保全及び秩序の維持に努め、もって海岸の美化促進及び秩序維持を図ること」(1条)を目的としているが、海岸における禁止行為の一つとして「キャンプ、バーベキュー及び花火」(4条1項4号)を定めている。違反行為に対して、市長は、勧告、命令をすることができる(7条)とし、命令に従わない者には5万円以下の罰金又は科料を科す(9条)としている。

〇 神戸市条例は、「須磨海岸の利用について、・・・利用の適正化を図るとともに、須磨海岸の健全化を推進し、市民等が愛着を持ち、安全に安心して利用することができる須磨海岸とすること」(1条)を目的としているが、海岸における禁止行為の一つとし「たき火をし、又は火気を使用する調理器具を使用すること。ただし、規則で定める特別の理由があり、かつ、必要な安全対策を講じたときは、この限りでない。」(23条1項6号)を定めている。バーベキューは、条例上明記されていないが、「火気を使用する調理器具を使用すること」に含まれるものと考えられる。違反行為に対して、市長は中止等の命令をすることができる(23条3項)としているが、罰則規定は置いていない。

〇 明石市条例は、「良好な海浜環境の保全及び周辺住民の快適な住環境の確保並びに市民等の海浜の利用促進を図ること」(1条)を目的としている。平成26年4月1日改正施行により、バーベキューに関する規定が追加された。すなわち、「市長は、良好な海浜環境の保全及び周辺住民の快適な住環境の確保を図るため、重点管理区域のうち、バーベキュー等(火気を用いて食品を調理する行為をいう。以下同じ。)の実施により特に周辺住民の快適な住環境を害すると認める範囲をバーベキュー等禁止区域に指定することができる。」(23条1項)としたうえで、「バーベキュー等禁止区域においては、何人もバーベキュー等をしてはならない。」(24条1項)と規定している。違反行為に対して、市長は中止又は原状回復を命ずることができる(24条2項)としているが、罰則規定は置いていない。

〇 鎌倉市条例は、「海水浴場におけるマナーの向上について、基本理念及び必要な事項を定め、市、海浜事業者及び利用者の責務を明らかにすることにより、もって安心で快適な海水浴場とすること」(1条)を目的としているが、海水浴場における禁止行為の一つとして「海浜事業者が設置する店舗以外の場所でバーベキューを行うことその他裸火を使用すること(喫煙を除く。)」(2条4号、別表)を定めている。違反行為に対して、市長は指導、勧告、命令をすることができる(7条)としているが、罰則規定は置いていない。

〇 玉野市条例は、「渋川海岸の海水浴場を中心とする地区の秩序維持の適正を図ること」(1条)を目的としている。平成30年9月1日改正施行により、バーベキューに関する規定が追加された。すなわち、「バーベキュー等」を「野外において火気等により加熱して食品を調理する行為」(3条6号)と定義づけたうえで、地区内における禁止行為との一つとして、バーベキュー等指定場所以外の場所でバーベキュー等をすることが定められた(11条2項1号)。違反行為に対して、市長は勧告、命令をすることができる(12条)とし、命令に違反した者には10万円以下の罰金を科す(13条2項)としている。

 

【都市公園等でのバーベキューを禁止】

〇 都市公園等では、バーベキューについては、公園管理者が認めるエリア、場所、施設以外では禁止されることが多い。

〇 都市公園条例において、バーベキューの禁止、制限を明文で規定しているものもある。例えば、

千葉県館山市館山市都市公園条例昭和43年4月2日公布

昭和43年4月1日施行

奈良県天理市天理市都市公園条例昭和45年3月31日公布

昭和45年3月31日施行

などである。

 館山市条例は公園における禁止行為の一つとして「市長が指定した場所以外の場所で花火,たき火,バーベキュー等火気を使用すること」(6条9号)を定め、天理市条例は、公園において市長の許可を受けなければならない行為の一つとして「バーベキュー等火気を使用すること」(3条1項5号)を定めている。

〇 また、バーベキューという用語を使用しないものの、火気の使用の禁止等の規定を置いているものは多い。例えば、

北海道小樽市小樽市都市公園条例昭和32年7月17日公布

昭和32年7月17日施行

神奈川県秦野市秦野市田原ふるさと公園条例平成12年3月24日公布

平成12年4月25日施行

などである。

公園における禁止行為の一つとして、小樽市条例は「指定した場所以外の場所で火気を使用すること」(5条7号)を、秦野市条例は「指定された場所以外で火気を使用すること」(7条1号)を定めている。バーベキューを行うことは、当然に「火気を使用すること」に含まれるものと考えられる。

〇 他方、条例上明文でバーベキューや火気の使用の禁止を規定していないものの、指定した場所以外でのバーベキューを公園管理者として禁止している自治体も少なくない。例えば、

愛知県豊田市豊田市都市公園条例昭和38年3月25日公布

昭和38年3月25日施行

大阪市大阪市公園条例昭和52年4月1日公布

昭和52年4月1日施行

などである。

 豊田市は、公園でのバーベキューは指定した場所以外は禁止している(豊田市HP「公園内でバーベキュー(火気を使った調理行為)は出来ません」参照)。その条例上の根拠を、「指定された場所以外の場所でたき火をすること」(4条5号)、「都市公園を損傷し、又は汚損すること」(同条1号)、「他人の遊戯を妨げるなど他人に迷惑を及ぼし、又はそのおそれがある行為をすること」(同条10号)及び「その他都市公園の管理上支障があると認められる行為をすること」(同条11号)を禁止行為としていることとしている(前記豊田市HP参照)。

 大阪市も、公園でのバーベキューは指定した場所以外は禁止している(大阪市HP「公園でのバーベキューについて」参照)。その条例上の根拠は明らかでないが、3条1項10号で「前各号に掲げるもののほか、公衆の都市公園の利用に著しい支障を及ぼすおそれのある行為で市長が定めるもの」を禁止行為としていることを根拠にしているものと考えられる。

〇 川崎市は、

川崎市川崎市都市公園条例昭和32年3月29日公布

昭和32年4月1日施行

平成23年4月1日改正施行

で、公園における禁止行為の一つとして「指定された場所以外の場所で火気を使用すること。」(4条1項4号)を定める一方で、有料公園施設の一つとして「多摩川緑地 バーベキュー広場」を定め、供用期間、供用時間及び休場日を規定する(6条)とともに、同施設の利用料金を規定している(8条の2)。

 多摩川緑地バーベキュー広場に関する規定は、平成23年4月1日改正施行により追加された。この経緯については、川崎市HP「多摩川河川敷バーベキュー適正利用計画」が詳しい。これによると、川崎市高津区二子橋周辺の多摩川河川敷は、都心部における手軽なレジャーとして、バーベキューの利用者が増加し、平成8年頃からバーベキュー利用に伴うゴミの大量発生・不法投棄や夜間の花火等による騒音、周辺住宅地での排泄行為など、モラルの低下による迷惑行為が増加した。このため、平成22年にバーベキュー利用に関する社会実験を行った。その結果、多摩川河川敷におけるバーベキュー利用については、利用ルールを明確化したうえで、受益者負担の観点から有料とすることとし、国の管理下にある河川敷を河川法の包括占用許可制度を用いて川崎市が占用したうえで、都市公園として位置づけ、都市公園条例を改正し、条例の中で利用時間や利用期間、使用料を規定するとともに、各種迷惑行為の規制を図ることとした。

 本条例のバーベキュー規制については、前記正木論文145頁以下でも論じている。また、多摩川緑地バーベキュー広場については、川崎市HP「多摩川緑地バーベキュー広場」を参照されたい。

 なお、川崎市は、多摩川の丸子橋周辺河川敷においても、令和2年から社会実験等を実施し、国の管理下にある河川敷の一時的な占用許可を得て、新たな利活用に向けた取り組みを進めている(川崎市HP「川崎市多摩川丸子橋河川敷のにぎわい創出に向けた新たな利活用事業に関する事業者募集について」参照)。



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