自治に関するその他の条例

(令和6年4月17日作成)

〇 最近制定された自治に関する条例であって、【自治】の他の項目で紹介していないもののうち、特徴的な内容を持つ条例を紹介する。

 

【大阪府・大阪市の府市一体条例】

〇 大阪府と大阪市は、令和3年3月に、府市の一体的な行政運営を推進することを目的とする条例を制定した。

 すなわち、

大阪府

大阪府及び大阪市における一体的な行政運営の推進に関する条例

令和3年3月29日公布

令和3年4月1日施行

大阪市

大阪市及び大阪府における一体的な行政運営の推進に関する条例

令和3年3月31日公布

令和3年4月1日施行

である。

〇 「大阪府と大阪市では、2011(平成23)年の大阪府市統合本部の設置以降、府市連携により二重行政の解消を進め、大阪の成長、都市機能の核となるまちづくりに取り組んできました。2020(令和2)年11月に実施された大阪市廃止・特別区設置住民投票の結果を踏まえて、大阪市を残した形で、将来にわたって大阪府と大阪市が一体的な行政運営を推進するため、2021(令和3)年4月1日に「府市一体条例」を施行しました。条例に基づき、大阪の成長・発展の基本的な方針等を知事と市長が協議するトップ会議として副首都推進本部(大阪府市)会議を設置するなど、府市一体となって、大阪の成長・まちづくりを進め、副首都・大阪を確立し、豊かな住民生活を実現するための取組みを進めます。」(大阪府「府市の一体的な行政運営の推進に向けた取組み」及び大阪市「府市の一体的な行政運営の推進に向けた取組み」)としている。

〇 大阪府と大阪市は、共同して、副首都推進本部(大阪府市)会議を設置し(4条)、今後の大阪の成長及び発展に関する取組の方向性、大阪の成長及び発展を支える大都市のまちづくり及び広域的な交通基盤の整備の方向性、情報通信技術その他の先端的な技術の活用を図る取組の方向性等を協議する(8条)ものとしている。

 また、大阪府と大阪市は、府市の一体的な行政運営に当たって、地方自治法に基づく協議会、機関等の共同設置及び事務の委託、地方独立行政法人その他の法人の新設又は合併等の手法を検討し、最適なものを選択する(9条1項)ものとし、その具体例を別表1から別表5に掲げている(9条2項、3項)。

〇 これらの条例の制定経緯、内容等については、自治体法務研究2021年秋号CLOSEUP先進・ユニーク条例「大阪府及び大阪市における一体的な行政運営の推進に関する条例・大阪市及び大阪府における一体的な行政運営の推進に関する条例」を参照されたい。

 

【世田谷区の地域行政推進条例】

〇 世田谷区は、令和4年9月に、区民に身近な行政を行う地域行政制度の改革の推進を目的とする条例を制定した。

すなわち、

東京都世田谷区

世田谷区地域行政推進条例

令和4年9月30日公布

令和4年10月1日施行

である。

〇 「本庁のほかに5つの地域に総合支所、28の地区にまちづくりセンターを設置し、地域の実情や区民の皆さんの声を受け止め、きめ細かな行政サービスやまちづくりを行う「地域行政制度」を平成3年から導入しています。この度、地域行政制度の改革を進めるために世田谷区地域行政推進条例を制定しました。」(世田谷区作成リーフレット「世田谷区地域行政推進条例」)としている。

〇 区の責務(4条)及び基本方針(5条)を定め、そのうえで、まちづくりセンターの行政サービス機能、広報広聴機能、まちづくり支援機能、防災機能、地域包括ケア地区展開機能、課題解決総合調整機能の充実強化(5条~10条)、総合支所のまちづくりセンター等支援機能、まちづくりの支援機能等の充実強化(11条~15条)等を規定している。

 また、区長は地域行政推進計画を策定しなければならない(19条)等としている。

〇 本条例の内容等については、世田谷区HP「世田谷区地域行政推進条例・世田谷区地域行政推進計画」を参照されたい。

 

【大府市の政策法務推進条例】

〇 愛知県大府市は、令和5年12月に、政策法務を推進することを目的とする条例を制定した。

 すなわち、

愛知県大府市

大府市政策法務推進条例

令和5年12月22日公布

令和6年4月1日施行

である。

〇 前文で、「地方自治体には、住民の福祉の増進という目的を果たすため、日本国憲法や地方自治法により、自ら条例を制定する権限や法令を自主的に解釈する権限が認められています。1990年代以降進められてきた地方分権改革により、これらの権限が拡大されたことに伴い、地方自治体の主な役割は、国の政策を執行することから、地域の実情に合わせた政策を自主的に立案し、執行することへと変化してきています。そのため、全ての地方自治体には、まちづくりを推進し、地域特有の課題の解決を図るための手段として、地域適合的に法令を解釈運用するとともに、地域の実情に応じた独自の条例を制定する「政策法務」の取組を推進することが強く求められるようになりました。」とし、「こうした状況の下、本市は、以前から政策と法務を一体不可分のものとして捉え、政策の理念や方向性を広く市民と共有するとともに、政策の実効性や継続性を確保し、本市を取り巻く様々な課題を解決するため、政策法務によるまちづくりを積極的に推進してきました。」としたうえで、「これまで本市が推進してきた「政策法務によるまちづくり」を将来にわたり継続しつつ、さらに発展させることにより、いつの時代においても市民の求める幸せを叶えられるまちの実現を目指して、この条例を制定します。」としている。

〇 政策法務を「法を政策実現の手段として捉え、地域適合的に法令(・・・)を解釈運用し、地域特性に応じた独自の条例等(・・・)を定め、かつ適時に法令及び条例等の運用の改善並びに条例等の改正を行う法的な活動」(2条1号)と定義づけ、政策法務の推進に関する基本理念(3条)、市・市職員の責務(4条、5条)を定め、施策の実施(6条)、推進計画の策定(7条)、政策法務推進アドバイザー及び政策法務委員会の設置(8条、9条)等を規定している。

〇 なお、大府市は、これまでの独自条例制定の取組みとして、「市内で発生した認知症の方の鉄道事故を契機とした全国初となる「大府市認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」、新型コロナウイルス感染症の感染者やその家族、医療従事者等への差別的取扱いや誹謗ひぼう中傷を禁じた「大府市感染症対策条例」、人権侵害を許さないという強い決意を示した「大府市人権を尊重した誰一人取り残さないまちづくり推進条例」など」(前文)を示している。

 

【大阪府の基礎自治機能充実強化条例】

〇 大阪府は、令和6年3月に、議員提案により、市町村の基礎自治機能の充実強化を目的とする条例を制定した。

 すなわち、

大阪府

大阪府基礎自治機能の充実及び強化に関する条例

令和6年3月27日公布

令和6年4月1日施行

である。

〇 前文で、「急激な人口減少と高齢化の進展により、市町村行政に影響を及ぼす様々な課題の発生が見込まれる中、住民に身近な基礎的な自治体である市町村が、住民に対するサービスを将来にわたって安定的に提供できる機能や体制を確保することは重要である。」とし、「地域の状況によっては、効率的な人員や施設の配置等が可能となる広域連携や、行財政基盤の強化などを図ることができる市町村の合併に取り組むことが必要となってくる。」としたうえで、「市町村を包括する広域の自治体である府としては、これらの取組を行う市町村に対し、これまで以上にきめ細やかな支援を行い、その責任を果たす必要がある。」とし、「このような考え方の下、府として、市町村に対し支援策を講じることで、市町村における基礎自治機能の充実及び強化に関する施策の推進が図られるよう、この条例を制定する。」としている。

〇 基礎自治機能を「市町村が基礎的な自治体として解決すべき課題に的確に対応するとともに、住民に対するサービスを将来にわたって安定的に提供することができる機能」(2条1号)と定義づけ、基礎自治機能の充実強化に関する基本理念(3条)、府・府議会の責務(4条、5条)を定め、知事は基礎自治機能充実強化基本方針を策定する(6条)ものとし、そのうえで、府は、市町村の財政収支等の将来予測、市町村の機運の醸成、住民の理解の増進、市町村合併に関する技術的助言、自主的な市町村合併に関する支援(市町村から求めのあった場合の知事による市町村合併円滑化等支援計画の策定、支援の実施等)等の施策を講ずる(7条~17条)ものとしている。

 また、大阪府基礎自治機能充実強化推進本部を設置する(18条)としている。



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