不登校対策に関する条例
(令和7年4月18日更新)
【不登校対策に関する単独条例】
〇 千葉県は、令和5年3月、議員提案により、
千葉県 | 令和5年3月17日公布 | 令和5年4月1日施行 |
を制定した。不登校対策に関する単独条例としては、全国初となる。
〇 千葉県条例は、「不登校児童生徒の状況に応じた施策を総合的に推進し、もって不登校児童生徒の将来の社会的自立に資すること」(1条)を目的とし、「不登校児童生徒」を「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(平成二十八年法律第百五号)第二条第三号に規定する不登校児童生徒」(2条3号)、「フリースクール等」を「不登校児童生徒に対して学校以外の場における教育機会の確保に関する活動を行う民間の団体又は個人」(2条6号)と定義づけたうえで、基本理念として、①全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、教職員との信頼関係及び児童生徒相互の円滑な人間関係の構築並びにいじめ、暴力行為、体罰等を許さない学校運営を図ること、②不登校児童生徒の主体性を尊重し、不登校児童生徒が再び登校できるようになることのみを目標とせず、将来の社会的自立を目指すこと、③不登校児童生徒一人一人の状況に応じた多様な学習活動を認めて支援すること、④県、市町村、学校、児童生徒の保護者、フリースクール等その他の関係者が相互に密接に連携することの4点を掲げる(3条)とともに、県の責務(4条)、市町村、学校、フリースクール等及び県民の役割(4条~8条)、財政上の措置等(9条)を定めている。
県は基本方針を策定する(10条)ものとし、県の施策として、情報の提供等、相談体制の整備、学校以外の場における学習活動等の状況の継続的な把握、県民の理解の促進及び不登校児童生徒支援連絡協議会の設置(11条~15条)を規定している。
〇 千葉県条例の内容等については、千葉県HP「千葉県不登校児童生徒の教育機会の確保を支援する条例」を参照されたい。
【その他不登校対策について規定する条例】
〇 子どもに関する条例で、不登校対策について規定するものは、少なくない。例えば、
愛知県豊田市 | 平成19年10月9日公布 | 平成19年10月9日施行 |
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兵庫県明石市 | 平成28年12月26日公布 | 平成29年4月1日施行 |
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兵庫県西脇市 | 令和元年9月26日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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宮城県東松島市 | 令和4年3月25日公布 | 令和4年4月1日施行 |
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埼玉県北本市 | 令和4年3月31日公布 | 令和4年10月1日施行 |
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神奈川県 | 令和6年12月24日公布 | 令和7年4月1日施行 |
などがある。
豊田市条例は「市、育ち学ぶ施設、市民及び事業者は、外国籍の子ども、障害のある子ども、ひとり親家庭の子ども、経済的に困難な家庭の子ども、不登校の子ども、社会的ひきこもりの子ども、虐待を受けた子ども、心理的外傷を受けた子ども、非行を犯した子どもなどで、特別なニーズがあると考えられる子どもとその家庭に気を配り、適切な支援をしなければなりません。」(14条)、明石市条例は「市は、保護者、市民等、学校等関係者及び事業者と連携し、不登校及びひきこもりに関する問題の解決のために必要な施策を講ずるものとする。」(14条)、西脇市条例は「市は、障害、虐待、いじめ、不登校、経済的困難等を理由とした支援を必要とするこども及びその家庭に対し、こどもの状況及び置かれた環境に応じた支援を行うものとする。」(12条1項)、東松島市条例は「市は、保護者、学校等関係機関、市民及び事業者と連携し、不登校及びひきこもりに関して必要な取組を実施するとともに、子どもの社会参加の促進等が図られるよう努めるものとします。」(13条)、北本市条例は「市は、障害のある子ども、経済的に困窮している家庭の子ども、ひとり親家庭の子ども、本人又は保護者が外国籍の子ども、不登校の子どもその他の特別な配慮が必要な子どもの現在及び将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、その子ども又はその保護者に対し、必要な支援を行わなければならない。」(19条1項)、「市は、前項に規定する特別な配慮が必要な子どもを把握するため、必要に応じて調査、訪問等を実施するものとする。」(同条2項)、神奈川県条例は「県は、不登校のこどもの将来の社会的な自立に資するよう、市町村及び関係機関と連携し、当該こどもの教育を受ける機会及び多様な体験をする機会を確保し、並びに当該こどもの状態に応じた居場所を提供するため、相談対応その他必要な支援を行うものとする。」(18条)と規定している。
子どもに関する条例については、「子どもに関する条例」を参照されたい。
〇 不登校の児童生徒の支援等のため、多くの自治体が教育支援センター(適応指導教室)を設置している(教育委員会が設置する教育支援センターは、令和5年度、都道府県は39か所、市町村は1704か所(文部科学省初等中等教育局児童生徒課「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」92頁))が、教育支援センター(適応指導教室)の設置、運営等に関して単独条例を制定している団体も少なくない。最近制定された条例としては、例えば、
愛媛県宇和島市 | 令和5年9月27日公布 | 規則で定める日施行 |
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岐阜県羽島市 | 令和5年5月12日公布 | 令和5年6月1日施行 |
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三重県玉城町 | 令和5年3月16日公布 | 令和5年4月1日施行 |
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宮城県東松島市 | 令和5年3月15日公布 | 令和5年4月1日施行 |
などがある。
〇 フリースクールを設置する自治体もある。
奈良県上牧町 | 令和4年9月22日公布 | 令和4年9月22日施行 |
である。
上牧町のフリースクールについては、上牧町HP「フリースクール」を参照されたい。
【その他不登校対策について規定する条例】
〇 国は、不登校児童生徒に対する教育機会の確保等を図るため、平成28年に「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(平成28年12月14日 公布・平成29年2月14日施行)を制定した。
同法は、「不登校児童生徒」を「相当の期間学校を欠席する児童生徒であって、学校における集団の生活に関する心理的な負担その他の事由のために就学が困難である状況として文部科学大臣が定める状況にあると認められるもの」(2条3号)と定義づけたうえで、基本理念(3条)、国及び地方公共団体の責務(4条、5条)を定め、文部科学大臣は基本方針を策定する(7条)ものとし、不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等として、① 全児童生徒に対する学校における取組への支援に必要な措置、 ②教職員、心理・福祉等の専門家等の関係者間での情報の共有の促進等に必要な措置、 ③不登校特例校及び教育支援センターの整備並びにそれらにおける教育の充実等に必要な措置、④学校以外の場における不登校児童生徒の学習活動、その心身の状況等の継続的な把握に必要な措置、⑤学校以外の場での多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の休養の必要性を踏まえ、不登校児童生徒等に対する情報の提供等の支援に必要な措置(8条~13条)を規定している。
同法の内容等については、文部科学省HP「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律等について」を参照されたい。
〇 文部科学省は、令和5年3月31日に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を取りまとめている。同プランの内容等については、文部科学省HP「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)について」を参照されたい。
〇 その他不登校対策に関する文部科学省の取組み等については、文部科学省HP「不登校」を参照されたい。