金属取扱業を規制する条例(金属くず条例)
(令和7年3月12日更新)
【千葉県の条例】
〇 千葉県は、令和6年7月に、古物営業法の対象にならない金属類の窃盗等の犯罪防止を図るため、
千葉県 | 千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例 | 令和6年7月19日公布 | 令和7年1月1日施行 |
を制定した。
〇 千葉県は、「太陽光発電設備の電線や道路に設置されたグレーチング、マンホールなどの金属製の物品の盗難が急増・多発しており、被害にあった盗難品が県内の金属類取扱業者に売却されている実態があります。」(千葉県警察HP「ちばづくり県民コメント制度「(仮称)千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例」の制定について」)として、「再生資源となる特定金属類が不正に取得され、流通することを抑制するため、特定金属類取扱業について必要な規制を定めるとともに、これに違反した場合の罰則等を規定する条例」(千葉県資料「令和6年6月 定例県議会 提出予定案件表(条例案)」)を制定したとしている。
〇 本条例は、「特定金属類」を 電線、グレーチング、マンホール、敷板、足場板、銅製の屋根材等の金属製の物品であって、古物営業法2条1項に規定する古物であるものを除くもの(2条1項)、「特定金属類取扱業」を「特定金属類を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する 営業」であって、一定のものを除くもの(2条2項)と定義づけ、特定金属類取扱業を営もうとする場合はあらかじめ公安委員会の許可を受けなければならない(3条)としたうえで、許可を得た事業者に対して、名義貸しを禁止し(9条)、行商人証の携帯、標識の掲示、取引相手の氏名・住所等の確認及び不正品の疑いがある場合の警察官への申告(確認等及び申告)、帳簿等への記載・保存等を義務づけ(9条~14条)ている。
警察本部長等は事業者に盗品等の品触れを発することができ、事業者はその品触れに係る特定金属類が持ち込まれた等の場合は警察官に届け出なければならない(品触れ 15条)とするとともに、警察本部長等は売買等された特定金属類が盗品等であると疑う理由がある場合は事業者に一定期間の保管を命じることができる(差止め 16条)とし、警察本部長等は報告徴収、立入検査、指示、許可の取消し、営業の停止命令(17条~21条)をすることができ、無許可営業等に対して罰則を科している(24条~28条)。
〇 本条例の制定の背景等については、千葉県警察パブコメ資料「(仮称)千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例の立案の背景と趣旨」で説明している。本資料では、「県内における金属盗難の現状」及び「金属類取扱業者の現状」を述べたうえで、「現行法令や県警の取組の状況」として、「①「中古品」を売買等する営業は古物営業法の規制対象であるため、窃盗の発生防止等に効果をあげているが、金属類としての原材料の価値に着目して売買する場合は、古物営業法の規制対象外である、②法令の規制が及ばないため、県警としては、任意の立入調査を通じて実態把握に努めてきたが、任意の協力依頼だけでは十分な確認が難しく、盗難品の流通防止を図ることができない、③金属盗犯の増加を受け、防犯パトロールや防犯指導等を強化しているものの、主な被害品である電線やグレーチング等は、一般に、誰でも容易に立ち入ることができる屋外に設置されていることから、盗難防止対策には限界がある」とし、条例による規制が必要であるとしている。
〇 本条例は、古物営業法2条1項に規定する古物は対象外としているが、その手続き、内容等は、古物営業法で規定する公安委員会の許可(法3条)、名義貸しの禁止(法9条)、許可証等の携帯、標識の掲示、確認及び申告、帳簿等への記載・保存等の義務づけ(法11条、12条、15条~18条)、警察本部長等による盗品等の品触れ、差止め(法19条、21条)、立入・調査、指示、許可の取消し、営業の停止命令、許可の取消し(法22条~25条)、罰則(法31条~33条)等を、概ね踏えたものとなっている。
〇 本条例の内容等については、千葉県警察HP「千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例の制定」及び自治体法務研究2025年春号CLOSEUP先進・ユニーク条例「千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例」を参照されたい。
【千葉県以外の金属取扱業を規制する条例】
〇 千葉県条例以外にも、これまでも古物営業法の対象にならない金属類の窃盗等の犯罪防止の観点から金属取扱い業を規制する条例は制定されている。「金属くず条例」、「金属くず営業条例」等と言われるものである。令和7年1月1日時点で施行されている条例は、千葉県条例のほか、以下の16道府県の16条例(なお、茨城県条例は、令和7年4月1日に全部改正施行予定)である。
北海道 | 金属くず回収業に関する条例 | 昭和32年1月11日公布 | 昭和32年2月1日施行 |
茨城県 | 茨城県金属くず取扱業に関する条例 (令和7年4月1日全部改正施行前) (令和7年4月1日全部改正施行後) |
昭和32年3月30日公布 令和6年10月4日公布 |
昭和32年6月1日施行 令和7年4月1日施行 |
福井県 | 金属くず営業条例 | 昭和32年7月5日公布 | 昭和32年8月4日施行 |
長野県 | 金属くず商及び金属くず行商に関する条例 | 昭和32年7月11日公布 | 昭和32年9月1日施行 |
岐阜県 | 平成25年3月26日公布 令和6年10月16日公布 |
平成25年10月1日施行 令和7年4月1日施行 |
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静岡県 | 静岡県金属くず営業条例 | 昭和32年12月10日公布 | 昭和33年2月1日施行 令和6年7月23日一部改正施行 |
滋賀県 | 滋賀県金属屑回収業条例 | 昭和31年12月25日公布 | 昭和32年2月1日施行 |
大阪府 | 大阪府金属くず営業条例 | 昭和32年3月4日公布 | 昭和32年5月3日施行 |
兵庫県 | 金属くず営業条例 | 昭和39年4月1日公布 | 昭和39年4月1日施行 |
奈良県 | 奈良県金属くず営業条例 | 昭和32年4月1日公布 | 昭和32年5月1日施行 令和6年7月1日一部改正施行 |
和歌山県 | 和歌山県金属くず業条例 | 昭和32年12月25日公布 | 昭和32年12月25日施行 |
島根県 | 金属くずの取扱いに関する条例 | 昭和32年7月23日公布 | 昭和32年9月21日施行 |
岡山県 | 岡山県金属くず取扱業条例 | 昭和32年3月26日公布 | 昭和32年5月1日施行 |
広島県 | 金属くず業条例 | 昭和26年8月10日公布 | 昭和26年8月10日施行 令和6年6月1日一部改正施行 |
山口県 | 金属くず回収業に関する条例 | 昭和32年10月1日公布 | 昭和32年11月1日施行 |
徳島県 | 金属くず取扱業に関する条例 | 昭和31年10月16日公布 | 昭和32年1月1日施行 |
〇 制定年は、広島県条例が昭和26年、兵庫県条例が昭和39年、岐阜県条例が平成25年であるほかは、すべて昭和31年又は32年に制定されている。しかし、兵庫県条例は昭和32年に制定された「金属くず営業条例」が廃止され制定されており、岐阜県条例も昭和32年に制定された「金属くず営業に関する条例」が平成12年に廃止された後、新たに制定されている。また、昭和32年に制定された山口県条例や和歌山県条例については、前者は昭和26年に制定された「金属屑回収業に関する条例」が、後者は昭和27年に制定された「和歌山県金属くず業条例」が、それぞれ廃止されて制定されている。このようにして見ると、いわゆる「金属くず条例」、「金属くず営業条例」等は昭和26、27年及び昭和31、32年に数多く制定されていたことがわかる。なお、茨城県条例(「茨城県金属くず取扱業に関する条例」)は、令和7年4月1日に全部改正施行され、「茨城県特定金属類取扱業に関する条例」とされることとなっている。
〇 こうした「金属くず条例」、「金属くず営業条例」等の制定経緯、制定状況等については、冨高幸雄著「日本鉄スクラップ業者現代史」(スチールストーリーJAPAN)第二部 復活する金属屑営業条例(29頁~127頁)が極めて詳しい(その概要は、スチールストーリーJAPAN HP「金属屑営業条例(概説)」で見ることができる。)。
これによると、「古物商取締法(明治28年)は、古物商とは「主に一度使用したる物品(略)を売買交換する」者(1条)と定義したから、一度でも使った銅鉄類を売買交換する者は、おしなべて古物商として、取締り対象となった。しかし戦後の古物営業法(1949年・昭和24年・法律)は、古銅鉄類を「古物」類の対象(規則2条は古物12種を列挙する)に加えず、「空き缶類、金属原材料、被覆いのない古銅線類」は同法の取締りの対象外とした(警視庁・古物営業法の解説)。従って戦後の一時期、鉄屑扱い業者を正面から直接規制する国の法令は存在せず、法制上の歴史的な空白が生まれた。」。
こうした状況の下、「朝鮮戦争さなかの1950年(昭和25年)12月、米軍港を持つ長崎県佐世保市が、金属屑商に関し、許可制による取締り(規制)を目指す古鐵金属類回収業(条例44号)を市条例として制定したのが発端。県レベルの制定の最初は翌51年(昭和26年)3月山口県。届出制によるもので、同年7月福岡、8月広島、52年(昭和27年)5月高知、7月鳥取と続いた。
佐世保市条例の6年後の56年(昭和31年)10月以降、鉄屑流通を巡って国家的な模索(鉄屑カルテル結成、鉄鋼需給安定法など)が続くなか、金属屑価格の高騰と共に金属屑盗犯事件が多発し、全国的な防犯条例制定の波が起こる。
関東の神奈川、埼玉が56年(昭和31年)10月1日の同月同日、許可制での制定に踏み切り、57年(昭和32年)大阪府などをピークに58年(昭和33年)まで北は北海道から南は佐賀まで24道府県に広がった。
この時、東京都や京都府知事は、条例による取締りではなく、業者に自主組織の結成を働きかけ、警察と一体となった防犯体制作りを選んだ。この結果、条例制定は、全国47地方自治体の半数強の29道府県に留まった。その後1999年(平成11年)から2005年(平成17年)にかけ14県が廃止したが、2013年(平成25年)以降、一旦廃止した金属屑類条例を全部(岐阜県・警察)、または一部を一般条例として再制定(鳥取県など)する動きがでてきた。現在、同条例を施行しているのは、再制定を含め16道府県に及ぶ。」(スチールストーリーJAPAN HP「金属屑営業条例(概説)」)とされる。
〇 上記16条例(茨城県条例は、全部改正前の「茨城県金属くず取扱業に関する条例」)は、「金属くず」を「金属塊、金属製品(半製品を含む。)その他の金属類であって、①本来の製造目的に従つて売買、交換、加工又は使用されるもの及び②古物営業法第2条第1項に規定する古物)のいずれにも該当しないもの」、「金属くず業」を「金属くずを売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、金属くずを売却することのみを行うもの以外のもの」(広島県条例2条1項、2項)などとして、金属くず業(金属くず取扱業、金属くず回収業、金属くず商、使用済金属類営業)を行おうとする場合に、公安委員会への届出又は公安委員会の許可の取得を義務づけている。そのうえで、古物営業法の規定を踏まえ、事業者に対する許可証や届出証の携帯、標識の掲示、確認及び申告、帳簿等への記載・保存等の義務づけ、警察本部長等の盗品等による品触れ、差止め、立入・調査、罰則等の規定を置いている(条例によって、規定内容は異なる)。
事業者に対して、届出制をとるか、許可制をとるかは、条例によって異なる。届出制とするのは島根県、岡山県、広島県及び徳島県の条例、許可制とするのは北海道、岐阜県及び山口県の条例、許可制としつつ行商については届出制とするのは茨城県、福井県、長野県、静岡県、滋賀県、大阪府、兵庫県、奈良県及び和歌山県の条例となっている。
なお、広島県条例は令和6年6月1日に改正施行され条例名を「金属屑業条例」から「金属くず業条例」と改められる等とされ、奈良県条例は令和6年7月1日に改正施行され帳簿について「帳簿に準ずる書類」の使用や「電磁的方法による記録」ができる等とされ、静岡県条例は令和6年7月23日に改正施行され身分確認の方法を公安委員会規則で定めるようにされ(公安委員会規則でマイナンバーカードが追加)、岐阜県条例は令和7年4月1日に改正施行され使用済金属類取引業者に対してウェブサイトへの氏名等の掲載を義務づけることとされた。
〇 茨城県は、「茨城県金属くず取扱業に関する条例」を、令和7年4月1日に全部改正施行し、条例名も「茨城県特定金属類取扱業に関する条例」とすることとしている。
全部改正後の条例は、規制の対象を「特定金属取扱業」とし、「特定金属類」を「アルミニウム、鉄、銅及びこれらの合金並びにこれらの製品」等であって、古物営業法2条1項に規定する古物に該当するものを除く(2条1号)と定義づけている。また、全部改正前の条例に比べて、特定金属類取扱業者に対し取引時の本人確認で提示を受けた身分証明書の写しの保存を義務づけ(16条)、許可基準の欠格要件を拡大し(4条)、許可の5年ごとの更新制を導入し(6条)、罰則を強化する(25条~31条)等の措置を講じている(条例の内容、全部改正の背景等については、茨城県資料「茨城県特定金属類取扱業に関する条例(案)について」を参照されたい。)。
【金属取扱業を規制する条例の制定・改廃状況】
〇 一旦制定されたもののその後廃止され現在は金属取扱い業を規制する条例が施行されていない都道府県も含め、各都道府県の条例の制定、改廃状況は、以下の通りとなる。なお、各都道府県の条例の制定・改廃の詳しい状況については、スチールストーリーJAPAN)第二部 復活する金属屑営業条例(29頁~127頁)又はスチールストーリーJAPAN HP「金属屑営業条例(概説)」を参照されたい。本稿は、これらを参考にしている。
北海道 | 金属くず回収業に関する条例(昭和32年1月)現行条例 |
茨城県 | 茨城県金属くず取扱業に関する条例(昭和32年3月) 現行条例 →全部改正 茨城県特定金属類取扱業に関する条例(令和6年9月公布・令和7年4月施行) |
埼玉県 | 金属屑営業に関する条例(昭和31年10月)→廃止(平成12年4月) |
千葉県 | 金属くず取扱業条例(昭和32年11月)→廃止(平成17年7月) 新規制定 千葉県特定金属類取扱業の規制に関する条例(令和6年7月公布・令和7年1月施行) |
神奈川県 | 金属屑回収業に関する条例(昭和31年10月)→廃止(平成16年3月) |
福井県 | 金属くず営業条例(昭和32年7月)現行条例 |
山梨県 | 山梨県金属くず取扱業条例(昭和32年7月)→廃止(平成12年3月) |
長野県 | 金属くず商及び金属くず行商に関する条例(昭和32年7月)現行条例 |
岐阜県 | 金属くず営業に関する条例(昭和32年4月)→廃止(平成12年3月) 新規制定 岐阜県使用済金属類営業条例(平成25年3月)現行条例 |
静岡県 | 静岡県金属くず営業条例(昭和32年12月)現行条例 |
愛知県 | 金属くず取扱業に関する条例(昭和32年10月)→廃止(平成12年3月) |
三重県 | 三重県金属くず取扱業条例(昭和32年10月)→廃止(平成12年3月) |
滋賀県 | 滋賀県金属屑回収業条例(昭和31年12月)現行条例 |
大阪府 | 大阪府金属くず営業条例(昭和32年3月)→現行条例 |
兵庫県 | 金属くず営業条例(昭和32年7月)→廃止・金属くず営業条例(昭和39年4月)現行条例 |
奈良県 | 奈良県金属くず営業条例(昭和32年4月)現行条例 |
和歌山県 | 和歌山県金属くず業条例(昭和27年12月)→廃止・和歌山県金属くず業条例(昭和32年12月)現行条例 |
鳥取県 | 金属屑業条例(昭和27年7月)→廃止(平成17年12月) |
島根県 | 金属くずの取扱いに関する条例(昭和32年7月)現行条例 |
岡山県 | 岡山県金属くず取扱業条例(昭和32年3月)現行条例 |
広島県 | 金属屑条例(昭和26年8月)→条例名変更(令和6年3月)金属くず業条例 現行条例 |
山口県 | 金属屑回収業に関する条例(昭和26年3月)→廃止・金属くず回収業に関する条例(昭和32年10月)現行条例 |
德島県 | 金属くず取扱業に関する条例(昭和31年10月)現行条例 |
香川県 | 金属くず取扱業に関する条例(昭和31年12月)→廃止(平成16年3月) |
高知県 | 高知県金属屑取扱業条例(昭和27年5月)→廃止(平成11年10月) |
福岡県 | 金属くず類の回収業に関する条例(昭和26年7月)→廃止・金属くず類の回収業に関する条例(昭和32年1月) →廃止(平成12年3月) |
佐賀県 | 金属くず類の回収業に関する条例(昭和33年12月)→廃止(平成13年3月) |
長崎県 | 長崎県金属くず営業条例(昭和33年7月)→廃止(平成12年3月) |
熊本県 | 金属屑取扱業に関する条例(昭和31年12月)→廃止(平成12年3月) |
なお、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、栃木県、群馬県、東京都、新潟県、富山県、石川県、京都府、愛媛県、大分県、宮崎県、鹿児島県及び沖縄県では、これまで金属取扱い業を規制する条例は制定されていない。
また、全国に先駆けて昭和25年12月に制定された佐世保市古鐵金属類回収業条例は、長崎県条例制定に伴い昭和33年10月に廃止されている。
〇 自動車ヤードや金属等のスクラップヤードの規制については、「自動車ヤード・スクラップヤード・資材置場条例」を参照されたい。
【金属盗対策に関する国の動向】
〇 警察庁は、「昨今、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗(被害品が金属類(銅板、銅線、溝蓋・マンホール等)に係る窃盗 )が増加しており、被害品が金属くず買受け業者等に売却されるなどの事案も発生している」としたうえで、盗品の流通防止や犯行に使用される道具に関する法規制の在り方等も含めた金属盗対策について検討を行うため、令和6年9月に「金属盗対策に関する検討会」を設置した。
同検討会は、令和7年1月に「金属盗対策に関する検討会報告書」を取りまとめたが、同報告書は、検討の基本的な方向性として、金属盗が急増しており、今後も金属盗が続く可能性が高いことを踏まえ、①金属くずの買受け、②金属盗に用いられる犯行用具、③金属盗難に遭うおそれの大きい事業者への防犯情報の周知について、法律により、実効性のある対策を迅速に講じることが必要であるとし、具体的な対策の検討に際しては、①規制の目的と業者全体に課される負担との均衡に留意すべきである、②法律による対応のほか、地域的な特性等に応じた条例による対応も認められるべきである、としている。
〇 政府は、令和7年3月に「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律案」を国会に提出した。同法案は、当該金属を使用して製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属(銅及び政令で定める金属)により構成されている金属くずを「特定金属くず」としたうえで、特定金属くず買受業を営む者に都道府県公安委員会へに届出を義務づけるとともに、特定金属くずの買受け時の相手方の本人確認、本人確認事項等に関する記録の作成・保存及び取引記録の作成・保存、買受けに係る特定金属くずが盗品に由来するものである疑いがあると認めたときの警察官への申告を義務づけ、併せてケーブルカッター等のうち犯行使用のおそれが大きい工具の正当な理由なき隠匿携帯を禁止している。特定金属くず買受業を営む者に対する指示、営業停止命令、報告徴収・立入検査、違反行為に対する罰則等の規定を置いている。なお、地方公共団体が、金属くずの買受けに関し条例で必要な規制を定めることを妨げるものではないとしている。同法案の概要については、警察庁資料「盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律案(概要)」を参照されたい。