日本一の条例
(令和6年12月14日更新)
【日本一の条例】
〇 本稿では、日本一の条例を取り上げる。と言っても、内容が日本一すばらしいとか、評価が日本一高いとか、条文数が日本一多いとか、などというものではない。条例名に「日本一」との文字が使用されている条例である。
条例名に「日本一」との文字が使用されている条例として、以下のような条例が確認できる。
条例名に日本一と書かれてあれば、いったい何が日本一なのだろうか、どうして条例名に日本一と掲げたのだろうか、などの疑問がわく。
こうした条例について、紹介することとしたい。
熊本県南阿蘇村 | 平成20年3月27日公布 | 平成20年3月27日施行 |
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山形県朝日町 | 平成20年9月12日公布 | 平成20年9月12日施行 |
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鳥取県 | 平成20年10月21日公布 | 平成21年4月1日施行 |
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静岡県静岡市 | 静岡市めざせ茶どころ日本一条例 | 平成20年12月12日公布 | 平成21年4月1日施行 |
島根県邑南町 | 平成23年6月23日公布 | 平成23年6月23日施行 |
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福井県坂井市 | 平成27年3月26日公布 | 平成27年7月1日施行 |
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静岡県袋井市 | 平成28年3月31日公布 | 平成28年4月1日施行 |
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大阪府池田市 | 子どもを育てる教育日本一のまち池田条例 |
平成28年6月24日公布 | 平成28年7月1日施行 |
大分県 | 平成29年3月14日公布 | 平成29年3月14日施行 |
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兵庫県養父市 | 平成30年3月13日公布 | 平成30年4月1日施行 |
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青森県むつ市 | 平成30年3月20日公布 | 平成30年3月20日施行 |
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岡山県浅口市 | 浅口市日本一の天体観測適地を守る条例 | 平成30年3月23日公布 | 平成30年4月1日施行 |
兵庫県南あわじ市 | 令和2年3月27日公布 | 令和2年4月1日施行 |
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京都府 | 令和5年12月22日公布 | 令和6年4月1日施行 |
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宮崎県 | 令和6年3月22日公布 | 令和6年4月1日施行 | |
茨城県 | 令和6年6月28日公布 | 令和6年6月28日施行 |
(南阿蘇村条例)
〇 南阿蘇村条例は、「桜日本一里づくり推進のため長野貞春氏から寄贈された桜を適正に管理する経費の財源に充てるため」、「南阿蘇村桜日本一里づくり基金」を設置することを目的としている(1条)。
〇 南阿蘇村出身の長野貞春氏が、「海外視察先のアメリカのワシントン州で、東京都が寄贈した満開の桜を見たとき、その見事さと寄贈があった経緯に感動され、っ『桜日本一の里づくり』運動による村おこしを思い立ち、南阿蘇村に対しての桜の贈呈を決意」(公報みなみあそ2020年7月号「特集 長野貞春さんの功績を偲んで」)したことが、南阿蘇村の桜日本一里づくり運動の契機となっている。
(朝日町条例)
〇 朝日町条例は、「朝日町を愛し応援しようとする個人又は、団体から広く寄付金を募り、これを財源として各種事業を実施し、寄付者の朝日町に対する思いを具現化すること」(1条)を目的とし、寄付金の使途、基金の設置・管理等を定めている(2条~10条)。
〇 「日本一のりんご」については、「日本一の『無袋ふじ』その結果、りんごは『無袋ふじ』として全国的に最も優秀な品質の生産地としての地位を確立しました。」(朝日町HP「日本一のりんごづくり」)としている。
(鳥取県条例)
〇 鳥取県条例は、「鳥取砂丘の保全と再生及びその利用について、基本理念を定め、県及び砂丘利用者の責務を明らかにするとともに、鳥取砂丘の保全と再生及びその利用に関する施策の基本となる事項を定めること」(1条)を目的としている。
〇 鳥取砂丘については、前文で、「鳥取砂丘は、千代川及び日本海の浸食・堆積作用と季節風の吹寄せ力により形成された我が国最大級の海岸砂丘」であり、「貴重な自然を有するのみならず、先人の努力により特色ある産業・文化活動、学術研究等の拠点ともなっており、非常に多面的な価値を有する県民共有の財産であり、世界に誇れる本県の至宝とも言うべき存在」であるとしている。
〇 鳥取県条例の内容等については鳥取県HP「日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例」を、鳥取砂丘については鳥取砂丘ビジターセンターHP「ようこそ鳥取砂丘へ」を参照されたい。
(静岡市条例)
〇 静岡市条例は、「静岡市内で生産されるお茶はもちろん、静岡市内で加工・流通するお茶すべてを『静岡のお茶』として定義し、市、市民、茶業者等がそれぞれの役割を理解し、互いに連携しながら静岡のお茶の魅力を高めていくための施策を推進することによって、静岡のお茶に関する産業の振興及び市民の豊かで健康的な生活の向上を図ることを目的」(静岡市議会HP「静岡市めざせ茶どころ日本一条例」)としている。
〇 「茶どころ日本一」をめざすことについては、前文で、「静岡市では、『養生の仙薬』といわれるお茶が鎌倉時代から栽培されてきた。市域の至る所に産地があり、静岡のお茶として全国的に有名な緑茶が生産されている。静岡市は、全国有数のお茶の集散地であり、茶業は、本市にとって重要な産業となっている。」、「しかしながら、近年、生活様式や流通の変化により茶業の収益性及び集散地としての機能が低下し、静岡のお茶を取り巻く環境は、非常に厳しいものとなっている。」としたうえで、「私たちは、先人たちが築き上げてきたお茶の伝統、文化、産業等を守り、静岡市を日本一の茶どころとして育て次代に引き継ぐため、この危機的な状況に立ち向かわなければならない。」としている。
〇 静岡市条例は、議員提案により制定されているが、その内容や条例を踏まえた議会としての政策提言等については、静岡市議会HP「静岡市めざせ茶どころ日本一条例」を参照されたい。
(邑南町条例)
〇 邑南町条例は、「日本一の子育て村を目指すために行う事業の財源に充てるため」、「邑南町日本一の子育て村推進基金」を設置することを目的としている(1条)。
〇 「日本一の子育て村」構想については、邑南町は2011年(平成23年)から「攻めと守りの定住プロジェクト」を進め、「守り」として、「日本一の子育て村を目指すこととし、既に移住している人々への徹底したケア等の取組みを行いました。特に、子育てをアピールする自治体は当時としては珍しく、『中学校卒業までの医療費無料』『保育料第二子以降完全無料』などの施策が効果を発揮しました。その結果、2013年には、町村合併後初めて社会増(転入者数>転出者数)を記録し、以降、2015年まで連続して社会増が続いています。」(「国土交通白書2018」第1章第2節コラム「島根県邑南町(おおなんちょう)の取組み」)としている。
〇 邑南町の「攻めと守りの定住プロジェクト」については、第31次地方制度調査会第11回専門小委員会(平成26年12月2日)「資料4 島根県邑南町長 提出資料」を参照されたい。
(坂井市条例)
〇 坂井市条例は、「日本最古の天守閣として知られる丸岡城及び日本一短い手紙『一筆啓上賞』を紹介することにより、歴史と文化のまちを継承し、新たな手紙文化の創造と市街地のにぎわい創出に寄与するため」、「坂井市一筆啓上日本一短い手紙の館」を設置することを目的としている(1条)。
〇 日本一短い手紙「一筆啓上賞」とは、「『一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ』 北陸地方唯一の現存天守をもつ丸岡城に、この手紙文を刻んだ石碑があります。徳川家康の家臣・本多作左衛門重次が陣中から妻に宛てたこの手紙には、家を守り、家族を愛し、忠義を尽くす思いが短い文の中に簡潔に込められています。お仙とは後の丸岡城主、本多成重(幼名仙千代)のことです。一筆啓上賞は丸岡城に日本一短い手紙文があることを全国に知ってもらうとともに、活字やメールでは伝わらない本物の手紙文化の復権を目指すという目的で、全国初の手紙のコンクールとして平成五年(1993)に始まりました。」(丸岡文化財団HP「一筆啓上賞」)としている。
〇 一筆啓上日本一短い手紙の館については、同館HP「この館について」を参照されたい。
(袋井市条例)
〇 袋井市条例は、「袋井市が目指す日本一健康文化都市の実現に向けて、基本理念を定め、市民、地域団体、事業者、市議会及び市がそれぞれの役割と責務を担い、協働によるまちづくりのための施策を総合的かつ計画的に推進」(1条)することを目的としている。
〇 「日本一健康文化都市」については、前文で、袋井市は「平成22年に『日本一健康文化都市』を宣言し、市民の生活の向上と地域の発展に努めてきました。健康文化都市とは、健康がまちの文化として共有され、身体的にも精神的にも、そして社会的にも良好な状態である都市のことです。また、高い志の下に、自らが胸を張って誇れるまちを築くため、『日本一』を掲げています。この日本一健康文化都市を実現するためには、みんなで人づくりとまちづくりに取り組むことが必要です。」としている。
〇 「日本一健康文化都市」の成果については、袋井市HP「「日本一健康文化都市」が世界から評価!~WHO表彰とAFHC表彰の5部門で受賞~」を参照されたい。
(池田市条例)
〇 池田市条例は、「『教育日本一のまち池田』を実現するための基本理念を定めるとともに、市長、教育委員会、学校等、保護者及び地域の団体等の責務を明らかにすることにより、教育施策を総合的かつ計画的に推し進め、世界に羽ばたく池田の子どもを育てること」することを目的としている(前文)。
〇 「教育日本一」を標榜する池田市の取組みについては、池田市資料「「教育日本一」をめざすいけだの教育がわかる本」を参照されたい。
(大分県条例)
〇 大分県条例は、「健康寿命日本一おおいた県民運動について、その基本理念を定め、県民、県、健康づくり関係者(・・・)及び事業者の役割等を明らかにするとともに、県民運動の推進に関する本県の施策の基本となる事項を定めることによって、健康寿命日本一おおいた県民運動を推進」(1条)することを目的としている。
〇 「健康寿命日本一おおいた」をめざすことについては、「大分県では、健康上問題のない状態で日常生活を送ることができる期間である『健康寿命』を延伸し、すべての県民が生涯にわたり、健康で活力ある生活を送ることができるよう『健康寿命日本一』の実現を目標に掲げています。令和3年12月の発表では、男性1位、女性4位と飛躍的に順位を伸ばし、男性は『日本一』を達成しました。これまで県では『健康寿命日本一おおいた創造会議』をプラットフォームとして、健康アプリ『おおいた歩得』を活用した運動の促進、塩分控えめで野菜たっぷりな食事『うま塩・もっと野菜』の普及、『健康経営事業所』の登録数を増やし、事業所ぐるみで健康づくりの取組を行うなど、官民一体となったさまざまな取組を推進してきました。引き続き、県民総ぐるみの健康づくりにご協力お願いします。」(大分県HP「めざせ!健康寿命日本一おおいた」)としている。
〇 大分県条例は、議員提案により制定されているが、その内容等については、大分県議会HP「健康寿命日本一おおいた県民運動推進条例の制定」を参照されたい。
(養父市条例)
〇 養父市条例は、「養父市発足から15年を迎え、まちづくりが創生期から成長期へと推移していく段階において、市が目指すべきまちの姿を宣言し、市民、議会及び市が実現に向けて協働していくこと」(1条)することを目的とし、市が目指すべきまちの姿として、①日本一農業をしやすいまち、②日本一子育てをしやすいまち、③日本一福祉が充実したまちを宣言する(2条)としている。
(むつ市条例)
〇 むつ市条例は、「むつ市のうまいは日本一の名の下に市における地産地消及び地産外商の推進に関する基本理念並びに生産者、事業者、市民及び市の役割を定め、農林水産物の消費及び利用拡大を推進すること」(1条)を目的としている。
〇 「むつ市のうまいは日本一」をめざすことと条例の制定について、「むつ市にはイカやホタテなど全国に誇れる逸品があるにもかかわらず、残念ながらその良さを十分に認識されていませんでした。そこで地域の逸品を地域で消費し、その素晴らしさを再認識したうえで全国に広めようという趣旨のもとに、平成19年『むつ市のうまいは日本一!推進プロジェクト』事業(通称:むつうまプロジェクト)が始動しました。」、平成29年度で10年目の節目を迎え、「これまでの取り組みの総まとめと、これからのビジョンを明確にし、さらに市民の皆様と『むつ市のうまいは日本一!』を推進するため、平成30年3月『むつ市のうまいは日本一条例』(通称:むつうま条例)を制定しました。」(むつ市資料「むつ市のうまいは日本一条例が制定されました!」)としている。
〇 「むつ市のうまいは日本一」の取組みについては、むつ市HP「むつ市のうまいは日本一!」を参照されたい。
(浅口市市条例)
〇 浅口市条例は、「浅口市が晴天率が高く、大気が安定しているため、優れた天体観測適地として広く認められ、世界最先端の観測が行われていることを踏まえ、観測に影響を与える光(以下「光害」という。)の防止に努めることで、浅口市の美しい星空環境を守ること」を目的としている(1条)。
〇 「日本一の天体観測適地」について、「昭和35年、竹林寺山に当時日本最大の望遠鏡を備えた国立天文台岡山天体物理観測所が建設され、半世紀以上にわたり天体観測のメッカとして、世界最先端の観測が行われてきました。さらに、平成30年、東アジア最大の大きさと世界一の技術を兼ね備えた3.8m反射望遠鏡『せいめい』をもつ京都大学岡山天文台が完成しました。」、「なぜ日本一の天文台が浅口市に建設されたのでしょう? 〇晴天率が高いこと 〇大気が安定していること 〇星空がきれいに見えること これらが天体観測の研究者がこの地を選ぶ理由です。天体観測の地として非常に優れていることから浅口市は『日本一晴れの国』とも呼ばれています。」(浅口市HP「天文台のまち あさくち」)としている。
(南あわじ市条例)
〇 南あわじ市条例は、「子どもたちがやりたいことを見つけ、自ら努力し、成長し、能力を最大限に伸ばせる『学ぶ楽しさ日本一』の教育環境づくりに取り組み、もって夢と志を持つ未来を担う人づくりに資するため」、「南あわじ市学ぶ楽しさ日本一基金」を設置すること(1条)を目的としている。
〇 「学ぶ楽しさ日本一」について、「南あわじ市は、第2次南あわじ市総合計画(2017~2026年度)の中で、まちづくりにおいては『人』がすべての中心であるとの考えのもと、『ひかり輝く人づくり』を柱の1つに位置付け、次世代を担う人材の育成を進めています。それを受けて、教育委員会では、2020年度から5年間の第3期南あわじ市教育振興基本計画のテーマを『学ぶ楽しさ日本一』としました。そして、次のような『学ぶ楽しさ』を追求し、実感できる取組を学校・家庭・地域で推進していきます。」、「1、『わかる』『できる』楽しさ 2、困難なことにもチャレンジする楽しさ 3、考え工夫し、想像する楽しさ 4、仲間と協働してやりとげる楽しさ 5、ふるさとをよりよく知る楽しさ 6、思いや考えを表現する楽しさ 7、本物にふれる楽しさ 8、夢や志を見つけ、社会に貢献する楽しさ この『学ぶ楽しさ日本一』の実現をめざす取り組みでは、『ほめること』を大切にすることで『自己肯定感』を高め、『読解力』を核にしながら、思考力・判断力・表現力、コミュニケーション能力や創造力、やり抜く力など様々な資質・能力を向上させていきます。」(南あわじ市HP「南あわじ市がめざす教育「学ぶ楽しさ日本一」」)としている。
(京都府条例)
〇 京都府条例は、「子育て環境日本一・京都の実現に向けた取組に関する基本理念を定め、社会を構成する各主体の責務及び役割を明らかにするとともに、それらの主体の一体となった取組により、子育て環境日本一・京都の実現を図る」(前文)ことを目的としている。
〇 「子育て環境日本一」をめざすことと条例の制定について、「京都府が目指す『子育て環境日本一』は、子どもや子育て世代をはじめ、全ての人にとって暮らしやすい京都です。その実現のためには、『人と地域の絆』など京都の強みや特色を生かしながら、社会の構造や価値観も変えていかなければなりません。この度、『子育て環境日本一推進戦略』を改定し、4つの重点戦略と20の重点プロジェクトを掲げるとともに、『戦略』を前に進めるためのエンジンとして『子育て環境日本一・京都の実現に向けた取組の推進に関する条例』を制定しました。」(京都府HP「「子育て環境日本一」を目指して」)としている。
(宮崎県条例)
〇 宮崎県条例は、「本県の強みを生かして、『子ども・若者』、『グリーン成長』及び『スポーツ観光』の分野において日本一に挑戦するプロジェクトを安定的かつ機動的に展開する」ため、「日本一挑戦プロジェクト推進基金」を設置すること(1条)を目的としている。
〇 「3つの日本一挑戦プロジェクト」について、「子ども・若者プロジェクト」として「日本一生み育てやすい県への挑戦!~県・市町村一丸となって、子ども・若者政策の好循環を創出し、人口減少を抑制~」を目指し、「グリーン成長プロジェクト」として「再造林率日本一への挑戦!~ゼロカーボン社会と地域資源を活用した産業成長の実現~」を目指し、「スポーツ観光プロジェクト」として「スポーツ環境日本一への挑戦!~スポーツ環境の充実により、地域経済の活性化、観光振興などの好循環を創出~」を目指すとしている(宮崎県HP「3つの日本一挑戦プロジェクトについて」」)。
(茨城県条例)
〇 茨城県条例は、「健康寿命の延伸は、県民一人一人の幸福ばかりでなく、社会全体の幸福につながるものであることから、県民の理解を得て全世代における健康づくりを積極的に進めていく必要があると考える。そこで、健康づくりのための指針を策定し、健康長寿日本一を目指すため、ここにこの条例を制定する。」(前文)としている。
〇 「第2次茨城県総合計画~「新しい茨城」への挑戦~」は、基本理念を「活力があり、県民が日本一幸せな県」とするとともに、Ⅱ「新しい安心安全」の中の政策7として「健康長寿日本一」を掲げている。また、「第9期いばらき高齢者プラン21」も、政策目標を「健康長寿日本一」としている。。