公営住宅使用料の時効、不能欠損の取扱い

公営住宅の使用料の消滅時効については、適用される法律は民法ですか、地方自治法ですか。

公営住宅の使用関係については、借家法が一般法として適用されるとするのが、判例の考え方ですし(最高裁昭和59年12月13日判決・判例時報1141号58頁、同平成2年6月22日判決・判例時報1357号75頁)、学説上もその使用関係が私法関係であるとするのが通説といえます。

公営住宅の利用の実態からいっても、入居者の選別については、一定の要件を具備した者に対し、使用許可という行政処分の形をとっていますが、これも形式的行政処分と考えられ、住宅困窮者に対し、公平に使用機会を付与するという機能を持たすための法技術です。さらに、公営住宅の使用が開始されると、入居者と地方公共団体との関係は、一般の建物の賃貸借と本質的に異なることはありません。

むしろ公営住宅の利用関係に関する問題は、使用関係が私法関係であるということから、直ちに、使用許可処分を除くすべての場面で、一般の賃貸借契約と同一に扱うべきか否かにありますが、ご質問の時効については、一般の賃貸借と異なる扱いをする理由はありません。すなわち、公営住宅の使用料は、公営住宅の設置目的から、低額に抑制されてはいますが、公営住宅の使用の対価であることは明らかです。また、公営住宅の使用料については、地方自治法231条の3第3項に規定する「法律で定める使用料」には該当しませんので、使用料の滞納については、一般の建物賃料の滞納に対するのと同様に、民事訴訟法の手続に従い強制徴収するしかなく、その結果、一般の建物賃借料と異なる扱いをする理由がないからです。

確かに、公営住宅の家賃は地方自治法における使用料と考えるべきものとする考え方もありますが、実務的には、前記の通り、地方自治法上の使用料とすべき理由はありません。

したがって、公営住宅の使用料に関する時効は、民法169条によるべきであり、時効完成前又は援用がない場合の欠損処分は、権利の放棄となり、議決事項となるものとして取り扱うべきと考えます。