建築制限条例

建築基準法49条に基づく建築制限条例を改正するに際して、改正条例施行期日までに着工していない建築物、例えば事前協議を行っているものについても、経過規定において、適用除外とすることが可能ですか。また、条例公布から施行までの間にどのくらいの期間をとるのがよいですか。

建築基準法3条2項は、時間的適用範囲として、建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際、現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替えの工事中の建築物若しくは敷地に対しては、当該規定を適用しない旨を規定しています。これは、「既存不適格」と呼ばれる制度で、新たな規定又は制限の適用による公益の増進と建築主の既得的地位との調和を図るものです。

「工事中の建築物」といえるためには、建築工事の着工と判断できる行為が必要ですが、その判断は難しく、現実には、国立市のマンション建築をめぐる一連の紛争でも、裁判所により、考え方が分かれているところです。

建築主事に対する事前協議については、建築工事の着工に該当しないことは明らかです。そこで、経過規定として、条例附則により、事前協議がなされている建築計画については適用除外にすることを考えられているようですが、これは可能です。すなわち、建築基準法は、「規定の施行又は適用の際」と規定していますから、条例自体に、適用をしない旨の規定があれば、これに該当しないからです。

次に、改正条例の施行日についてですが、十分な周知期間を設けて施行日を決めることは、建築主の既得的地位との関係では望ましいことと思われます。ただし、建築制限条例を改正するには、それに対応する立法事実があるはずです。言い換えれば、建築制限条例を改正しないと、まちづくりに支障があることや頻発する近隣住民との紛争を抑制できないことなとがあるはずです。立法事実の如何によっては、かけ込みの確認申請が予想され、条例の公布から施行までの間に時間をおくことにより、条例改正による公益増進が損なわれる場合もあり得ます。この点を考慮して、施行時期を定めることが必要と思います。

なお、施行時期について、周知期間を考慮して、十分な期間を設定したときは、附則による経過規定は設ける必要はないと思います。

また、周知期間として、条例公布後、当該建築物の建築にかかる申請から工事着手までの平均的な期間を想定することには、合理性があると思いますが、やはり、条例改正による公益性の増進との関係も考慮すべきでしょう。その際、条例改正前に、条例を改正する予定である旨を事業者などに知らせている場合には、施行日までの期間は短めになると考えます。