水道料金債権の督促手数料

平成15年10月10日の最高裁の決定により、判例上、水道料金債権は私法上の債権と確定したところですが、当市では、従来水道料金を公の施設の使用料とし、水道料金の未納者に対しては、地方自治法231条の3の規定により、督促状を発し督促手数料を徴収してきました。前記最高裁決定後は、この取扱いはできなくなると考えてよいでしょうか。また、すでに行ってしまった督促の効果及び徴収した督促料はどのようにしたらよいでしょうか。

水道料金が私法上の債権であるとする判例が最高裁で支持されたことは当然のことだと考えられます。水道事業者と利用者は、水道法上、契約関係にあり、これをあえて公法上の契約関係とする必然性に乏しかったからです。それにもかかわらず、これを公法上の契約とする考え方が根強く残っていたものです。したがって、最高裁が、私法上の契約であることを明確にした以上は、今後は、水道料金の未納者に対して、地方自治法231条の3に基づく督促状を発することはできまん。

そこで、ご質問のように従来、地方自治法に基づく督促として、督促手数料を徴収していた場合に、徴収していた手数料を返還する必要があるかどうかが問題になります。しかしながら、督促手数料を徴収するためには、条例が必要ですから、督促手数料を徴収していた地方公共団体は、末尾記載のような規定を条例で定めていたはずです。この規定の解釈として、水道供給契約の一部を条例で定めていたと解することが可能です。

無効な行為の転換に準じた考え方です。したがって、すでに行った督促行為は、私法上の催告と考えることができ、民法153条の要件を充足すれば、時効中断の効力を有するものと考えてよいと思います。また、すでに徴収した督促手数料は、契約に従って徴収したものですから、不当利得にはならないと考えることが可能です。

<水道条例の例>
第○条 納期限までに料金及び手数料を完納しない場合は、市 長は納期限後20日以内に督促状を発行する。
2 前項の督促状に指定すべき納付期限は、発行の日から15日以内とする。
第○条 手数料は、次の各号の区分により、これを徴収する。
(2) 第○条の規定による督促手数料 督促状1通につき 100円