土地区画整理事業と道路管理の権限

当市内で、土地区画整理組合が土地区画整理事業を行っていますが、保留地の売却価格の下落が予想され、できるだけ事業費を抑制しようと考えています。その一つの対策として、仮換地指定により、拡幅する道路用地が確保できた時点で、組合の要請により、市があらかじめ、道路区域の決定をしたうえで、道路管理者として、道路工事を行うと、既存道内の占有物件を道路法72条2項1号により、無償で移転させることができると思われますが、このように考えることに問題はありませんか。

土地区画整理事業は、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業ですが(土地区画整理法2条)、道路、公園等の公共施設については、道路法、都市公園法等の公物管理法の適用を受けます。そのため、土地区画整理事業施行区域内においても、道路、公園等の新設又は変更を公物管理者が行えると主張する公共団体も存在します。

しかしながら、土地区画整理組合による土地区画整理事業が行われる場合には、知事の土地区画整理組合の設立認可が行われます(同法14条)。設立認可がなされたことにより、事業施行区域内における公共施設の新設又は変更に関する事業を行う権限は、土地区画整理組合に付与されることとなりますから(同法3条2項)、この限りで、公物管理権者の権限は制約されるものと解されます。現に、土地区画整理法は、土地区画整理事業の施行により整備された公共施設については、公物管理法で定められている管理者への管理引継規定(同法106条)、その敷地の帰属に関する規定(同法105条)を設け、土地区画整理組合が公共施設を新設又は変更することを当然の前提としています。

ただし、土地区画整理法100条の2は、仮換地指定処分により、使用収益することができる者がいなくなった従前の宅地については、換地処分の公告がある日まで、施行者がこれを管理すると規定されているので、ご質問のように、施行者は道路管理者に対し、使用収益をする者がいなくなった土地を無償で使わせることができ、この無償使用権を権原に、道路法に基づき、道路管理者が道路工事を行うことが可能であるとする考え方が生まれます。しかし、これでは、土地区画整理法106条、105条の適用の余地がなくなり、結局、公物管理者は公共施設用地の所有権を取得することができなくなると考えられます。また、土地区画整理施行者に公共施設整備に関する補助金が出ている場合、これを返上しないと、補助金等に係る予算執行の適正化に関する法律違反になります。

したがって、ご質問のような便法をとることは違法といわざるを得ませんので、避けてください。土地区画整理事業の事業費の不足が見込まれる場合に、道路整備費を削減したいのであれば、事業計画を変更して、沿道区画整理型街路事業の手法を併用されることをおすすめします。この手法によれば、土地区画整理事業施行者は、道路上の空地を確保することで、道路という公共施設の新設又は変更の事業を終了したことになり、道路整備に要する費用は、都市施設の整備を行う者の負担となり、土地区画整理組合がこれを負担する必要がなくなるからです。ただし、この場合には、道路上の空地を確保するために、従前の道路の占有物件については移転補償を行うこととなります。