行政対象暴力への対応

当市の庁舎に市民であるA氏が、毎日のように、「市長に会わせろ」といって、長時間居座ったり、大声を上げて騒いだりして困っています。A氏を退去させる方法はありませんか。

地方公共団体にとって、住民は、その存立基盤です。したがって、住民が執務時間内に、市庁舎に出入りすることが自由であることは当然のことと考えられています。その結果として、ご質問のような場合が発生するものと思われます。

しかし、住民が執務時間内に、自由に市庁舎に出入りすることができるとされているのは、正当な目的のためであって、住民が、不正な利益の提供を求め、市職員、市長らに対し、圧力をかける場合には、上記の原則には含まれません。

当然、市は、庁舎管理権に基づき、執務を妨害したり、他の住民までも不快、恐怖を感じさせるような行動をとる住民に対しては、退去を求めることができるだけではなく、退去を求めるべきものと考えます。退去を求めたにもかかわらず、これを無視して、住民が居座る場合には、速やかに、警察に連絡し、悪質な場合には、不退去罪で告発することも必要と考えます。ただし、市職員や警備員が実力で排除することは新たな口実を与えることになりかねませんので、差し控えてください。

一般に、地方公共団体の職員、首長は、住民という言葉に呪縛され、違法行為をはたらく住民に対しても、一般の善良な住民と同じ対応をとりがちです。はなはだしい事例としては、職員の机の上に刃物を突き立てられても、警察に通報することをためらい、結局は通報をしなかったという話もあります。やはり、住民の行為といえども、違法行為と判断できる、あるいは違法行為と感じる場合には、速やかに退去を求めるべきです。

特に悪質と思われる住民や、行政対象暴力と思われる場合については、すぐに警察と連絡をとり、対応するとともに、地元の弁護士会の民事介入暴力担当委員会に相談をすべきです。