指定管理者と協定を結ぶのは誰か

当市では、教育委員会が所管する公の施設について、指定管理者を指定しましたが、指定管理者との間で協定書を締結する場合、当市側の協定書を締結する当事者として、教育委員会と市長とどちらが適当でしょうか。

明確な法律の規定がないので悩むところです。考え方としては、次の4つがあるのではないかと思います。

指定管理者の指定は、契約行為ではなく、行政処分の附款と考えれば、協定書の締結者は、教育委員会の代表者である委員長となる。
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」17条及び当市の「教育委員会教育長に対する事務委任等に関する規則」によれば、教育委員会の権限に属する事務については教育長が行なうこともできるものとされているから、教育長が協定を締結する。
「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」24条4号の規定により、市長の権限として「教育委員会の所掌に係る事項に関する契約を結ぶこと」が規定されているから、行政処分である指定管理者の指定を契約行為に準ずるものとして、市長が協定を締結すべきである。
行政処分権者である教育委員会、使用料の収入、委託料の支出、財産の管理の事務を所掌する市長と指定管理者との三者による協定を結ぶべきである。

以上の考え方を検討する前に、指定管理者の指定の性格から確認します。指定管理者の指定は、行政処分であり契約ではないと解されています。しかし、指定管理者を指定しただけでは、管理の基準や、業務の範囲等条例で定めた事項のほかは、定まっていません。そこで事業報告書の提出期限、委託料の額、委託料の支払方法、施設内の物品の所有権の帰属等管理業務を実際に行なうに際して必要な事項を定めておく必要があり、地方公共団体と指定管理者との間において、協定書を締結し、その内容を明確にしています。

この協定書の性格については、これを契約と考えるべきであるとする考え方もありますが、やはり基本的には行政処分の附款であって、指定管理者の同意を必要とするものと考えるべきではないでしょうか。ただ、そのすべてが実質的にも附款たる性格を有するものではなく、内容よっては実質的には契約と考えざるを得ない部分もあると考えますが、形式的にはやはり附款とすべきでしょう。

次に、協定の内容を検討していくと、使用料の収入、委託料の支払い、財産の管理(教育財産は除く。)等は地方自治法上、長の権限とされていますから、この部分については協定書の締結権者は市長と考えます。

したがって、上記4つの考え方のうち、④の考え方が妥当ではないかと考えます。ただし、この考え方は、一部の地方公共団体でとられている考え方で、他の考え方が誤っているとまではいえません。