地域包括支援センターを置いている場合の「指定介護予防支援事業者」の指定

介護保険法第58条では、「当該市町村の長が指定する者(以下『指定介護予防支援事業者』という。)」と規定し、同法第115条の20第1項で、「第58条第1項の指定は、厚生労働省令で定めるところにより、同法第115条の39第1項に規定する地域包括支援センターの設置者の申請により、介護予防支援事業を行う事業所…ごとに行」うと規定しています。
ところで、市自らが地域包括支援センターを置いている場合にも、第58条に規定する「指定介護予防支援事業者」の指定を受ける必要があるのでしょうか。

第58条に規定する「指定介護予防支援事業者」の指定は、行政処分と考えられますので、市自らが地域包括支援センターを置いている場合には、指定という行為は不要と考えてよいのではないでしょうか。

地域包括支援センターが、「包括的支援事業」(同法第115条の38第1項第2号から第5号までに掲げる地域支援事業その他厚生労働省令で定める事業、同法第115条の39第1項)を行うとともに、保険給付としての「介護予防支援事業」を行うのであれば、市自らが地域包括支援センターを置いている場合にも、「指定介護予防支援事業者」の指定を受ける必要があると考えられます。

「介護予防支援事業」とは、指定介護予防サービス等の適切な利用等をすることができるよう、地域包括支援センターの職員のうち厚生労働省令で定める者が、居宅要支援者の依頼を受けて、諸般の事情を勘案し、介護予防サービス計画を作成するとともに、介護予防サービス計画に基づく指定介護予防サービス等の提供が確保されるよう、指定介護予防サービス事業者、指定地域密着型介護予防サービス事業者その他の者との連絡調整その他の便宜の提供を行う事業をいいます(同法第8条の2第18項)。

保険給付をなす以上、給付に見合うだけのサービスを提供することのできるだけの人的、物的規模を備えた事業者であるか確認する必要があり、法は、そのために介護予防支援事業についても事業者が指定を受けていることを要求していると考えられます。そして、この確認をする必要性は、市自らが事業者となる場合であっても変わりがないと考えられます。したがって、市が事業者であっても指定が不要になるとはいえないのです。

また、ご質問者が疑問に感じられている市に対し行政処分を行うという点ですが、介護保険法第115条の20に定める行政庁としての市長が、自ら代表者である市を指定することになりますが、行政庁としての市長と団体としての市の代表者としての市長は別な存在ですから、問題ありません。このような例は、外にもあります(例えば、公有水面埋立法に基づき知事が、県に免許を与える場合)。