2007年 秋

条例で定めるべき事項

Question

当市では、保育所の保育料について、規則で所得税を保育料の算定根拠としておりますが、国と地方の財源配分の変更により、所得税額が減額されたため、規則変更をしないと保育料収入が大幅に減額となってしまいます。そこで、来年度から、新たな算定基準により保育料を徴することができるように、規則改正を考えておりますが、議会からは、保育料については、条例で定めるべきではないかと指摘があります。

保育料については、条例で定める必要があるのでしょうか。

Answer

保育園の保育料に関しては、規則で定めている例と条例で定めている例があります。この点について、地方分権一括法施行前に、当時の自治省から示された有権解釈は、規則によるべしとするものでした。すなわち「児童福祉法56条1項(当時)の費用の徴収については条例によらず、市町村長において定めるべきである。」(昭和33年12月27日滋賀県総務部長宛行政課長回答)、「児童福祉法56条1項(当時)の規定により徴収する費用は、同条に直接根拠をもつ負担金であり、市町村長限りでこれを定め徴収しうるものと解する。」(昭和44年3月13日三重県総務部長宛行政課長回答)としています。

その趣旨については、「保育所は公の施設に該当し、本来ならばその使用の対価はすべて自治法225条及び228条第1項の規定により条例で定める使用料として徴収すべきものである。」が、児童福祉法56条3項が「保育費用を支弁した市町村の長は、本人又はその扶養義務者から、当該保育費用をこれらの者から徴収した場合における家計に与える影響を考慮して保育の実施にかかる児童の年齢等に応じて定める額を徴収することができる。」と規定していることから、保育料に係る徴収金の性格は、同条に直接根拠をもつ負担金であり、「したがって、その徴収については、別段条例上の根拠を要せず、市町村長は、児童福祉法56条の規定に基づいて徴収し得るものと解される。」(新訂注釈地方自治法関係実例集688頁)というものです。

ところで、条例で定めるべき事項と規則で定めるべき事項に関しては、法令上明らかな場合には、それに従うこととなります。例えば、平成11年改正前の(旧)自治法15条2項においては、「普通地方公共団体の長は、……普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と規定し、他方(旧)14条5項は「その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁固、100万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができる。」とし、過料を科す旨の規定は規則事項であることが明示されていました。

しかし、条例事項とも規則事項とも規定されていないものの取扱いについては、考え方が分かれています。すなわち、大別して、①法令により区分されていない事項のうち、条例事項は議会の議決事項に限定し、他は規則事項であるとするもの、②法令により区分されていない事項は全て条例事項であるもの、③法令により区分されていない事項は全て条例と規則の共管事項であるとするもの、④法令により区分されていない事項のうち行政の一般的基準、基本的事項は原則として条例事項であり、その他の個別的、具体的事項は規則事項又は共管事項であるとするものがあります。

この点については、①の考え方は、議会の民主的基盤を軽視するものであり、また②の考え方は、地方公共団体が首長制を採り、長も議会も住民の直接選挙に基盤をおいていることを軽視し、かつ、機敏な行政活動を阻害するもので、いずれもとるべき立場とは考えられません。③と④との考え方は、本質的な違いはないものと考えますが、共管事項のうち、何を条例で制定すべきかは、議会の自律性を優先させるべきと考えるので、③の考え方が妥当でしょう。

以上に基づき、児童福祉法56条3項が、保育料に関する定めを規則事項としているかを検討します。確かに、児童福祉法56条3項は「市町村の長は、……額を徴することができる。」と規定していますから、規定上は、規則事項のような形式をとっているものといえます。しかしながら、この規定は、平成11年の地方分権一括法制定以前からの規定の仕方を踏襲するものであり、条文の表現方法からのみ、規則事項か否かを考えるべきではないと考えます。要は、実質に沿って考えるべきでしょう。しかるに、保育料は、本来は、公の施設の使用料の性格を有するものであることからすれば、児童福祉法56条3項の規定の存在のみによって、規則事項とすべきではないでしょう。

したがって、保育料に関する定めは、共管事項であり、条例、規則のいずれによっても定めることができるものと考えます。ご質問においては、議会において、保育料については条例で定めたいとの議会の意向ですから、原則的には、議会の意向を尊重して条例で定めた方がよいと思いますが、条例で規定する場合に、税制改正による保育料算定基準に改正が間に合わないということであれば、今年度に限り、規則改正で対応し、来年度から条例で規定する方向で議会側と調整されるのがよいと考えます。

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