2007年 秋

草刈り条例による勧告・措置命令

Question

当市では、空き地が適切に管理されないことにより「犯罪又は火災の発生並びに廃棄物の投棄等を未然に防止するため」に、いわゆる「草刈り条例」を制定し、空き地(現に使用していない土地)の所有者又は管理者に当該空き地が危険な状態にならないように適切な管理義務を課し、これに違反した者に対しては勧告や措置命令を行えるものとし、措置命令に応じない場合には、行政代執行法の規定により代執行を行うことができるとしています。

しかし、組合施行の土地区画整理事業において、仮換地指定処分が行われ、使用収益をすることができることとなった土地について、ある権利者が仮換地指定を不服として、行政不服審査の申し出をする一方、仮換地の管理を全くせず、仮換地内に、草が繁茂し、その高さは2m近くになっています。その権利者は、換地処分が行われるまでは、権利者といえども所有権を取得するわけではないので、草刈り条例に定める「所有者又は管理者」にあたらないから、管理義務はなく、草刈り条例に基づく勧告や措置命令を受ける立場にないと主張して、草刈りを行おうとしません。換地処分が行われるまで、草刈り条例により、勧告・措置命令をすることはできないのでしょうか。

Answer

草刈り条例において「所有者または管理者」とは、草刈り条例が当該空き地が危険な状態にならないように適切な管理義務を課すものである以上、いずれも、空き地について実質的、現実的に支配を及ぼしている者を意味し、特に所有者は、登記簿に所有権の登記を有している者に限らないものと考えられます。

ご質問にある土地区画整理事業とは、「都市計画区域内の一定の範囲の土地について、道路・公園・広場・河川等の公共施設の整備改善と宅地の利用増進を図るため、土地区画整理法によって行われる土地の区画形質の変更および公共施設の新設・変更に関する事業をいいます。」(都市計画・区画整理・収用の法律相談第4版120頁)。土地の区画形質の変更および公共施設の新設・変更を行う関係上、多くの場合、事業地域内の土地所有者等の権利者は、従前地(整理前の土地)から換地(事業により土地の区画形質の変更を受けた土地)に移ることとなります。しかも、面的に整備しますので、同時期に全ての土地を換地にするわけにはいきません。

そこで、土地の区画形質の変更および公共施設の新設・変更の工事を順次行い、整備が終わったところから、将来換地となる土地に順番に移転し、全ての権利者が移転し、工事も完了した時点で換地処分を行うこととなっています。事業着手から換地処分まで長期間要する例も少なくありません。将来換地となる場所に移転するために行われるのが仮換地指定処分(工事のための仮換地指定は除きます。)で、これにより、権利者は従前の土地を使用収益することを停止され、仮換地を使用収益することができるようになります。ただ、この仮換地指定処分の段階では、仮換地を使用収益することができるだけであって、仮換地の所有権を取得するわけではありません。所有権を取得するのは、換地処分によってとなります。

そこで、ご質問にある権利者の方は、仮換地指定処分に対する不服から、仮換地について所有権がないから、管理する義務もないと主張されているものと思われます。しかし、仮換地の指定処分により、仮換地の使用収益を開始した権利者は、法律上、仮換地の所有権を取得していないだけで、所有者と全く同一に排他独占的に仮換地を使用収益することができるようになります。したがって、草刈り条例に規定する「所有者または管理者」に該当することは明らかです。

市長としては、仮換地指定を受け、現に仮換地を使用していない者に対して、草刈り条例に従い、当該仮換地が危険な状態にならないように適切な管理義務を果たすよう、勧告・是正命令を行うことができます。

上へ戻る