随意契約の方法
地方自治法施行令167条の2第1項3号及び4号が規定する「普通地方公共団体の規則で定める手続」を、平成16年11月10日付け総務省自治行政局長通知に基づき、①あらかじめ発注見通しを公表すること、②契約を締結する前に契約内容等を公表すること、③契約を締結した後において締結状況について公表することという内容で、当自治体の規則において定めています。
第1設問(1)
1地方自治法234条2項の規定を受けた地方自治法施行令167条の2第1項3号(4号)は、同号で列挙する契約について「普通地方公共団体の規則で定める手続」によると定めています。
これは、地方公共団体の契約方法の原則である機会均等、透明性及び公正性を確保するための手続を規定する必要から、具体的な物品等を調達する手続の定めを普通地方公共団体の規則に授権したものです(平成16・11・10総行行第143号総務省自治行政局長地方自治法の一部を改正する法律等の施行について(通知)参照)。
2 以上のとおり、随意契約の手続を定める普通地方公共団体の規則は、単なる組織内部の手続規定ではなく、地方自治法の規定を受けた同法施行令の授権に基づく規定ですから、同規則の定める手続に違反した契約は、単なる組織内部の規則違反にとどまらず、随意契約の制限に関する地方自治法234条2項、同法施行令167条の2第1項3号(4号)の法令に違反する違法な契約となります。
第2設問(2)
1 上記のとおり、規則で定める手続に違反した契約は違法な契約となりますが、違法な随意契約の履行としての公金支出行為まで違法となるのかを考えるにあたっては、まず、違法な随意契約の効力を検討する必要があります。
この点について、最高裁は、随意契約の制限に関する法令に違反して締結された違法な契約であっても、随意契約によることができる場合として法令の規定の掲げる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や契約の相手方において随意契約の方法による当該契約の締結が許されないことを知り又は知り得べかりし場合のように当該契約の効力を無効としなければ随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効なるものと解するのが相当であると判示しています(最判昭和62・5・19、判例時報1240号62頁)。すなわち、違法な随意契約であっても特段の事情が認められる例外的な場合に限って契約が無効となると解しています。
ご質問のように、契約を締結した後において締結状況について公表することをしなかったような場合は、違法とはいっても手続的に一部不備があるにすぎず、また、契約の相手方にとっては(契約時において)知り得る事情ではないことから、契約の効力を無効とするほどの特段の事情が認められる場合とはいえず、違法な契約だとしても契約自体は有効となるでしょう。
2 では、違法な契約でも契約自体は有効である場合、当該契約の履行としてなされた公金支出は違法となるのでしょうか。
この点、前掲判例は、当該契約が違法であるとしても、それが私法上当然無効といえない場合には、普通地方公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから、右債務の履行として行われる行為自体はこれを違法ということはできないと判示しています。
結論として、違法な契約でも契約自体は有効である本問の場合、当該契約の履行としてなされた公金支出は違法ではないことになります。
第3設問(3)
地方自治法施行令167条の2第1項3号及び4号は、同号で定める契約について普通地方公共団体の規則で定める手続によることを要求していますが、条文の体裁からみて、契約の効力発生や効力消滅を規則で定める手続の完了という条件にかからしめる条件付契約について定めたものとは解せません。