2009年 冬

土地区画整理事業による移転と道路法

Question

地方公共団体施行の土地区画整理事業において、施行者が道路管理者として工事を行う際に、既存道路の占用物件を移転したいとき、道路法71条2項1号に該当しますか

Answer

理論的には、道路法71条2項1号には該当しませんが、日本電信電話株式会社の占用物件のみについては、道路法71条2項1号に該当するとの取扱が行われていることもあるようです。もし、質問者の市で既存道路内の占用物件を道路法71条2項1号に該当する場合と同じようにするためには、後述する建設省都市局と日本電信電話株式会社との間の覚書と同じ内容の覚書を日本電信電話株式会社との間で締結しておく必要がありますが、理論的に道路法適用場面ではない以上、現実には、難しいでしょう。

土地区画整理法77条は、施行者が、仮換地等を指定した場合、従前地の使用収益を停止させた場合又は公共施設の変更若しくは廃止に関する工事を施行する場合において、従前の宅地又は公共施設の用に供する土地に存する建築物等を移転又は除却することが必要となったときは、これらの建築物等を移転し、又は除却することができる旨を規定し、さらに同法78条は、77条1項の規定により施行者が建築物等を移転し、若しくは除却したことにより他人に損失を与えた場合又は同条第2項の照会を受けた者が自ら建築物等を移転し、若しくは除却したことによりその者が損失を受け、若しくは他人に損失を与えた場合においては、施行者は、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならないと規定し、土地区画整理事業により、建築物等を移転する場合には、移転補償を行うことを規定しています。

ところで、道路は、土地区画整理法上の公共施設の一つですから(土地区画整理法2条5項)、土地区画整理事業として道路の変更若しくは廃止に関する工事を施工する場合において、道路の用に供している土地に存する工作物を移転する場合には移転補償をしなければならないということとなり、既存の道路内の占有物件であっても、移転補償が必要になります。

ところが、平成10年7月21日に当時の建設省都市局と日本電信電話株式会社の間において、土地区画整理法事業等の都市計画事業に関し、「日本電信電話株式会社にかかる道路の占用物件等に要する費用の負担に関する覚書」が締結され、「道路区域にある電柱について、施行者の求めにより道路管理者が道路法(昭和27年法律第180号)第71条第2項1号の規定による移転等の措置を行う場合の当該移転に要する費用は会社が負担し、道路法71条第2項第2号及び第3号の規定による移転等の措置を行う場合の当該移転に要する費用は施行者が負担するものとする。」との合意がなされています。この覚書の前身は、日本電信電話株式会社が、日本電信電話公社の時代に締結された覚書が基本となり、若干の改正がなされ、現在まで引き継がれてきたもののようです。この覚書を根拠に、土地区画整理事業施行者が、道路管理者に対して、道路法71条2項1号に基づき既存道路内にある日本電信電話株式会社の占用物件を移転させて欲しいとの依頼をすると、道路管理者は、日本電信電話株式会社に対し、道路内の占用物件を無償で移転させることを求めてきます。土地区画整理事業の施行者である地方公共団体が道路管理者となっている場合はもちろんのこと、他の地方公共団体又は国が道路管理者である場合でも、道路管理者は道路内の占用物件を無償で移転させることを求めてきます。

そして、この覚書は、建設省都市局と日本電信電話株式会社との間のものですが、行政関係者では、当然に、地方公共団体が施行者の場合でも適用になるとする考え方をとることが多いようです。

しかしながら、道路法71条2項1号は「道路に関する工事のためやむを得ない必要が生じたとき」に占用物件の移転・除却を求めることができるとしていますから、土地区画整理事業施行者の求めによる場合には、道路法71条2項1号の要件に該当しないものといわざるを得ません。したがって、土地区画整理事業施行者の求めに応じた道路管理者からの移転要請を受けた日本電信電話株式会社が無償で占用物件の移転に応じているとすれば、それは、道路占用許可を受けることについて、あらかじめ、移転補償請求権を国との間で放棄する旨の約束をしたと考えるほかはありません。

その結果として、多くの土地区画整理事業の事業計画において、電力会社、上下水道等の占用物件の移転補償費が計上されていますが、日本電信電話株式会社の占用物件については移転補償費が計上されていないこととなっています。

また、この覚書は、その文面から、当然には地方公共団体にまで効力が及ぶものとは考えにくいものです。そのため、地方公共団体によっては、この覚書と同じ内容の覚書を日本電信電話株式会社と締結しているところもあるようです。また、東京都のように、東京都が施行者となっている土地区画整理事業については、日本電信電話株式会社の占用物件についても移転補償を行っているところもありますが、日本電信電話株式会社の占用物件に移転補償を行っても、国の補助金の対象とならない可能性がありますので、注意が必要です。

もちろん、土地区画整理事業施行区域内の道路であっても、土地区画整理事業とは関係なく、道路工事が必要となったときは、道路法71条2項1号が適用となり、支障となる占用物件は原則として無償で移転を要することとなります。