2010年 春

労働基準法の改正と時間単位の有給休暇

Question

平成20年12月5日に成立した「労働基準法の一部を改正する法律」(平成20年法律第89号)により、労働基準法39条4項及び地方公務員法58条4項が改正され、改正法が平成22年4月1日から施行されます。改正された労働基準法39条4項は、労使協定により、時間単位の年次有給休暇を5日以内に限り、新たに与えることができるようになり、改正された地方公務員法58条4項では、特に必要があると認められるときは、労使協定で定めるところによるものとされました。

この改正の結果、現業の地方公務員については、時間単位の年次有給休暇は5日以内が限度となるのでしょうか。当市では、これまで、現業・非現業を問わずに、時間単位の年次有給休暇を、日数を限定することなく付与してきましたので、その取り扱いに悩んでいます。


(参考条文)

労働基準法39条4項(平成22年4月1日施行)

C
 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日以内に限る。)
 その他厚生労働省令で定める事項

地方公務員法58条4項(平成22年4月1日施行)

 職員に関しては、労働基準法第32条の2第1項中「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は」とあるのは「使用者は、」と、同法第34条第2項ただし書中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは」とあるのは「条例に特別の定めがある場合は」と、同法第39 条第4項中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前3項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより」とあるのは「前3項の規定にかかわらず、特に必要があると認められるときは、」とする。

Answer

結論として、現業の地方公務員については、労働基準法39条4項が適用され、法律上、非現業の地方公務員とは時間単位で付与することが可能な日数に差が出ます。以下説明します。

今回の法改正が行われるまでは、時間単位の年次有給休暇については、明文の規定がなく「年次有給休暇は職員の元気回復に充てるもので分割は不可とする意見もあるが、国家公務員の場合は、一日又は半日で与えることを原則としながら、特に必要があると認めるときは一時間を単位として与えることができることとされており(人事院規則15−14  20条)、地方公共団体でもこれに倣うことになろう。年次有給休暇は、本来、労働者の元気回復を目的とするものであり、この観点に立てば、少なくとも一日単位で与えることとし、また、先述の繰り越しについても年内消化すべきもので繰り越しは認めないことが本旨であると考えられるが、現実に生活の便宜(短時間の通院やPTAの会合等)に用いられている現状からして、当面は時間単位の年次休暇もやむを得ないであろう。」(橋本勇「新版逐条地方公務員法」344頁)とされていたものが、今回の法改正で明文規定をもって、時間単位の年次有給休暇を与えることができるようになったものです。

今回の、法改正を受けて、総務省自治行政局公務員部公務員課長ほか2名の連名で、地方公務員法59条及び自治法245条の4に基づく技術的助言として「ただし、現業の地方公務員については、改正後の労働基準法第39条第4項の規定がそのまま適用されることとなるため、時間単位の年次有給休暇は5日以内に限り付与することができることとなりますので、ご留意願います。」との見解が示されています(平成20年総行公第92号、総行給第114号、総財公第187号)。なお念のため、ここで現業の職員とは、労働基準法別表第1の1号から10号まで及び13号から15号までの事業に従事する地方公務員のことです。

この技術的助言のみでは、現業の地方公務員に地方公務員法58条4項が適用とならない理由がはっきりしませんが、今回の回答をするについて、現業の地方公務員に改正後の労働基準法39条4項が適用になる理由を確認することができませんでしたので、この点については、説明を留保させていただきます。

ただし、地方公務員法57条が、職員のうち、単純な労務に雇用される者についての地方公務員法の特例を別に定めると規定し、この規定を受けた地方公営企業労働関係法附則5項により、単純な労務に雇用される者については、地方公営企業法39条の規定が準用され、同条により、地方公務員法58条の適用が除外されているため、単純な労務に雇用される職員については、改正後の地方公務員法58条4項の適用はありません。現業の地方公務員と単純な労務に雇用される職員とは、かなりの部分で重なり合うものと思われますので、総務省自治行政局の技術的助言により、適用がないとされている改正後の地方公務員法58条4項を、あえて現業の地方公務員に対して適用するような条例改正は行うべきではないでしょう。また、あえて、現業の地方公務員について、5日を超えて、年次有給休暇を与えることができるとすることは、単純な労務に雇用される者を含む限りにおいて、労働基準法違反となります。